ワシントン医科大学の研究結果から、親からの愛情(※)をたっぷり受けて育った子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の海馬の大きさが10%近くも大きかったそうです。愛情が脳を育てる……なんとも意味深い研究結果ですね!
※ここでいう「愛情」とは、親が子育てに積極的で、子どもとコミュニケーションをしっかりとっていることを指しています。
■参照コラム記事はこちら↓
“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!? 子どもの脳を育てる5つのヒント
ワシントン医科大学の研究結果から、親からの愛情(※)をたっぷり受けて育った子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の海馬の大きさが10%近くも大きかったそうです。愛情が脳を育てる……なんとも意味深い研究結果ですね!
※ここでいう「愛情」とは、親が子育てに積極的で、子どもとコミュニケーションをしっかりとっていることを指しています。
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“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!? 子どもの脳を育てる5つのヒント
日本のパラアスリートを牽引し、車いすアスリートとして第一線で活躍している土田和歌子さん。「子どもの頃から活発で負けず嫌いだった」と話す土田さんは、高校生まではスポーツが好きな普通の女の子だったと言います。
そんな土田さんの人生が大きく変わったのは、高校2年生の3月のこと。友人と富士山へドライブにでかけた途中、友人の運転する車が悪天候により高速道路でスリップ。スピンした車から土田さんは車外に放り出されてしまいます。救急車で病院に搬送され、命には別状はなかったものの「腰椎骨折による脊髄損傷」と診断されたのです。
その後、腰椎・脊髄損傷の専門医のいる病院に転院しますが、医師から「脊髄損傷によって膝から下の機能が失われています。二度と歩くことはできないでしょう」と告げられます。しかし、土田さんは一生を車いすで生活しなければいけないという現実に向き合い、新しい生活に好奇心を持って、様々なことにチャレンジしてきました。土田さんがこれまでの挫折を乗り越えることができた原動力とは、どんなものだったのでしょうか。
構成/岩川悟 取材・文/田口久美子 写真/榎本壯三(メインカットのみ)
――土田さんは、1974年東京都中野区生まれ清瀬市育ちということですが、小さい頃はどのようなお子さんだったのでしょう。
土田さん:
いま思い返すと、負けず嫌いで好奇心旺盛。さらに超ポジティブ思考という、まさに「ポジティブ・モンスター」だったと思います。もちろん子どもの頃は自分をそういうふうにとらえてはいませんでしたけどね。でも、大人になって友人や出会った人たちから「あなたは変わっている!」「考え方が前向き過ぎる!」とよく言われるので「わたしってそんなにポジティブなんだ?」と気づきました(笑)。たしかに、ネガティブな友人に向けて「なんでそんなに悩んでいるの?」と言葉をかけたり、相談されてポジティブに返答したりすると「普通はそんな考え方はできない」とよく言われます。
――土田さんのお父さんは着物の刺繍をする職人さんで、とても厳しい方だったそうですね。そのポジティブ思考はご両親の影響があったのでしょうか。
土田さん:
両親は特にそういう性格ではありませんし、4歳離れた姉も静かで生真面目な性格でしたから、ポジティブ・モンスターは家族でわたしだけ(笑)。当時は父のお弟子さんも同居していたこともありしつけに関して父は厳しかったのですが、両親をはじめ周囲の大人の人たちに可愛がってもらった記憶があります。そんなわたしの天真爛漫な性格を温かく見守ってくれたことによって、わたしのポジティブ思考が育まれていったのだと思います。そういった家庭の環境は、子どもの人格・性格をつくっていくうえでとても重要なものでしょうね。
とはいえ、わたしも人間ですからけっしてポジティブな部分だけでなく、当然ネガティブな部分も持ち合わせていました。ネガティブな気持ちのときはすごく落ち込んだり泣いたりもします。ただそこで、わたしの場合はネガティブからポジティブへの「切り替え」が他の人よりも早いのだと思います。
――その「切り替え」のポイントはどこにあるのでしょう。
土田さん:
たとえばなにかマイナスの事柄が起きたときに落ち込み、「もうダメだ……」という気持ちが湧いてきたとします。でも、わたしの場合は「なるように、なるさ」という開き直りの部分であったり、事実を受け止めたうえで「だったらこうしていこう!」という発想やアイデアが自分のなかから勝手に生まれてくるのです。すると、ネガティブ思考から一気にポジティブ思考に切り替わってしまう。こういう切り替えの早さが、わたしは子どものときから自然とできていたようですね。ただこれは、持って生まれた性格ということだけなく、訓練でも身につくことだと思っています。
わたしは高校2年生のときに事故で車いす生活となりましたが、事故から9カ月間は腰椎・脊髄損傷の専門医のいる病院に入院していました。そこでは、脊髄損傷になりいつまでも人生を悲観して立ち直れないでいる患者さんたちを多く目にしました。わたしも、「事故で二度と歩くことができない」と医師から言われたときはもちろん落ち込みましたし、母親にどうにもならない気持ちをぶつけることもありました。しかし、それは長い時間ではなかった。そんな状況でも、やはりわたしのポジティブ思考がむくむくと湧いてきて、「悩んでもしょうがいない」「歩けなくても、自分にできることは必ずある」と次第に気持ちが切り替わってきたのです。
そういう気持ちになると、いろいろなことに好奇心が出てきます。そんなわたしは、あるとき病院内で「わくわくするもの」を見つけてしまったのです。それが、スポーツ用車いすでした。スポーツ用車いすは、普通の車いすとちがって小回りは効くし、ビュンビュン走ります。小学生のころにバスケットボールをやっていたので、「車いすバスケットをやりたい」「車いすでスピードを競ってみたい」と、どんどんやりたいことが出てきました。たしかに事故は悲しい出来事でしたが、持ち前のポジティブ思考によって早めに気持ちの切り替えができたことで、その後のわたしの人生を大きく変えてくれたことは間違いありません。
――土田さんはこれまで数々の大会でメダルを獲得され、いまなおトップアスリートとして活躍されていますが、ポジティブ思考は競技に影響しますか? 子を持つ親御さんも知りたいことだと思います。
土田さん:
ただ、一概にポジティブ思考がいいかと言えば、ときにはマイナスに働くこともあるんですよね……。なぜなら、競技をやっていくうえで「なるようになるさ」では済まないことも多いからです。わたしはトップアスリートになるために必要なことがふたつあると思っています。そのうちのひとつは、ポジティブ思考。こどもでも大人でも、勝負に負けたら悔しいのはあたりまえですよね? ただ、その悔しさをいつまでも引きずるのではなく、気持ちをいかに切り替えることができるかが次の勝敗に関わってくるからです。
車いすマラソン競技は、健常者のマラソンと同様に42.195kmを走ります。きつい坂道を車いすで走ることもありますが、折返し地点で「ゴールまでまだ半分もある」と思ってしまうか「ゴールまでもう半分しかない」と思えるかで結果はちがってくるのです。ですから、ポジティブ思考はアスリートにとって大事な要素なのです。
そして、ふたつめは「負けず嫌い」であること。わたしはポジティブ思考とともに子どものときからとても負けず嫌いでした。もちろん、勝負には負けるときもあります。しかし、そこから学び、考え、悔しさをバネにしてさらに上を目指していくことで自分自身が成長いく。試合ですから相手に勝つことは大事なことですが、単に相手に勝てばいいというわけでもない。相手に勝つこと以前に、「自分自身に負けない」という気持ちを持つことが大切だし、もし子どもがスポーツをやっていて勝負に勝てる子になってほしいのであれば、まずはそのことを教える必要があるのではないでしょうか。倒さなければならない敵は、自分自身であるということですよね。
■ パラリンピック金メダリスト・土田和歌子さん インタビュー一覧
第1回:試練を乗り越えるための「ポジティブ・モンスター」という生き方
第2回:挫折を乗り越え夢を叶えた、私のアスリートとしてのトレーニング法
第3回:母から学び我が子に伝える、強い体をつくるバランスのいい食事
第4回:子どもには「経験」から自主性を伸ばしてほしい
【プロフィール】
土田和歌子(つちだ・わかこ)
1974年10月15日、東京都出身。高校2年時に交通事故で脊髄損傷を負い、車いす生活となる。翌年の秋にアイススレッジスピードスケートの講習会に参加し、約3カ月後のリレハンメルパラリンピック(1994年)に出場。4年後の長野大会では、1500メートル、1000メートルで金メダルに輝き、100メートルと500メートルでは銀メダルを獲得した。その後は陸上競技に転向し、2000年シドニー大会では車いすマラソンで銅メダル、2004年アテネ大会では5000メートルで金メダル、マラソンで銀メダルを獲得。2007年にはボストンマラソンで日本人では初めて優勝する。今年4月のボストンマラソンでは5連覇を達成。大分国際車いすマラソン大会では6度の優勝を誇る。現在は、競技を車いすマラソンからトライアスロンに変え、新たなチャレンジをしている。
【ライタープロフィール】
田口久美子(たぐち・くみこ)
1965年、東京都に生まれる。日本体育大学卒業後、横浜YMCAを経て、1989年、スポーツ医科学の専門出版社である(有)ブックハウス・エイチディに入社。『月刊トレーニング・ジャーナル』の編集・営業担当。その後、スポーツ医科学専門誌『月刊スポーツメディスン』の編集に携わる他、『スピードスケート指導教本[滑走技術初級編]』((財)日本スケート連盟スピードスケート強化部)などの競技団体の指導書の編集も行う。2011年10月「編集工房ソシエタス」設立に参加。『月刊スポーツメディスン』および『子どものからだと心白書』(子どものからだと心連絡会議)、『NPBアンチドーピング選手手帳』((一社)日本野球機構)の編集は継続して担当。その後、『スピードスケート育成ハンドブック』((公財)日本スケート連盟)の他、『イラストと写真でわかる武道のスポーツ医学シリーズ[柔道編・剣道編・少林寺拳法編]』(ベースボール・マガジン社)、『日体大ビブリオシリーズ』(全5巻)を編集。現在は、スポーツ医学専門のマルチメディアステーション『MMSSM』にて電子書籍および動画サイトの運営にも携わる。
理想では穏やかに子どもと接したいのに、現実は子どもに対してイライラしたり怒ってしまったりする親御さんは少なくないと思います。
子どもの教育のために、親が知っておくべき心構えとはどんなことなのでしょうか。モンテッソーリ教育を実践する愛珠幼稚園園長の天野珠子先生に伺いました。
取材・文/田中祥子 写真/大平晋也
――子育て中の親のイライラはどんな理由が多いのでしょう?
天野先生:
たとえば、お子さんが2~3歳頃になるとオムツを取ることを経験されますね。でも、親がおまるに連れて行ってもなかなか上手くいかないことがあります。それは早すぎるからです。肉体的にきちんと発達していないときは、子どもは排尿の筋肉を動かすことができないので、いくらやっても無理ですよ。教えたり怒鳴ったりしてもできるようになりません。
発達していないので出来ないことが当たり前なのに、やれと要求して親が勝手にイライラしているのです。「おしっこ」と言ったとたんにお漏らしをしてしまうこともありますよね。そういう時は怒らないで「よく知らせてくれたね」と言ってあげたらいいんです。
――子どもができないことをやろうとすると、つい怒ってしまうこともあります。
天野先生:
一人でできることが少なければ、いつまでもお母さんは手を掛けなければいけないでしょ。例えば、一人でコップの水を飲みたがるけれど、上手くいかなくて顔にかかってしまう。だからといって、いつまでもストローや哺乳びんに入れて飲ませていたら、顔にかかるということがずっと分からないままです。コップを持たせてどれくらい傾けていいのか経験させないといけません。親は手伝うだけで、あくまでも一人でやらせることが大切です。
子どもが「できない」ことには、手が届かない、場所が高すぎるといったいくつかの要因が重なっていることもあります。そのときは少し補助してその要因を除いてあげれば、できるようになるものです。洗面所が高かったならば、抱っこするのではなく、踏み台を置く。家庭の中で一人でできるように工夫すればいいのです。
子どもがなにかに挑戦しようとしているときは、怒ったりせず、その挑戦を手助けしてあげることが子どもの学びと成長につながります。
――幼稚園に通う子を持つ親御さんからお子さんについての相談を受けることはありますか?
天野先生:
「うちの子はおもちゃが片付けられません」と悩まれる親御さんが多いですね。それはおもちゃが多すぎるのです。子どもが遊んでいる様子をよく見てみると、子どもは全部のおもちゃを使っていないのです。ひとつに夢中なったときには、前に夢中になっていたものは使いません。
ですから、今必要なものだけを制限して出してあげましょう。ほかのいらないものはしまっておいて、本当に必要なくなったときには処分すればいい。多すぎると子どもはわけが分からなくなり、混乱してしまいます。数を少なくして、しまう場所を決めれば子どもは片付けられるようになります。これは家の片付けも同じですよ。お母さんも同じようにしてみてはいかがですか。
幼稚園に入ったときに靴を靴箱に入れようとしないお子さんがいます。それは、家庭で脱ぎっぱなしになっているから。これも、やはりおうちでもやってみてください。靴は、「園に履いていく靴」「外で遊ぶときの靴」「お出かけ用の靴」など2~3足だけにして、自分の靴をしまう場所に名前シールなどを貼ってきちんと決めるのです。もちろん、パパやママの靴を入れるところも決めてくださいね。
――子どものヒステリーで親が驚いてしまうこともあります。
天野先生:
2~3歳までは「秩序感の敏感期」ですから、いつも同じものが同じところにあることを好む時期です。例えば、いつも自分がご飯を食べる席に、お客さんが座るとものすごい勢いで泣いて怒ることがありますよね。これはいつもの秩序が狂わされるからです。
お母さんがいつもと違う服を着ると泣くとか、自分のお箸をお母さんが勝手に来客に貸したら怒るとか。このときの子どもは応用が利きません。大人のようにケースバイケースという訳にはいかないのです。でも、これは秩序感の敏感期のあいだだけのことです。ある程度時期が過ぎると融通性が生まれてくるので、もう少し大きくなるとお箸だって友達に貸してあげられるようになります。
ですから、そのときだけ気をつけてあげましょう。半年もないほど一時的なものなのです。
――どうやって子どもに接していけば良いのでしょうか?
天野先生:
親がやってあげようとしたら拒否するようなことは、どんどん子どもにやらせてあげればいいですね。子どもが一人でレインコートを着るとします。やっと着られたと思ったら、ボタンがずれている。その時、せっかく一人で着られたものを親が勝手に外してはいけません。
モンテッソーリ教育では、まず鏡を見せることにしています。子どもが自分の姿を見て自己訂正させる機会をつくってあげるのです。それで、子どもが外してほしいと言えば外してあげればいいし、自分でやるといえばやらせればいい。それでうまくできなかったとしても、自分でやったほうが、次から自分で注意をするようになります。人がやってくれたら、どこが間違っていたのか自分で気づくことなく終わってしまうでしょう。
今何ができているのか何ができていないのかという子どもの発達の様子を見極めながら、一歩退いて、指導ではなく、アドバイスをしていくのです。それには工夫も必要。子どもは靴を左右履き違えることが多いですよね。そんなときは親御さんに靴の中敷に絵を描いてもらいます。例えば、チューリップの形を半分に切って描いておけば、一目で右と左が分かる。そういう風に自分で気づけるようにしておけばいいですよ。
アドバイスの次には一緒にやることも大切です。歯磨きの習慣などは、親も子どもと一緒に磨くといいですよ。お手本があるということがとても大事なのです。ですから、上に兄弟がいるお子さんは自立が早いですね。一人っ子とか一番上のお子さんの場合は、集団生活を早めにするのもいいかもしれません。週に2回くらい児童館で遊ばせてはどうでしょう。
子どもにとって大人というのは、何でもできる完璧な存在ですから、競争心は沸きません。どうせお母さんとは同じようにできないと知っているのです。でも友達と、ましてや自分より小さい子といると競争心が沸いて、自立していきます。
自分のことが自分で出来て、それに自信を持たせることが何よりも大切です。その自信が学童期の学習意欲に繋がっていきますよ。
【プロフィール】
天野珠子(あまの・たまこ)
東京都世田谷区にある学校法人天野学園「愛珠幼稚園」理事長・園長。短大の保育科で「乳幼児心理学」や「幼児教育心理学」の教鞭をとる傍ら、日本で初めてのモンテッソーリ教員養成機関「上智モンテッソーリ教員養成コース」の3期生としてモンテッソーリ教育を学び、その後、お母さまが経営していた「愛珠幼稚園」を引き継ぎ、モンテッソーリ教育を30年以上にわたって実践。
現在、NPO法人東京モンテッソーリ教育研究所理事長、日本モンテッソーリ協会(学会)副理事長。駒沢女子短期大学名誉教授。
***
天野先生のおはなしをお聞きしていると、子どもの行動の謎が解けて、「そうだったのか!」とスッと胸が軽くなった人もいるのではないでしょうか。子どもができないことを怒ったり心配したりする前に、子どもに備わっている成長や学びの力を応援する気持ちを思い出すことが大切なのかもしれません。次回は、モンテッソーリ教育の幼稚園から小学生にかけての応用などを伺います。
※本記事は2018年8月31日に公開しました。肩書などは当時のものです。
■ 「モンテッソーリ教育」天野珠子先生 インタビュー一覧
第1回:子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」
第2回:子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド
第3回:自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント
第4回:ボキャブラリーが豊富な子どもは思考の展開が早くなる。日常生活にモンテッソーリ的発想を
あなたは英単語をいくつ知っていますか? この問いに対して、正確に答えられる人は少ないでしょう。「英単語を覚えるのは苦手で……。」「もうすっかり忘れてしまった……。」そんな声も聞こえてきそうです。
しかし実は、たとえ単語力がないと嘆いている日本人でも、少なくとも3000語は知っているはずです。テニスやゴルフ、サッカーなどのスポーツ用語は、日本語でも英単語をそのまま使う場合がほとんどです。
これらの単語は、すべてテニスで使う用語です。また、コンピュータ関連の用語も、英語をそのまま使うのが一般的です。
このような例は、いくらでも挙げることができます。
それでも、英語の単語力がないと考えている人が圧倒的に多いのも事実です。単語力が単純に「単語数」の問題であれば、多くの日本人はかなりの単語力があるはずです。日常的に何気なく使っている英単語、学校で学んだ英単語など、見ればわかる単語の数は決して少なくないことでしょう。
では、「単語力がない」という実感は何に起因するのでしょうか。
第一に、いざ英語を使おうとすると、知っているはずの英語が出てこないために、「単語力がない」と感じているということが考えられます。見ればわかるけど、実際に使うことができないということです。
専門的には、個人の語彙を「受容語彙(receptive vocabulary)」と「産出語彙(productive vocabulary)」に分ける慣例があります。受容語彙とは「見たり、聞いたりする時に理解できる語彙」のこと。一方、産出語彙とは「話したり、書いたりする時に使うことができる語彙」を指します。
そして「受容語彙」が「産出語彙」に勝るのが通例です。つまり「英語で発信する際に自ら使える単語」のほうが「見聞きする際に意味がわかるだけの単語」よりも少ないということです。
しかし、日本人英語学習者の場合、産出語彙の数があまりにも限られているところに、語彙力のなさを感じる原因があるのだといえます。
さらにいえば、受容語彙についても記憶が曖昧なため、うろ覚えのままで記憶している人が多いように思われます。例えば、英語の認定試験で高得点を獲得した人でも、“geometry” と “geography” のような語の区別があいまいで、実際に使う際には混乱する人が多数見受けられます。
第二に、日常を営む上で、必要な単語がわからないということが、「単語力がない」と感じることの原因として考えられます。
「枝毛がたくさんある」と言いたくても「枝毛」の英語がわからないというのがその例です。「三週間前の日曜日に」「石鹸を泡立てる」「二重あごになってきた」「ヘラで卵を返す」など、日本語であればごく当たり前に使っている表現を英語にしようとしたら出てこないということです。
これは「日常の英語化の語彙の不足」と呼ぶことができるでしょう。
第三に、単語の数というよりも、単語の使い切りができるかどうかも、単語力のあるなしに関係してきます。
例えば、“break” が「こわす」という意味だと単純に考えていると、“break” を使い切ることはできません。実は、100ドル札をくずしてほしいとき、“Can you break a hundred dollar bill?” といいます。また、馬を飼いならすという状況でも、“break a horse” という言い方をするのが一般的です。
「お金をくずす」とか「馬を飼いならす」というのは、日本語では日常的に使う表現です。これを英語で表現できないということは、日常を英語で表現できないということになります。
そして、第四に、雑誌や新聞を読もうとしても、知らない単語が続出するという経験があれば、これも「単語力がない」と思えてくるはずです。例えば、以下の英文を読んでみてください。
WASHINGTON – The F.B.I. agents who raided the office of President Trump‘s personal lawyer on Monday were looking for records about payments to two women who claim they had affairs with Mr. Trump as well as information related to the role of the publisher of the National Enquirer in silencing one of the women, according to several people briefed on the investigation.
