※この記事は大人向けに書かれています。子どもが読むと、クリスマスの楽しみが減ってしまうかもしれませんので、ご注意ください。
クリスマスが近づくと、楽しみにしている子どもはもちろん、パパ・ママも「プレゼントはどうしよう」とそわそわしてしまいますよね。
クリスマスが近づくと、楽しみにしている子どもはもちろん、パパ・ママも「プレゼントはどうしよう」とそわそわしてしまいますよね。
子どもたちは成長とともに、サンタさんについて疑問を持ち始めます。「どうしてサンタさんが持ってきてくれるプレゼントをママが知りたいの?」と不審に思ったり、お友だちから「サンタクロースっていないんだって」と聞いて「ねえママ、サンタさんはいないの?」と尋ねられたりすることもあるでしょう。
「サンタさんは本当にいるの?」と聞かれたとき、私たちはどのように答えるのが正しいのでしょうか。子どもの成長にあわせた適切な答え方を、「学び」の視点から考えてみました。
「サンタさんはいるの?」と聞くのは小学校低学年ごろ
「サンタさんはいるの?」と聞いてくる年頃は、6歳から8歳の小学校低学年が多いよう。
三重大学教育学部幼児教育講座の富田昌平教授は、子どもたちに「サンタさんに会ったことがあるか」「どこで、どんなふうにして会ったか」「そのサンタさんは本物だと思うか」「本物のサンタさんに会えると思うか」などの質問を投げかけて、その子どもがサンタクロースをどのくらい信じているかを調査しました。富田教授は、調査結果を以下のように述べています。
幼稚園の年中さん、小学校1年生、3年生を対象にしたんですけれど、幼児期の子どもはサンタクロースを大体信じているんですね。小学校1年生でもほとんど信じていて、それが小学校3年生になると急に信じる子どもが減っていくという結果が出ています。
(引用元:三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達 ※太字は筆者が施した)
また、アメリカの矯正精神医学専門誌で1978年に紹介された調査によると、サンタクロースの存在を信じる子どもの割合は、4歳児で85%、6歳児で65%、8歳児で25%にまで減るのだそう。この数字は、30年以上経った現在でも、それほど変化はないと言われています。
世界中の子どもたちが、6〜8歳頃にサンタの存在を疑い始めるようですが、これには子どもの発達プロセスが関係していると考えられています。この年頃の子どもは、物事を論理的に考え始めるようになります。
「一晩で世界中にプレゼントを届けられるのか」「トナカイのそりで空を飛べるのか」など、疑問をもつようになるのです。
サンタクロースは空想上の人物ではない!
サンタクロースは空想だけの存在ではありません。じつは、サンタクロースは実在した人物。 その起源は、3世紀後半にギリシアで生まれた司教、聖ニコラウスだと言われています。キリスト教が迫害されていた時代に教会の教えを頑なに守った聖人として、名声を得た人物です。その後13世紀に入るころには、ニコラウスは、魔法の使い手であり贈り物をくれる、子どもたちの守護聖人として知られるようになりました。
現在、サンタクロースは、フィンランドに住んでいると知られていますが、この由来は1920年代にアメリカに伝わった「サンタクロースの故郷は北極である」という話にさかのぼることができます。これが次第に、北極圏のあるフィンランドのラップランドが故郷であるとされ、1927年にはフィンランド国営放送局によってラップランド東部にあるコルヴァトゥントゥリがサンタクロースの正式な住まいと宣言されるに至りました。
「サンタクロースが本当にいるかどうか」という点では、「サンタクロースと呼ばれた人は本当にいる」と答えても間違いではないでしょう。
サンタさんの不思議について質問されたら
ただ、「トナカイが引くそりに乗って、空を飛んでくる」とか「家の煙突から入ってくる」という話は、やはりファンタジーには違いありません。そこを問いただされたときには、どのように答えればよいのでしょうか?
