あたまを使う/英語 2018.9.7

英単語学習の新たな掟! “コアイメージ”で「基本語力」を身につける

田中茂範
英単語学習の新たな掟! “コアイメージ”で「基本語力」を身につける

たいていの日本人英語学習者は、基本動詞や前置詞は、見れば意味を答えられます。しかし、それを正確に使い分けたり、十分に使いこなしたりすることができるかといえば、必ずしもそうとはいえません。

日本人英語学習者は「基本語力」が弱い?

あなたもきっと、“wear” といえば「衣類を身につけている」という意味だと知っているでしょう。そして、“put on” が「身につける」という「動作」だとすれば、“wear” は「身につけている」という「状態」を表すということも知っているはずです。

しかし、以下の状況で “wear” を使うことができるでしょうか。

ジーンズの膝に穴を開けてしまった。
彼女の不平にはくたびれるよ。

これらはそれぞれ、英語でこのように表現することができます。

I’ve worn a hole in the knees of my jeans.
She has worn me out with all her complaining.

たかが “wear”、されど “wear” です。

また、“run” という動詞にしても、「走る」という意味の理解だけでは十分ではありません。

Blood ran from the boxer’s left eye.
(ボクサーの左目から血が流れた)

My nose has been running for days.
(何日も鼻水が出ている)

Her eyes ran with tears of joy.
(彼女の目は喜びの涙であふれた)

Artistic talent runs in her family.
(彼女の家族には芸術の才能の血が流れている)

Prejudice runs deep in that part of America.
(アメリカのその地域には偏見が根強く残っている)

I feel like I am running around in circles trying to deal with this problem.
(この問題に対処しようとして僕は堂々巡りをしているような気がする)

これらはほんの数例にすぎませんが、自ら英語を話したり書いたりするときに “run” が使えるということは、こうした使い方が自由にできるようになることです。

前回、「受容語彙」と「産出語彙」のお話をしました。受容語彙とは「読んだり、聞いたりする時に理解できる語彙」、産出語彙とは「話したり、書いたりする時に使うことができる語彙」のことでしたね。

そして日本人英語学習者の場合、「産出語彙」の数があまりにも限られているところに、語彙力のなさを感じる一因があるのでした。

本記事冒頭で記した「見れば意味を答えられる」単語は「受容語彙」にあたります。“wear” は「衣類を身につけている」、“run” は「走る」という意味はわかるという段階です。この段階にいる人はたくさんいることでしょう。

一方、上記で紹介した様々な表現をはじめとして多様な意味を知り、正確に使い分けることができる単語は「産出語彙」にあたります。“wear” や “run” を使いこなすには、この段階までステップアップすることが不可欠です。

「コアイメージ」は基本動詞を使いこなすために効果的

では、どうすれば “run” のような基本動詞を使いこなすことができるようになるでしょうか。それぞれの用例を日本語にしていけば、“run” の意味は途方もないものになります。

しかし、このような基本動詞にはたくさんの「意味」があるのではありません。一つの単語が持つ共通のイメージがあり、それをさまざまな状況に投影しているのです。ここでいう共通イメージのことを「コア」とか「コアイメージ」という言い方をします。

基本動詞のコアイメージを想定する背後には「形が同じなら一定の意味がある」という前提があります。すなわち、例えば “run” という動詞が使われる限りにおいて、そこには共通のコアイメージがあるということです。

では、“run” のコアイメージとは何でしょうか。コトバで説明すれば、「一方向に(すらすら)流れるように移動する」あるいは「ある方向に、連続して、なめらかに、動く」となります。これをイメージで表すと、以下のようになります。

ある方向に向かって、途切れることなくスルスルっと流れる感覚があるということです。典型的な使い方の1つである以下の文にしても、一方向に連続的に移動するというイメージがそのまま生かされています。

He’s running along the beach.
(彼は海辺沿いを走っている)

また、“run” は「川の流れ」にも使えます。川も「途切れることなく一方向に連続して」流れていますね。

This river runs east.
(この川は東へ流れている)

道路計画の話をしている時は、こんな使い方もあります。道路が移動するわけではありませんが、話し手の視点を投影した “run” の使い方だといえます。

This new road will run through the beautiful forest.
(新しくできる道路は美しい森を抜けていく)

日本語でも「痛みが走る」という言い方をしますが、英語でも同じように “run” を使って表現できます。

The pain runs from my foot to my knee.
(足の下から膝のあたりまで痛みがある)

さらにこちらは、「長きにわたって途切れることなく上演された」様子を “run” で表現しています。そういえば、“a long run”(ロングラン)という言い方もありますね。

The show ran on Broadway for years.
(そのショーは何年もの間ブロードウェイで上演された)

「途切れることなく順調に展開する(流れる)」ことを “run” で表す、こんな表現もあります。

His business runs well.
(彼の仕事はうまくいっている)

一見したところ多様で複雑に見える “run” の使い方ですが、実はどれも、その根底にある共通のコアイメージが働いているのです。そして、それぞれの日本語の意味は、“run” の意味というよりはむしろ、“run” が使われる状況を描写したものであるといえます。

基本語彙を「コアイメージ」で理解することのメリット

このように基本語彙をコアイメージで理解することで、単語が持つ数多くの多様な意味を、全く別のものとして1つ1つ暗記する必要がなくなります。共通のイメージを知ることで、効率的に英単語を学習することができるようになるのです。

また、基本語力には「使い切り」の側面だけでなく「使い分け」の側面もあります。例えば、同じ「保つ」の意味合いの “hold” と “keep” の使い分けであるとか、同じ「投げる」の意味合いの “throw” と “cast” の使い分けなどがその例です。

実は、この使い分けを可能にしてくれるのもコアイメージです。用例のレベルでみれば、使い分けが判然としないというものも、コアイメージのレベルでみると、それぞれの違いが見えてくるのです。

さらに、違いがわかるだけでなく、それぞれの語の意味の拡がりも、コアイメージを通して理解することができるようになります。

コアイメージによって、英単語学習を効率良く進められるだけではなく、正確な「使い分け」の知識をはじめとして、理解に深みを持たせることが可能になるのです。

子どもでも基本語彙のコアイメージをつかむことができる本

小学生でも英単語のコアイメージをつかめる書籍として『英語の発想と基本語力をイメージで身につける本』(田中茂範&cocone著、コスモピア出版)があります。

本書では、基本動詞40と前置詞20を、視覚的に押さえることができます。

例えば、動いているものをパッとつかまえるのが “catch” 、自分のところに取り込むのが “take” 、ものや動きを一時的におさえるのが “hold” というような基本語彙のコアをわかりやすいイラストで示し、詳しい解説を加えています。

ダイナミックな動画イメージを連続する画像として全ページフルカラーの紙面に再現しているので、お子さんも飽きずに眺めてくれることでしょう。ぜひ活用して下さいね。

(参考)
田中茂範, cocone(2011),『英語の発想と基本語力をイメージで身につける本』, コスモピア.