教育を考える 2019.12.21

「サンタって本当にいるの?」と聞かれたらどうする? 識者による正しい答え方、教えます。

編集部
「サンタって本当にいるの?」と聞かれたらどうする? 識者による正しい答え方、教えます。

クリスマスが近づくと、楽しみにしている子どもはもちろん、パパ・ママも「プレゼントはどうしよう」とそわそわしてしまいますよね。

子どもに「今年は、サンタさんに何をお願いするの?」と聞いてみても、「どうしてサンタさんが持ってきてくれるプレゼントをママが知りたいの?」なんて不審に思われてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。また、クラスのお友だちから「本当はサンタクロースっていないんだって」などと聞いて心配になったお子さんに「ねえママ、サンタさんはいないの?」と尋ねられて答えに詰まった経験がある方も多いでしょう。

「サンタさんは本当にいるの?」と聞かれたとき、私たちはどのように答えるのが正しいのでしょうか。子どもの成長にあわせた適切な答え方を、「学び」の視点から考えてみました。

「サンタさんはいるの?」と聞くのは小学校低学年ごろ

「サンタさんはいるの?」と聞いてくる年頃は、6歳から8歳の小学校低学年が多いよう。

三重大学教育学部幼児教育講座の富田昌平教授は、子どもたちに「サンタさんに会ったことがあるか」「どこで、どんなふうにして会ったか」「そのサンタさんは本物だと思うか」「本物のサンタさんに会えると思うか」などの質問を投げかけて、その子どもがサンタクロースをどのくらい信じているかを調査しました。富田教授は、調査結果を以下のように述べています。

幼稚園の年中さん、小学校1年生、3年生を対象にしたんですけれど、幼児期の子どもはサンタクロースを大体信じているんですね。小学校1年生でもほとんど信じていて、それが小学校3年生になると急に信じる子どもが減っていくという結果が出ています。

(引用元:三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達 ※太字は筆者が施した)

また、アメリカの矯正精神医学専門誌で1978年に紹介された調査によると、サンタクロースの存在を信じる子どもの割合は、4歳児85%6歳児65%8歳児25%にまで減るのだそう。この数字は、30年以上経った現在でも、それほど変化はないと言われています。

世界中の子どもたちが、6〜8歳頃にサンタの存在を疑い始めるようですが、これには子どもの発達プロセスが関係していると考えられています。この年頃の子どもは、物事を論理的に考え始めるようになります。そのため、「たった一晩で世界中の家にプレゼントを届けられるはずがない」「トナカイのそりに乗って空を飛べるわけがない」「家には煙突もないし、ましてや玄関のカギがかかっているのにどこから入ってくるんだろう」と、ファンタジーの中の矛盾点を疑問に思うようになるのです。

たとえ、クラスのお友だちに「サンタさんはいないよ、お姉ちゃんに聞いたもの」と言われたとしても、お子さんがサンタを信じなくなった理由は、その言葉に感化されたというより、物事を筋道立てて考えられるようになったからと言えそうです。

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子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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サンタクロースは空想上の人物ではないって知ってた?

そもそも、サンタクロースは実在した人物だということをご存じですか? その起源は、3世紀後半にギリシアで生まれた司教、聖ニコラウスだと言われています。キリスト教が迫害されていた時代に教会の教えを頑なに守った聖人として、名声を得た人物です。その後13世紀に入るころには、ニコラウスは、魔法の使い手であり贈り物をくれる、子どもたちの守護聖人として知られるようになりました。

現在、サンタクロースは、フィンランドに住んでいると知られていますが、この由来は1920年代にアメリカに伝わった「サンタクロースの故郷は北極である」という話にさかのぼることができます。これが次第に、北極圏のあるフィンランドのラップランドが故郷であるとされ、1927年にはフィンランド国営放送局によってラップランド東部にあるコルヴァトゥントゥリサンタクロースの正式な住まいと宣言されるに至りました。

「サンタクロースが本当にいるかどうか」という点では、「サンタクロースと呼ばれた人は本当にいた」と答えても間違いではないでしょう。

ただ、「トナカイが引くそりに乗って、空を飛んでくる」とか「家の煙突から入ってくる」という話は、やはりファンタジーには違いありません。そこを問いただされたときには、どのように答えればよいのでしょうか?

