教育を考える/芸術にふれる/音楽をたのしむ/体験/演劇 2019.9.8

“感動”が子どもの「生きる力」と「脳」を育てる! 自己肯定感を高める体験とは?

“感動”が子どもの「生きる力」と「脳」を育てる! 自己肯定感を高める体験とは?

子どもが感動しているときの表情はきらきらと目が輝いて、見ているほうも嬉しくなるものです。そんな純粋な感動の瞬間が、子どもの生きる力や脳の成長につながることはご存知でしょうか。

感動といっても、ダイナミックな絶景やお涙頂戴の映画や本といった、いわゆる感動モノに無理に触れさせようとする必要はありません。子どもは元来”感動屋さん”。大人が思うあつらえ向きの感動シーンではなく、さまざまなところで感動できるものなのです。

ならば、子どもがその感動の回数をたくさん重ねられるようにするには、大人は何をしてあげられるのでしょうか。まずは、感動体験が子どもの成長に良い影響を与える理由から、お伝えしていきます。

感動は「生きる力」の源

大人になれば何度も目にしたものに対しては感動が薄れ、新たな刺激を求め旅行に出かけたりするもの。しかし小さな子どもたちにとって、この世界は初めての経験であふれています。大人はチョウを見てもそれほど感動はしないが、小さな子どもは美しいチョウを見て、ものすごく感動するものだと、教育関連著書を多く世に送り出している脳医学者の瀧靖之さんも言っています。

しかし現代の子どもの「体験」といえば、インターネットやテレビ等を介して感覚的に学びとる「間接体験」、シミュレーションや模型等を通じて模擬的に学ぶ「擬似体験」が多くを占め、実物に実際に関わっていく「直接体験」が、親世代が子どもだった頃よりも圧倒的に減ってきています。

だからこそ、多くの直接体験を促して感動する機会を増やしていきたいもの。自然の中に生きる美しいチョウを実際に目にするには、家の中でタブレットの画面にかじりついているだけではできません。

「生きる力」における能力は、今まで経験したことのない課題に出会った時に、自ら問題解決を図る能力が重要な位置を占めている。体験活動で得た感動は、問題解決のきっかけになることもあり、また感動そのものが直接的に生きていく自信につながる場合もある。感動は、正に「生きる力」の源であると言えよう。

(引用元:兵庫県教育委員会/感動体験プログラム構想委員会(平成9年), 『感動体験を目指す教育の展開』)

花から花へと移動している様子や、捕まえられそうで捕まえられないその舞い方、そして触れれば手指に残る鱗粉……。たった一羽のチョウに初めて出会っただけでも、幼い子どもならば多くのことに感動することでしょう。その感動が心に強く残れば、子ども自らがたくさんの疑問を持つことになり、図鑑や調べ学習へと展開されていくはずです。

感動や驚きとともに訪れる「なぜ、どうして」が、実際の生活や社会に結びつく大きな学びとなるのです。

感動が脳を刺激して「強い記憶」となる!

脳は理解なしの丸暗記が苦手ですが、感動なしの丸暗記もまた苦手、というのは諏訪東京理科大学共通教育センター教授の篠原菊紀先生。感動は記憶力アップにも大きな影響があるというのです。

記憶を高める秘訣は感動を込めて覚えることです。「うんうん」と感動しながら、ワクワクするような気持ちで思い込むことが大切です。
覚えたいことに感動を込めて理解する。するとますます感動を呼び、記憶効率が高まっていく。そして、そこに「快」がともなう。これが勉強にハマる本質であり、世界を理解することの快感です。

(引用元:篠原菊紀(2010),『子供が勉強にハマる脳の作り方』,フォレスト出版.)

