2022.11.2

「心が折れても立ち直れる子」の親がやっている “5つ” のこと。幼少期にレジリエンスを鍛える

長野真弓
「心が折れても立ち直れる子」の親がやっている “5つ” のこと。幼少期にレジリエンスを鍛える

「わが子には順風満帆な人生を送ってほしい」そう願う親御さんは多いのではないでしょうか。しかし現実は、人生よいときばかりではありません。困難にぶつかることもあるでしょう。そんなときに必要な力が「レジリエンス」です。

専門家によると、レジリエンスがある子どもは、困難を乗り越え、どんな時代でも自分の人生を勇敢に切りひらいていけるとのこと。

今回は、「レジリエンスに必要な3つの要素」「子どものレジリエンスを育むために親ができること」について考えていきます。

心の回復力「レジリエンス」は鍛えられる力だった!

『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』著者で医学博士の小玉正博氏によると、レジリエンスとは、「大きな挫折や逆境を経験しても立ち直ることができる力」で、言うなれば「心の回復力」とのこと。小玉氏はレジリエンスが注目される背景について、「先が見通しづらい時代になったことが原因」と指摘します。変化の激しい時代だからこそ、「不測の事態にもしなやかに対応する力」であるレジリエンスが必要とされているのです。

小玉氏はまた、レジリエンスについて以下のように考えています。

誤解されやすいのですが、レジリエンスは人生で挫折しないようにうまく立ち回るすべのことではありません。むしろ挫折の経験を前提と考えています。挫折によるダメージから本来の自分を取り戻したり、失敗を肥やしとして成長のきっかけにしたりすることが、レジリエンスの基本的な考え方です。

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとは

なるほど、レジリエンスは「挫折の経験が前提」なのですね。ということは、いままで「うちの子、失敗したらどうしよう……」「うまくできるかしら」などと悩んでいた親御さんも、「失敗してもいいじゃない。レジリエンスが育つチャンスだ」と考えられるかもしれません。欧州におけるポジティブ心理学の第一人者であるイローナ・ボニウェル氏も「レジリエンスは筋肉のように鍛えられる」と断言しているのですから。

次項では、レジリエンスに関わる「折れても立ち直るための3つの要素」について、見てみましょう。

レジリエンス分かれ道01

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「心が折れても立ち直れる子」には3つの要素が関係している

どうやら、専門家によると「心が折れても立ち直れる子」には、3つの要素が関係しているようです。それは、「気質」「環境」「学習」。ひとつずつ見ていきましょう。

要素1:生まれつき備わっている「気質」

東北大学加齢医学研究所助教授で脳科学者の細田千尋氏は、レジリエンスが強い人の特徴として、「楽観主義、利他主義、ユーモアがある、使命感が強い」という性質を挙げています。お子さんにこのような気質があるのなら、心が折れても立ち直れる要素があると言えるでしょう。

もし、上述したような気質が備わっていなかったとしてもご安心を。発達心理学者でレジリエンスを研究する渡辺弥生氏は、気質を変えることは難しいけれど、気質以外の要素は、親や周囲の関わり方次第でいくらでも変えられると話しています。

要素2:何かあったときに助けてもらえる「環境」

小児科専門医でレジリエンスの専門家でもある山口有紗氏は、「子どものメンタルヘルスは、環境の影響を受けやすい」と言います。そしてその「子どもを取り巻く環境」とは「家庭・学校・地域」なのだそう。「つらいときには、家族がそばにいてくれる」「家族と、自分の気持ちについて話せる」「学校に居場所がある」などの他者とのつながりが、子どものレジリエンスを育むうえで、とても重要な要素となるようです。

ライフコーチとして活躍するボーク重子氏も、安心して何度でも失敗できる環境が子どものレジリエンスを鍛え、「主体的に挑戦できる子」の土台となると述べています。子どものレジリエンスを育む過程に、親をはじめとしたまわりの大人のサポートは欠かせないのです。

要素3:経験を通して身につける「学習」

ボーク氏によると、「失敗できる環境がとても大事なのは、失敗経験をたくさん積むため」とのこと。「安心して失敗する」という経験を繰り返すことで、子どもは「失敗は怖くない!」と学ぶのです。失敗を恐れない心は、レジリエンスを支える大きな力となるでしょう。

幼児教育が専門の京都文教短期大学教授・鳥丸佐知子氏も調査のなかで、レジリエンスが高めの学生は「生活面で経験豊かな傾向がある」「より鋭くポジティブな情動やネガティブな情動を経験する」と述べています。よいことだけではなく、「つらい」「悲しい」「悔しい」など、ネガティブな感情を乗り越える度に、レジリエンスが鍛えられていくようですよ。

レジリエンス分かれ道02

レジリエンスを育てる「親の関わり方」5つ

子どものレジリエンスを強化するためには、日頃どんなことに気をつければいいのでしょうか。折れても立ち直れる子に備わる3つの要素を軸に、専門家のアドバイスを5つご紹介します。

レジリエンスの育み方1:遊びを通して「失敗と成功」を経験させて

前出の小玉氏は、「遊びはレジリエンスの土台を築くのに絶好の機会」と言います。特に幼児期から児童期にかけては、遊びを通して「失敗と成功を繰り返す経験」が、子どもの自己効力感と自発性を育みます。それがレジリエンスの土台となるのだそう。

