2019.10.18

運動能力だけでなく「諦めない心」が育つ! 親子ランで得られるメリットが多すぎる

編集部
運動能力だけでなく「諦めない心」が育つ! 親子ランで得られるメリットが多すぎる

スポーツの秋。普段あまり運動していない人も、「身体を動かそうかな」という気持ちになる季節です。地域によっては持久走大会が開催されるなど、子どもたちのスポーツへの意識が高まる時期でもあります。

今回は、今じわじわと人気の高まりを見せている親子ランについて、くわしく解説していきましょう。

『親子ラン』の人気の秘密とは?

2007年にスタートした東京マラソンをきっかけに、ここ数年でジョギング・ランニングブームが巻き起こったことは記憶に新しいのではないでしょうか。特に、20~30代を中心にランニング人口が増加し、メディアでも “ラン活” と称して頻繁に取り上げられるようになりました。

さらに近年では、全国各地で多くのマラソン大会が開催され、さまざまなコースを用意して老若男女が楽しめるイベントへと進化しています。その中でも、親子で参加できる『親子ラン』や『ファミリーマラソン』は高い人気を集めており、エントリー開始からすぐに申し込みが殺到することも!

たとえば、お母さんと子どもが親子マラソンの部に参加して、お父さんはフルマラソンの部に参加、もしくはお父さんと小学生の子どもが一緒に走り、お母さんは下の子と一緒にゆっくり歩いて参加するといった光景もよく見られるといいます。

■親子ランの基本ルール

親子で走るコースは、ほとんどの場合2キロ前後が多いそう。これなら初心者でも無理なく走ることができますね。そして、子どもの年齢は小学生以下であることが条件なので、幼稚園くらいから小学校6年生までと、幅広い年齢のお子さんが参加しているようです。

もっとも重要なのが、ゴール前100mから“手をつないで”ゴールすること。小学校3、4年生くらいになると、親と手をつなぐことを恥ずかしがる子どもも増えてきますが、手をつないで一緒にゴールに向かうことで、親子の絆を強く感じられるはずです。

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親子ランにはどんなメリットがあるの?

ランニングインストラクターの斉藤太郎さんは、運動が得意でない子どもの生活習慣にはある特徴が見られるといいます。それは、親子そろって外で身体を動かす時間が極端に少ないこと

親自身があまり身体を動かすことが好きではない、忙しすぎて運動する時間がない、移動は基本的に車……。このように、日常生活と運動を切り離した暮らしをしていると、運動に対するハードルが上がってしまいます。すると、いざ運動を始めようと思っても「大変そう」「面倒」といった気持ちが勝ってしまい、二の足を踏んでしまうというわけです。

ですから、まずは親自身の苦手意識を取り除き、家族で楽しく走ることを目標にしてみましょう。走ることが習慣になると、思っていた以上にさまざまな効果が感じられるはずです。

■親子ランがもたらす効果

子どもの場合、走ることを習慣にすると瞬発力や持久力が高まり健やかな身体づくりの一助となります。そして精神面では、忍耐力がつくだけでなく、目標を達成する喜びを知ることができるでしょう。それは勉強やほかのスポーツをするときにも求められる、“諦めない心”を育むことにもつながります。

また、走ることはさまざまなスポーツのベースにもなるので、ランニングをきっかけにスポーツ自体にも興味が出てくるかもしれません。もちろん子どもだけではなく、大人も健康や美容、リフレッシュ効果が期待できます。走り終えたあとの爽快感を一度味わうと、やみつきになる人も多く、ストレス解消にもなるようです。

そしてなんといっても、一緒に走ることで親子の絆がよりいっそう深まります会話ができるくらいのスピードでランニングすれば、学校での出来事、お友だち関係の悩み、日頃感じている些細な疑問など、いつもとは違ったコミュニケーションを楽しむことができるでしょう。

ロンドン五輪マラソン代表の藤原新選手は、少し違う視点で「親子が一緒に走ることの良さ」について語っています。

長距離は日ごろ練習していない大人より、練習している子どものほうが速い場合もあるといい、そんなお子さんにとってはお父さん、お母さんより僕(私)のほうがすごいぞ!という貴重な体験になるというわけです。

子どもの自信につながることはもちろんですが、親も少しくらい子どもにダメなところを見せたほうが、親子の信頼関係がさらに深まります。藤原選手自身も、お子さんに対して “負けたフリ” をよくするそうですよ。

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さあ、親子ランを始めよう!

