教育を考える/食育 2019.8.6

食材の産地をめぐって世界一周! 小3社会の学習につながる自由研究

編集部
食材の産地をめぐって世界一周! 小3社会の学習につながる自由研究

「スーパーで売られている野菜や魚はどこからやってきたの?」

そんな何気ない疑問を解いていくと、私たちの生活にあふれる身近なものたちの産地の特色がわかってきます。特産地の気候や、旬などを調べることで、地理と食育の両方を学ぶこともできますよ。

今回は、食品の産地についての具体的な調べ方や、自由研究として発表するためのまとめ方をご紹介します。国内だけでなく、海外から輸入している食材についても調べれば、ぐるりと世界一周できる自由研究です。

社会の勉強にもつながる「食品の産地調べ」

私たちを取りまく食の環境は、この数十年で大きく変わりました。農業の機械化によって生産性が大きく向上し、ITで管理された物流が発展したことで、世界各地のバラエティに富んだ食材が全国のスーパーに並ぶようになりました。

その一方で、しばらく前に話題になった「魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っていた」という話ほどではないにしろ、魚や野菜が本来どのように育てられ、どこから届けられているのかを知らずに口にしている子どもたちが多いことも現状です。

子どもが食材の産地を学ぶことについて、中学受験のプロである小川大介氏は、著書『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の中で、以下のように言っています。

小さいうちは、子どもが実生活のなかで実感が持てる地名や地域を地図で教えてあげることから始めます。(中略)
「今日のお魚はどこの海で獲れたんだろうね」とパックの表示を見て、「長崎って書いてあるよ。随分遠くの海で泳いでいたんだね」と、地図で位置や距離感を教えてあげることもできます。

(引用元:小川大介著(2016),『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』,すばる舎.)

食材の産地を調べることは、食育になるだけでなく、スーパーや小売店、コンビニエンスストアなどでどのように商品が販売されているか、私たちの消費生活が国内外の地域とどのように関わっているかなど、小学3年生の社会で学ぶ内容にもつながっています。まだ社会の勉強をしていないお子さんでも、自由研究で先取りして調べることで、より興味・関心が湧いて学習意欲が高まりますよ。

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子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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産地調べには、こんな食材を取り上げてみよう

もちろん、スーパーのすべての食材を調べるわけにはいきませんから、テーマを絞っておく必要があります。品数が豊富で旬の季節のわかりやすい野菜果物鮮魚は特に調べやすいでしょう。

野菜や果物は、旬によって産地が変わるのがわかりやすい食材です。調べる食材を数種類選び、7月下旬、8月中旬、8月下旬などタイミングを決めて産地をチェックするといいでしょう。

具体的にテーマをいくつかご紹介します。

  • きゅうり、ナス、ピーマンの夏野菜は、どこから届いているのかな?
  • 旬が夏ではない野菜や果物は、どこで栽培しているのかな?
  • 手巻き寿司に使う材料(例:マグロ、サーモン、イカ、エビ、卵、いくら、きゅうり、米、海苔、醤油)の産地を調べてみよう!

 
あるいは、反対のパターンとして、「先に産地を決めて該当する食材をスーパー店内で探す」という方法も宝探し感覚で楽しめますよ。

  • アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニアの5大陸から届いた食材にはどんなものがあるのかな?
  • 食材の産地で世界一周してみよう
  • 聞いたことのない国名が記された食材を探して、地図で照らし合わせてみよう

 
農林水産省「こどもページ」では、大豆や米、トマトなどの野菜の生産県トップ3クイズで遊びながら産地を学べるゲームがあります。ぜひ参考にしてみてください。2020年はオリンピックイヤーなので、「金メダルと同じ産地の食材は?」のような切り口もおもしろいですね。

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スーパーで食材の産地を調べるときのポイント

実際に食材を調べるときのポイントをいくつか紹介します。

●売り場にはどんな種類の食材があるか

野菜や果物、鮮魚コーナーを訪れて、どんな種類の食材が売られているかリストアップします。

●食材の産地はどこか

全てを調べることは難しいので、「夏野菜」や「果物」などテーマを絞って、産地を調べましょう。産地表示について地理学を専門とする奈良教育大学の岩本廣美教授は、ラベルだけでなく、野菜などが入れられていた段ボール箱や、商品の箱も注意深く見てみるとよい、としています。ほかにも、産地は価格のPOPに書かれていることもありますし、シールで貼られていることもありますよね。また、原産地と加工地が記されている場合は、どちらもメモしておきましょう。

●商品の並び方に特徴はあるか

例えば、玉ねぎのコーナーでは、北海道産の玉ねぎが6玉で1つのネットに入れられて特売になっている一方で、淡路産がバラ売りされている……。なんて光景に出合うかもしれません。同じ食材でも売り方が違うことに気づいたら、詳しく調べてみましょう。

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調べたことをわかりやすくまとめよう

スーパーで見つけたことをもとに、どんな食材がどこから届いているかをまとめていきます。日本や世界の大きめの白地図を用意し、色分けして書き込んでいくのがわかりやすくておすすめです。岩本教授は、書き込みやすく、色をぬりやすい「北海道から沖縄県までを1枚におさめた地図」「都道府県の境界線が記入されている地図」が良いとしています。

まとめていくうちに、「地元でも採れるのに、なぜ遠くの産地からも届いているのだろう?」「夏には採れない野菜なのに、1年中売られているのはどうして?」などの新たな疑問が生まれてくるかもしれません。そういった場合には、本やインターネットを使って調べてみましょう。

国内最大規模の店舗数を持つスーパーマーケットチェーン株式会社マルエツでは、産地研修や商品知識検定を取り入れていて、「商品についてお客様に直接説明すること」を心がけているそうですよ。マルエツに限らず、店員さんに質問してみるのもひとつの手ですね!

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自宅に近いスーパーと、帰省先や旅行先のスーパーで同じ種類の食材を調べて、産地の違いを比べてみるのも夏休みならではの切り口になります。親子で楽しく食材の産地を調べて、世界一周を目指してみてくださいね。

(参考)
ベジ探(独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム)|「野菜マップ」で野菜の生産地について調べてみよう!
ベジ探(独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム)|野菜マップ
夏休みの自由研究 カンタン解決策特集!(ベネッセ)|ふだん食べている肉や魚、野菜がどこからきているかを調べよう!
学研キッズネット|調べ学習 地域(ちいき)のスーパーを調べよう
文部科学省|小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 社会編
帝国書院|授業のなかの地図活用
小川大介著(2016),『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』,すばる舎
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