注意点として小玉氏は、親の意向や指示ではなく、子ども自身が「おもしろい」「楽しい」と感じる遊びをさせるべきとしています。 “お膳立てされた遊び” ではレジリエンスは育まれないようなので、気をつけたいところです。

レジリエンスの育み方2:まずは「共感」、次に「信頼」を伝える声かけを

子どもが落ち込んだり、悩んだりしているとき、「大丈夫だよ」「気にしなくていいよ」と声かけしていませんか? じつは、これらの言葉を “最初に” かけるのはNGです。日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美氏は、レジリエンスを育てるには、子どものネガティブ感情を否定しないことがとても大事だと話します。

まずは、「つらかったね」「その気持ち、わかるよ」と共感しましょう。子どもはその言葉に安心し、励まされます。そして、子どもの感情を受け止めたあとに、「あなたなら大丈夫」と子どもへの信頼感を示すのです。足立氏は、このプロセスが子どもの自己肯定感を育み、次のチャレンジへの原動力となり、結果的にレジリエンスへとつながっていくとアドバイスしていますよ。

レジリエンスの育み方3:子どもの「強み」を “たくさん” 伝える

足立氏は、著書『子どもの心を強くするすごい声かけ』のなかで、自分にしかない「強み」を知ることで、子どもの自己肯定感が上がり、レジリエンスも育成されると述べています。しかも、「強み」はひとりひとつではなく、誰でも複数もち合わせているそうなので、お子さんの「強み」をたくさん見つけてあげましょう。

もし成績が下がったことで落ち込んでいるとしたら、それを責めるのではなく、「〇〇ちゃんは、お料理をよくお手伝いしてくれるよね」「ゲームが得意だよね」など、「得意なこと」や「好きなこと」などの「強み」を思い出させてあげるとよいそうですよ。

レジリエンスの育み方4:「失敗できる環境」を提供したら、あとは見守る

ボーク氏は、子どもに「安心して何度でも失敗できる環境」を提供したら、あとは「子どもの強さを信じて見守って」とアドバイスします。問題を自力で解決する経験が、子どもの非認知能力を育てるのです。

大人が先回りして救済しないことで、子どもの「レジリエンス」(=回復力)が高まります。たとえ失敗したとしても、それでも人生は先に続いていくということに気づかせてあげてください。失敗を恐れると、子どもは失敗しない範囲でしか行動しなくなります。

(引用元:東洋経済オンライン|ボーク重子「安心して何度でも失敗できる環境」が子どもを伸ばす理由

またボーク氏は、「親が自分の失敗を子どもに見せること」も重要だとしています。失敗から立ち上がる姿を、ぜひお子さんに見せてあげてください。その姿を見たお子さんは、「失敗してもやり直しができる!」と感じるはずですよ。

レジリエンスの育み方5:体の緊張をとることで、心の緊張も解いてあげよう

「心と体は連携しているので、体の緊張をとることが、心の緊張をとることにつながる」と言うのは、前出の足立氏。足立氏がすすめる方法は、親が行なう「タッピング」と子ども自身が行なう「深呼吸」。タッピングは、子どもの背中を親が指先でトントンと軽く叩くだけ。そして、深呼吸の仕方にはポイントがあります。

背筋を伸ばして、息をなるべく長く、ゆっくりと吐き出すこと。体や心のつらさや苦しさを一緒に吐き出すように行います。

(引用元:足立啓美(2021),『子どもの心を強くするすごい声かけ』, 主婦の友社.)

「シャボン玉を大きく膨らませるようなイメージ」で深呼吸をするとよいそうですよ。親子のスキンシップにもなるタッピングも、意識的に取り入れてみてくださいね。

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「レジリエンスは、コツコツと積み重ねていくタイプのものですので、まだそばで見守れる小さいうちから、意識的に働きかけるのがおすすめ」と、公認心理師の佐藤めぐみさんは言います。まずは、子どもが「安心して何度でも失敗できる」ように、環境を整えてあげましょう。もし子どもが失敗したとしても、「この子はいま、レジリエンスを高めているのだ」と、手出し口出しをぐっと我慢したいものですね。

(参考)
足立啓美(2021), 『子どもの心を強くするすごい声かけ』, 主婦の友社.
小玉正博(2014), 『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』, 河出書房新書.
加藤紀子(2020), 『子育てベスト100』, ダイヤモンド社.
All About|子どものレジリエンスを鍛える10のコツ!逆境をはねかす力とは
NHK|折れない心 どう育てる? <番組内容>
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|劣等感を自尊心に! 寝る前に親子で実践、「レジリエンス」の簡単トレーニング法
CORE|レジリエンスとパーソナリティの関係(1)
ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとは
Hugkum|子どもの心を強くする「レジリエンス」の育て方。困難を乗り越える力をつけるために親ができることは
プレジデントオンライン|「良かれと思ったら逆効果」メンタル不調の子どもに絶対言ってはいけない“ある言葉” レジリエンスを引き出す声かけ3つ
プレジデントウーマン|レジリエンスが強い人の特徴10 脳科学が教える、逆境で心折れる人と平常を保てる人の決定的な違いとは
SINGA FARM|子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?
国立研究開発法人 国立生育医療研究センター|コロナと共-に生きる子どものこころ輪(わ)とレジリエンスの視点から-
東洋経済オンライン|ボーク重子「安心して何度でも失敗できる環境」が子どもを伸ばす理由