読者の方々は、ほとんど何の苦もなく英文を解釈することができるかもしれません。しかし、高校1年生だとどうでしょうか。
これらの語が未知語だとすれば、大意をとることも容易ではありません。英文を見て、見慣れない単語の数が2割から3割を超えると、読解はむずかしくなります。
このように「単語力」と一言でいっても、様々な要素があります。そのため、対策を考える上で、単語力のどこが足りないかを示す必要が出てきます。
単語の指導は、英語教育において不可欠です。このことに異論をはさむ人は皆無だと思います。では、単語を実際に学ぶ時、具体的に何をすればよいのでしょうか。ただ単語の綴りと意味を暗記するだけでは、肝心の単語力につながりません。
問題はここでいう「単語力」とは何かです。この基本的な問いに対する、理論的に裏打ちされた定義というものは、学校現場でも、テスト開発の分野でも、意外に共有されていないというのが現状です。
例えば、英検の単語に関するテストを例にとってみましょう。問題作りとして、英単語力の定義があって、それを測定するためのテスト項目の開発というふうにはなっていません。これは英検だけの話ではなく、GTEC、TOEIC、TOEFLなどもまったく同様です。
もっとも、こういう標準テストは単語力をテストするというよりも、英語力全体を測定することに基準を置いています。だからこそ、入試改革の一環として、外部試験を取り入れるという政策決定がなされたのだと思います。
しかし、英語力全体を測定する際に、「英語力をどう定義するか」はとても重要になります。そして「英語力」には「単語力」が必ず含まれます。そのため、単語力についても、英語力を測定するテストの開発者側が、妥当な定義を行う必要が出てきます。
学校英語教育の分野では、単語力の定義がないまま、単語を指導するというのは、方向のない、場当たり的な指導であるとの誹りを免れません。
教科書に出てきた単語を指導する際に、既習単語に未習単語を加えていくというやり方か、ある単語帳を生徒に購入させ、単語帳の単語を覚えることを単語指導とするというやり方が、総じていえば、伝統的な単語指導だったと思います。
もちろん、全国の学校では、単語指導に工夫を凝らしている先生方も少なくありません。しかし、単語力というものをスッキリした形で定義したうえで、すなわち、目指すべき目標を可視化した上で、指導に工夫をしているという先生方は多くないというのが、筆者の印象です。
一言で、そして思い切っていえば、「単語指導法」というものは、未だ確立していないということです。「指導上、困っているのは何ですか」という問いに対して、多くの先生方が「単語指導」を挙げるという事実は、それを物語っています。
語源に注目する指導、接頭語や接尾語に注目する指導、分野別の語彙に注目する指導など、個々の指導法で有効なものは実践されています。問題なのは、そうした指導法を統合するような原理がないまま、「このやり方は有効だった」と述べたてても、それはアドホックな手法になってしまうということです。
では、単語力とは何でしょうか。その問いに対する答えとして、まずは「基本語を使い分け、使い切る力としての基本語力」と「いろいろな話題について語るのに十分な単語力としての拡張語力」の2つから構成されると言っておきましょう。次回以降、基本語力と拡張語力についてそれぞれ取り上げます。
(この記事はアフィリエイトを含みます)
イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが提唱するTOC(制約理論)と呼ばれる科学理論および思考法を用いれば、子どもの「考える力」を劇的に伸ばすことができるとされています。
飛田基さんは、その実践方法を『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』(ダイヤモンド社)という1冊の本にまとめ、読者の高い支持を得ました。
著書では、特に「考える力」を伸ばすために効果的な「クラウド」「ブランチ」「アンビシャス・ターゲット・ツリー」と呼ばれる3つの思考ツールを取り上げています。
前編で紹介した「クラウド」に続き、因果関係を把握する「ブランチ」、目標達成のためのステップを整理する「アンビシャス・ターゲット・ツリー」の使い方を、具体例を交えて教えていただきました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)
幼い子どもはすぐ目の前にある自分がやりたいこと、欲望をかなえることをなによりも優先しようとします。というのも、長期的な視点というものがまだまだ備わっていないからです。どんな行動をとれば、その先にどんなことが起こるのかという、「原因」と「結果」のつながりを整理して、長期的な視点で考える力を育てる思考ツールが「ブランチ」と呼んでいるものです。
使うのは矢印とふたつの「箱」。「箱」と呼んでいますが、実際には大きめの付せんなどを使うといいでしょう。ではここで、具体例を出して解説していきます。
これは、娘のAちゃんに早めにお風呂に入ってほしいと思っているのに、Aちゃんはテレビのアニメを観るのに夢中で「嫌だ」と拒否することに困っているパパの例です。矢印の出どころである箱を「原因の箱」、矢印が向かう側の箱を「結果の箱」と呼びます。この例なら、「Aちゃんは『嫌だ』と言うならば、結果としてパパは『困ったもんだ』と思う」ということです。
場合によっては、起こった結果が今度は原因となって、次の結果を引き起こすこともあります。例で言えば、先ほど原因に挙げた「Aちゃんは『嫌だ』と言う」ことは、「パパはAちゃんに『早くお風呂に入りなさい』と言う」ことが原因で起きた結果ですよね。箱の数に制限はありません。木の枝が伸びていくように、どんどん因果関係を書き込んでいきます。
「Aちゃんは『嫌だ』と言う」理由は「アニメを観たい」ことですが、もちろん、「パパは『困ったもんだ』と思う」ことにも理由があります。それは、「理由の箱」としてまた別の箱に書き込みます。この場合、「Aちゃんに早めの時間に寝てほしい」のがその理由。そして、「Aちゃんに早めの時間に寝てほしい」理由は、「早めに寝ないと翌日にAちゃんの元気が出ない」からです。
ただ頭ごなしに「早くお風呂に入りなさい」と言ったところで、子どもには子どもなりの理由があり、なかなか納得してくれるものではありません。Aちゃんが早くお風呂に入ってくれないとパパが困る理由を、整理しながら順を追って説明するのです。そうして、問題解決を図るとともに、子どもの長期的な視点を育てようというわけです。
もし、子どもとの間で問題が起きたら、親は「チャンス到来!」と思ってほしいですね。もしかしたら本当に親が見落としていたものが見えることもあるでしょう。その行動が本当にいいことなのかと子どもに考えさせると同時に、親も考える。親にとってもなにかを発見することにつながるはずです。
ブランチはもちろん大人にも使えるものです。現状が起こった要因を過去にさかのぼって調べる、あるいは将来のプランを練る際にも有効ですね。そして、将来のプランニング、目標を設定して達成するという目的に特化したものが「アンビシャス・ターゲット・ツリー」という思考ツールです。
これにより、大きな目標の達成のためにはどんな障害があり、それをどう乗り越えていくかという課題を浮き彫りにするのです。そのステップは以下のようなもの。
ひとつの例を見てもらいましょう。下の図は、俳優を目指している男子高校生とわたしが会話をしながら作成したものです。
このようにして、目標達成のために自分になにが足りないのか、成すべき行動を明確にしていくのです。行動は実行可能でかつ具体的でなければなりません。そして、実行すれば中間目標が達成され、大きな目標を達成するための障害が取り除かれるというロジックです。
もちろん、これは幼い子どもにだって応用できるもの。幼い子どもだと、一連でおこなうべき行動をするにも、一つひとつの動作を指示する必要があります。それはたとえば、「ハンカチを洗濯機に入れる」という行動をするにも、「幼稚園のかばんからハンカチを出して」「出したら洗濯機に入れて」と指示するという具合です。これら、一連でおこなうべき行動をアンビシャス・ターゲット・ツリーで覚えさせるのです。
下の図は、「ひとりでお風呂に入る」という目標を立てた子どものアンビシャス・ターゲット・ツリーです。
幼い子どもの「ひとりでなにかができるようになる」といった目標の場合、中間目標と行動はほぼ同じになります。そして障害とは、目標である一連の行動のなかのできないこと。子どもと話をしながらできないこと、やるべきことを付せんに書き出す。そして、できたことは壁に貼ってあげるのです。そうすると、子どもからすれば壁を見るたびにできることがどんどん増えていく。その積み重ねによって、自分が成長している実感、達成感を感じさせながら、自信を持つことができる思考ツールです。
ブランチにしろ、アンビシャス・ターゲット・ツリーにしろ、自分の行動や考えを客観視させる思考ツールです。子どもというのは、まだまだ自分自身を客観視ができないもの。しっかり「考える」には、主観だけでなく、さまざまな角度からものごとを見る習慣が必要なのです。その習慣を身につけるためにも、ぜひこれらの思考ツールを有効活用してみてください。
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』
飛田基 著/ダイヤモンド社(2017)
■ 飛田基さん インタビュー一覧
第1回:「考える力」を伸ばすことは幸福に近づく近道
第2回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(前編)
第3回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(後編)
第4回:子どもの教育は「個のちがい」に目を向けることからはじめる
【プロフィール】
飛田基(とびた・もとい)
1974年4月2日生まれ、千葉県出身。早稲田大学理工学部を卒業後、フロリダ大学博士課程を修了。フロリダ大学ポストドクトラルフェロー、日立製作所を経て経営コンサルタントとして独立した後、イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが唱えるTOC(制約理論)に出会い、それを多くの人に広めることを決意。現在、NPO法人・教育のためのTOC日本支部マスターリードファシリテータとして、大人と子どものコミュニケーション向上による教育の改善に尽力している。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
おやつの食べ方・選び方を子どもたちと一緒に学ぶため、カルビー・スナックスクールに参加した「食のまなび探検隊」。いよいよ授業も折り返し地点です。
おやつのパッケージにはさまざまな情報だけではなく、おやつを選ぶときのヒントも隠されているということ、おやつに欠かせない“飲み物”のカロリーも考えなければならないことなど、楽しいゲームを交えながらしっかりと学ぶことができました。
スナックスクールの後半は、食品のパッケージ表示の見方について学びます。
「では最初に教科書を配りま~す」と山田さん。
段ボール箱に入ったカルビーの「サッポロポテト」を子どもたちひとりひとりに渡すと、思わぬ“教科書”にみんな大喜び!
まずはパッケージの表、右上に記載されている「賞味期限」を確認します。
「みんな、賞味期限って知ってる?」
「この日を過ぎると味が変わったり腐ったりする」と子どもたち。正解のような気がしますが……。厳密にいうと次の通りです。
「賞味期限は「この日まではおいしく食べられるよ」という目安で、日持ちする食べ物に使われます。一方消費期限は「この日を過ぎたら食べないで!」という意味。傷みやすく腐りやすい食べ物に使われます」
このふたつの違いには注意が必要ですね。
ここで「どっちかなクイズ」が始まります。
「生卵は? せーの!」「賞味期限!」
「おにぎりは? せーの!」「消費期限!」
子どもたちにとって身近な食品についてより深く考えさせることで、食の安全・安心にも意識が向いていきそうですね。
次に裏面の表示を見てみましょう。
「この食品が何から作られているのか、すべてわかるようになっているのが【原材料名】の部分。書いてある順番にも意味があります。どんな順番で載せているか知ってる?」
「作る順番?」
「正解は入っている量が多い順番。サッポロポテトで一番多く含まれているのは小麦粉だね」
「へえ~~!」
普段目にする機会が多いおやつのパッケージですが、子どもたちにとっては初めて知ることだらけであり、教室中の雰囲気が新鮮な驚きに満ちていました。
また、「【栄養成分表示】にはどんな栄養素がどれくらい入っているかがわかる」など、パッケージには大切な情報がたっぷり記載されていることを知った子どもたち。「これからひとりでおやつを選ぶときの参考にしてね」という言葉に、元気よく「はい!」と答えていました。
続いては、楽しみながら「おやつの組み合わせ」について学びます。
まず、たくさんのおやつと飲み物が描かれたおやつシートが各班に配られます。そのシートを見て、それぞれが食べたいおやつと飲み物を選び、ワークシートに記入していきます。次に、先ほどのおやつシートにカロリー記載を加えたものを再び配布し、子どもたちに自分が選んだおやつのカロリーを記入してもらいます。
私たち親も、ついついおやつのカロリーだけを気にしてしまいますが、実はジュースなどにもたくさんのカロリーが含まれています。カロリーを計算すると、200kcalを超える子どもたちが圧倒的に多かったことから、子どもたちが好きなもの・子どもたち自身の目で選ぶものは高カロリー傾向であることがわかります。ワークシートを記入する子どもたちの様子を見て、おやつと飲み物の組み合わせによってはすぐにカロリーオーバーになってしまうということに改めて気づかされました。
ここからが本題です。カロリーオーバーをするのはしょうがない。子どものうちから毎日カロリー制限をして窮屈な食生活を送らせることは誰も望んでいないはずです。それならば、カロリーオーバーをしたときにどうしたらいいか、一緒に考えればいいのです。
食べる前の工夫・食べたあとの工夫を各班で話し合い、答えを出していきます。ここでカルビーおやつ隊も積極的に議論に加わります。「やっぱりおやつ食べたいよね。じゃあ食べる前にどんな工夫をしたらいいかな?」「食べ過ぎたと感じたら、どうするのがいいと思う?」子どもたちなりの答えを引き出すために、みんなの思考を整理させます。その結果、次のような答えが出ました。
【食べたあと】
シンプルですが本質を突いていますね。これらのことを心がけていれば、カロリーを意識しながらもそれにとらわれ過ぎずにいられます。それによりおやつの時間がさらに楽しく、充実したものになるのではないでしょうか。
さて、いよいよスナックスクールも終わりの時間に近づいてきました。最後はとっておきのゲームを用意しているそう。おやつをテーマにした授業としては少し意外ですが「塩分」について学ぶゲームです。
まず、「塩分が多い順番にならべてみよう」というシートと、5つのおやつカードが配られます。
みなさんはどのような順番だと思いますか?
「塩せんべいっていうくらいだから一番多いと思う!」
「ポテトチップスはしょっぱいから塩たっぷりだよね?」
「チョコは甘いから塩なんて入ってないよ~」
「じゃああんぱんも入ってないよね?」
子どもたちは今まで自分が食べたときの記憶をたどりながら意見を出し合います。考える時間は2分間。その時間を目一杯使い、それぞれの班でひとつに答えをまとめます。
正解発表では、意外な結果に驚きの声が続出しました。甘い食べ物にも実は塩分が含まれていること、甘さを引き立てるためには塩が大きな役割を果たすこと、表面についた塩味以外にも含まれている塩分を意識してほしいこと。このゲームを通して子どもたちはたくさんのことを学んだようです。
大人になると塩分を気にするようになりますが、子どもは日頃から塩分を気にしませんよね。塩分は生きていくうえで非常に重要な栄養素である反面、摂りすぎは身体に良くありません。そのことを、おやつに含まれる塩の量を例にあげてわかりやすく説明してくれました。
「パッケージの栄養成分表示のところに『食塩相当量』が書いてあるよね。その数字を見て判断しようね」
子どもたちはじっとパッケージを見つめ、大きな声で「はい!」と答えました。
最後に今日学んだことをまとめます。
たったこれだけのこと、と思うかもしれません。しかし、普段何も意識せずに好きなものを好きなだけ、好きな時間に食べていると、いずれそれは習慣化します。すると結果的に、大人になってから正すことが難しくなるでしょう。
子どものうちから正しい知識を身につけておくことで、将来自分で食事を選ぶときに必ず役に立ちます。勉強やスポーツを一生懸命頑張ることができるのは、健康な身体と心があってこそ。カルビー・スナックスクールでは、おやつは「からだの栄養」と「心の栄養」の役割があると教えています。子どもたちを心身ともに豊かにしてくれるおやつについて、私たちも今一度真剣に考えてみませんか?
