「”レアアース“ってニュースで聞いたけど……それって何?」子どもに聞かれたら、どう答えますか?
近年、スマートフォンや電気自動車、風力発電などに欠かせない「レアアース(希土類)」が話題になっています。世界生産の7割を中国が握っており、各国が確保に奔走しています。でも、「希少な金属なんでしょ?」となんとなく知っているだけ、という人も多いはず。
今回は、「親子で学べるシリーズ」として、レアアースの正体や使われ方なぜいまレアアースが “争奪戦” になっているのかを、子どもにもわかりやすく解説します。
目次
🧭 「レアアース」ってどんなもの?
“レア”という名前のとおり、地球上に少ないイメージがありますが、じつはそうでもないんです。たとえるなら——「砂の中に金の粒が混じっている」ようなもの。
量はあっても、取り出すのがとても大変なんです。
主なレアアース17種類のうち、有名なのは…
- ネオジム(Nd):スマホや電気自動車のモーターに使われる強力な磁石の材料
- セリウム(Ce):ガラスをピカピカにする研磨剤
- ランタン(La):カメラや双眼鏡のレンズ
- ジスプロシウム(Dy):高温でも磁力が落ちにくい、モーターに欠かせない元素
つまり、レアアースがなければ、スマホも電気自動車も、風力発電も動かないのです。
レアアースは、スマホやゲーム機のなかに入っている金属なんだ。とっても少ないわけじゃないけれど、見つけても取り出すのがすごく難しい。だから “レア(めずらしい)” って呼ばれているんだよ。

🔋 私たちの身のまわりにある”レアアース製品”
レアアースは、見えないところで私たちの生活を支えています。たとえば——
- スマートフォン:ネオジム、ジスプロシウム → 小さなスピーカーやバイブレーションの磁石
- 電気自動車:ネオジム、テルビウム → モーターの中で電気を動かす力を生む
- 風力発電機:ネオジム → 羽を動かす巨大モーターに使われる
- テレビの画面:ユウロピウム、テルビウム → 赤や緑のきれいな発色を出す
- LEDライト:セリウム → 明るく、省エネな光を出す材料
レアアースは、スマホの中にも、電気自動車にも、テレビの光にも入っているよ。目には見えないけど、毎日のくらしを動かしている「かくれヒーロー」なんだ。

🌏 なぜ “争奪戦” になるの?
じつはレアアースは、アメリカやオーストラリア、ブラジルなど世界の様々な場所に埋まっています。それなのに、なぜ “争奪戦” になっているのでしょうか。
中国がレアアースを独占している理由
現在、中国が世界のレアアース生産量の約7割を占めています。日本をはじめ、多くの国は中国から輸入しているのです。
中国は、1990年代から国をあげてレアアース産業に投資し、安く大量に掘り出せる仕組みをつくり上げました。その結果、他の国は価格競争に負けて、鉱山を閉めてしまったのです。
さらに、掘り出したレアアースを使える形に加工する技術でも、中国が世界シェアの9割以上を占めています。つまり、「掘るのも、加工するのも中国頼み」という状況になっているのです。
レアアースが「外交問題」になることも
2010年、日本と中国の間で問題が起きたとき、中国が日本へのレアアース輸出を止めたことがあります。日本の工場は困ってしまい、スマホや車を作るのに必要な部品が手に入りにくくなりました。
だからいま、世界中で「レアアースをリサイクルしよう」「新しい鉱山を見つけよう」という動きが広がっています。
レアアースは、ほとんどが中国から来ているんだよ。他の国にも埋まっているけれど、中国で安くつくれるようになったから、みんな中国から買うようになったんだ。でも、もし中国が「もう売らない!」って言ったら、スマホや車がつくれなくなっちゃう。だから、ほかの方法をみんなで考えているんだ。

🔄 地球を守る”リサイクル技術”
最近では、「都市鉱山(としこうざん)」と呼ばれる考え方が注目されています。これは、使わなくなったスマホやパソコンなどの中にあるレアアースを取り出して、もう一度使うという仕組み。
実際、日本はこの “リサイクル技術” が世界トップクラス。東京オリンピックのメダルも、使わなくなった電子機器から集めた金属でつくられました。
昔のスマホやゲーム機の中にもレアアースがあるんだ。それをもう一度取り出して使うのが「都市鉱山」っていう考え方なんだよ。地球の資源を大切にする工夫だね。

親子で話してみよう!対話のヒント 🗣️
ニュースで見る「レアアース」は、大人だけの話ではありません。子どもにとっても、「地球の資源」や「モノづくりの裏側」を考えるきっかけになります。
政治や経済のニュースの裏には、こうした科学の力と資源のつながりがあります。ニュースをきっかけに、「モノが動くしくみ」「地球の資源の大切さ」を親子で話してみるのもいいですね。
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レアアースをめぐるニュースは、少しむずかしく聞こえるけれど、その中には「地球の資源をどう使うか」「未来のエネルギーをどうつくるか」という大切な問いが隠れています。
小さなスマホの中にも、地球のかけらが入っている。そう思うと、世界がぐっと近く感じられます。
(参考)
信越レア・アース|レアアースについて
ELEMINIST|レアアースとは? レアメタルとの違いや環境への影響を解説
笹川平和財団|中国レアアース輸出規制と各国の対応~経済安全保障の主戦場をめぐる攻防
RIETI|2010年レアアース輸出停滞等を振り返って中国を考える
東京2020組織委員会|都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト
環境省|【SDGsライフのヒント】アフターメダルプロジェクト