近年、住宅街や学校の近くに「クマ(ツキノワグマ・ヒグマ)」が出没するニュースが増えています。「山にいるはずなのに、なぜ?」「怖いけど、クマは悪者なの?」と不安に思う人も多いはず。
今回は、「親子で学べるシリーズ」として、クマの生態や食べ物、なぜいまクマが “街に降りてくる” のかを、子どもにもわかりやすく解説します。
目次
🐻 クマってどんな動物?
- ツキノワグマ:本州・四国に生息。胸に白いV字模様がある
- ヒグマ:北海道に生息。体が大きく、茶色い毛が特徴
「クマは肉を食べる怖い動物」と思われがちですが、じつは食べ物の約8〜9割は植物なんです。

クマは何を食べているの?
- 春:若葉、ふきのとう、山菜 → 冬眠明けで空腹。柔らかい草を食べる
- 夏:アリやハチの幼虫、果実 (特にヒグマ)→ 木の実が少ない時期。昆虫も大切な栄養源
- 秋:どんぐり、クリ、ヤマブドウ → 冬眠に備えて脂肪をためる大事な時期
- 冬:冬眠(何も食べない)
つまり、クマにとって秋の木の実は、冬を越すための”命綱”なのです。
クマは肉ばかり食べているわけじゃないんだ。どんぐりや木の実が大好きで、秋にたくさん食べて、冬は寝て過ごすんだよ。だから秋に食べ物がないと、困っちゃうんだ。

🏘️ なぜ街に降りてくるの?
クマは本来、人間を避けて山奥で暮らす動物です。それなのに、なぜ街に出てくるようになったのでしょうか。
理由①:山に食べ物が足りない
近年、気候変動や木の実の不作で、山に十分な食べ物がない年が増えています。
- ブナやナラのどんぐりが不作
- 台風や異常気象で木の実が落ちてしまう
- 地域によってはクマの数が増えて、食べ物の取り合いに
お腹を空かせたクマは、人間の畑や生ごみ、果樹園に食べ物を求めてやってきます。
理由②:人間の住む場所が山に近づいた
昔は、山と人里の間に「里山」という緩衝地帯がありました。しかしいま——
- 過疎化で手入れされない山が増えた
- 耕作放棄地が増え、クマが隠れやすくなった
- 住宅地が山のすぐそばまで広がった
- 様々な開発により、森林が減少した
結果、クマと人間の距離が近くなってしまったのです。
理由③:一度味を覚えると……
クマはとても賢い動物。一度「人里には食べ物がある」と学習すると、何度も来るようになります。
クマは本当は人間が怖いんだ。でも、山にごはんがなくて、お腹がペコペコだと、人間の近くまで食べ物を探しに来ちゃうの。ゴミや畑の野菜を見つけて、「ここに来れば食べられる!」って覚えちゃうんだ。

🌳 人間もクマも暮らせる未来へ
かつて日本では、人と野生動物が適度な距離を保ちながら暮らしていました。でもいま、その距離が崩れています。
「クマを駆除すればいい」という声もあります。でも、クマは森の生態系を支える大切な動物。木の実を運び、土を掘り返し、森を豊かにしています。
私たちにできるのは——
- 山と人里の境界を守ること
- クマを引き寄せない暮らし方
- 自然と共生する知恵を学ぶこと

親子で話してみよう!対話のヒント 🗣️
ニュースで見る「クマ出没」は、じつは地球の自然環境と人間の暮らし方がつながっている問題なのです。
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クマをめぐるニュースは、少し怖く聞こえるけれど、その裏には「人間と動物がどう暮らすか」「自然をどう守るか」という大切な問いが隠れています。
小さなどんぐり一粒が、クマの命を支えている。そう思うと、森と街のつながりが見えてきます。
(参考)
環境省|クマ類の出没対応マニュアル
環境省|ツキノワグマ・ヒグマの生態
日本クマネットワーク|クマを知る
林野庁|野生鳥獣による森林被害対策
国立環境研究所|クマの出没増加と気候変動の関係
日本自然保護協会|クマとの共生を考える













