2019.1.30

“折れない心” の育て方――ストレスをコントロールして何度でも立ち上がれる子に!

編集部
“折れない心” の育て方――ストレスをコントロールして何度でも立ち上がれる子に!

我が子の未来が順風満帆で輝かしいものとなるように……親であればそう願っていますよね。しかし実際には、他人からの心ない態度に傷ついたり、自分の能力に限界を感じたりするでしょう。

そんなとき、「前を向く力」があれば、もう一度立ち上がることができるのです。

いま、どんな困難な状況にあってもめげることなく前を向いていける力が求められています。お子さまの「前を向く力」を育てるために、親ができることを考えてみました。

やり場のない気持ちは「切り替える」「やりすごす」

子どもは、自分ひとりで解決できない困難を目の前にしたとき、親や先生などの身近な大人に「なぜ悩んでいるのか、苦しんでいるのか」「どうしたいのか」を言葉で伝えられないことがよくあります。原因がいくつも絡み合って、自分の中で整理がうまくできないために言語化できないのです。

私たち大人の社会においても、似たようなことは起こります。すべてを白黒はっきりつけて解決できればいいのですが、そうとも限らないのが現実です。傷つき悩む子どもたちは、困難な状況をうまく乗り越えられないでいると、頭痛や腹痛など身体の不調を訴えることもありますし、不登校になってしまうこともあります。または、抱えているストレスをいじめや暴力で発散するケースも考えられます。

この時代を生きていくには、困難に立ち向かう方法だけでなく、やり場のない気持ちをうまく切り替える方法やりすごす方法を身につけて、前を向いて進む力が求められています。この力を「レジリエンス」といいます。

海外では40年近く前から「レジリエンス」について研究が進んでいましたが、国内でレジリエンスが注目されたきっかけのひとつは、2011年3月11日の東日本大震災だといわれています。そのため、防災や減災といった意味合いで使われることもありますが、心理学では「逆境やトラウマ、惨事、脅威、もしくは重大なストレス源に直面したときにうまく適応するプロセス」(アメリカ心理学会)と定義されています。

“折れない心” の育て方2

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前を向く力「レジリエンス」が高い人の特徴

「レジリエンス」は、誰もが元々もっている力で、大人になってからでも高めることができます。逆に、心身の疲労によって衰えることもあります。

人によってレジリエンスの程度には差がありますが、高めていくには次のようなことがカギになると埼玉学園大学の小玉正博教授は述べています。

【レジリエンスを高める考え方や行動】

  • 気持ちや感情をコントロールする力
  • 変化する状況に順応できる柔軟性
  • 自分は大切だという感覚
  • 必要な時に助けを求められる力
  • 自分を犠牲にしない
  • 楽観的であること
  • 嫌なことを割り切る力

これらをご覧になっていかがでしょうか。「前を向く力」といっても、困難へ正面から立ち向かうパワーや、限界まで粘り強く向き合うためのガッツではなく、「しなやかさ」「融通が利く」「受け入れる」に近いものが多いですね。

困難な状況にあってもパニックを起こさず、また怒りや悲しみ、悔しさを自分でコントロールすること、状況に応じて順応すること、自分のことを大切に思いひとりで問題を抱え込まないことが「前を向く力」をつけるための大切な要素となります。

“折れない心” の育て方3

子どものレジリエンスを育てるために親ができること3つ

上記にレジリエンスを高める考え方や行動をご紹介しましたが、実際に私たちは、どのようなことを意識すれば、子どものレジリエンスを育てられるのでしょうか。臨床心理学者で東京学芸大学名誉教授の深谷和子先生は、次の5つが大切だといいます。

レジリエンスを育てるために大切なこと

  1. 自己肯定感(自尊感情)を育てる
  2. 愛し愛されることができる子どもに育てる
  3. 友だちとのかかわりをもてる子に育てる
  4. 多様な体験をもつ子に育てる
  5. 目標(志)をもつ子に育てる

(引用元:Z会さぽナビ|特集 折れない心を育てる(1) 【インタビュー】「レジリエンス」こそ 親が子に残せる最高の資産(1)