***
後日、王子第三小学校の先生からアンケートの回答が届きました。今回のスナックスクールでは「ただ話を聞くだけでなく体験を交えていたり、映像を取り入れたりして視覚的に学ぶことができたため集中して授業を受けられました」と内容的に非常に満足度が高かったことがうかがえます。また、カロリー表示に関心が高くなるなど、授業を受けた後の子どもたちの様子にも変化が見られるようになったそう。
授業を始める前の“3つのお約束”をきちんと守り、真剣に授業に取り組んでいた子どもたち。きっとこれからも、おやつと上手に付き合っていけるはずです。
今、幼児教育の分野で注目されている『パネルシアター』。パネルボード上に登場する絵人形を動かしながら物語を展開する児童文化財で、歌遊び、ゲーム、お話など、表現の幅が広いところが特徴です。
「パネルシアター!?」そう思った方は、まずこちらの動画を見てみてくださいね。
機材提供◎アイ企画
子どもたちは、動いて語りかけてくれる絵人形に夢中になり、今度はどんなことが起こるのか、目をキラキラさせながら次の展開を待ちます。そんな子どもたちを引き込む魅力がたくさん詰まったパネルシアターは、子どもの心の発達においてもいいことがいっぱいだそうです。
今回は、大人気パネルシアター作家でもあり、淑徳大学で保育に関わる研究を進めながら、保育者育成にも力を入れている松家まきこ先生に、パネルシアターの魅力を聞いてみました。
大学3年生のとき、はじめて見たパネルシアターに衝撃を受け、その日のうちにオリジナル作品を作成したという松家先生。その後もこつこつと作品を作っていたところ、パネルシアター創案者の古宇田亮順(こうだりょうじゅん)氏に見いだされ、学生のうちにパネル作家デビューを飾りました。
今でこそ、全国各地を飛び回り、保育者育成や表現活動に関するセミナーに大忙しの松家先生ですが、「人前で発表なんて大嫌いでしたし、表現することがとても苦手だったんです」と自身の学生時代をふり返ります。しかしそんな性格が、卒業後に就職した幼稚園で役に立ったそう。
「器用な先生はなにもなくても自然に子どもたちとコミュニケーションが取れますが、私にとっては、パネルシアターが子どもたちとのコミュニケーションツールになりました」
「私自身もそうだったのですが……お友だちの輪の中に入ろうととせず、一人で過ごしている子どもって、どのクラスにもいますよね。たとえば毎日恐竜図鑑ばかり見ているような。でも、その子にはその子の自己充実があるんですよね。
とはいえ、幼稚園という場所で、人との楽しい関わりを伝えてあげられたらもっと素敵。そんなときは、その子の好きなものの作品を作って、お帰りの会など、みんなで集まる時間に見せてあげるんです。そうすると『うわ~!』って目が輝いて表情が変わる。スーッと私にくっついて、『ねぇ、また見たい』って言ってくれたり、“先生、ぼくのこと、わかってくれてたんだね”という反応をしてくれます。この『先生が自分のことをちゃんと見てくれている』という満足感が子どもたちにとって重要なのです。
パネルシアターの魅力の一つは、この応答性といえます。見て見て! 聞いて聞いて! という時期の子どもたちにとって、先生に(自分の存在を)受け止めてもらえる体験はとても大切なことですが、一日の限られた時間の中で、ひとりひとりとじっくりと向き合うことは、保育者にとってはなかなか難しい。だけど、パネルシアターなら、全員とのコミュニケーションが一度でできるのです。パネルシアターは子どもと応答しながら進めていくものなので、子どもたちは、保育者に1対1で受け止めてもらえたような満足感を得られるのです。
それに、子どもの年齢や特性、興味関心に合わせて、言葉を変えたり添えたりしていくことができるので、目の前にいる子どもにぴったりな応答が可能なのです」
中央の『そっくりさん(大東出版社)』は子どもたちに大人気の作品。しっぽの形や手の形が違う動物たちが登場しますよ。
こちらの絵人形は手が動くしかけになっています。ほかにも、足が動いたり、食べ物の大きさが瞬時に変わったりと、子どもが喜ぶしかけがいっぱいです。
実際に、セミナーで松家先生の作品『バーベキュー』を拝見しましたが、歌に合わせた手遊びはなかなか難しいものでした。また、丸、三角、四角などの形や、いろいろな色、動物や野菜の名前などがたくさん使われていて、知的要素がつまっているという印象を受けました。そのことについて松家先生は次のように話しています。
「子どもたちって、ちょっと難しいのが好きなんですよ! 簡単すぎたらつまらないの。でも、難しすぎてもつまらない(笑)。だから、遊んでいるうちに自然に乗り越えられて、楽しくなるくらいの感じがちょうどいいんです。
今まで使ったことのない言葉が出てきたら、まねして使ってみる。そのうちに『言葉のリズムが楽しいな』と感じたり、『今度使ってみよう』と考えたりしますよ。
そしてなんといってもパネルシアターには、視覚的な魅力があります。絵人形が動く、隠れていたものが現れる。子どもたちは究極の期待感を得られると思いませんか? そうやってわくわくどきどきすることで観察力や集中力がアップしたり、知的好奇心が刺激されたりするのです。
また、表現力も豊かになります。子どもたちにとって、“表現を意図的に伝える”というのはずっとあとの段階です。まずは、“思わず心が動く”というのが表現のはじまり。『あ! しっぽが出た!』と、気づきを思わず伝えてしまうような表現があって、それを受けとめてもらえると嬉しくて、『表現してもいいんだ』と感じるんです。
隣の人がエヘヘって笑って……一緒に笑い合えるその存在が嬉しいと思う。そこで人と関わる楽しさや、喜びを分かち合える喜びを味わえるんです。パネルシアターは、そういう非認知能力を育むことができる児童文化財だと私は考えています」
パネルシアターへの愛、未来の保育者である教え子たちへの愛、幼児教育への愛、そして子どもたちへの愛に溢れる松家先生。
楽しく遊んでいるうちに、たくさんのことを学ぶことができるパネルシアターですが、実際に体験できるところはあるのでしょうか?
「幼稚園や保育園でも取り入れられていますし、子育て支援センターなどの施設でも機会があれば参加することができますが、自宅でのパネルシアターもおすすめです。壁に画びょうでパネル布を留めればパネルボードの完成! もうそこがパネルシアターです(笑)。
我が家の子ども部屋も壁がパネル布なんです。私の娘は、幼い頃よくパネルでお人形遊びをしていました。子どもって、絵人形をいくつか置いておくだけでお話が作れるんですね。パネルが全部自分のキャンバスになって、好きなストーリーを作っちゃう。絵人形を動かしながら、『けんかをしました、え~んえん』『仲直りをしましょう、はい、握手』なんてね。子どもの想像力って素晴らしいですよ!」
アイ企画さんからは『おあそびパネルシアター』が発売されています。お母さんやお父さん、お友だちと一緒に、ひとりでも遊べるB5サイズのパネルシアターです。パネルシアターデビューにいかがですか?
また最近は、小学校の道徳教育でもパネルシアターが取り入れられているそうです。集団の中での自分の位置や、配置を変えるだけで状況が変わってしまうということなど、絵人形を使って可視化することで、客観的な視点に立ってたくさんの気づきを得られるとのこと。
可能性が無限に広がるパネルシアターは、これから教育の場でどんどん活用されることでしょう。
【プロフィール】
松家まきこ(まつか・まきこ)
パネルシアター作家。淑徳大学専任講師。
学生時代よりパネルシアターのオリジナル作品制作及び公演活動を開始。大学4年生の時に新人作家集『うたってパネルシアター』(大東出版社)でデビュー。東京都公立幼稚園教諭を経て家庭教育相談員の資格を取得。現在、大学で講師を勤めながら、ふれあいタオル遊びとパネルシアター講師として、全国各地での保育者研修会、保育者養成校での講義、公演を行う。新沢としひこをはじめ、著名な作曲家や遊び歌作家とのコラボ作品も多数ある。親子教室「ぴょんぴょんくらぶ」代表。日本幼児教育研究会講師。
〈著書〉『保育いきいきパネルシアター』『保育いきいき!季節の歌のパネルシアター』『パネルシアターで遊ぶコブタヌキツネコ』『ワンツースツテップパネルシアター』『パネルシアター保育実践講座』(大東出版社)、『実習に役立つパネルシアターハンドブック』(萌文書林) 、『子どもと言葉』(大学図書出版)他多数。
〈カラー印刷商品〉『そっくりさん』『バーベキュー』『びよ~ん』『く~るくる』『もしもどんぐりのぼうしがね』『アイスクリームの歌』『変身マントマン』(大東出版社)『ぐんぐん大きくなった!』『誰のあしあと?』『せんたく変身しゃわらららん』『だるまさん』(アイ企画)、食育パネルシアター『ワンタくんのお弁当づくり』(メイト)『ブラックパネルシアターおばけセット』『いたいのいたいのとんでいけ』アスクミュージック)「012歳のかんたんパネルシアターキット」(ひかりのくに)『どろろん!忍者学校』『変身おばけちゃんのはらぺこ大冒険!』『モクモクくものレストラン』(成美堂出版)他多数。
〈CD教材〉「みんなでいっしょにふれあいタオル遊び」「親子からだ遊びCD大好きっちゅ」(メイト)
〈CDブック〉『あそびうた ぴよぴよ』『あそびうたジャジャーン』ん新沢としひこ監修、 山野さと子、山田リイコ、川崎やすひこ、松家まきこ共著(アスクミュージック)他多数。
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実際に体験してみて感じたこと――、パネルシアターの魅力はやはり応答性なのではないでしょうか。「とうもろこしの次はなに食べる~?」「お肉~!」「よ~し、じゃあ次はお肉を焼いちゃいましょう~♪」と、演じ手とたくさん応答しながら、自分の表現を受け入れてもらうことは大人でも嬉しいものです。声を出したり、体を動かしたり、たくさん笑ったり、子どもたちがとにかく楽しめるパネルシアターをぜひ一度体験してみてくださいね。
子どもに与える“おやつ”について、みなさんはどのようなイメージを抱いていますか? できればあまり与えたくない、添加物が気になる、糖分や油分の摂りすぎが心配、市販のものよりも手作りのものを食べさせたい……さまざまな意見があるかと思います。
そもそも、おやつは必要なのでしょうか?
親御さんご自身の子ども時代を思い出してみてください。
お母さんが作ってくれた手作りのおやつが楽しみではありませんでしたか?
お友だちが遊びに来てくれたとき、一緒に食べるおやつのおかげでお友だちとの距離がぐっと近くなったような気がしませんでしたか?
学校で嫌なことがあったとき、家に帰っておやつを食べていると、次第に温かい気持ちに包まれていませんでしたか?
おやつとともにあるのは、いつだって子ども時代の楽しくて幸せな記憶なのではないでしょうか。
しかし親の立場になってみると、どうしても子どもに与える食べ物に関しては神経質になってしまうもの。身体も心も健やかに育ってほしいと願う大人ならば当然です。
おやつは大事。
ただし、食べる量と食べる時間を守ってこそ楽しいおやつの時間につながるのだと私たちは考えます。そこで「食のまなび探検隊」は、カルビー(株)の出前授業「カルビー・スナックスクール」におじゃまして、子どもたちと一緒に「おやつの選び方・食べ方」を学んできました。
今回おうかがいしたのは、東京都北区にある王子第三小学校です。3、4時間目にかけてスナックスクールを行います。チャイムと同時に3年生2クラスの元気な子どもたちが家庭科室に入ってきました。
9つの班に分かれて、緊張した面持ちで授業開始の合図を待ちます。
この日“カルビーおやつ隊”として授業を担当するのは、食育担当の森田さんと山田さん。元気よく挨拶を交わしたら、早速スナックスクールが始まります。
まずは、TVのモニターに映し出された「3つの約束」をみんなで確認します。
さて、子どもたちはこの約束を最後まで守ることができるでしょうか?
ここで子どもたちに問いかけます。
「みんなはなぜおやつを食べるのかな?」
おいしいから! お腹が空くから! みんな思い思いに答えます。
「そうだね、おやつっておいしくて食べてると楽しいよね。じゃあみんな、おやつを食べるとき、おうちの人に注意されたことある?」
子どもたちから出てくる答えは「食べ過ぎちゃダメ」「夕飯前に食べちゃダメ」……親であれば一度や二度、いえしょっちゅう子どもに注意していますよね。
ここでふと疑問が浮かびます。おやつの量、そして食べる時間帯、そもそも正解はあるのでしょうか。
「今日の授業で学ぶのは、みんながおうちの人から注意されていることです」
カルビーおやつ隊は、そう力強く答えてくれました。
各班の机に置かれているボウル。その中にはみんなが大好きなポテトチップスが入っています。
「普段おやつのときに食べている量のポテトチップスはどれくらいかな? ひとりひとり違う量だと思うけど、班ごとに答えをまとめてね」
そう切り出すと、子どもたちは「僕はいつもこれくらい!」「え~!? 多すぎじゃない?」「もうちょっと減らそう」など、お友だちと楽しく話し合い始めました。
「答えがひとつにまとまったら、秤に乗せて重さを量りましょう。何グラムだったかな?」
各班に発表してもらうと、一番少ない班が15グラム、一番多い班が50グラムでした。
ここでエネルギーとカロリーについて、図を用いて説明します。車が走るのはガソリンのおかげ、一方人間は食べものや飲みもの、つまりエネルギー(カロリー)によって活動できます。そこで1日を10等分にして食事の量を割り当てると、おやつの目安として200kcalが算出されました。200kcalは、ポテトチップスだと35グラム相当です。だからちょうどいい量は35グラムだとわかります。
この説明に子どもたちはみんな納得した表情をしていました。実際に自分たちで答えを想定して量を決めたうえで説明を受けることで、行動と思考が結びつき、深い学びにつながったようです。
正しいおやつの量を理解したら、紙皿に乗せたポテトチップスが35グラムになるように調整します。そのとき「ひとり2枚ずつ食べてもいいよ~」と言われると、大喜びの子どもたちはとても嬉しそうにポテトチップスを頰張りました。
改めて見てみると、35グラムって意外と多いですね。子どもたちもそのように感じたらしく、「こんなに食べてもいいんだ!」と驚いた表情を見せていました。この経験を通して、“正しいおやつの量”のイメージが、子どもたちの身体と頭にしっかりと刻み込まれたことでしょう。
次はおやつを食べる「時間」について。
さてここで質問。「おやつはいつ食べればいい?」
まるで答えが決まっているかのように子どもたちは答えます。
「3時!」
3時のおやつ。このフレーズはすっかり定着し、何十年もの間疑いもなく私たちは信じていますよね。
「ちょっと待って。みんな、毎日3時におうちに帰ってる?」
「……」
「そうだよね、学校が6時間授業のときは3時過ぎちゃうよね」
改めて言われてみるとその通り! 子どもたちだけではなく、私たち大人もハッとさせられた瞬間でした。では一体、何時に食べるのが正解なのでしょうか。
「おやつの時間の目安として、“ごはんの2時間前までに食べ終える”ことを覚えておいてください」
答えはとてもシンプルでした。夜7時に夕飯を食べるのなら夕方5時までに、お休みの日の昼食が昼の12時なら午前10時までにおやつを食べると、食事に響きません。これから子どもにおやつをあげるとき、食事の時間から逆算するといいかもしれないですね。
子どもたちも「なるほど!」としっかりと理解をしたようです。これから成長するにしたがって、自分でおやつの量や食べる時間を決めなければならなくなるでしょう。正しい知識を身につけていることで、子どもたちの食生活や食に対する意識、またおやつを食べる楽しみがより一層高まるはずです。
おやつの量・食べる時間についてしっかりと学んだあとは、約8分間のDVD鑑賞です。『ポテトチップスくんの自分探しの旅』というこのおはなし、畑でとれたじゃがいもが工場でポテトチップスになり、お店に届いてみんなの手に渡るまでの過程を、アニメ仕立てでわかりやすく解説してくれます。
子どもたちは先ほどまでの体験型授業の盛り上がりから一転、じっと食い入るように画面に集中し、ポテトチップスくんのおはなしを楽しんでいました。みんなで一緒に考えて課題に取り組む時間、手を動かして作業をする時間、じっと集中してDVDを観る時間、とメリハリのある授業の進め方によって、子どもたちは飽きずに授業を受けることができるのですね。
ここで休憩を挟み、後半戦に突入です。
子どもに挑戦させたい資格・検定、「IT編」です!
