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役者、舞台や映画の脚本・演出、そして番組MCとマルチな活動をしている坂上さんですが、もうひとつの顔が存在します。それは、2009年に立ち上げた『アヴァンセ』という子役育成のためのプロダクションを運営していること。役者業は既に48年目目を迎えた坂上さん。
その長いキャリアを持っているからこそ教えることができる、目から鱗の子どもの「才」の伸ばし方を、全10回に渡って公開します。第6回目となる今回は、自分を曝け出す大切さについてのお話です。
自分の素の部分を出して勝負する
人生のなかで一度や二度は、舞台や映画、ドラマを観て、心が震えた経験があるでしょう。それは、脚本や演出の良さはもちろん、役者が自分のすべてを曝け出す演技を目の当たりにしたという要素も大きいのではないかと思います。
曝け出すとは、裸になって自分の素の部分を出して勝負すること。自分を大きく見せようとか、かっこよく見せようなんて思っていても、観客にすぐに見抜かれてしまうのが役者稼業。そもそも芝居なんてものは、作られたウソを演じるのですから、そのウソに上乗せして飾った演技をしてもどうしようもないんです。結果、それは観客にバレることになる。これは、歌手やお笑い芸人、スポーツ選手などにも共通するものと言っていいかもしれません。いくら過剰にやろうとしても結局はムダなだけで、等身大の自分でしか「本当の勝負」はできないのです。
子どもたちによく伝えているのは、「自分を曝け出しなさい」ということ。
「みんなに見られていて恥ずかしい」
「また失敗したらどうしよう……怒られるかな……?」
そんなことを気にしているようでは、いい演技なんてできるはずがない。
ただ、最初からなにもかもできるわけはありません。だからこそ、いかにして子どもたちに、その一歩を踏み出す勇気を持たせるかにこだわる。閉じこもっている殻を破り、外に出ることができるか――。そのために、手を変え品を変え、さまざまな飴とムチを使い分け、曝け出せるようにするのがわたしの仕事でもあるのです。
※写真は2015年撮影のもの(©辰巳千恵)
曝け出すことで個性が生まれる
わたし自身、デビューしてから45年以上が経ち、たくさんの役者さんと出会ってきまし
た。やっぱり、曝け出している人は一緒にいてとても面白く、刺激にもなります。昭和の大俳優・勝新太郎さんもそのひとり。若いころ何度かお世話になったことがあるのですが、あれだけの方にもかかわらず、普段から素のまま。気取った素振りなどまるで見せません。プライベートでも大変お世話になった火野正平さんもそう。男の色気を持った俳優さんで、実際に振る舞いもかっこいいのですが、やっぱりそこに不自然さはない。
そういった方たちに共通するのは、そこにウソがないこと。自分を曝け出すことで個性が生まれている。つまり、その人なりの色が見えるということです。
個性がない人間=自分を曝け出せていない人間、と言えるのかもしれません。人間は誰にでも個性があり、まさに十人十色。そういった個性の集まりが家族であり、地域であり、国であり、世界だと思うのです。「自分にはなんの魅力もない」と思っている人ほど、本当の自分をまったく出していないんです。自分を思い切り出すことで周囲から批判を受けたり、嫌われたりする。もしくは、つまらない人間だと思われるのが怖いのでしょうか?
わたしもまだまだ成長途上ですが、40代に入ってからは曝け出せるようになってきたと思っています。曝け出さない限りは本気で泣いたり、笑ったり、怒ったりすることができないとわかったからです。ましてや、見られる職業なのだから、ウソをついて生きてもすぐにバレるだけですからね。
子どものときに、自分を曝け出すことの楽しさや快感を味わうことができたら、とても魅力ある大人になるはずです。
※写真は2015年撮影のもの(©辰巳千恵)
※当コラムに関するお断り
この連載コラムは、2015年に刊行された坂上忍さんの著書『力を引き出すヒント~「9個のダメ出し、1個の褒め言葉」が効く!~』(東邦出版)を、当サイト向けに加筆修正をしたものです。
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■坂上忍 著『力を引き出すヒント~「9個のダメ出し、1個の褒め言葉」が効く!~』はこちら→