ひとつには、「空は飛んでこないよ」「煙突からは入ってこないよ」と正直に答えても良いのだそう。私たち大人は、子どもが嘘をつかれていたことを知ってショックを受けるのではと心配しがちですが、子どもは(やっぱりそうか。いくらサンタさんでも空は飛べないし、煙突からは入らないんだな)と納得するのだそう。むしろ、嘘を見破ったことで、ロジカル思考に自信を持つきっかけになるかもしれません。さらに、子どもたちが大きくなって高学年になるころには、わざわざ親が「サンタクロースはいないよ」と教えなくても、お友だち同士で情報共有して、サンタクロースが実際に家に来ていたわけではないことを自然な形で知るようになります。

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学識者が答える「サンタはいるの?」への正しい答え方

そうはいっても、小学校低学年のうちに「サンタはいるの?」と聞かれたときは、どのように答えてあげたらよいのでしょうか。3人の学識者の意見をご紹介しましょう。

心理学者の内藤誼人先生は、わざわざ真実を教える必要はなく、夢のある話はそのままにしておいたほうが楽しめると言います。幼いうちから現実の厳しさを教えすぎると、かえって疑り深い大人に成長する可能性があるのだそう。

「例え後々サンタさんが実はお父さんだったとバレるとしても、サンタさんはいないと告げてしまうのではなく、夢を与えた方がいいと思います。ディズニーランドは、本当のことを言うと『夢の国』でも何でもないのですが、『夢の国なのだ』と思っていた方が、ずっと楽しめるのと一緒です」

(引用元:教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方

教育研究家の親野智可等さんは、子どもの心理面の発達に寄り添いながら、それぞれの段階に応じた対応をすることをすすめています。

同氏いわく、子どもが「サンタさんは本当にいるの?」質問してきたら、まず「あなたはどう思う?」と聞いてみるのが良いのだとか。本人が「絶対にいると思う」と答えるのであれば「ママも絶対にいると思うよ」「いると思うけどなあ」と迷っているのであれば「ママもいると思うけどなあ」「いないと思う」ならば「いないのかなあ」のように、対話の中で本人がどのように感じているのかを探り、本人の気持ちに同調してあげれば良いのだそう。子ども自身が少しずつ真実を悟っていくのに任せましょう。

また、サンタクロースがいるかどうかを親子で話し合う様子をユーモラスに描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」の作家で経済学者の暉峻淑子さんは、「子どもはきっと『いるよ』という答えを欲しがっているんだと思います」と述べています。

サンタクロースは、家族でも親戚でもない、いわば赤の他人でありながら、子どもたちの幸せを願い、プレゼントを配っている存在。暉峻さんいわく、子どもは、サンタクロースを信じることで、知らない人も自分の幸せを願い、愛してくれているという社会の善意を感じ取ることができるのだそう。

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実際に「サンタさんはいるの?」と聞かれた親御さんのなかには、「サンタさんはいるけれど、一晩ですべての子どものところにプレゼントを届けられないから、パパが預かったんだよ」と答えたというアンケート結果も。子どもひとりひとりの発達段階や個性に合わせて、夢を壊さないような答えを返してあげられるといいですね。

(参考)
三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達
CNN|子どもがサンタを信じるのはいつまで? 研究者らの報告
中日新聞 オピ・リーナ|子どもに「サンタっているの?」と聞かれたら
NATIONAL GEOGRAPHIC|サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまで
サンタクロース村 オフィシャルサイト|サンタクロースの基礎知識
ベネッセ教育情報サイト|「サンタさん」は何歳まで? サンタクロース&クリスマスの最新事情
ベネッセ教育情報サイト|「サンタクロースは本当にいるの?」と聞かれたら[教えて!親野先生]
教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方