(この記事はAmazonアフィリエイトを含みます)
どんなにかわいいわが子でも、家事や仕事で忙しいときに「見て見て!」攻撃をされるとイライラしてしまいますよね。毎回子どもにしっかり向き合って、じっくりと見てあげることは難しいもの。スムーズに日常生活を送るためには「ちょっと待って」「あとでね」と聞き流してしまうのも仕方ありません。
そもそも、なぜ子どもは親に「見て見て!」とアピールしてくるのか。そして、親としてはどのように対応するのがベストなのでしょうか。今回は、子どもの「見て見て攻撃」についてじっくり考えていきます。
見て見てアピールをする理由は「〇〇欲求」
子どもが親に「見て見て!」とアピールするのには、ちゃんと理由があります。
見て見てアピールをする理由1:承認の欲求
千葉大学教育学部附属小学校元教諭の松尾英明氏によると、その理由のひとつは「承認の欲求」なのだそう。みなさんも子どもの頃、自分が頑張ったことやよくできていることを認めてほしい、ほめてほしい、と思って親にアピールしたことがあるはずです。この場合、親から「よく頑張ったね!」「すごい!」「上手だね!」という言葉をもらうことが目的であり、しっかりほめてもらえると満足します。また、けがをしたときに傷を見せたがるのも、「痛かったね」と共感してなぐさめてほしい気持ちや、「よく泣かなかったね」と我慢した自分を認めてほしい気持ちが根底にあるとのこと。
見て見てアピールをする理由2:安全の欲求
松尾氏は、子どもの見て見てアピールの理由として、「安全の欲求」も挙げています。たとえば、鉄棒や滑り台などで「やるから見てて!」と言うのは、相手(親)を信頼しているからこそ、安全を保証されたことにより思いきって取り組めるのです。この安全の保障は、子どもにとって何よりも心強いこと。松尾氏は「大人はただ見ているだけでも、これが重要」と話します。「見て!」と言われたということは、子どもから信頼されている、認められていることの証なのです。
見て見てアピールをする理由3:寂しさ・不安
そして「欲求」以外の理由として考えられるのは、「寂しさ」や「不安」です。メディアでも活躍中のカリスマ保育士・てぃ先生は、「最近パパ・ママが忙しいとか、下の子に手がかかって自分に対する愛情が確認できないといったとき、その不安や寂しさから『見て見て』が続くパターンがある」と指摘しています。
この場合、どんなにその場で見てあげても、ほめてあげても、何度も同じことを繰り返すケースがあるのだそうです。なぜなら、子どもの目的は「ほめられること」ではなく、「自分のことを見てほしい、もっと自分にかまってほしい」ことだから。寂しさを埋めて心を満たしてあげるには、その場の対応だけでは不十分なのかもしれません。
見て見てアピールは「意欲の一種」でもある!
「ほめてほしい」「安心感がほしい」「かまってほしい」などの欲求が理由の、見て見てアピール。では、「見て見て!」とアピールすることは、よくないことなのでしょうか?
東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘氏は、別の見方をしています。少し悪いイメージを抱かれがちな「承認欲求」ですが、沼田氏は「いまの自分とは違う力を身につけて、より高い別のステージへ行くための意欲の一種と捉えれば、悪いことではない」と述べています。決してマイナスなものではなく、むしろ「意欲の一種」としてとらえているのです。
さらに沼田氏は、「『見て見て』という思いが、前向きに努力や工夫をすることにつながるのなら、見て見て欲にも利用価値がありそう」とポジティブに受け止めてほしいとアドバイス。承認欲求を “ちょっと” 満たしてあげたり、 “前よりも” 満たしてあげたりすることを繰り返せば、結果的に大きな成果をもたらすこともあると述べています。
大人でも、SNSで「いいね!」の数が増えれば、「ちょっと満たされる状態」になりますよね。その蓄積が、もっと頑張ろうというやる気にもつながります。それは子どもでも同じ。「見て見て欲」をうまくコントロールすれば、勉強やスポーツを頑張る後押しをしてくれるでしょう。
子どもの「見て見て!」アピールへの対処法
最後に、いままさにこの瞬間、子どもの「見て見て攻撃」に悩まされている親御さんに向けて、いくつか対処法を提案します。ぜひ参考にしてくださいね。
対処法1:ほんの数秒「見る」