感動は強い記憶となり、それがさらなる知的好奇心へとつながり、勉強への意欲が増していくのであれば、感動体験は多ければ多いほどいい影響があることがわかります。

感動体験の多くは家の外に

感動の瞬間は、直接的・具体的な、本物やライブでの実体験を通して、子ども自身が深く興味・関心を抱き、じっくりと観たり聴いたり、触ったりすることで訪れます。

このとき大切なのは、大人が感動を促したり押し付けたりするのではなく、子ども自身が主体的に動いたり感じたりすることによって本当の感動体験となるということ。大人ができることは、あくまでも時と場の提供であり、感動するのは子ども自身です。もっとも、大人が純粋に感動することは子どもにとっても好影響。どんどん一緒に感動体験を重ねていきましょう。

感動体験ができる場所といえば、多くは家の外。瀧靖之さんは、特に自然にはどれだけ勉強してもわからないことがあり、どんなに知っても知りきれない新しいことがあると言います。

アインシュタインはこんな言葉も残しています。
知的好奇心、その存在意味は、問い続けるのをやめないことだ。
自然は、人の知的好奇心を永遠にやめさせません。
それは年少のうちから知るほどに感動が大きいでしょう。感動が大きければ忘れない、ずっと大切な原体験(その人の一生に残るような、初めての重要な体験のこと。原体験は、その人のその後の思考や価値観に影響を与え続けると言われています)として、子どものなかに生き続けていくのです。

(引用元:瀧靖之(2018) ,『アウトドア育脳のすすめ』,山と渓谷社.)

感動を呼ぶおすすめの体験4つ

アウトドアは、子どもにとって好奇心をどこまでも広げる無限のフィールドですが、そのほかにも感動体験できる場所や機会はたくさん。ここにおすすめをまとめてみました。

《キャンプ》
前述のとおり、自然のなかには子供の好奇心をくすぐり、それを伸ばす素材が山ほどあります。あらゆるものが豊かに子どもの五感を刺激し、感動を呼んでくれます。そしてキャンプや自然体験をしたあとの子どもは、自己肯定感が高まるという研究結果も出ています。教育研究家の征矢里沙さんは、子どもに自然体験をさせるうえで何よりも大切なのは、親が子どもと一緒に自然を見つめ、一緒に感動したり、子どもの感動に共感したりすることだと言っています。

《博物館・科学館などの文化施設》
博物館や科学館は、それぞれのテーマについて深く知識を掘り下げることができるので、子どもの興味関心とともにさらなる感動を生む良いきっかけになります。一緒に見て回るときは、先回りして「これも見ておくといいよ」などと口出しするのは控えましょう。子どもは子どもなりに関心を抱いたものを見て自ら感動や発見を覚えているはずです。また、ある調査報告書によると、「親が子どもを文化施設に連れて行っている場合ほど、子どもの学力が高い」という結果も。

《音楽鑑賞》
生演奏では、演奏者の表情、息遣い、会場の盛り上がり、楽器の振動など、音楽を五感で感じることができ、脳が多くの刺激を受けることで、感性も知能もより成長が促されます。日本オーケストラ連盟がクラシックコンサートで音楽鑑賞をした子どもたちを対象に行なったアンケートでは、音楽鑑賞直後、73%もの子たちが「自分が変わった!」と答えています。

《演劇鑑賞》
演劇を鑑賞すると、舞台上の人物に感情移入したりストーリーに引き込まれたりして、心が大きく動かされます。演劇が鑑賞者の感情にもたらす効果は脳科学的にも認められており、子どもの感受性、感情表現にも良い影響をもたらすと見てよいはずです。

上記のような特別なお出かけでなくても、少し足を伸ばして広い公園に出かけたり、近所でも視点を変えて、地面や空をじっくり観察してみたり。親子で感動を探し歩くのも、きっと楽しく有意義な時間となるでしょう。

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大人よりも子どもの吸収力が圧倒的に高いのは、感動の瞬間が多いからなのかもしれません。子どもの目が輝いて、表情に「!」や「!?」が現れればそれこそが感動体験。大人も一緒になってその感動を共有できるといいですね。

文/酒井絢子

(参考)
ビビビ、五感全開 高知 体験学習ガイド|幼少期の感動体験の取り組み
兵庫県立教育委員会|感動体験プログラム構想委員会(平成9年), 『感動体験を目指す教育の展開』
いこーよ|子供の生きる力が育つ「原体験」とは? 学び&体験場所も紹介!
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瀧靖之(2018) ,『アウトドア育脳のすすめ』,山と渓谷社.
篠原菊紀(2010),『子供が勉強にハマる脳の作り方』,フォレスト出版.