これまでに「国語編」「社会編」「理科編その1」「理科編その2」と、学校の科目に関するジャンルの検定をご紹介してきたわけですが、今の時代、情報処理も立派な「学校で勉強する科目」のひとつとして位置付けられているんですよね。昨今の「IT教育の低年齢化」の進展には想像以上のスピード感を感じます。
その背景にはもちろん、ITスキル・ITリテラシーの重要性の高まりがあるわけで、子どもにはぜひ早いうちから身に付けておいてもらいたいと考える親御さんも多いのではないでしょうか。
そんなIT分野における、子どもたちにもぜひチャレンジしてほしい資格・検定について挙げていきたいと思います。
[author_info user_id=”32″ role=”writer”]
「C言語プログラミング能力認定試験」「Javaプログラミング能力認定試験」などさまざまなIT系試験を主催するサーティファイが2016年に新しく立ち上げた、子どもたちのためのプログラミング検定です(想定受験対象は小学生)。
「Scratch」という直観的に理解しやすい初心者向けプログラミングツールを用いて、「おいかけっこゲーム」「レースゲーム」などのプログラムを実際に作ってみるというのがその試験内容。論理的思考力や構成力、課題解決力が問われる、なかなかに本格的・実践的な内容となっています。
試験は日本全国のテストセンターやパソコンスクールにて受験可能です。さらなるステップアップを図りたい!となったなら、前述の「C言語プログラミング能力認定試験」などサーティファイの大人向け資格にもぜひチャレンジしてみてくださいね。
【受験資格】特に制限なし
【受験料】Entry(4級):無料 Bronze(3級):2,500円 Silver(2級):2,700円 Gold(1級):2,900円
【試験地】全国のテストセンター
【試験日程】会場ごとに異なる
【申込期間】会場ごとに異なる
【公式サイト】https://www.sikaku.gr.jp/js/ks/
MicrosoftのExcelを仕事で使っている人は多いと思いますが、Excelの「マクロ」や「VBA」の機能は活用されてますでしょうか? VBAとは「Visual Basic for Applications」の略で、簡単にいうと、Excel上でプログラムを動かして、さまざまな処理を高速化・自動化できるというものです。
VBAの活用によって仕事の効率が大きく向上できるのはもちろんですが、プログラミングを学びたい人にとっての最初の入り口としても非常に有用です。身近なソフトであるExcel上ですぐに動かせるので気軽にスタートできますし、プログラミングでどんな処理ができるのか、コードをどのように組み立てればいいのかについて、Excelの機能を通じて具体的に理解できるからです。ぜひお子様と一緒にVBAでプログラミングを実践してみてはいかがでしょうか。
そんなVBAについて学べる資格が「VBAエキスパート」。「Excel」と「Access」(データベースソフト)の2科目があり、それぞれに「ベーシック」「スタンダード」のランクが設定されています。
試験は日本全国のテストセンターやパソコンスクールにて随時受験可能で、日時や会場を自由に選択して受験することができるのも特徴です。
【受験資格】特に制限なし
【受験料】ベーシック:各科目12,960円 スタンダード:各科目14,580円
【試験地】全国のテストセンター
【試験日程】随時
【申込期間】随時
【公式サイト】http://vbae.odyssey-com.co.jp/
子どもにITスキルを高めてほしいとは思うけど、いきなりプログラミングというのはちょっと敷居が高いかも……と思われるなら、アニメーションや映画、ゲームといったメディア的なところからITに興味をもってもらう、ITを学ぶ入り口としてもらうというのはいかがでしょうか。
CG-ARTS検定は、クリエイターやデザイナー、エンジニアなどを目指す人向けの検定で、IT・Web・クリエイティヴ業界のさまざまな企業で取得が推奨されている検定です。「CGクリエイター検定」「CGエンジニア検定」「Webデザイナー検定」「画像処理エンジニア検定」「マルチメディア検定」の5つの検定区分があり、それぞれに「ベーシック」「エキスパート」のランクが設定されています。
公式の参考書は図版やビジュアルが豊富で、見ているだけでとても興味がわいてくる内容です。CGモデリング・動画撮影・画像編集など子どもたちの興味を引きそうなテーマから少しずつITにふれてもらい、「ITってなんだか難しそう・自分にはできなそう」という先入観をまずは取り払ってもらうというのも重要なことです。
【受験資格】特に制限なし
【受験料】ベーシック:各区分5,500円 エキスパート:各区分6,500円
【試験地】全国主要都市
【試験日程】7月・11月
【申込期間】試験日の3ヶ月~1ヶ月前頃
【公式サイト】https://www.cgarts.or.jp/kentei/
ラストはちょっと変わったものを。プログラミングなどITの技術的なスキルを高めるのもいいですが、情報検索スキル、すなわち、必要な情報を的確かつ素早くサーチできる力もまた重要です。ということで「インターネット旅行情報士検定」をご紹介したいと思います。
JTB総合研究所が主催する検定で、インターネットでの旅行情報収集に関する実務知識をはかる試験です。自宅のPCからオンラインで受験できます。
試験では、たとえば「○○という旅行情報サイトにアクセスし、以下の条件で温泉地の検索を行い、該当の温泉地の名称を答えなさい」といった、なんとも一風変わった問題が出題されます。具体的・実践的な情報検索スキルが磨かれるとともに、なるほどこんなサイトでこういう情報収集ができるのか!という新しい発見がいろいろあるのも楽しいですよ。セキュリティやネットワークなど、インターネットを利用するうえで必要となる基本的なITリテラシーもあわせて身に付く内容となっています。
【受験資格】特に制限なし
【受験料】2級:3,100円 1級:5,200円
【試験地】インターネット
【試験日程】5月・11月
【申込期間】試験日の1ヶ月半~半月前頃
【公式サイト】https://www.tourism.jp/it-tourism-expert-exam/
藤井聡太棋士が幼児期に受けていたことでも話題となっている「モンテッソーリ教育」。その教育のメソッドはどんなものなのでしょうか。
40年以上にわたってモンテッソーリ教育を導入している世田谷区愛珠幼稚園園長の天野珠子先生に具体的なおはなしをお聞きしました。
取材・文/田中祥子 写真/大平晋也
――幼稚園に通う年齢の子どもたちの教育に大切なことは何でしょうか?
天野先生:
子どもには、その時期の発達に沿って “一人でやりたいこと” があります。それは、ある時期にある行為のみに現れるのです。その時期をモンテッソーリ教育では「敏感期」と呼んでいます。
例えば1歳半の子どもが階段を何回も何回も上ろうとすることがあり、危ないからと下ろしてもまた上る。これは「足腰の敏感期」で、自分の足の筋肉を発達させて動き回るために必要な行為なのです。
線の上を歩きたがるという敏感期もありますし、歩道の端やブロック塀を歩きたがることがありますね。これは、体のバランスをとりたい欲求に基づいています。モンテッソーリ教育ではこれを線上歩きという活動にして、遊びながら学べるようにしています。何かを手に持ったり頭の上にお手玉みたいなものをのせて楕円を描いた線上を歩くという活動です。危ないからやめなさいと言わず、安全なかたちで線の上を歩きたい欲求を満たしてあげるのです。
子どもによって遺伝的な個人差や、早熟形・晩熟形などの個人差はありますが、敏感期は順序通りに出てきます。何歳だからこの敏感期になるというのではなく、これが出た後はこれだということですね。モンテッソーリ教育の指導者はその順序を学んでいるので、次は必ずこの敏感期がくる、ということが分かるのです。
敏感期に適切な環境に出合うと子どもは集中現象を起こします。ほかの事は耳に入らないしお腹が空いたのも忘れるほど夢中になる状態です。集中現象が次々に満たされていくと、非常に心が満足します。その段階を「正常化」と呼んでいますが、今の教育の言葉で言うと「意欲をもって物事に取り組むと健全な心が育つ」ということですね。
――モンテッソーリ教育の幼稚園では、子どもたちは具体的にどんなことをしていますか?
天野先生:
子どもたちは登園すると、遊び着に着替えるなど身支度をして出席ノートにシールを貼ります。その後に、モンテッソーリ教育で「お仕事」と呼ばれる、好きな教具を自由に選んでじっくり取り組む時間があります。
大人の「仕事」とは働いてお金を稼ぐためにすることですが、モンテッソーリ教育での「お仕事」とは、子どもが生きるため、成長のためにすることです。子どもが生きるための知識やエネルギーを自分の中に取り入れていく「お仕事」をしている、という意味なのです。教具はクラスごとに1種類ずつ準備されていますので、子どもたちは自分の使いたい教材を持ってきて一人で自由に使うことができます。決してみんなで順番に使わせることはせず、一人で夢中になって使えるようにするのです。
もしも、子どもが発達期と合っていないものを持ってきたときは、「それもいいけれど、もう少し面白いものがあるよ」と教員が誘導することもあります。
子どもたちは発達に沿った教具に関わることによって自立していきます。一人ひとりの敏感期のための環境なのです。ですから、全員一斉に指導したり、子どもの発達を無視した指導はモンテッソーリ教育では行いません。
――具体的にどんな「お仕事」があるのでしょうか?
天野先生:
幼稚園で最初に行うのは「日常生活の練習」というものです。モンテッソーリ園では包丁やアイロンや針があるので、初めて訪れた方は「危ないのではないですか?」と驚かれることがあります。しかし、この時期の子どもには手先を細かく使いたい欲求があるので、(大人が危険だと思って)触らせない包丁やアイロン、針などであっても、子どもサイズにして扱い方を紹介すると、きちんと約束ごとを守って活動するのです。この時期を逃したり、無理にさせると身に付きませんし、次の成長につながりません。
その後、「感覚教育」「言語教育」「数教育」「文化の教育」が加わります。「感覚教育」は視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚を整理して経験するための教具を使います。そして人間は環境を把握することの約7割を視覚によって行うことから、機能が完成するまでにもっとも時間がかかるのです。ですから視覚の教具が一番多いですね。
視覚は「ピンクタワー」という教材から始めます。10センチ四方から1センチ四方までさまざまな大きさの立方体をバラバラに置いて、大きいものから順に1個ずつ積んでいくものです。1~2歳くらいですと、ぐちゃぐちゃに積み上げますが、年齢が上がるにつれてきれいなタワーを作れるようになります。※このとき、教具の手触り(触覚)も補助に使います。
最初は間違えてしまっても、その後正しくできるようになることを「誤りの自己訂正」と言います。タワーの教具では、積み上げる順番を間違えると大きな立方体が余ってしまい、子どもは間違ったことに気づくことができるのです。間違っていることを教具自体が教えてくれるので、大人が指図しなくても正しく完成できるようになります。
「数教育」では大きな数を扱うものや、方程式の理論が分かるものまであります。モンテッソーリ教育を小規模で教える子どもの家などでは、小学1~2年生が放課後に習いに来るところもあるようです。ただし、教具は自立のための手段であって、英才教育や私立小学校受験のためのものではありません。自分のもっている力を充分に発揮して意欲をもって前向きに生活する子どもを育てることが目標です。
――そのほかに特徴的なことはありますか?
天野先生:
モンテッソーリ教育では縦割りでクラスをつくります。縦割り保育は、欧米諸国ではモンテッソーリだけでなく幼稚園から小学校まで一般的に取り入れられているものなので特殊なことではないのですが、日本ではあまり見ないクラス編成ですね。
縦割りクラスですと、年長さんがお兄さんお姉さん代わりになって年少さんに教えてあげます。ですから先生は楽ですよ(笑)。愛珠幼稚園でのことですが、健康診断で子どもたちが泣いて大変なので、年長さんと年少さんを組ませて受診させてみました。まず年長さんが検診を受けるのを見せると下の子は泣かないんですね。
子どもにとって30人に一人の先生よりも、自分だけのお兄さんお姉さんがいるほうが安心なのです。年長さんも下の子の手本になるために頑張ります。下の子との2人分の健康診断表を持って、着替えも手伝います。お互いのためにとても良いことなので、園ではもう20年も続けていますよ。そうやって教わった子どもは、自分が年長になった時に下の子に丁寧に関わり、教えることができるようになるのです。
※本記事は2018年8月28日に公開しました。肩書などは当時のものです。
【プロフィール】
天野珠子(あまの・たまこ)
東京都世田谷区にある学校法人天野学園「愛珠幼稚園」理事長・園長。短大の保育科で「乳幼児心理学」や「幼児教育心理学」の教鞭をとる傍ら、日本で初めてのモンテッソーリ教員養成機関「上智モンテッソーリ教員養成コース」の3期生としてモンテッソーリ教育を学び、その後、お母さまが経営していた「愛珠幼稚園」を引き継ぎ、モンテッソーリ教育を30年以上にわたって実践。
現在、NPO法人東京モンテッソーリ教育研究所理事長、日本モンテッソーリ協会(学会)副理事長。駒沢女子短期大学名誉教授。
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モンテッソーリ教育を理解すると、子どもが持っている才能や能力を伸ばす手助けになるかもしれません。家庭では特別な教具を揃えることは難しいですが、考え方を取り入れることはできそうです。次回は、親はどんなことに気をつければいいのかを先生にお聞きします。
■ 「モンテッソーリ教育」天野珠子先生 インタビュー一覧
第1回:子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」
第2回:子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド
第3回:自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント
第4回:ボキャブラリーが豊富な子どもは思考の展開が速い~日常生活にモンテッソーリ的発想を~
(この記事はアフィリエイトを含みます)
イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが提唱するTOC(制約理論)と呼ばれる科学理論および思考法を用いれば、子どもの「考える力」を劇的に伸ばすことができるとされています。飛田基さんは、その実践方法を『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』(ダイヤモンド社)という1冊の本にまとめ、読者の高い支持を得ました。著書では、特に「考える力」を伸ばすために効果的な「クラウド」「ブランチ」「アンビシャス・ターゲット・ツリー」と呼ばれる3つの思考ツールを取り上げています。親子はなにかと対立しがちです。そんな状況を解消するために有効だという、3つのなかのひとつの思考である「クラウド」とはどんなものなのでしょうか。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)
自分のなかでふたつの選択肢が対立している、あるいは自分と他人の主張が対立していると、「あちらを立てればこちらが立たず」という状況になってしまいます。そのジレンマを解消するために、5つの「箱」と矢印によって自分が置かれている状況を整理する思考ツールについて解説しましょう。ジレンマを抱え、「雲」のようなモヤモヤした状況を解消するツールということで、「クラウド(cloud/雲)」と名づけられました。
下の絵をご覧ください。これはわたしが所属するNPO法人・教育のためのTOC日本支部の名刺の裏に印刷されているもので、イスラエルの5歳の女の子がクラウドを使ってお母さんとの対立をすっきり解消させたときの図式です。
一番左の箱は「共通目標の箱」、真ん中のふたつは「要望の箱」、右のふたつは「行動の箱」と呼びます。これらによって対立が起きている構造を整理し、解決策を探すのです。
あるとき、その女の子はデパートのペットショップに行きました。そして、そこで見た「金魚を飼いたい」と思いました。これが右上の行動の箱(D)。一方、お母さんは「金魚は飼っちゃダメ」と言います。右下の行動の箱(E)です。それらは対立していて相いれないものですから、両者の間には稲妻のマークが入れられていますね。
そして、お母さんは女の子に「どうして金魚を飼いたいの?」と問いました。女の子は「だって、綺麗だから見ていたいんだもん」と。これが真ん中上の要望の箱(B)。一方、お母さんはというと、「金魚の世話をしたくない……」。それは真ん中下の要望の箱(C)です。家族旅行に行ったときなどに金魚の面倒を見られないからというのがお母さんの主張だったようですが、女の子は、ただなまけたいだけの「ぐうたらお母さん」だと思ったのか、寝転がっているような絵を描いていますね(笑)。
そして、共通目標の箱(A)にはふたりが仲良く手をつないで、しかも金魚も一緒という状況が描かれています。お母さんも女の子も家族とけんかしたくないし、女の子は金魚も見たい。この共通の目標をなんとか達成できないかと考えさせるのです。お母さんは女の子に「家族が仲良く、金魚の世話をせずに金魚を見られる方法ってないの?」と聞きました。
じっくり考えて女の子が答えました。「じゃ、来週、またデパートに連れて行って」と。女の子は確かに金魚を飼いたかったのですが、本当の要望は「金魚を見たい」というもの。そのための手段は家で金魚を飼うことだけではありません。5歳の女の子は、そのことに気づき、「お母さんが金魚の世話をすることなく」「金魚を見る」というふたつの要望をかなえる方法を見事に導き出したというわけです。
このイスラエルの女の子が描いたものは、ふたつの要望の箱という縦の関係に注目して「BをすることとCをすることを両立できる方法」を考えた例です。これが両立できればそもそも悩む必要や対立する必要がなくなりますから、一番の最適解に至る方法と言えます。
でも、いくらふたつの要望を眺めても、それだけでは解決策が見つからないこともあるでしょう。その場合は、行動の箱と要望の箱という斜めの関係に注目するという方法があることも覚えておきたいポイントかもしれません。クラウドでは、「DをするとCをすることが難しい」「EをするとBをすることが難しい」という関係が成り立ちます。図の例では、「金魚を飼えば、金魚の世話をしないということは難しい」「金魚を飼わなければ、金魚を見ることは難しい」ということですね。そして、それらが難しい理由を考えた後、試しに疑ってみるのです。「本当に金魚を飼わなければ、金魚を見ることは難しいのか?」と。
親と子どもが対立した際に話をするだけでは、どうしても親のほうが口が立ちますし、親は自分の要望に近づけていきたくなる。当然、子どもは反発するでしょう。でも、絵でも文字でもこの図を描かせることで、子ども自身が考えて最適解を導くことができるのです。自分が置かれている状況や考えを整理できるようになるとともに、子どもの視野を広げることにもつながるはずですよ。
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』
飛田基 著/ダイヤモンド社(2017)
■ 飛田基さん インタビュー一覧
第1回:「考える力」を伸ばすことは幸福に近づく近道
第2回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(前編)
第3回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(後編)
第4回:子どもの教育は「個のちがい」に目を向けることからはじめる
【プロフィール】
飛田基(とびた・もとい)
1974年4月2日生まれ、千葉県出身。早稲田大学理工学部を卒業後、フロリダ大学博士課程を修了。フロリダ大学ポストドクトラルフェロー、日立製作所を経て経営コンサルタントとして独立した後、イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが唱えるTOC(制約理論)に出会い、それを多くの人に広めることを決意。現在、NPO法人・教育のためのTOC日本支部マスターリードファシリテータとして、大人と子どものコミュニケーション向上による教育の改善に尽力している。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
皆さんは、ボーディングスクールをご存知ですか? 日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、いま注目を浴びつつあるのです。
ボーディングスクールとは、“生徒と教師が同じキャンパス内で寝食を共にする全寮制の学校”のこと。その歴史は古く、イギリス、スイス、アメリカ、オーストラリアなど世界数か国にあります。
なかでも、英国王室のウィリアム王子やヘンリー王子も在籍していた「イートン・カレッジ」(イギリス・1440年創設)や、世界一学費が高いとも言われる「ル・ロゼ」(スイス・1880年創設)などは世界中の王族や貴族、セレブが集まる“超名門”として特に有名です。
今回は、そのボーディングスクールの特徴をくわしくご説明しましょう。【最終更新日:2024年10月7日】
ボーディングスクールは、学業をメインとする一般的な学校とは大きく異なり、主に以下を目的としています。
生徒は世界中から集まるため、世界各国の文化や言語、考え方の違いなどを肌で感じながら、グローバルな感覚を自然と身に付けていくこともできます。また、1クラス平均12名程度と少人数制。先生やスタッフも基本的には寮で生活を共にするため、放課後や夜間に至るまで24時間子どもたちと向き合い、個々に応じた学習指導はもちろん、しつけや道徳教育を施すのです。
言い換えれば、勉強・スポーツ・芸術・一流の国際常識・教養全般、それらすべてに力を注ぐ特別な学校なのです。厳しい競争が当たり前の国際社会で生き抜いていくためには、どれも必要なスキルであることは言うまでもありません。
ボーディングスクールがいま再び注目を浴びているのは、まさにそういった“世界で通用する人間を育成している”という点が大きいのでしょうね。
しかし、子どもが多感な10代に遠く離れた海外で暮らすことを考えると不安も心配も尽きないのもまた事実。富裕層研究者の第一人者として知られ、自身の娘を「ル・ロゼ」に通わせた経験を持つ臼井宥文氏は著書の中でこう書いています。
ティーンエイジャーの子どもを海外に出すことは、かなりの覚悟が必要だ。本人にもホームシックがあるだろうし、親の側にも「子離れ」しにくい心情はある。(中略)もっと早い段階での留学ともなれば、相当つらいのではないかと想像する。しかし、私は強くボーディングスクールへの留学を奨めたい。なぜなら親元を離れて寄宿舎生活を送ることによって、より親子の絆が深まるからである。(中略)海外のボーディングスクールで学ぶのは、勉強やスポーツだけではない。人間関係を学び、自立心を学び、そして親への感謝を学ぶ。」
(引用元:臼井宥文 著(2007),『超上層教育』,宝島社.)