親子ランに興味はあるものの、運動経験が少ないため不安を感じている親御さんも多いはず。ここでは親子ランを始めるにあたって、いくつかアドバイスをしていきます。ぜひ参考にしてください。

「走ること=楽しい!」を身体で覚えさせる

まず第一に、子どものランニングは「練習」という概念ではなく、「楽しさ」や「遊び」の要素を取り入れるように心がけましょう。

前出の斉藤さんは、追いかけっこのように逃げたり追いかけたりする動きも効果的だといいます。前後左右にすばやく体重を移動させるなどダイナミックな動きをして、転ぶような経験を繰り返すことで、徐々にランニングフォームが洗練されてくるのです。

車通りの多い道や狭い歩道では難しいですが、ランニングの途中で公園に寄って追いかけっこをすると、楽しみながら走る経験を積み重ねられそうですね。

ペースにメリハリをつけて飽きさせない工夫を

単調なペースで走っていても飽きてしまうので、メリハリをつける工夫も必要。斉藤さんは次のような走り方を提案しています。

途中まではゆったりリラックスラン。

ときにはスキップも含めるなどして変化をつける。

そしてゴールまでの残り数十メートルを競争!

大人の感覚で型にはめるのではなく、自由な発想でオリジナルメニューを考えてあげましょう。

ちょっと変わった練習法:新聞紙ラン

正しいフォームを意識して走ることを子どもに教えるのは難しいですよね。言葉で説明してもなかなか理解できない場合、新聞紙を使った方法を試してみるのもおすすめです。

それは、新聞紙1面分、またはその半分を体幹部に当てて風を受けながら走るというシンプルな方法。人は何かに触れられている感覚があると、その部位を意識できるといいます。新聞紙を体の前面に当てることで体幹がまっすぐになって走れるそうなので、ぜひ試してみてください。

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■大会に参加するときの注意点

実際にマラソン大会に参加することになった場合、いくつか気をつけなければならない点があります。五輪マラソンメダリストの有森裕子さんは、次のような光景をよく目にすることから注意喚起をしています。

NG1:ずっと手をつないで走る

大きな規模の大会では同時に何百人ものランナーがスタートを切ります。そのため、子どもとはぐれてしまうケースも多いそう。だからといって、ずっと手をつないで子どもを引っ張るようにして走るのはよくありません。

身長差がある大人と手をつなぐと、姿勢のバランスが崩れて自然な腕振りができなくなります。その結果、子どもは必要以上に疲れてしまうのです。人が混み合うスタート地点やゴール付近で手をつなぐのはいいですが、基本は手を離しながらも目は離さないことを心がけるようにしましょう。

NG2:勝ち負けにこだわり結果が悪いと叱る

有森さんによると、ゴール付近で「なんでもっとがんばらなかったんだ!」と叱る姿を目にすることもあるといいます。とくに父親にそういった傾向が見られるそう。

子どもは子どもなりに精一杯がんばって走りますが、最後の最後で親のペースについていけなくなり、結果的に不本意な成績で終わってしまうこともあります。そんなとき、「最後までよくがんばったね!」と声をかけてあげるだけで、子どもはランニングって楽しい!」「もっと速く走れるようにがんばりたいと思うものです。

NG3:事前にマナーを教えていない

号砲が鳴る前にスタートラインから足を踏み出している子ども、「よーいドン」の合図の前に走り出している子どももよく見られるといいます。子どもらしい無邪気さは微笑ましいですが、一歩間違えると怪我や混乱を招くので注意しなければなりません。

もっとも危険なのは、スタート付近で焦った子どもが転び、将棋倒しのように前後の子どもたちが次々と転んでしまうこと。このような事故を防ぐためにも、事前にしっかりとルールやマナーを言い聞かせることが親の務めです。

スタートラインを踏んではいけないよ
よーいドンの前にスタートすると、オリンピックでは失格なんだよ
ほかの子を押しのけて無理矢理抜かしてはいけないよ

スタートの直前に言い聞かせることはもちろん、日頃から一緒に練習するときにもしっかりと伝えておくことが大事です。

***
家族で過ごすせっかくの休日、ショッピングモールへ行って買いものや食事を楽しむのもいいですが、親子ランニングに挑戦するのもまた違った楽しさがあるはず。マラソン大会への出場を目標にすれば、家族の結束力もより強くなりますよ。

(参考)
笹川スポーツ財団|スポーツライフ・データ|ジョギング・ランニング実施率の推移
ハフポスト|負債を返せる『親子ラン』
日経Gooday|有森裕子 親子ランでやってはいけない3つのこと
日本経済新聞 電子版|親子でランニング練習 型にはめず、「遊び」要素も
MELOS|親子ランは勝ち負けよりもチームワークを大切に。プロランナー藤原新に聞く「親子で楽しむランニングのコツ」