あたまを使う/英語 2018.9.21

英語が苦手な理由トップは「文法がわからない」? 本当に使える “表現英文法” への道

田中茂範
英語が苦手な理由トップは「文法がわからない」? 本当に使える “表現英文法” への道

日本人は文法ばかり勉強するから英語が話せない」とよく耳にします。「文法は本当に学ぶ必要があるのか」という質問を受けることもあります。このように、英語教育における文法の位置づけは、必ずしも安定したものではありません。

たしかに「英文法」の学習だけでは、英語は使えるようにならないでしょう。しかし、文法のない言語というものは存在しません。世界には何千もの言語がありますが、文法のない言語は一つもありません。「ある言語が使える」ということは、「その言語の文法力を身につけている」ことを意味します。

母語の場合には、知らず知らずのうちに、文法力を身につけていきます。通常、それは意識されることはありません。しかし、例えばこんな一文を聞いたとしましょう。

お母さんは太郎を弁当を作った。

日本人であれば、だれでも「これはおかしい文」だと判断できますね。「太郎を」ではなく「太郎に」でなければならないと、すぐにわかるはずです。なぜ一瞬でこの誤りに気づけるのでしょうか? それは、私たちが「文法力」を持っているからにほかなりません。

「文法力」は、英語力にとって必須であることは間違いありません。しかし、これまでの文法学習の仕方で、本当に「文法力」は身につくのでしょうか。残念ながら、その答えは「否」です

英語が苦手な中学生:理由トップは「文法がわからない」

まず、学校で勉強した英文法を思い出してみてください。

おそらく、be動詞・一般動詞・5文型・関係代名詞・現在完了形・動名詞などの、お決まりの文法項目を連想するのではないでしょうか。そして文法演習として、書き換え・並べ替え・正誤判断などの問題を解いたことを思い出すはずです。

これらに「苦手意識」を持つ人は少なくないでしょう。それは、ベネッセ・コーポレーションによる、英語教育に関する一連の大規模な実態調査を見ても一目瞭然です。

調査結果によると、中学生の段階で英語を苦手と感じる生徒は多く、そのダントツの理由は「文法がわからないから」であるようです。

さらに、文法ができたからといって、英語は使えないと考えている生徒が多いのも事実です。「文法は受験のためには必要かもしれないが、本当の英語力には貢献しない」という見方です。

しかし、上で述べたように、「文法力なくして英語力なし」。英語で自由自在に表現を作りだすには、単語力と文法力は必須だと言えます。

「文法知識」と「文法力」は異なる? 現行の学校英文法の問題点

学校の英文法はなぜ、人気がないのでしょうか。ぼくはその原因は「文法の捉え方」にあると思います。

今まで学校では、お決まりの文法項目をバラバラに学習してきました。不定詞・関係代名詞・比較級などがリスト化され、それぞれの項目について別々に細かく教えていたのです。

その一方で文法の全体像」が体系として示されたことはありませんでした。各文法項目というすべての “部品” を組み立てると全体としてどんなものが完成するのかは、教えてもらえなかったのです。

そこで、例えば「今は不定詞を勉強しているものの、これが英文法全体の中でどこに位置するかはわからない」という現象が起こります。自分の「立ち位置」が把握できないのですね。これでは文法学習の目標が見えてきませんし、文法力は身につきません

この問題を解決するために、まずは次のことを理解しておきましょう。

・文法は「部品」ではなく「体系」
・「文法知識」と「文法力」は異なる

不定詞・関係代名詞・比較級などの「文法知識」は単に文法の “部品” で、 “体系” ではありません。もちろん文法問題を解くのには役立ちますが、そもそも文法問題を解くスキルが「文法力」ではないのです。

本来、文法力とは「表現として文を作り出す」ためのもの。自分の作った英文を自己編集するために使うためのものです。

体系としての文法を身につけることで、本当の意味で「わかる」そして「使える」英文法を身につけることができるようになるのです。

「文法の全体像」を示して、英文法を「わかる」「使える」ものに

では、文法の全体像を見通し、文法を “体系” として学ぶには、どうすればいいのでしょうか。

そもそも文法は、世界について表現するためのものです。人が世界について言語を使って表現する。そこに、文法が関与します。文法の全体像を理解するには、この「世界について語る」ところにヒントがあります。

文法の視点から「世界」を眺め直すと、この3つに切り分けることができます。そして、これらの世界を語るために、それぞれ名詞・動詞・副詞の文法があります。

この3つの文法を結びつけることによって、言語表現が成り立ちます。これらをつなぎ合わせるために必要なのが「情報の配列」です。

・語順(S+V、S+V+O、S+V+C など)
・構文(仮定法・比較・否定構文など)

「語順」や「構文」を使うことで、名詞・動詞・副詞のそれぞれの意味のまとまりをどのように並べるかが決まりますね。情報を配列するのに役立ちます。

こうすると、世界を表現するのに有効な英文法の全体像が見えてくるでしょう。これを「表現英文法」と我々は呼んでいます。「表現英文法」は、名詞・動詞・副詞の文法の作り方、そしてそれをつなぎ合わせる規則の集合です。

こう定義すれば、文法が直接、私たちの身の回りの世界について語る「表現活動」と結びついてくるはずです。では、表現のための英文法は、どのように学ぶのが効果的なのでしょうか。次回は、表現英文法の学び方についてお話しします。

(参考)
田中茂範(2017),『表現英文法 増補改訂版』,コスモピア.