玄関のドアを開けた瞬間、また娘が泣いていました。「◯◯ちゃんに、今日も『下手だね』って言われた……」バスケットチームの練習後、こんな光景が続いていたのです。自己肯定感が下がっていくわが子を見ているのは、本当につらいことでした。
そんなとき出会ったのが、寝る前に「今日あったいいこと、3つ教えて?」と聞くだけで自己肯定感が復活する方法。幸福学の第一人者で慶應義塾大学大学院教授・前野隆司氏も推奨する「スリー・グッド・シングス」です。
半信半疑で始めたところ、1週間で娘に変化が。4週間後には、「もう気にしないことにした!」と笑顔で話すまでに。今夜から始められる、最強の親子習慣をご紹介しましょう。
目次
玄関で泣いていた娘が、4週間で「強く」なるまで
バスケチームで「下手だね」と繰り返し言われ、練習後に玄関で泣くことが増えた娘。「やめる?」と聞くと、「上手になりたい」と答えたため、親子で公園練習を始めることに。そして同時に、「スリー・グッド・シングス」もスタートしました。
■最初の1週間:いいことが出てこない
「今日あったいいこと、3つ教えて?」と聞いても、最初は本当に出てきませんでした。「なんでもいいんだよ」と何度言っても、「なにがあったかな……」と考え込んでしまう。特に初日は15分以上かかったほどです。
「いま、お母さんと話していること」「晩ごはんがおいしかった」など、寝る直前の出来事しか思い浮かばない様子。でも少しずつ、昼間の出来事も挙げられるように変化していきました。

(画像:娘から聞いた「いいこと」を、親が書き取ったメモ)
■2週め以降:脳が「いいこと」を探し始めた
「バスケの練習が楽しかった」「明日の練習が楽しみ」など、前向きな言葉が増えてきました。チームの練習でも、自分から声をかけられるように。学校ではなかよしのお友だちができ、「鬼ごっこをした」「レゴで遊んだ」など、家族以外との「いいこと」も出てくるようになったのです。
4週目には、学校から帰るなり「今日のいいこと、もう2つ見つかったよ!」と言うことも。娘の脳が勝手にいいことを探してしまっている状態になったようです。
■4週間後:「明るく」「強く」なった
娘の雰囲気が明るくなったのは1週め。「すっかり元気が戻ってきた」と思ったのは3週めでした。そして4週間後、「また今日も『下手だね』と言われたけれど、こうやって私のやる気をなくそうとしているんだとわかったから、もう気にしないことにした!」と強気な笑顔で話す娘の姿を見て、自己肯定感が確実に上がったことを実感できました。

(画像:娘から聞いた「いいこと」を、親が書き取ったメモ)
脳が勝手に「いいこと」を探し始める科学的理由
人間の脳は、ネガティブを強く記憶する設計
幸福学の第一人者・前野隆司氏によると、人間の脳は、同じ失敗を繰り返さないため、ポジティブなことよりネガティブなことをより強く記憶するようにできているそうです。危機管理能力としては優秀ですが、やはり嫌なことばかり覚えていては、幸せを感じにくくなってしまうもの。
でも、よく考えてみれば、ごく平凡に思える1日のなかにも見落としているいいことはたくさんあります。それこそ、子育て中の親であれば、言うことを聞いてくれない子どもにイライラさせられることがあったとしても、昼寝している子どもの寝顔を見れば「なんてかわいいんだ」と思うはず。親として最高に幸せな瞬間です。
「幸せの4因子」と「スリー・グッド・シングス」の関係
前野氏は、幸せな心の状態を「幸せの4因子」として整理しています。そのひとつが「ありがとう」因子。感謝の気持ちを忘れない人は周囲といい人間関係を築けるため、幸せを感じることができるのです。
「スリー・グッド・シングス」は、まさにこの「ありがとう」因子を育てる習慣。1日の終わりに「いいこと」を探すことで、見逃していた小さな幸せや、周りの人への感謝に気づくことができます。子どもが「お友だちと遊べて楽しかった」と言葉にすることで、友だちへの感謝の気持ちが自然と育っていくのです。
幸せの4因子とは?