親も子も、高い志が必要なことは間違いなさそうです。ただ、それ以上に学びはかなり大きいと言えるでしょう。
ボーディングスクールの種類・特色はさまざまです。例えば、男子・女子校、共学校のほか、特定のスポーツに強い学校、芸術や音楽の分野に秀でている学校、低年齢児対象の学校、小中高生に特化したジュニアボーディングなど。
もし、入学を考えるのであれば子どもに合ったところを慎重に選びたいですね。出願にあたっては、名門校の場合などはネイティブレベルの英語力や高い学力を求められる事も。しかし、一般的には、英語力と成績だけで合否が決まるわけではありません。
出願書類として、成績証明書や英語力証明資格のほか、過去の課外活動実績や将来の抱負、ご家族の留学に対する考えをまとめた作文などを求めるところもあるようです。入学選考において面接を実施している学校も多く、生徒の資質や能力、学校が求める生徒像とマッチするか多角度から判断していきます。
そして気になる費用面ですが、やはり年間の学費は高めです。学校によって大きく異なりますが、授業料に加えて、寮の費用、その他諸費用含め、年間500万以上はかかると考えておいた方が良さそうです。高いところでは年間1000万円以上かかることも珍しくありません。
「遠く離れたところで子供が過ごすのはやはり心配」「費用が高すぎる」
そんな声が聞こえてきそうですが、実は日本でも同じような教育を受けられる学校があるのです。それが、2006年4月に愛知県蒲郡市に開校した「海陽学園」。
全寮制の男子中高一貫校で、トヨタ、JR東海、中部電力などが出資し、「将来の日本を牽引するリーダー」の育成を掲げ、イギリスのイートン校をモデルにして作られました。まさに、未来のグローバル・リーダーを育てるためのエリート教育を行う学校です。学費面も、海外留学に比べれば安く済みます。
また、新たに開校した学校や、今後開校予定の学校も増えています。2018年4月に開校した「国際高等専門学校」(石川県白山市 ※元「金沢工業高等専門学校が改称、新プログラムを導入)、2019年開校予定の「広島叡智学園」(広島県)、日本初の小学生を対象とした「神石インターナショナルスクール」(広島県)など。
海外のボーディングスクールと提携していたり、カリキュラムを参考にしていたりしているため、日本の一般的な学校教育とは異なる内容が期待できそうです。
***
素晴らしい学びの場であるボーディングスクール。安直に選ぶことはできないですが、お子さんの将来を考える際、ひとつの選択肢として頭に入れておくと良いかもしれません。
ボーディングスクールはちょっと敷居が高い……。であれば、国内のインターナショナルスクールという選択肢も。3歳からの入学が可能な「ワンワールドインターナショナルスクール」(「ワンワールドインターナショナルスクール(OWIS)大阪校」「ワンワールドインターナショナルスクール(OWIS)つくば校」)なら、国内で「世界で通用する教育」を受けることができますよ。
文/鈴木里映
(参考)
ワンワールドインターナショナルスクール
株式会社海外教育研究所|世界中のあらゆる人との繋がりを ボーディングスクール
エディクム|ボーディングスクール
YUCASEE media|ボーディングスクールで伸びる子、伸びない子
The International School TImes|国内ボーディングスクールフェア
臼井宥文 著(2007),『超上層教育』,宝島社
「うちの子供には集中力がない」「勉強はするけれど、長い時間続かない」と悩んではいませんか? 大人だって、肉体面や精神面のさまざまな事情により、常に集中力を発揮するというわけにはいかないもの。お子さんにとってはなおのこと難しいかもしれません。
そこで今回は、子どもの集中力が続かない原因をご説明したあと、さまざまな解決方法をご提案します。集中力アップが期待できるトレーニングやゲーム、習い事をはじめ、集中が高まりやすい環境の作り方など、子どもの集中力に関する最新情報を網羅的にご紹介していきますね。【最終更新日:2020年2月25日】
「子どもの集中力が続かないなあ」と感じるのは、「子どもでも、○○分くらいは集中して勉強できるはずだろう」と考えているからですよね。そもそも、人間はどれくらい長いあいだ集中できるものなのでしょう? 英オープン大学で心理学を教える認知心理学者のジェマ・ブリッグズ博士によれば、「平均的な集中時間」という考えには意味がないそう。どれだけ集中力を発揮できるかは、その人の状態や取り組む課題によって大きく異なるためです。
そうはいっても、子どもが集中力を発揮できる時間について、ある程度の目安を知りたいと思う人もいるはず。英語の読み書き教育をサポートする米国の学生団体「SCALE」は、「情報源は不明」と前置きしつつも、子供の集中力の持続について以下の考え方を提示しています。
学習に対する集中時間=年齢+1
(引用元:The University of North Carolina at Chapel Hill|Attention span for learning = chronological age + 1)
つまり、3歳の子どもなら、勉強への集中力を発揮できるのはわずか4分というわけです。「子どもの集中力」なるものは、そもそも長くはないのだと考えておきましょう。
うちの子どもは「年齢+1」分すら集中力が続かない、という場合もあるかもしれません。極端に集中力がない子供がいるとすれば、その原因は何なのでしょう? 子どもの集中力が低くなってしまう原因はさまざまですが、特に気をつけるべき原因を2つご紹介します。
子どもの集中力が続かない原因は、テレビの見すぎ・ゲームのやりすぎかもしれません。子どもの健康・教育を研究する高橋ひとみ教授(桃山学院大学)が2004年、大阪府の小学生1,069名を対象に調査を行なったところ、保護者から「集中力がないほう」と判断された子どもは「集中力があるほう」と比べ、以下の傾向があるとわかりました。
子どもの集中力に関する調査の結果を、高橋教授は以下のように解釈しています。
長時間の「テレビゲーム」「携帯ゲーム」「テレビ視聴」の結果、前頭前野が疲労し、注意力、記憶力、集中力が減少する。そのため、精神の統合と集中力を必要とする「読書」が持続できなくなる。
(引用元:桃山学院大学学術機関リポジトリ|子どもの就寝時刻に関する一考察(III) : 「テレビゲーム・携帯ゲーム・テレビ視聴」時間と「集中力」「根気」「性格」との関連 太字による強調は編集部が施した)
上記の研究における「読書」を、勉強に置き換えてもよいでしょう。つまり、ゲームで遊んだりテレビを見たりする時間が長すぎると、子どもの脳は疲れ、勉強に必要な集中力が散漫になってしまうのです。完全に禁止する、とまではいかなくても、子どもの集中力を守るため、ゲームやテレビの時間は少し短くしたほうがよさそうですね。
睡眠が不十分であることは、子どもの集中力が低下する重大な要因です。子ども学を専門とする松村京子教授(兵庫教育大学)が1990年、小学6年生111名を対象に調査を行なったところ、睡眠時間が7時間未満の子どもは7時間以上の子どもに比べ、「いらいらする」「間違いが多くなる」など、集中力の低下を訴える割合が多いことがわかりました。また、夜型の子どもの3分の1は朝食を食べず、朝食を食べない子どもは食べる子どもより、集中力の低下を訴える傾向があることも判明。
つまり、睡眠時間が短いと脳の疲れが充分に取れず、注意が散漫になってしまいます。また、睡眠時間が短く起床時刻が遅い夜型の子どもは、食欲が弱かったり食べる時間がなかったりするためか、朝食を抜いてしまい、結果として集中力が弱まってしまうのです。当たり前のようですが、睡眠と食事を万全に確保することが、子どもの集中力を養う基本なのですね。
なお、上で挙げた理由のほか、病気・障害が原因で、子どもが集中力を発揮できない場合もあります。たとえば、現在ではよく知られるようになった「注意欠陥多動性障害(ADHD)」。物事に集中力を向けづらい、忘れ物が多いなどの症状が現れる障害で、割合としては1クラスに1人か2人、該当する子どもがいるそう。また、不安障害など心の病気の影響で、子どもが目の前のことに集中力を発揮できなくなっている可能性もあります。子どもの集中力に関して気になる兆候があれば、家庭内のみで対処できることではないので、病院に相談するのがよいでしょう。
子どもの集中力を高める方法として親にできることとしては、集中力アップに役立つ食事を用意してあげる、ということも挙げられます。「子どもの集中力を養う」という観点だと、特に以下の点に注意したいところです。
まず、子どもの集中力を高く保つため、食事は抜かないことが大前提。食べて栄養を補給しなければ、勉強や運動に必要なエネルギーが不足してしまいます。
子どもの集中力を上げるため、朝食は特に大事です。昼食・夕食を抜く子どもはほとんどいないでしょうが、朝ご飯を食べない子はたまにみられます。独立行政法人・日本スポーツ振興センターが2011年に実施した調査によると、朝食をとらない子ほど、だるさ・疲れやすさを感じる傾向が強いとのことです。
子どもの集中力を育てるため、朝食はもちろん、3食しっかり食べさせるようにしましょう。もしも、親御さんに朝食を食べない習慣が身についているのなら、子どもの集中力のためだと思い、家族で朝食をとることから始めてください。
そして、ただ食べればよいというわけではありません。「子どもに集中力をつける」という点を重視するなら、白米やパンといった炭水化物のほかに、野菜や果物、ヨーグルトといった副菜も必要です。
なぜなら、主食を食べると血糖値が上昇するから。血糖値が上がると、インスリンが分泌されて血糖値が下がるのですが、血糖値の上昇具合が急激だと、以下のような問題が生じてしまいます。
皆さんも、食後に強い眠気を感じたことがないでしょうか。あの眠気は、血糖値の乱高下が原因なのです。子どもの集中力を鍛えるには、このような血糖値の乱高下を避ける必要があります。
子どもの集中力を守るため、主食を食べても血糖値が急に上がらないようにするには、主食の前に副菜を胃に入れておくのが有効です。炭水化物を単品で食べるのは避け、野菜やヨーグルトを先に口に入れるのが、子どもの集中力を高めるコツです。
集中力を高める食事について、詳しくは「子ども向け朝ごはんメニュー、シンプルな2パターン。」をご覧ください。
勉強に対する子どもの集中力を高める方法は、ほかにもあります。とはいえ、子どもに「こうしなさい」とやり方を示すだけでは意欲は起きないので、親が集中力のトレーニングに付き合うようにしてくださいね。
奈良県立教育研究所では、ある小学4年生の男の子を対象にした、集中力に関する事例検証が行なわれました。その男の子は、趣味のプラモデル作成には集中力を発するものの、学校の授業では注意が散漫で、集中時間が短かったそう。そこで、以下のような訓練が設定されました。
- 単純な計算を毎日繰り返す。足し算、引き算、かけ算100問、割り算100問
- 短い文章を繰り返し音読する。A4版3ページ程度の文章14種類
- 短い時間で終了できる課題で、かかった時間を計り、集中できる時間を意識する。
- 終了後カレンダーにシールを貼り、次回の目標タイムを設定する。
(引用元:奈良県立教育研究所|「集中力」を高める学習環境の設定について 太字による強調は編集部が施した)
はじめのうち、男の子は以下のような状態だったそう。
しかし、4日目を過ぎると、次のような変化が見られたとのこと。
この男の子には「周囲から褒められるとがんばろうとするが、怒られると全くやる気が出ない」「そわそわして落ち着きがなくなったり、終了までの問題の数を何度も数えたりする」という特徴がありましたが、「時間を計ったり点数を付けたりする、目標や賞賛を与えたりする」ことでやる気が出て、「時間の予想が立てられると我慢ができるようになった」とのこと。
上記の事例検証では、以下のような考察がなされました。
集中するには、時間の長さや課題の量(どのくらいやるのか)や終了(いつまでやるのか)が予測できる環境の設定が必要である。
課題をこなすことで成就感や達成感が得られることはもちろんだが、周囲の期待に「応えたい」という気持ちが大切である。がんばったことに対して褒めたり、褒められたりすることで大人も子どもも満足する。この行為の積み重ねや、そこに至る振り返りがあってこそ効果が得られたと考える。
(引用元:同上)
つまり、子どもの集中力アップのためには、家で勉強する際、親が次のことに気をつけてあげればよさそうです。
仕事や家事で忙しい人は多いと思いますが、「集中しなさい」「ちゃんとやって」といったあいまいな声かけで済ませず、「30分でこのプリントを3枚やろうか」など具体的な提案をし、「集中できてえらい!」「頑張って書いたね」と子どもを褒めてあげてくださいね。上記の2点を地道に繰り返すことにより、子どもの集中力が鍛えられます。
ゲームで遊んでいるときの集中力を、子どもが勉強にも発揮してくれればいいのに……と思う人もいるかもしれません。実は、ゲームで遊ぶことと勉強における子どもの集中力には関係があったのです。
2017年、全国の「朝日小学生新聞」読者の小学生457人およびその保護者を対象に行なわれた調査では、「家庭でゲームを楽しむ子どもはゲームを禁止されている子どもに比べて、勉強の集中力が高く、宿題も計画的かつ自主的に取り組む傾向が高い」という結果が現れました。対象者のうち、ゲーム機を持っていた子どもは370人。そのなかで「ゲームの前に宿題を終わらせなくてはいけない」「ゲームをしてもよい時間が決められている」などのルールがあると答えたのは91.9%。ゲームで遊ぶ子どものうち、1週間でゲームをする日数として最も多かった答えは「週に1~2日」(29.7%)で、1日の平均ゲーム時間は50.6分でした。
「勉強への集中力」に関して保護者が答えたアンケートでは、「子どもが集中できている」との回答割合は以下のとおりでした。
また、子どもについて「宿題を計画的にできる」と答えた割合は以下のとおり。
さらに、「宿題を自分で進める」と答えた保護者の割合は以下のとおりです。
つまり、子どもはゲームで遊びたいがために勉強への集中力を発揮し、自ら宿題に取り組むのだと解釈することができます。もちろん、「ゲーム時間を自分でコントロールできる子だからこそ、親がゲームを許可している」可能性も考えられるのですが……。
いずれにせよ、ゲームを完全に禁止するよりは、ルールを作って適度に遊ばせてみてはいかがでしょうか。完全に禁止すると、ストレスがたまり、子どもの集中力の妨げとなるかもしれません。
子どもが集中力を発揮して勉強するために親ができることは、ほかにもあります。それは、家を勉強しやすい環境に整えること。机周り、温度・湿度、音という3つの観点から、子どもの集中力が高まる環境の条件をご説明します。
子どもの勉強机を部屋のどこに置くかは、集中力にとって重要です。中島龍興照明デザイン研究所の代表取締役・中島龍興氏によると、自然光がよく入る部屋なら、以下のような配置が望ましいそう。
手元に影が落ちない、というのは、右利きなら窓が左に、左利きなら窓が右に来る位置に机を置くということ。逆にすると、鉛筆を持っている手の影がノートやプリントに落ちるため、手元が見えづらくなり、子どもの集中力の妨げになってしまいます。
子どもの学習机の正面についている棚の使い方も、集中力にとって重要です。カラフルな雑貨や人形が飾られていませんか? 勉強に関係ないものが子どもの視界に入ってくると、どうしても集中力が乱れてしまいます。
整理収納アドバイザーの鈴木紀子氏は、「学習机・学習棚は学用品だけを置くスペース」であると子どもに意識させるべきだとして、漫画やオモチャは別のスペースに並べることを推奨。片付けコンサルタントの喜々立子氏も、以下のように強調しています。
好きなものを見えるところにおくことでモチベーションが上がるようにも思えますが、子どもにとっては気が散る要因。学習に集中するためには、勉強に必要のないものは、なるべく近くに置かないことが大事です。
(引用元:かもめの本棚 online|第3回 「気が散るもの」は机に置かない 太字による強調は編集部が施した)
喜々氏は、大好きなミニカーを机の上に飾っていた子どもに対し、「机の上でなくてもいいよね」とアドバイスしたことがあるそう。ミニカーは、机に向かったとき背中側にある本棚に置かせ、代わりに本棚の辞書類を机に置かせたとのことです。
卓上に飾ってあるお気に入りのものを、子どもの集中力が乱れるからといって捨てる必要はありません。机から離れたところに飾り、子どもの勉強中は目に入らないようにすれば、集中力の妨げになりませんよ。
肉体に苦痛をもたらす環境で集中力を保つのが難しいことは、生物として当然です。エアコンや加湿器を使って温度・湿度を調節し、子どもが集中力を発揮できるようにしてあげましょう。
生産性を研究するオッリ・セッパネン教授(フィンランド・アールト大学)らの論文「オフィス環境でのタスク遂行における室温の影響」(2006年)によれば、21~25度の範囲だと室温はパフォーマンスに影響しなかったものの、25~32度の範囲だと、室温が1度上がるごとにパフォーマンスが2%ずつ下がっていったのだそう。室温は21~25度の範囲に調整するのがよさそうですね。
とはいえ、快適だと感じる室温は人によって違いますし、空調の設定温度と体感温度も異なります。大阪市立大学大学院の疲労医学講座で特任教授を務める梶本修身氏によると、汗をかいたり鳥肌が立ったりするのは「自律神経が疲れている状態」。心身ともに快適に感じられる室温こそが、子どもが勉強に集中力を発揮できる温度なのです。
子どもの集中力のためには、温度だけでなく、湿度も気にしたほうがよいでしょう。空気が乾燥しすぎていると目が乾燥してしまう一方、空気中の水分が多すぎると疲れを感じやすくなるため、子どもが勉強に集中力を発揮しづらくなるからです。
建築環境学を研究する工学博士・堤仁美氏らの論文「湿度環境とホルムアルデヒドが熱的快適性・知的生産性に与える影響に関する被験者実験」(2003年)によると、湿度が30%・50%・70%の各条件下で被験者たちに計算とタイピングをさせる実験が行なわれました。計算課題では有意な差はみられなかったものの、タイピングだと以下の傾向があったそうです。
どうやら、夏は湿度を低めに、冬は高めに設定するのがよさそうです。
子どもが勉強に集中力を発揮できるよう、家電を使って良質な環境を整えてあげたいものですね。
トラックが走ったり犬がほえたりといった騒音が、子どもの集中力を妨げることは、容易に想像がつくと思います。なかでも気をつけたいのが、周囲でのおしゃべりやテレビの音。
屋内環境を研究するJungsoo Kim博士(シドニー大学)らが2013年に発表した論文によると、オフィスの種類別に労働者の満足度を15の要素で調査したところ、「騒音レベル」について「不満」だと答えた人の割合は以下のとおりでした。
