教育を考える 2018.10.2

大坂なおみ選手から学ぶ! 「感情のコントロール」ができる子どもに育てるための2つの方法。

大坂なおみ選手から学ぶ! 「感情のコントロール」ができる子どもに育てるための2つの方法。

日本人で初めて全米オープン王者の座を勝ち取った大坂なおみ選手。国内外で新たなヒロインとして歓迎されている彼女ですが、注目を集めたのは試合中や試合後の彼女の落ち着いた振る舞いでした

絶対王者セリーナ・ウィリアムズとの決勝戦は、審判に対して怒りを露わにするウィリアムズ、そして沸き起こる観客からのブーイングと、近年稀に見る “荒れた試合” となりました。そんなプレッシャーを感じざるを得ない状況の中で、大坂選手が勝利を勝ち取ることができたのは、自身が述べた「我慢」という言葉に現れているように、日々のメンタルトレーニングが大きく関係していることは間違いないでしょう。

そこで今回は、「怒り」の感情が心身に与える影響や、大坂なおみ選手から学ぶ、子どもでも感情のコントロール(アンガーマネジメント)ができるようになるために家庭内でできることをまとめてみました。

「怒り」が子どもの成長に与える悪影響

ここでは感情の中でも「怒り」に着目し、怒りが心身に与える影響を見てみましょう。

筑波大学で行われた研究では、怒りの感情に適切に対処しない状態が続くと、怒りの感情が持続し、心身共に悪影響を及ぼすことが実験の結果示されています。特に、身体に与える影響としては副交感神経の機能低下が挙げられるとのこと。

副交感神経とは自律神経のひとつで、体を緊張状態に導く「交感神経」と対をなしたリラックス状態に働く神経です。副交感神経の機能の低下は交感神経の優位につながり、緊張状態が維持されることから、だるさや倦怠感、冷えやこり、胃腸の不調等の症状に悩まされるのだそう。

しかし同時に、この研究では「怒りの持続を避けるための2つの対処法」が示されています。

ひとつは怒りの感情を適切に相手に伝えようとすること。もうひとつは相手を見返すために何か行動を起こすことです。反対に単純に怒りの感情を爆発させた場合、怒りは持続し、相手の怒りの感情も喚起させてしまうことがわかっています。

この研究結果は、思わず怒りの感情が芽生えたときには怒らないようにするのではなく、怒りという感情に適切に対処できる術を学ぶことの重要性を示していると言えます。

また、両親が感情のコントロール方法を学ぶことも重要です。名古屋大学の研究では母親が怒りやすい性格の場合、子どもも怒りやすい性格になることがわかっています。子どもは両親の姿を見て育ちます。自分自身が子供に悪影響を及ぼさないよう、怒りやすいと実感している方はまず自分から変わるよう心がけましょう。

感情を爆発させた子どもへの対処法

感情を爆発させた子どもへの向き合い方によって、子どもの感情への対処の仕方は変わります。ここでは「親が子どもの気持ちに寄り添う方法」を紹介します。

【1】気持ちをしっかりと受け止める
感情の爆発に対して叱ったり無視したりすると、子どもの自己肯定感の低下や両親への不安感につながります。まずは子どもの話をじっくり聞いてください。そして「お友だちに嫌なことを言われたんだね。それは悲しいね」など、子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげましょう。

子どもによってはうまく感情を言葉にできない場合もあります。そんなときはギュッと抱きしめてあげることも効果的です。「お父さん(お母さん)はあなたの気持ちをわかっているよ」と態度で示してあげるのです。

【2】心を解きほぐす手伝いをする
感情の爆発は子どもが自分自身の感情をうまく言葉にできず引き起こっている場合に多く見られます。

気持ちをしっかり受け止めることで子どもが落ち着いたら、「〇〇ちゃんは、お友だちと一緒に折り紙で遊びたかったけど、お友だちは別の遊びをしたいって言ったんだね。それで〇〇ちゃんは悲しくなって泣いちゃったのね」など、子どもの混乱した心を一緒に整理していきましょう

ただし、一方的な意見の押し付けは禁物。あくまで子どもが自分で考えるお手伝いをするスタンスで臨むことがポイントです。

【3】気をそらせる
感情の爆発の原因となる出来事には解決できない問題や回復までに時間のかかる問題もあります。

その際は別のことで子どもの気をそらしてあげることも大切です。公園やスーパーに行くなど場所を変えたり、美味しいものを食べたり、一緒に子どもの好きなテレビ番組を見たりなど、子どもに合わせて注意を他のところに向けてあげましょう。

そんな簡単なことで!? と思うかもしれませんが、大人だって気分転換をしたあとはケロリと嫌なことを忘れてしまう場合もありますよね? 子どもだって同じことですよ。

普段からできる! 家庭内アンガーマネジメント

子どもが自分で感情をコントロールできるようになるためには日頃からの習慣づけが必要です。そのアプローチ方法は、「感情から行動にアプローチする方法」と、「行動から感情にアプローチする方法」の2つがあります。

今回は大坂なおみ選手も実践していた行動から感情にアプローチする方法を、アンガーマネジメントと呼ばれる1970年代にアメリカで誕生した心理トレーニングから2つ紹介します。

【1】「待つ」ことを習慣づける
子どもが負の感情を抱いた際にすぐに表現するのではなく、少し待って考えてみるように促しましょう。そうすることで成長してからも自分の気持ちを整理して伝えることが習慣づけられます。

たとえば、「時計の3のところまで(怒ることを)待ってみようか」などと言って具体的な時間を示し、無事達成することができたら褒めてあげるなどすると良いです。また、ご褒美を設定することも効果的です。

ただし、待つ際に提示した条件を破ることは子どもへの悪影響になります。あくまで約束を守れることだけ条件として提示しましょう。

【2】交換日記をする
子どもが文字を書けるようになったら連絡帳のような交換日記を始めることをお勧めします。

その日にあったことを書いてもらうことで、親が子どもの現在の状況を確認できることはもちろん、子ども自身も自分の気持ちを言葉にすることを習慣づけられるからです。

また、一方的に提出を求めるだけでなく、親自身も日記を書くことで、きちんと自分のことを気にかけてくれているのだと子供は実感することができるでしょう。書く時間を設けることが難しい場合はコメント程度でもかまいません。短くてもよいので毎日続けていくことが大切です

もし学校で嫌なことがあったときでも、紙に感情を書き出すことでストレスが軽減されます。この感情を書き出す作業は「エクスプレッシブ・ライティング」と呼ばれ、1日最低8分間書くだけでメンタルが強くなり、ストレスが解消されるとのこと。もしかしたらこちらは、大人にこそ必要かもしれませんね!

そして親の側も、家事のことや仕事のことなどを子どもと共有してみるのもオススメです。いつもとちょっと違う、“密度の濃い” 親子の会話ができますよ。

(参考)
NEWSポストセブン|大坂なおみを勝利に導いた行動から感情に働きかける方法
東洋経済ONLINE|大坂なおみが世界の称賛と同情を集めたワケ
山内星子(2009),「母親の怒り特性が幼児の怒り特性に与える影響 -媒介変数としての感情会話に着目して-」, Human Developmental Research Vol.23,175-188
ベネッセ教育情報サイト|急に怒り出す!感情がコントロールできない子どもの対処法は?
YOMIURI ONLINE|子どもでも実践できる!怒りのコントロール方法
東海学院大学紀要 3(2009)|感情のコントロールプログラム研究の展望:発達障害への適用に向けて
東洋経済ONLINE|「感情を紙に書く」習慣でストレスは減らせる