- 1
「やってみよう」因子
自分の意志で挑戦すること - 2
「ありがとう」因子
感謝の気持ちを持つこと - 3
「ありのままに」因子
他人と比較せず、自分らしくいること - 4
「なんとかなる」因子
ポジティブに考えてチャレンジすること
習慣化すると、いいことに自然に目が向くようになる
前野氏は、この方法のおもしろいポイントとして、「習慣化するといいことに自然に目が向くようになる」ことを挙げています。いいことを書き出したいがために、いいことを見つけられるようになる——つまり、「幸せ体質」になるわけです。
前野氏の奥さまは、まさにその幸せ体質。朝の9時になる前に、「もういいことが3つ見つかっちゃった!」なんて言っているそう。脳が勝手に「いいこと」を探してしまっている状態です。
半年後も効果が持続するという研究結果
この方法を提唱したのは、ポジティブ心理学の創始者として知られるアメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏(ペンシルベニア大学教授)。セリグマン氏の研究では、1週間行なったところ、「幸福度が増進するだけでなく抑うつ度が低下し、しかもその効果が半年後も持続した」という結果が出ています。
たった1週間の習慣が、半年も続く効果をもたらす。これは、脳の回路そのものが書き換わり、ポジティブな思考パターンが定着したことを意味しています。子どもの脳は特に柔軟ですから、この習慣を早いうちから身につけることで、一生ものの「幸せ体質」を手に入れられるのです。
親も一緒に幸せになれる。「幸せは伝染する」という事実
子どものためにも、親自身が幸せになる
ここまで子どもへの効果を見てきましたが、「スリー・グッド・シングス」の素晴らしいところは、親自身にも同じ効果があるという点。
前野氏は、「幸せは伝染する」と語っています。親が幸せだと、子どもも幸せになる。だからこそ、親自身が幸せを追求することが、実は子どものためになるわけです。
親のイライラも「スリー・グッド・シングス」で軽くなる
子育ては本当に大変なことの連続です。言うことを聞いてくれない子どもに対してイライラしてしまうことも少なくありません。前野氏は、「イライラは完全に悪いものだといい切れるものではない」としながらも、「やはりなるべくイライラしないほうが理想的」と語っています。
その日にあった「いいこと」を思い出すことで、日々のイライラは減り、幸せを感じられるように変化していきます。
子どもに「今日のいいこと3つ」を聞くとき、親も一緒に話すのがおすすめです。夫婦でも伝え合えば、コミュニケーションが増え、家のなかが明るくなります。幸せな両親の背中を見て育つ——これが理想的な環境です。
👨👩👧 親も一緒に実践してみよう
- 🧒 子ども
「お友だちと鬼ごっこした」「給食がおいしかった」「宿題がなかった」 - 👩 お母さん
「おいしいコーヒーが飲めた」「天気が晴れ!」「苺が安かった」 - 👨 お父さん
「仕事でほめられた」「明日が休みで嬉しい」「晩ごはんがおいしかった」
よくある質問(FAQ)
Q1. 何歳から始められる?
A. 言葉で気持ちを表現できる年齢なら何歳でもOK。幼児なら「楽しかったこと1つ」から始めてもいいでしょう。小学校低学年からは3つを目標にしてみてください。
Q2. 3つ見つからないときは?
A. 最初は1つでも2つでもOK。「なんでもいいんだよ」と伝えて、ハードルを下げましょう。「晩ごはんがおいしかった」「ママと話せた」など、些細なことで大丈夫です。続けるうちに、自然に3つ見つけられるようになります。
Q3. 書かないとダメ?
A. 話すだけでも効果あり。前野氏も「誰かと伝え合うことでも効果を感じられる」と述べています。ただし「そのときどう思った?」と感情も引き出すとより効果的。書くことで記録として残せるメリットもあります。
Q4. どのくらい続ければいい?
A. 最低1週間続けてみましょう。セリグマン氏の研究では、1週間で効果が出始め、その効果が半年後も持続したという結果が出ています。習慣化すると、脳が自然に「いいこと」を探すようになるため、できれば3週間以上続けることをおすすめします。
***
お金もモノも必要ありません。必要なのは、寝る前の数分と、「いいこと」を見つける気持ちだけ。
玄関で泣いていた娘が、4週間で「もう気にしない!」と笑顔で言えるようになったように、「スリー・グッド・シングス」は子どもの自己肯定感を確実に上げる習慣。そして、親自身も一緒に幸せになれる——これほど簡単で効果的な方法は、他にないかもしれません。
今夜から、親子で幸せ体質になりましょう。
(参考)
マーティン・セリグマン(2014),『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から”持続的幸福”へ』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
前野隆司(2018),『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
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