つまり、大勢でひとつのオフィスを使用している人は、1人または数人で使用している人に比べ、「騒がしいな……」と不満を抱きやすいのです。
子どもが自宅で勉強するときの環境は、上記5種類のオフィスのうち、上の3つに近いのではないでしょうか。特に、リビングやリビングに近い場所で勉強させている場合、テレビの音やおしゃべりの声がよく聞こえるはずです。
騒音は、集中力を発揮したいと思っている子どもの妨げになります。集中力を低下させないよう、勉強している子どもの近くでしゃべったりテレビを見たりすることは避けたいものですね。どうしてもテレビを見るのであれば、子どもの集中力を低下させないよう、ヘッドホンを装着しましょう。
遊んでいるうちに、自然と子どもの集中力が養われたら素晴らしいですよね。子どもの集中力を高めてくれるおもちゃ・遊びをご紹介します。
「『子ども向けパズル』は教育効果バツグン!? 選び方とおすすめパズル教えます」でもお伝えしたように、ジグソーパズルは脳を活性化させ、子どもの集中力・記憶力を高める効果を持つと考えられています。脳科学者の篠原菊紀教授(公立諏訪東京理科大学)によると、子どものうちからジグソーパズルに親しむことで、集中力の向上が期待できるのだそう。
指先で小さなピースをつまみ、脳をフル回転させる必要があるジグソーパズルで遊んでいるうち、目の前のことに集中する感覚が身につきそうですね。小学生なら、100ピース程度で子どもの好きな絵柄のものにチャレンジしてみてはどうでしょうか。
米ハーバード大学を卒業し、心理学に関する著書や講演で知られるキャロライン・アダムス・ミラー氏によれば、ボードゲームには集中力や計画性を養う効果があるそう。ボードゲームで相手に勝とうとするなら、盤面をよく見て次の手を考える必要がありますからね。
子どもが遊ぶなら、ルールがシンプルな「オセロ」がおすすめです。詳しくは「親子でいざ真剣勝負!? 『記憶力』『先読み力』『集中力』がアップするボードゲームの魅力」をご覧ください。
折り紙をていねいに折って作品を完成させるには、指先を正確に動かす必要があります。また、お手本をよく見ながら、その通りに紙を折ったり開いたりする行為は、集中力がなければできないことです。前述の篠原教授も、教本に書いてある折り方を読み、そのとおりに紙を折っていくという作業により、集中力がつくと語っています。
子どもと買い物に出かけ、気に入った教本と綺麗な紙を選んでみてはいかがでしょう。祖父母とコミュニケーションをとるきっかけにもなりそうです。
子どもの集中力を育む遊びを紹介しました。どれも身近で、簡単にできるものばかりですね。子どもの集中力を育むため、ぜひ取り入れてみてください。
スポーツや芸術などの習い事によっても、子どもの集中力を育むことができます。子どもの集中力を養うのに特におすすめの習い事を3つ紹介しましょう。
精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究によれば、楽器を練習した子どもほど、集中力などに関する脳の部位が発達したそう。楽器の演奏には、指を正確に動かしたり、音を聞き取ったり、楽譜を読んだりなどの作業が要求されることが影響していそうです。詳しくは「楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは『7歳までに』始めること。」をお読みください。
近年、子どもの教育に有用だとして注目されている「演劇」。ミュージカルの指導を行うNPO法人「JOY Kids’ Theater」代表の夏海清加氏によると、レッスンを受けながら本番まで努力を重ねていく過程で、集中力やコミュニケーション能力などが養われるそう。セリフを暗記したり、大勢の人が見ているなかで感情を表現したりといった経験は、ほかの習い事にはない特徴です。演劇教育についてもっと知りたい方は、「コミュニケーション能力を高める『演劇教育』、“自分は替えのきかない存在である” という自信が子どもを成長させる」もお読みください。
東京大学の学生が経験した習い事のうち、最も割合が多かったというのが「水泳」。空間認知能力が鍛えられ、脳の発達に効果があるそうです。また、スイミングスクール「ケーニーズ」によれば、プールでは何もしないとおぼれてしまうため、「目標地点にたどり着くために一所懸命集中して泳ぐ」ことにより、子どもの集中力が鍛えられるそう。ほかにも、水泳には多くのメリットがあります。水泳と子どもの集中力について、詳しくは「東大生の幼少期の習い事の第1位は『スイミング』! そのメリットとは?」をご覧ください。
最後に、子どもの集中力を高めるのに役立つ本をご紹介します。株式会社マクロウタセ代表取締役で、心身の健康に配慮した食事法「マクロビオティック」の料理教室で教えている上原まり子氏の『子どもの「集中力」は食事で引き出せる』(青春出版社、2018年)です。
上原氏は、「子どもの集中力が続かない原因は食べもの」であるとし、食事には「気をゆるめる食事」と「気を引き締める食事」の2種類があると述べています。後者の「気を引き締める食事」を親が用意してあげれば、子どもの集中力が高まりやすくなる、というわけです。
食べものから摂取する栄養分は、肉体の構成に関わるのはもちろん、脳の働きにも大きな影響を及ぼします。集中しやすくなる食事について詳しく知りたい方は、『子どもの「集中力」は食事で引き出せる』を手にとってみてはいかがでしょうか。
***
このように、子どもの集中力を高めるにはさまざまなアプローチがあります。親がしてあげられることはたくさんありますので、「集中力がない」と子どもを責める前に試してみてください。
(参考)
BBC News|Busting the attention span myth
The University of North Carolina at Chapel Hill|Attention span for learning = chronological age + 1
桃山学院大学学術機関リポジトリ|子どもの就寝時刻に関する一考察(III) : 「テレビゲーム・携帯ゲーム・テレビ視聴」時間と「集中力」「根気」「性格」との関連
J-STAGE|児童の生活リズムに関する研究(第4報) : 朝型・夜型と学習状況
東京医科大学病院|集中力や落ち着きを欠く「注意欠陥多動性障害」
奈良県立教育研究所|「集中力」を高める学習環境の設定について
StudyHacker|生産性を上げたければ「温度」と「湿度」に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた。
Semantic Scholar|Effects of unattended speech on performance and subjective distraction : The role of acoustic design in open-plan offices
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子ども向けパズル」は教育効果バツグン!? 選び方とおすすめパズル教えます
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|親子でいざ真剣勝負!? 「記憶力」「先読み力」「集中力」がアップするボードゲームの魅力
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。
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Kim, Jungsoo and Richard de Dear (2013), “Workspace satisfaction: The privacy-communication trade-off in open-plan offices,” Journal of Environmental Psychology, Vol. 36, pp. 18-26.
ジグソークラブ|ジグソーパズルで脳トレ!
篠原菊紀(2008),『集中力と知力を育てる生活脳トレ』, 主婦の友社.
(この記事はアフィリエイトを含みます)
これまでの詰め込み型の教育ではなかなか育てることができないとも指摘される、「考える力」。その力を伸ばす「知能教育」を、なんと約50年前に導入した小学校があります。それは、東京都武蔵野市にある聖徳学園小学校。現在、校長を務める和田知之先生は、その知能教育や教材開発に長く携わってきました。そして、同校で知能教育同様に力を入れているのが「英語教育」と「リーダーシップ教育」。それにはどんな狙いがあるのでしょうか。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人
知能教育以外に我が校が力を入れているものとして、まず「英語教育」が挙げられます。はじめたのは1987年。いまでこそ公立小学校でも5年生、6年生が週に1時間の外国語活動をしていますが、当時としては英語教育の導入はかなり珍しかったものだと思います。
しかも、2016年からは全学年で英語教育を実施しています。1週間あたりの授業時間は、1年生と2年生は1時間、3年生と4年生は2時間、5年生と6年生は3時間。週に3時間の英語の授業をしている学校は他にあまりないでしょうね。
内容も一般の公立小学校とは異なるものです。小学校の英語の授業では、普通は「慣れる、親しむ」ということが重視されますが、わたしたちは本格的な英語力を育成することを目指しています。特徴的な行事が、「イングリッシュキャンプ」という合宿。成田空港近くのホテルに宿泊し、ネイティブの英語教員たちとともにさまざまな活動をします。
たとえば、ホテルのバーカウンターで注文をする練習。もちろん、頼むのはお酒ではなく、ジュースやポップコーンですけどね(笑)。また、ホテルに出入りする外国人のCAやパイロットの方にアポなしで話しかけて夕食に誘うということも。お疲れのところとは思いますが、皆さん意外と面白がって子どもたちの誘いを受けてくれるんですよ。仕上げとして、合宿最終日にするのが空港にいる外国人観光客へのインタビュー。こうして、英語のシャワーを浴びながら、より実用的な英語を学ぶわけです。
ただ教室や家で勉強するだけでは、英語を学ぶ目的やモチベーションを失いかねません。確かにのちのちの入試で力を発揮するということもあるでしょうけど、やっぱり実際に使ってこそ英語を学ぶ意味があると思うのです。
それから、英語に限らず採用しているのが「教科担任制」と「習熟度別の少人数クラス」です。小学校では、担任教員がすべての科目を教えるのが普通ですよね。そうすると、教材研究をやり切れないというような問題が出てきてしまう。教員というのは、授業以外にもやらなければならないことを本当にたくさん抱えていますからね。各科目の専門の教員に授業をさせたほうが、子どもたちにとってわかりやすく、学力を向上させるにも効果的なのです。
また、一人ひとりの子どもたちをきめ細かく指導するため、習熟度別に少人数のクラス分けをしています。英語であれば、30人程度のクラスをふたつにわける。クラス分けの際には、その教科が得意かどうかということに加えて、その教科に「どれだけ興味があるか」ということも考慮するのです。それにより、できる限り子どもたちの個人差に合わせた授業ができるというわけです。
さらに、我が校では中学校同様に中間テスト、期末テストという定期テストをしています。この目的は、成績をつけるためというより授業がうまくいっているかを調べるため、そして、なによりテストを通して子どもたちの「考える力」を伸ばすためです。テストのなかには授業では触れていない、子どもたちがはじめて目にしてはじめて考えるという問題も入れます。ただの復習テストではないのです。その場で、「うーん」と頭をひねって考えることで、さらに思考力を伸ばしていきたい。
それらのテストでは、「満点を取らせない」ということもこだわりのひとつ。満点というのは、リミットに達してしまってその上の力を測れないということですよね。それでは、子どもたちの力を正しく評価して、さらに上に引き上げることができません。それから、子どもたちのモチベーションを保つという意味合いもあります。もちろん、それでも満点を取られてしまうこともあるんですけどね(笑)。
また、英語教育以上に力を入れていると言っていいのが「心の教育」です。どんなに学力が上がって頭が良くなったとしても、心が育っていなければ成熟した人間にはなれません。忍耐力がなければ就職してもすぐに仕事を辞めてしまうでしょうし、受験勉強だけをしてきたのでは社会では通用しない。倫理観が伴っていなければ、頭の良さを悪い方向に使うこともあるでしょう。
わたしたちが育てたいのは、社会に貢献できる子どもたち。そのために取り組んでいるもののひとつが「リーダーシップ教育」です。そのベースとしているのは、アメリカの作家で経営コンサルタントであるスティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』。販売部数は世界で3000万部、日本でも200万部を誇るベストセラーですから、耳にしたことがある人も多いでしょう。その『7つの習慣』に基づく『リーダー・イン・ミー』というテキストを使って心の教育をしています。内容は、たとえば「Win-Winの関係」や「信頼貯金」を教えるといったもの。
リーダーシップ教育というと、子どもたちを政治家や経営者にさせようというものをイメージするかもしれませんが、ここで言うリーダーは「人の上に立つ人間」ということではありません。「リーダー・イン・ミー(The leader in me)」の意味は「自分のなかのリーダー」。つまり、自分が自分のリーダーとなって主体的に行動することを目指すというものなのです。
いまの子どもたちは、「自分を自分で動かす」能力が落ちているように感じています。「○○君、やってみたら?」となにかにチャレンジすることを促しても、子どもたちの返答には「自信がないです」「△△君のほうが向いていると思う」「お母さんに聞いてみないと……」というものが本当に多いのです。
友だちや親ではなく自分自身が自分のリーダーとなって、これからの人生を力強く歩んでいけるように心の教育をする。子どもたちを教育する立場からすれば、学力を伸ばすこと以上に重要なことだと感じています。
『IQ130以上の子どもの育て方』
和田知之 著/カンゼン(2018)
■ 聖徳学園小学校長・和田知之先生 インタビュー一覧
第1回:学校教育の“ゴール”はこう変わる! いま求められる「考える力」の正体とは
第2回:子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由
第3回:5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと
第4回:「満点を取らせないテスト」に込めたこだわり。授業で触れていない問題も出題する意図とは
【プロフィール】
和田知之(わだ・ともゆき)
1966年生まれ、東京都出身。法政大学卒業後、1991年より聖徳幼稚園英才教室に勤務。2000年より聖徳学園小学校に配属となり、また、知能診断として多くの保護者にアドバイスをおこないながら、知能教育やその教材開発に従事。2015年から現職の聖徳学園小学校長、聖徳幼稚園長、英才教室長に就任。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
東京都世田谷区の『愛珠幼稚園園長』である天野珠子先生。特定非営利活動法人東京モンテッソーリ教育研究所の理事長も務めていらっしゃいます。
天野先生のお母様はアメリカで生まれ、日本人が少なく孤独だった少女時代に修道院で子どもの世話を手伝った経験から、帰国後に幼稚園を設立されました。その後、モンテッソーリ生誕100年祭でアメリカの孤児院にあったものと同じ教具に出会い、モンテッソーリ教育を学ぶことを娘である天野先生に薦めたのです。
そして天野先生は短大の保育科で教鞭をとる傍ら、モンテッソーリ教育を愛珠幼稚園で実践してきました。最近メディアで取り上げられることの多い「モンテッソーリ教育」とはどんなものなのかを詳しくお聞きしました。
取材・文/田中祥子 写真/大平晋也
――モンテッソーリ教育の始まりについて教えて下さい。
天野先生:
モンテッソーリ教育を考案したマリア・モンテッソーリはイタリアで初めて女医になられた方です。昔のヨーロッパの女性蔑視の中で苦労をして医学を学び、当時は脚光の当らない知的障害者の治療に携わりました。ここで成果を挙げ、障害児の治療教育が普通の子どもにも該当すると気づいたことから、幼児教育に転じたのです。
当時のイタリアは非常に貧富の差が激しく、両親ともに働かなくてはいけない貧民の子どもたちは知能が低いという考えがあった時代です。そこにマリアはモンテッソーリ教育を実践する「子どもの家」をつくり、子どもたちの能力を伸ばしていったのです。
――モンテッソーリ教育の特徴とはどのようなものでしょうか。
天野先生:
子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていく、ということをモンテッソーリ教育では大切にしています。そのためのひとつの手段として、さまざまな専用の教具を使うことが特徴の一つです。子どもたちは時期に合わせた教具を自由に選び、遊ぶことで、発達と自立をしていきます。
たまに誤解を受けることがありますが、教具で学ぶことだけがモンテッソーリ教育でありません。例えば愛珠幼稚園では、ほかの普通の幼稚園と同じように体育や音楽の時間もあります。ですが、指導方法は決して命令口調ではなく、子どもたちが自発的にやりたくなるような雰囲気をつくることを重視します。つまり、すべての部分にモンテッソーリ教育の精神があることが大切なのですね。
また、自主性を尊重するということは子どもの自由を尊重することですが、自由であるためには約束ごとも必要です。モンテッソーリ園では2つのルールがあります。ひとつは、自分が活動した教具は必ず最初と同じ形にしてもとの場所に戻さなければいけないということ。例えば「野菜切り」の教具を使って、用意されていた人参を使ってしまったら、新しい人参を先生からもらって、かごに入れて戻しておきます。次の人が使えるようにしておくのです。
もうひとつは、ほかの子がやっているものを取り上げてはいけないということです。この2つのルールを守れば、園の中では自分で選んだ教材をいつまで使っても良い決まりになっています。つまり、自分の自由とともに他人の自由も尊重することをルールにしています。日本でのモンテッソーリ教育はほとんどが就学前の教育までです。現在の教育制度の中で、子どもの主体性を尊重する縦割り教育は幼児期だけなのが現状なのです。
――モンテッソーリ教育によって、子どもはどのように育つのでしょうか?