ひとつには、「空は飛んでこないよ」「煙突からは入ってこないよ」と正直に答えてもよいでしょう。私たち大人は、子どもが嘘をつかれていたことを知ってショックを受けるのではと心配しがちですが、子どもは(やっぱりそうか。いくらサンタさんでも空は飛べないし、煙突からは入らないんだな)と納得するのだそう。
むしろ、嘘を見破ったことで、ロジカル思考に自信を持つきっかけになるかもしれません。さらに、子どもたちが大きくなって高学年になるころには、わざわざ親が「サンタクロースはいないよ」と教えなくても、お友だち同士で情報共有して、サンタクロースが実際に家に来ていたわけではないことを自然な形で知るようになります。
学識者が答える「サンタはいるの?」への正しい答え方
そうはいっても、小学校低学年のうちに「サンタはいるの?」と聞かれたときは、どのように答えてあげたらよいのでしょうか。3人の学識者の意見をご紹介しましょう。
心理学者の内藤誼人先生は、わざわざ真実を教える必要はなく、夢のある話はそのままにしておいたほうが楽しめると言います。幼いうちから現実の厳しさを教えすぎると、かえって疑り深い大人に成長する可能性があるのだそう。
「例え後々サンタさんが実はお父さんだったとバレるとしても、サンタさんはいないと告げてしまうのではなく、夢を与えた方がいいと思います。ディズニーランドは、本当のことを言うと『夢の国』でも何でもないのですが、『夢の国なのだ』と思っていた方が、ずっと楽しめるのと一緒です」
(引用元:教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方)
教育研究家の親野智可等さんは、子どもの心理面の発達に寄り添いながら、それぞれの段階に応じた対応をすることをすすめています。
同氏いわく、子どもが「サンタさんは本当にいるの?」質問してきたら、まず「あなたはどう思う?」と聞いてみるのが良いのだとか。本人が「絶対にいると思う」と答えるのであれば「ママも絶対にいると思うよ」。「いると思うけどなあ」と迷っているのであれば「ママもいると思うけどなあ」。「いないと思う」ならば「いないのかなあ」のように、対話の中で本人がどのように感じているのかを探り、本人の気持ちに同調してあげれば良いのだそう。子ども自身が少しずつ真実を悟っていくのに任せましょう。
また、サンタクロースがいるかどうかを親子で話し合う様子をユーモラスに描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」もおすすめです。
この絵本の作者であり経済学者の暉峻淑子氏は、「子どもはきっと『いるよ』という答えを欲しがっているんだと思います」と述べています。
サンタクロースは、家族でも親戚でもない、いわば赤の他人でありながら、子どもたちの幸せを願い、プレゼントを配っている存在。暉峻氏いわく、子どもは、サンタクロースを信じることで、知らない人も自分の幸せを願い、愛してくれているという社会の善意を感じ取ることができるのだそう。
***
実際に「サンタさんはいるの?」と聞かれた親御さんのなかには、「サンタさんはいるけれど、一晩ですべての子どものところにプレゼントを届けられないから、パパが預かったんだよ」と答えたというアンケート結果も。
子どもひとりひとりの発達段階や個性に合わせて、夢と現実のバランスを取りながら、温かい気持ちで答えてあげられるといいですね。
(参考)
三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達
CNN|子どもがサンタを信じるのはいつまで? 研究者らの報告
中日新聞 オピ・リーナ|子どもに「サンタっているの?」と聞かれたら
NATIONAL GEOGRAPHIC|サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまで
サンタクロース村 オフィシャルサイト|サンタクロースの基礎知識
ベネッセ教育情報サイト|「サンタさん」は何歳まで? サンタクロース&クリスマスの最新事情
ベネッセ教育情報サイト|「サンタクロースは本当にいるの?」と聞かれたら[教えて!親野先生]
教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方
※本記事は2019年12月21日に公開しました。肩書などは当時のものです。