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』(学研プラス)著者で子育てNGワード専門家の曽田照子氏によると、子どもの「見て」に対応するだけならば、ほんの数秒、長くても数分ですむケースがほとんどなのだそう。ですから、「洗い物などをしていて手が離せなくても、子どもが絵を見せてきたら、できればその場ですぐに『見せて!』と興味をもって接するのが理想」とのこと。
また曽田氏は、後回しにするべきではない理由として、「『あとで』と後回しにされることが多い子どもは、『自分は大切にされていない』と不安にかられてしまう。そうなると(いずれ)親に話すことをしなくなってしまう」と述べています。前述したように、「見て!」と言われたということは、子どもから信頼されている、認められていることの証。だからこそ、面倒がらずに「来た来た」と思って、可能なかぎり温かい目で見てあげましょう。
対処法2:「〇分だけ待って」と伝える
『子どもの心を “荒らす親” ・ “整える親” 感情コントロールができる子に育てる』(PHP研究所)の著者で武蔵丘短期大学元教授の河井英子氏も同様に、「親の事情もあるが、できるだけ『あとで』は言わないほうがいい」と話します。子どもは「いま」「ここで」見てもらいたいのに、「あとで」と言われてしまうと、高揚した気持ちは急速にしぼみ、せっかくのやる気も失せてしまうから。どうしても手が離せない場合には、「5分だけ待って」と具体的な時間を提示して、必ずその約束通りに見てあげることを心がけましょう。
対処法3:子どもの視線の先を追う
一方、その場で見てあげれば満足してくれる子とは違い、先に述べたような「寂しさ」や「不安」から「見て見てアピール」をしてくる子には、どのように対応すればいいのでしょうか。
前出のてぃ先生は、「1日5分でいいので、その子の視線の先を追ってみる、ということをやってみて」とアドバイス。子どもの様子をじっと観察するのは、普段なら心に余裕があるときや、「いたずらしないかな?」「おりこうにしてるかな?」と心配しているときくらいかもしれませんね。ですが、何気ない日常の中で、ほんの5分でも「ただ子どもの様子を見る」時間があることが、とても重要なのです。
てぃ先生によると、「(寂しさや不安から)見て見てアピールをする子は、1日のなかで『ママ何しているかな』『パパどこにいるかな』と、ちらちら大人の様子を何回も確認している」のだと言います。このように、子どもが親の様子をちらちら確認しているとき、親が子どもの視線の先を追っていれば、バチっと目が合うのだそう。その瞬間、子どもは「あ、ママこっち見てくれた」「パパはぼくのことちゃんと見てくれている」と安心するのです。
1日たった5分だけでも、毎日必ずパパやママと目が合えば、子どもは「自分は大切にされている」と感じ、不安や寂しさが少しずつ払拭されていくのだそう。その結果、過剰な「見て見てアピール」は減っていくと、てぃ先生は話していますよ。
***
「親から認められたりほめられたりすることは、子どもにとってかけがえのない喜びをもたらし、自己肯定感を高め、ますますやる気を高める」と河井氏は述べます。「見て見て攻撃」が毎日続くと、「忙しいのに」「手が離せないのに」とうんざりすることもあるでしょう。しかし、子どもはあっという間に成長します。思春期に差しかかると、会話すらそっけなくなってしまい、「小さい頃はあんなに『見て見て!』って言ってくれたのに……」と少し寂しい気持ちになるかもしれませんね。永遠に続くわけではない「見て見て攻撃」。「見て見て!」は「わが子のやる気がアップする言葉」だと思えば、ちょっと嬉しくなりませんか?
(参考)
MAG2NEWS|子供の「ねー見て!ねー見て!」攻撃には深い心理があった
ダイヤモンドオンライン|【「踊る!さんま御殿!!」出演で話題】カリスマ保育士てぃ先生が実証! 子どもの「見て見てアピール」解決法
東洋経済オンライン|小学生の学びに見えた承認欲求との付き合い方
PHPのびのび子育て 2020年10月号, PHP研究所.
PHPのびのび子育て 2020年10月特別増刊号, PHP研究所.
PHPのびのび子育て 2021年6月特別増刊号, PHP研究所.
河井英子(2012),『子どもの心を“荒らす親”・“整える親”感情コントロールができる子に育てる』, PHP研究所.