天野先生:
自分で考えて物事に対応できるようになりますね。生きていく中で思わぬアクシデントに出合っても、自分の力で切り抜ける力が備わります。ある卒園生の話ですが、小学校の通学中のバスの中で地震に遭い、バスが停まってしまったことがありました。そのとき、近くにいた大人の人に「親に連絡をしておきたいので携帯電話をかしていただけませんか」とお願いして貸してもらったそうです。そしてお母さんに無事を報告するだけでなく、そのときに一緒にいたお友だちの無事も知らせ、おうちに伝えてあげてねとお願いしたのです。
モンテッソーリ教育では、教師は子どもに何か聞かれたときには、「こうすればいい」と答えをすぐに教えることはせず、「あなたはどうしたいの?」とか「どうすればいいと思う?」と聞き返します。子どもが「こうだと思う」と言ったことが、もしも違っていたとしたら、すぐに間違いを指摘するのではなく、「そうかな?ほかにないかな?」と問いかけてあげるのです。何でも自分で考えさせて、教師はお手伝いをするだけです。自分で考えて、失敗しながらも解決することを繰り返すと、物事に柔軟に対応できるようになりますよ。
――モンテッソーリ教育の考える子どもの学びの過程とはどんなものでしょうか。
天野先生:
子どもというのは、服を自分で着たい、数字を並べたいなど、一人でやりたいことが発達に沿って現れてきます。大人はそれを上手にフォローしてあげることが大切です。モンテッソーリはその時期を「敏感期」と名付け、「運動の敏感期」、「数の敏感期」など、いくつかの分類をして子どもに接していきます。
そして、この敏感期に合わせて、子どもが夢中になっている何かを満足するまでやらせてあげるということが、子どもの成長には必要なのです。この経験により子どもの欲求が満たされ、心の余裕が生じ、周囲に対して思いやりや温かい関わりができる人へと成長する糧となります。
子どもが何をやりたいのか、どれくらい出来るのかを親がちゃんと見てあげてください。まだ早い、かわいそうだといって、かばうのではなく、挑戦する心を育てて応援することです。一人で出来ることが増えるほど自己肯定感が育つのですから。自己肯定感を獲得すると、他人を思いやること、忍耐すること、決まりを守ることなど社会生活に必要な基本ルールが育つと言われています。
「一人で出来るように手伝ってね」というのがモンテッソーリ教育の基本ですが、これはすべての子育ての基本なのではないでしょうか。子育てとは、子どもが親から自立するように育てていくことです。親に頼らず生きていく方策を経験させ、助けていくことが必要なのです。
※本記事は2018年8月25日に公開しました。肩書などは当時のものです。
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英国王室もウイリアム王子とキャサリン妃の長男ジョージ王子に選んだというモンテッソーリ教育。史上最年少でプロの棋士になった藤井聡太さんも幼児期にモンテッソーリ教育の園で育ちました。類まれな集中力や、追い詰められたときにも冷静に状況を判断し臨機応変に対応する能力は、幼い頃のモンテッソーリ教育が根底にあるのかもしれません。次回は具体的な教育内容に触れていきます。
【プロフィール】
天野珠子(あまの・たまこ)
東京都世田谷区にある学校法人天野学園「愛珠幼稚園」理事長・園長。短大の保育科で「乳幼児心理学」や「幼児教育心理学」の教鞭をとる傍ら、日本で初めてのモンテッソーリ教員養成機関「上智モンテッソーリ教員養成コース」の3期生としてモンテッソーリ教育を学び、その後、お母さまが経営していた「愛珠幼稚園」を引き継ぎ、モンテッソーリ教育を30年以上にわたって実践。
現在、NPO法人東京モンテッソーリ教育研究所理事長、日本モンテッソーリ協会(学会)副理事長。駒沢女子短期大学名誉教授。
■ 「モンテッソーリ教育」天野珠子先生 インタビュー一覧
第1回:子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」
第2回:子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド
第3回:自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント
第4回:ボキャブラリーが豊富な子どもは思考の展開が早くなる。日常生活にモンテッソーリ的発想を
兵庫県の甲子園球場で行われていた、第100回全国高校野球選手権大会。ここで旋風を巻き起こしたのが、秋田県立金足農業高等学校です。
秋田県勢103年ぶりの決勝進出を果たし、最終的に大阪桐蔭高校に敗れはしたものの、見事準優勝に輝いた金足農業。私学全盛のなか数少ない公立の出場校であり、ベンチ入りメンバーは全員が地元の秋田県出身です。決して “野球エリート” とは言えないチームが成し遂げた偉業は、全国民に大きな感動を与えてくれました。
これは単なる奇跡だったのでしょうか。いいえ、そうではありません。じつは、金足農業について調べてみると、この快進撃の裏側に、秋田県の “あるプロジェクト” が隠れていることがわかります。
このプロジェクトをヒントに、皆さんも、子どものための『目標達成プロジェクト』を家で実施してみませんか?
その “あるプロジェクト” とは「高校野球強化プロジェクト」のこと。じつは秋田県勢は夏の甲子園において、1998年から2010年まで13年連続で初戦敗退と低迷していました。そこで、秋田県全体の高校野球力の底上げを図るべく、教育委員会や高校野球関係者らが一丸となり、2011年に同プロジェクトが発足したのです。
具体的には、県外の強豪校や社会人チームの監督経験者をはじめ、スポーツ医科学に精通した専門家らをアドバイザーとして招聘。学校への訪問指導はもちろん、県外の強豪校と積極的に練習試合を実施したり、投手を集めた講習会では球速や回転数を調べて動作解析を行なったりするなど、実績者の知見やコネクション、科学的手法なども駆使しながら、県として総力をあげてプロジェクトを推進してきました。
プロジェクト発足の2011年には、県勢の能代商(現能代松陽)が3回戦に進出、さらに2015年には秋田商が県勢20年ぶりの8強入りを果たすなど、その成果は目に見える結果となって現れ始めます。そして「甲子園4強」を目標に掲げた2018年、金足農業は見事、秋田県に準優勝盾をもたらしたのでした。
本題の『目標達成プロジェクト』に入る前に、野球界から、もうひとつ参考例を挙げましょう。秋田県のお隣に位置する岩手県が生んだスーパースター、大リーグ(エンゼルス)で活躍する大谷翔平選手です。
彼は高校時代、「8球団からドラフト1位」という目標を掲げました。そして、それを達成するために必要な要素を、3×3の9つのマス(目標達成用紙)を使い、72個の具体的なアクションとして落とし込んだのです。
8球団からドラフト1位をもらうために必要な8つの要素として、大谷選手がまず考えたのは「体づくり」「コントロール」「キレ」「メンタル」「スピード160km/h」「人間性」「運」「変化球」。そして、たとえば「スピード160km/h」を出すために必要な要素を、「軸でまわる」「下肢の強化」「体重増加」「体幹強化」「肩周りの強化」「可動域」「ライナーキャッチボール」「ピッチングを増やす」というように、さらに8つに細分化しました(※下画像参照。ほかの「体づくり」や「コントロール」などについても同様です)。
こうして大谷選手は、目標達成に必要な具体的アクションを72個も炙り出したのです。その後の大谷選手の活躍は、説明するまでもありませんね。
甲子園での「秋田県勢躍進」という目標の達成のために、やるべきことを緻密に計画して遂行し続けた秋田県。「8球団からドラフト1位」という目標の達成のために、独自の目標達成用紙を用い着実に課題を解消していった大谷翔平選手。二者に共通するのは、まさに目標達成のための “アクションの具体化” という部分でしょう。
目標は、そのままでは手の届かない遠い目標のままです。達成のためにするべきことを具体化し確実に実行し続けることで初めて、手の届く距離にある “実現可能な物事” に変わります。実際、かつて花巻東高校を率いていた佐々木洋監督も、「大谷はボールを投げていたらたまたま160kmが出たのではなく、160kmを投げようと思って出した」と語っています。
負けず嫌いで元気な子どもたちは、心の中にいろいろな夢を抱いていることと思います。ここで言う夢とは、10年後や20年後に叶えたい “将来の夢” に留まらず、もっと身近な “小さな目標” “ちょっとした願望” も含まれます。「次の算数のテストで90点以上とりたい!」「友だちのA君には50メートル走で負けたくない!」「字をもっときれいに書きたい!」「そろばん1級に合格したい」「クロールで25メートル泳げるようになりたい!」などなど、子どもによってさまざまでしょう。
せっかくそういう目標を持っているのならば、子どもの成長のチャンスです。目標を目標のまま終わらせないために、ちょっとだけお子さまと時間をとって、「そのために何をするべきか?」を一緒に考えてみてはいかがでしょうか。たとえば、次の算数のテストで90点以上とりたいのならば、「毎日ドリルを2ページ進める」「不正解だった問題は次の日にもう1回解く」「解説を見てもわからなかった問題は必ず親に聞く」といった具合ですね。
アクション具体化の際の注意点は、親が無理やり決めるのではなく、子ども自身に考えさせることです。子どもは、親に強制されたことはなかなかやりたがらないものの、自分で決めたことであれば意欲高く取り組めることが、研究でもわかっています。また、『世界で800万人が実践! 考える力の育て方』の著者である飛田基氏は、アクション設定のポイントとして「行動が実行可能で、具体的であること」と説いています。
もしも、子どもが考えたアクションが、目標達成のためにはあまりにも物足りない(あるいは逆にあまりにも実行が難しすぎる)のであれば、親がうまく誘導してあげましょう。目安は “きちんと頑張れば実行できる” ぐらいのレベルですよ。
***
金足農業高校の大躍進は、決して偶然というわけではなかったのですね。
目標を持った瞬間が、成長のチャンス。ぜひご家庭で、子どものための『目標達成プロジェクト』を実践してみませんか?
(参考)
朝日新聞デジタル|「監督の意識低い」外部指導者怒ったことも 秋田の強化
河北新報ONLINE NEWS|<甲子園>金足農、躍進の背景に秋田県の強化策 「4強入り」目標見事果たす
NewsPicks|大谷を怪物にした花巻東高校の「目標達成用紙」
ベネッセ教育情報サイト|子どもに自信をつけさせる! 目標の立て方【基礎知識編】
ダイヤモンド・オンライン|子どもに伝えたい!必ず目標を達成するための「5つのステップ」
前回は「子どものほうが英語学習は有利か」というテーマについてお話ししました。今回は、小学校での英語教育の成否の鍵について考えていきます。
結論を先にいうと、日本の小学校での英語学習の成否の鍵は、教育的工夫を通して、INPUT-POOR な環境を INPUT-RICH な環境に近づけることができるかどうかにかかっています。
INPUT-POOR 環境とは、日本で英語を第二言語として学ぶ環境です。このような環境では、母語(日本語)が生活言語であるため、英語は意識的な学習の対象になるものの、自然な形で英語を獲得することがむずかしいのでしたね。
一方、INPUT-RICH 環境とは、英語を日常的に使用する状況で第二言語として英語を学ぶというような、自然に英語を獲得できるような条件が整った環境のことだとお話ししました。
その2つの環境の違いを特徴づける観点が必要となりますが、その際に注目したいのが連載第2回目でふれた3つの「言語学習の条件」です。以下は、3つの条件と2つの学習環境の関係を示したものです。
この3条件については前回すでに説明した通りですが、ここでも改めて簡単に要約しておきます。
英語にふれること(language exposure)には、対象言語にどれだけふれたかという「量」の側面と、発達段階的にみて理解可能で有意味な言語にどれだけふれたかという「質」の側面があります。
英語を使うこと(language use)においても同様に、どれだけ対象言語を使用したかという「量」の面、そして自分に関連した内容に関してどれだけ言語を使用したかという「質」の面があります。
そして 英語を使わなければならない必要性(urgent need)は、当該言語を使用する強い必要性があるかどうかを問う条件です。
さて、INPUT-RICH な環境においては、生活の場、教育の場で英語が自然に使用されるため、圧倒的な量のexposure(英語にふれる機会)と圧倒的な量のuse(英語を使う機会)が保証されることになります。
言語使用者である子どもが実際に直面する場面は、彼らに関連性のあるものであり、結局、量が質を担保し、質の面についても保証されることになります。そして重要なこととして、言語を使用しなければ日常が成立しないという切迫した必要性 (urgent need)も存在するということです。
したがって、INPUT-RICH な環境では、子どもについていうと、自然な学習 ――自然に言語を覚えること――が可能となるのです。
一方、INPUT-POOR な環境とは、上の表の「?」が示しているように、どの条件も十分なかたちで満たすことができない環境のことを意味します。そこでは、概して、自然な言語学習というより、むしろ 「意識的な学び」――学校などでの言語学習――が優勢になる傾向が強くなります。
自然な学習という観点からすれば INPUT-RICH な環境が、子どもの場合、圧倒的に有利になるはずです。では、日本で英語を学習する際にどうすればよいか、という問題がでてきます。
この問題に入る前に、国内の INPUT-POOR な環境が海外の INPUT-RICH な環境より、英語を学ぶ上で望ましい環境であるという意外な側面にもふれておきます。
例えば、父親の海外赴任に伴ってある5歳児が米国に移り住むことになるという状況を考えてみましょう。そして、そこで彼は10年を過ごすとします。最初の2〜3年は、英語が機能的に使えないということから、なんらかのストレスを経験することが予想されます。
次第に英語で自由に表現できるようになるでしょう。しかし、多文化社会の米国で生きていると、「きちんとした」英語を身につけることが、アメリカ社会に溶け込んでいく鍵となります。つまり、言語はコミュニケーションの道具というだけでなく、「アイデンティティーの標(しるし)」にもなりうるのです。
この男子は10年を米国で過ごす間にさまざまな乗り越えられない壁や疎外感など心理的な葛藤を経験することになるでしょう。その結果、「日本人として振舞うか」「アメリカ人として振舞うか」をめぐる “identity crisis” (アイディティティーの危機)という問題に直面する可能性があります。
筆者が勤務していた大学ではいわゆる「帰国子女」が多く、その中で上記のような経験をしている人たちも多数いました。文化的にも言語的にも「確たるもの」を持ち得ないということからくる「不安定さ」を抱えたまま、大学生になっている人たちがいるということです。
INPUT-POOR な環境では、幸いなことに文化適応に伴う深刻な問題は起こりません。安心できる場面で、英語を「コミュニケーションの道具」として学ぶことが可能なのです。
言い換えれば、英語を国際語として学習できるという環境があるということです。米国で英語を身につける際には、英語はアイデンティティーの標となり、きちんとした米国の文化規範に合致した英語を獲得しなければならないという心理的要求が強くなります。
米国規範からみてきちんとした英語が使えなければ劣等感すら覚え、それが上記の「不安定さ」につながるのです。日本で英語を学習する際には、国際的に通じる英語を身につければよく、随分気持ちが楽になるはずです。これは英語を学ぶ際のアドバンテージだといえます。
しかし、日本のような INPUT-POOR な環境では、自然に英語を身につけるという環境にはないため、 英語を意識的に学ぶ必要があります。そこで、「学習支援」が必要となるのです。学習支援と学習環境と年齢の関係については、次のようなことがいえると思います。
子どもであれば、INPUT-RICH な環境にあれば、自然に英語を獲得することが(基本的には)可能であり、学習的支援の必要性は弱いといえます。しかし、成人の場合は、よい言語環境が与えられるだけでは自然な言語習得はむずかしく、INPUT-RICH な環境においても学習的支援が必要となります。だから、米国に行って大学などの機関で英語を学習するのです。
日本のような INPUT-POOR な環境では、年齢に関係なく、学習支援が必要となります。自然に英語を覚える環境がないからです。INPUT-POOR な環境の強みは、上記のように文化適応の問題に直面することなく、国際語としての英語を学ぶ環境にあるということです。
しかし、ここでは残念ながら “The younger, the better.”(若ければそれだけよい)の仮説は、通用しません。自然な学習と意識的な学習を区別するなら、意識的な学習においては、成人のほうが子どもより有利であるという見方ができるでしょう。成人だと目的意識を持って英語学習に向き合うことができるからです。しかし、INPUT-POOR な環境のままでは、いくら意識的に勉強しても、なかなか使えるようにはなりません。
そこで、成人か子どもかを問わず、英語教育(学習)の効果を高めるためには、教室をどれだけ INPUT-RICH な環境にできるかが鍵となります。もちろん、英語圏での環境のようにはいかないまでも、たくさんの良質の英語にふれ、たくさんの英語を使い、そして英語を使っても白けない場を作る――英語を日常化する――ことができれば、実践的な英語力を身につけることができるでしょう。
ここでいう INPUT-RICH な学習環境とは、外国の国旗などが飾られ、コンピュータが配備され、ネイティブスピーカーが存在するという教室空間だけを意味するのではありません。もっと重要なのは、学習活動(エクササイズ)による場づくりです。
教科書の中の英語を学ぶのではなく、活動の中で、活動を通して英語を学ぶということです。児童や生徒が本物で、意味ある活動としてとらえ、自分事として参加できる活動を行うことで、INPUT-RICH な環境は創り出されるのだと思います。
(この記事はアフィリエイトを含みます)
宇宙飛行士になるという夢を追い求めていた飛田基さん。その夢が破れたのは35歳のときでした。
その後、経営コンサルタントとして活躍をはじめた頃に出会ったのが、イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが提唱するTOC(制約理論)と呼ばれる科学理論と思考法。システムを全体としてとらえ、一番弱い部分の集中した改善により成果を高めるためのマネジメント手法なのですが、同じ考え方を使って、子どもの「考える力」を劇的に伸ばすこともできるそう。
飛田さんはその実践方法を、『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』(ダイヤモンド社)という1冊の本にまとめ、読者の高い支持を得ました。
まずは、そもそも「考える力」とはどんなものなのか、飛田さんのお考えを伺いました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)
いまはもう、ひとむかし前、ふたむかし前のように親が農業をやっていたら子どもも農業をする、商売をやっていたら商売をするというような時代ではありませんよね。サラリーマンや公務員になれば安泰かといえばそうでもない。特に、最近だとどんどん発達していくAIに、人間が仕事を奪われるというような話もあります。それらの現実を踏まえると、いまの子どもたちが大人になる20年後がどういう時代になっているのか、誰にも見当がつきません。
でも、そのわからないなかでも自分なりの答えを出していかなければならない。その答えを出す能力こそ、「考える力」でしょう。それは、「生きる力」と言い換えてもいいかもしれませんね。