この中で最も重要なのは「自己肯定感(自尊感情)」で、自己肯定感が育っていれば2~5に連動してプラスの効果があるそうです。

自己肯定感とは、「自分ならできる」「自分は愛されている」「ここにいてもいい存在だ」と思える気持ちです。また、自己肯定感が高い子どもは学力も高いという調査結果もあり、子どもの教育を考える上で注目されています。

これら5つの観点で子どもを育てるために親ができることを3つご紹介します。それは「結果よりプロセスを褒める」「チャレンジを援助する」「人とのつながり感じさせる」です。

(1)結果よりプロセスを褒める

「上手にできたね」「やればできるじゃない」といった結果を褒めるよりも、途中でどんなふうに頑張っていたのか、以前に比べてどれくらい成長しているのかというプロセスを褒めます。たとえ、うまくいかず失敗に終わってもそこまでに至る意欲や頑張りを褒めることで、「またがんばろう」という気持ちが芽生えます。

【プロセスを褒める声かけ】

  • 「このあいだの日曜日よりも10回も多く縄跳びが飛べたね!」
  • 「毎日漢字の練習を頑張ってるもんね、すごいよ! 100点おめでとう」
  • 「(点は入らなかったけど)たくさんパスがもらえるようになったよね! かっこよかったよ」

(2)チャレンジを援助する

わが子が失敗して傷つかないように、あれこれ先回りして手を差し伸べることを控えます。とても無理なことに無謀なチャレンジをさせるのではなく、ちょっと頑張れば手が届きそうなこと「チャレンジしてみよう」と思わせることがポイントです。子どもが多様な経験をし、必要なときには「助けて」と言える環境を作り、助けを求めてきたら必要な分だけ援助するようにします。

【チャレンジをうながす声かけ】

  • 「上り棒、半分登れるようになったんだね。一番上まで登れるようになったら、遠くに何が見えるか教えてね!」
  • 「顔を水につけられるなんてすごい! じゃあ、目も開けられるかな?」
  • 「補助なしでも逆上がりができそうだね。来週もお父さんと一緒に練習しよう!」

(3)人とのつながりを感じさせる

不安や心配事など何でも話せるように、「私たちはあなたのことをいつでも守っている」というメッセージを子どもに繰り返し伝えましょう。自分が守られていることで安心でき、自己肯定感も高まります。また、周りの人や社会の中で自分が大切にされていることに感謝の気持ちをもつように意識させることも大切です。

【人とのつながりを意識させる声かけ】

  • 「お父さんとお母さんは〇〇ちゃんのことをいつも大切に思っているよ」
  • 「どんなことでも相談にのるからね。〇〇くんが大好きだから、いつでも〇〇くんを見ているよ」
  • 「おばあちゃんは〇〇ちゃんのことが本当に大好きなのね。早く会いたいな、って言ってたよ」
  • 「先生が〇〇くんの体調を心配して電話をくれたよ。うれしいね」

 
子どもの前に困難が立ちはだかったとき、その悩みや苦しみを乗り越えるのは子ども自身。親は心配のあまり、つい手を差し伸べたり口を出したりしたくなりますが、励ましや援助を続けることが大切です。

子どもが「自分は少しずつ成長している」「失敗しても、また頑張れる」「周りにいる人は自分の味方だ」と思うことが、前を向く力につながります。

***
失敗したとき、行き詰ってしまったとき、そのままつぶれてしまわず、気持ちを切り替えて感情をコントロールしながら目標に向かって行けるような、しなやかな心を育ててあげたいですね。

(参考)
Z会さぽナビ|特集 折れない心を育てる(1) 【インタビュー】「レジリエンス」こそ 親が子に残せる最高の資産(1)
ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとは
ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【後編】レジリエンスを伸ばす保護者の働きかけ
NPO法人 青少年こころの悩み支援センター|困難を乗り越える子どもに
久世浩司著(2014),『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』, SBクリエイティブ.
久世浩司著(2015), 『マンガでやさしくわかるレジリエンス』, 日本能率協会マネジメントセンター.
ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー・イーべン・ディシング・サンダール著、鹿田昌美訳(2017),『デンマークの親は子どもを褒めない 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方』, 集英社.