親も不安なのでしょう。そろばんと習字をさせておけば安心、子どもを大学に入れたら安心、英会話を学ばせておけば安心というわけにはいかないのですから。以前と比べて塾や習い事の幅も広がって、あれやこれやといろいろなものを子どもに学ばせている親御さんもいるでしょう。それもすべては、先行きが見えづらくなっているからでしょうね。
ただ、教育の中心はやっぱり学校です。日本の教育現場でも「考える力が必要だ」と声高に叫ばれるようになってきました。ですが……、これまでわたしが見てきた限りでは、以前の学校教育と大きな変化があったとはまだ感じられていません。中学生の理科の授業では、植物には被子植物と裸子植物があって……というふうに、わたしが中学生の頃と同じことをしている。やっぱり基本は、「暗記」なんです。
とはいえ、考える力を育てる試みはなされています。たとえば、ある資料からなにが読み取れるかと問うような授業ですね。ただし、塾に通って私立中学受験を目指しているような子どもの場合、そういう授業も想定した学習をしていますからすぐに答えてしまう。でも、それは塾で習って知っている「答え」に過ぎません。それでも、「この資料のどこからそれがわかるの?」というふうに、聞き方次第ではもっと踏み込んで考えさせることもできると思うのです。
「これからは考える力だ」「アクティブ・ラーニングだ」と言われても、先生たちにもすぐにそのスキルが身につくわけではありません。まだはじまって間もないものですから、これからに期待したいところですね。
日本の教育現場には、なにか問題が起きたときに責任の押し付け合いになりがちだという問題があるように思います。勉強は基本的に暗記が中心ですから、当然ながら勉強は楽しくないし、勉強についていけないと感じる子どもたちもいます。そうすると、「犯人探し」が始まってしまう(苦笑)。それぞれの立場から、親のしつけが悪い、学校の教育が悪い、社会の仕組みが悪い、あるいは子ども自身の問題だというふうに……。
学校の先生もなかなか難しい立場に置かれていますよね。「最終的に大学に進学させたい」という親は多く、現行のカリキュラムも基本的にはそのためのものです。どんなに、「これからの子どもたちには考える力を身につけさせなければならない」と言われたところで、学校教育では入試を突破させるための授業に力を入れざるを得ないわけです。
小学校から高校まで一貫して同じ子どもを見られるのなら、いろいろとやりようはあるでしょう。でも、現状の体制ではひとりの子どもの教育には基本的に1年間しか携わりません。「この学年ならこの学習がこの程度できていなければならない」と「決められた靴」をぴったり履ける子どもを育てるように言われているようなものです。本来なら、それぞれにちがう子ども、つまりさまざまな「足」のほうに靴を合わせたほうが明らかにいいはずなんですけどね。
考える力を伸ばすことに限らず、勉強は、まずはそれぞれの子どもが「楽しくできる」ということが一番。絵を描きながら、体を動かしながらなど、遊びを通して考える力を伸ばす手法をどんどん編み出していく必要があるでしょう。
やはり、「勉強」ということ自体にアレルギー反応を示す子どもたちが一定数いることは現実です。「これは考える力をつける『勉強』なんだよ」と言うと、それだけで拒否してしまう。だますわけではありませんが、子どもの普段の生活のなかにある題材を使って、子どもに勉強とは気づかせない、遊びの一部だと感じさせるような学習法が求められているのだと見ています。
そうして考える力を伸ばしてあげられれば、その子どもが「幸福になる」ことにもつながります。誰にも正解がわからない時代のなかでもしっかりと自分なりの答えを導き出せる子どもであれば、親に言われたから大学に行く、まわりがやるから自分もやるというような、他人が作ったレールの上を歩むことはないでしょう。そうすると、自分がやりたいことを仕事にできる可能性もきっと高まるはず。
大人になれば、時間の大部分を占めるのは仕事です。それが自分のやりたいことであれば、とても幸せではありませんか。考える力をつけるということは、幸せに近づく近道になることだと思うのです。
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方——ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』
飛田基 著/ダイヤモンド社(2017)
■ 飛田基さん インタビュー一覧
第1回:「考える力」を伸ばすことは幸福に近づく近道
第2回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(前編)
第3回:子どもの考える力を伸ばす「3つの思考ツール」(後編)
第4回:子どもの教育は「個のちがい」に目を向けることからはじめる
【プロフィール】
飛田基(とびた・もとい)
1974年4月2日生まれ、千葉県出身。早稲田大学理工学部を卒業後、フロリダ大学博士課程を修了。フロリダ大学ポストドクトラルフェロー、日立製作所を経て経営コンサルタントとして独立した後、イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットが唱えるTOC(制約理論)に出会い、それを多くの人に広めることを決意。現在、NPO法人・教育のためのTOC日本支部マスターリードファシリテータとして、大人と子どものコミュニケーション向上による教育の改善に尽力している。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
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これまでの詰め込み型の教育ではなかなか育てることができないとも指摘される「考える力」。その力を伸ばす「知能教育」を、なんと約50年前に導入した小学校があります。それは、東京都武蔵野市にある聖徳学園小学校。現在、校長を務める和田知之先生は、その知能教育や教材開発に長く携わってきました。聖徳学園小学校でおこなわれているのは、「知能教育」によって英才児を育てる「英才教育」。その根幹を成すのが「知能教育」だそう。いったいそれは、どんなものなのでしょうか。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人
我が校の「英才教育」が目指すものは、いわゆる英才児を育てることです。しかも、ただ高い学力があるだけではなく、知識や技能を習得する力、習得したものを新たな場面で活用する力、正しく判断して行動する力といった「考える力」を併せ持つ子どもを、我が校では英才児としています。
その「考える力」を伸ばすために取り入れているのが「知能教育」です。知能教育には大きな柱がいくつかあり、そのひとつが「知能訓練」。わたしたちがベースにしているのは、アメリカの知能心理学者であるジョイ・ギルフォード博士の知能構造論です。博士は、人間の思考、知能因子というものを120種類に分類しました。たとえば、記憶に関わるものだけでも細かく24種類に分類しています。
その120種類のうち、子どもたちの「考える力」を伸ばすために重要で、かつ通常の授業では刺激できない90種類を抜き出して、ひとつずつ刺激を与えていくというのが知能訓練です。対象としている子どもは1年生から4年生まで。1週間に1回、90分の知能訓練を実施しています。
「訓練」と言うと、教員たちがストップウォッチを持って、子どもたちのお尻をたたきながらやっているなんてイメージを持つ人もいるかもしれませんが……(笑)、そんなことはまったくありません。実際には、子どもたちが楽しめる頭を使う遊びをさせています。
「漢字折り絵パズル」「計算間違い探し」「熟語早当てゲーム」「立体数パズル」などと名づけているこれらの教材は、じつはほとんどすべてがオリジナルのもの。毎週水曜日には午前中に2時間以上かけて教材を検討しています。じつは、この教材をつくるのがとても大変なんです。面白くなくちゃいけないし、すぐに解けちゃいけないし、かと言って難し過ぎてもいけない。どうやっても解けないというようなミスは絶対に許されないですしね。担当スタッフには本当に頭が下がる思いです。
強く意識しているのは「教えるのではなく、考えさせる」ということ。知能は知識とはちがって、教え込んで発達するものではありません。できるだけ子ども自身に考えさせて、子どもが行き詰まった場合でもヒントを与える程度にしています。
そして、知能教育のもうひとつの柱が、「ゲーム」と「工作」。これらは、1年生と2年生のカリキュラムに組み込んでいます。取り組むゲームはオセロや五目並べ、将棋、百人一首など。かるたをすることもあれば、かるたをつくることもあります。ゲームをすることで、思考力を養うことを目指しています。
工作は、紙コップや割りばし、空き箱など身の回りの材料を利用して、テーマに沿ったものをつくり上げるというもの。手先の訓練によって大脳の発達を促しながら、発想力と技術を高めます。
これらの知能教育の成果は、知能指数(IQ)の著しい伸びとなって現われています。我が校の5年生、6年生の平均知能指数は160〜170。知能指数の平均値は100ですから、長年にわたって試行錯誤しながら知能教育を続けてきたことの手応えは感じていますね。
でも、もっとも重要なことは社会に出た子どもたちが自分のやりたい職業に就いて生き生きと活躍しているかどうかということ。とはいえ、社会での活躍レベルというようなデータは残念ながら集めることはできません。代わりに客観データとできるものがあるとすれば、大学入試の実績です。
大学入試の受験生には、高校とはちがって出身小学校に対して大学入試結果を報告する義務がありません。そこで、我が校ではアンケートというかたちで卒業生に手紙を送って、大学入試の結果を報告してもらっています。回収率は決して高くないのですが、2010年度の卒業生65人のうち10人が東京大学に現役合格したことがわかりました。我が校は入試に合格することを教育目標とはしていませんし、卒業後に進学した中学校や高校での学習によるところも大きいとは思います。ただ、子どもたちの「考える力」というベースをつくってあげることはできたのかなとも感じています。
我が校の子どもたちは、確かに知能検査を受けて入学してきた「選ばれた人間」という言い方もできるかもしれません。しかし、選抜時に見るのは一般的な学力ではなく、「考える力」が伸びそうかどうかというところ。その力を最大限に大きく伸ばそうという発想で教育しています。
そして、我が校の教育メソッドは、すべての子どもたちに効果的なものなのです。親御さんのなかには「自分が子どものころは勉強が苦手だったから……」と、お子さんにあまり大きな期待をしていないという人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
かつては、人間の知能は遺伝的要素が強く、教育によって高めることは難しいと考えられていました。ところが、大脳生理学や知能心理学の研究が進むにつれて、遺伝的要素よりも育った環境、つまり教育によって大きく変化することがわかってきたのです。ですから、お子さんの日常生活のなかに、知育ゲームや工作を取り入れてみてください。きっと大きな成果を生んでくれるはずです。
日本の人口は100年後には4000万人台になるとも言われています。急速に人口が減少していくのですから、子どもの数をどんどん増やすということは簡単にできることではない。であるなら、子どもたち一人ひとりの能力をしっかり伸ばしてあげることが重要になるのは明白ですよね。将来の日本を変える原動力となるのは、政治ではなく教育、そして子どもたちなのです。
『IQ130以上の子どもの育て方』
和田知之 著/カンゼン(2018)
■ 聖徳学園小学校長・和田知之先生 インタビュー一覧
第1回:学校教育の“ゴール”はこう変わる! いま求められる「考える力」の正体とは
第2回:子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由
第3回:5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと
第4回:「満点を取らせないテスト」に込めたこだわり。授業で触れていない問題も出題する意図とは
【プロフィール】
和田知之(わだ・ともゆき)
1966年生まれ、東京都出身。法政大学卒業後、1991年より聖徳幼稚園英才教室に勤務。2000年より聖徳学園小学校に配属となり、また、知能診断として多くの保護者にアドバイスをおこないながら、知能教育やその教材開発に従事。2015年から現職の聖徳学園小学校長、聖徳幼稚園長、英才教室長に就任。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
StudyHackerこどもまなび☆ラボの人気連載『絵本よみきかせコーチング』でおなじみ、絵本スタイリスト®景山聖子さんによる夏休み特別講座が、8月4日(日)に開催されました。
幼児の部(午前)は、最初から最後まで大盛り上がりでにぎやかな講座に。そして小学生の部(午後)は、「漢字ゲーム」を取り入れたり、読み聞かせの基礎ルールを学んだりと、かなり中身の濃い講座となりました。
幼児の部、小学生の部ともに、景山先生ならではの “国語力アップ” のポイントがちりばめられた、実際の講座の様子をレポートします!
まずは、数多くの読み聞かせ指導経験を持つ景山先生ならではの「挨拶ゲーム」で心の準備運動を。ジャンケンしながら「はじめまして」の挨拶です。たくさんのお友だちと挨拶をするうちに、最初はぎこちなかった挨拶が、どんどん楽しそうな声に変わっていきました。
そして緊張がほぐれたところで、「さあ、始まるよー!」と、読み聞かせがスタート。1冊目は『へんしんトンネル』(あきやまただし、金の星社)ですよ。約半分の子が「知ってる~」とのことでしたが、読んだことのある子も初めて読む子も、全員が興味津々!
こちらの絵本はふしぎな言葉遊びになっていて、かっぱが「かっぱかっぱ……」とつぶやきながらトンネルをくぐると、「……ぱっかぱっか」と馬になって出てきちゃうというストーリー。景山先生の優しくて聞き取りやすい声に合わせて、いろいろなものが変身します。
「ぱっかぱっかぱっかぱっか!」と先生と一緒に読む子もいれば、「今度はなにかなー?」なんて心の声が出てしまう子も。そして絵本を見つめる子どもたちの目はとにかくキラキラ! 次はなにが起こるのかと期待しながら絵本にくぎづけになっていました。こんなときに集中力が育まれるのですね。
トンネルをくぐってなにかに変身するたびに大きなリアクションをとってくれていました。
次はリアル『へんしんトンネル』体験です。お父さんお母さんが作る、長いトンネルを抜けると……なりたいものに変身できる! という夢のあるレッスン。子どもたちは、少し恥ずかしそうにしながらトンネルをくぐって、「消防士」になったり、「アリエル」になったり、「うさぎさん」になったりしていました。
絵本の中の世界と、現実の世界がこんなふうにリンクすると、子どもたちにとって印象に残りますし、ますます絵本が大好きになりますね。
ここで一回、景山先生より読み聞かせについてのアドバイスが入りまして、ついにメインの絵本『てじな』(土屋富士夫、福音館書店)の読み聞かせです。怪しげな手品師が呪文を唱えると、アッと驚く展開が待っています。手品の前には必ず「あんどら、いんどら、うんどら!」という呪文が入るのですが、3回目の呪文では、みんな大きな声で唱えていました!
そして、この呪文を唱えたら次はどんなものが出てくるのかな……と、子どもたちはワクワクドキドキが隠せないといった表情で、半分も読まないうちに、すっかり絵本の世界へワープしている様子。つい前へ前へ、先生と絵本に近づいてしまう子が続出でした(笑)。
呪文を唱えながらの写真撮影です。絵本に出てくる帽子やアラビアンな衣装を身につけてハイチーズ♪
――最後に、今回のレクリエーションの意味を先生に教えていただきました。
「絵本を読んだあと、親はつい『どう思った?』などと感想を聞いてしまいがちですが、幼児に絵本の感想を聞くことは、あまりおすすめしていません。なぜならば、子どもは大人と同じくらい絵本に感動しています。でも、まだその気持ちを言葉に変えるという作業が苦手なのです。感想を聞かなければ、感じたものを自分の中で何倍、何十倍にも膨らませることができます。ですから、トンネルを実際にくぐる遊び、自分が手品師になる遊びを、読み聞かせとセットにしているんです。これは単なる楽しい遊びのように思われますが、実は子どもの想像力・感受性を大きく育ている瞬間なのです」
参加してくれた子どもたちは、どんな想像をして、なにを感じていたのでしょう? いつか……聞いてみたいものですね!
小学生は少しレベルアップして、「名前」と「夏休みに楽しみにしていること」をセットにした自己紹介です。なんと、学校で読み聞かせ係をしているという子や、読み聞かせのボランティアをしているというお母さまもいらっしゃいましたよ。
上を向いたり、下を向いたり、胸を開いたりしながら「あー」と発声。同じ「あー」でも、体の向きや姿勢で声の出方が全然違うのです。最後はみんな“いい声”が出ていましたね。
声の準備ができたところで『ピカゴロウ』(ひろただいさく・ひろたみどり、講談社)の読み聞かせ。まずは先生が読みます。登場人物である「ひなちゃん」とカミナリの子ども「ピカゴロウ」の声色を変えたり、感情をぐっと込めたりしながら読んでくれるので、子どもも大人も引き込まれてしまいました。
そしていよいよレッスンです。本の持ち方や、擬音語の効果的な読み方など、読み聞かせのコツを学びます。また、登場人物はどんな子なのか、なにを考えているのか、というのを想像しながら読むことがポイントになってくるとのことです。
そして一番大切なことは……「うまく読もうとしないこと!」ですって。なぜならば、「あなたにしかできない読み聞かせをすればいい」のだから。それには、自分の魅力に気がつくことが大事なのだと景山先生は熱く語っていました。
上記は、参加してくれた子どもたちの「魅力」です。これを本人にしっかり伝えることで、子どもたちは自分の魅力に気づくことができ、自信がつくのだそう。実際に自分の魅力を聞いたときのみんなの顔はとても嬉しそうでした!
また、お子さまの魅力を本人に伝えるときのポイントを景山先生に教えていただきましたよ。
「間違えずに読めたね、などの褒め方をすると、次も間違えないようにというプレッシャーを与えてしまいます。褒めるときは常に、その過程での素敵な部分を認めるという方法を取ることで、お子さまの意欲を高めることができますよ」
登場人物の気持ちがこもった読み聞かせでした……! ひなちゃんとピカゴロウの会話が涙を誘います。
このほかにも、親子対抗漢字ゲームや読み聞かせ体験撮影、景山先生による親御さま向けレクチャーなども行いました。
まだ習っていない漢字がするすると頭に入る「漢字ゲーム」。親子対決は、2対1で小学生チームの勝利でした。
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幼児の部、小学生の部をとおして感じたことは、子どものころはみんな絵本が大好きだということ。絵本の魅力を知った子どもたちは、小学校に入って本が大好きになり、物語の世界に入り込むことができるのだと思います。もしかしたら「本を読まない子」は、「本の楽しさを知らない子」なのかもしれません。今回参加してくれた子どもたちは、絵本の世界の楽しさを存分に味わってくれたように感じます。
そして小学生の部での読み聞かせは、それぞれが本当に魅力的で、心の奥に響くものがあり、つい涙が……。景山先生がおっしゃっていた、その子にしか出せない魅力が満載でした。またみんなの読み聞かせが聞きたいです。
【講座内にて使用した絵本】
ひろただいさく, ひろたみどり(2016), 『ピカゴロウ』, 講談社.
土屋富士夫(2007), 『てじな』, 福音館書店.
あきやまただし(2002),『へんしんトンネル』,金の星社.