お子さんに勉強を教えるとき、つい、あれもこれも教えたくなってしまいませんか?
せっかく覚えるのだからと、いろいろなことを関連づけて教えてしまうと、肝心な「覚えるべきこと」が覚えられなくなってしまうかもしれません。
今回は、「情報量を減らして教える」ことのメリットをお伝えいたします。
満点をとるのが難しい漢字テストが多い!?
小学校などで、次のような漢字テストを経験した方はいませんか。お子さんの漢字テストがこのような形式だという方もいるのではないでしょうか。
今の小学校で行われる漢字テストには、一文の中で多くの漢字を書かせることがあります。新しく学習した漢字だけでなく、ずっと前に学習した漢字を復習として出すのです。
上のような漢字テストでは、新出漢字を書けるようにするという目的がぼやけてしまいます。新出漢字が書けるようになったという目的を達成したとしても、復習として出された漢字が書けないと丸をもらえません。
子どもは一生懸命、新出漢字を練習し覚えますが、前に習った漢字が書けていないために満点にならないのです。このようなことが理由になって「僕(私)は漢字が苦手!」と苦手意識を持ってしまう子もいるようです。新出漢字が書けているのに、です!
上の(1)の例で言えば、「宿題」という漢字さえ書ければ目的を達成したことになります。1問10点のテストだとしたら10点もらえます。ところが、「宿題」という漢字を書くことができていたのに、「昨日」と「先生」という漢字が書けなかった、もしくは片方しか書けなかった、あるいはどちらかが間違っていたとしたら、10点をもらえなくなってしまうのです。(2)(3)でも同じです。
また、このような漢字テストでは、問題文を写し間違いをする子も出てきます。正しく写せるようになることも大切ですが、ここでは目的が違います。正しく写せていないからと、本来の目的とは異なるところで、×にされたり減点されたりする子も出てきてしまうのです。
多くのことを一度に記憶するのは難しい!?
学校の先生は一度に多くのことを教えようとします。ただ漢字を覚えるだけでなく、文章の中で使えるようにさせたい、多くの情報と結びつけて覚えさせたいと思うのでしょう。
一度に多くのことを教えようとするのは学校の先生だけではありません。一部の学習用のワークでも見られますし、国語だけでなくほかの教科にもあります。例えば「都道府県」を覚えさせるときのことです。
一度に、漢字で書けるようにさせ、位置も覚えさせようとするワークもあるのです。これに加え、地方の特産物なども合わせて覚えさせようとするワークもよく見ます。教師側、教える側からすると、多くのことを関連づけて学習したほうが良いとなるのです。
ある事柄とほかのことを関連づけて教えるという考え方は間違いではありません。大切なことでもあります。とは言っても、一度に多くのことを覚えることができない子どももいることも事実なのです。ひとつのことしか覚えられなければ、関連づけることなどできません。関連づけて教えるのは、ひとつのことを覚えさせてからのことです。
子どもに「できた!」「書けた!」という成功体験を
子どもに勉強を教えるときには、情報量を減らすこと、内容をひとつに絞りひとつずつ教えることが大切だと言えるでしょう。一度に教えても覚えられないのだから、ひとつずつ教えたほうが、子どもは学習内容を習得しやすくなると私は考えています。
解決策として、漢字であれば、一文の中で多くの漢字を学習するのではなく、新出漢字だけを書かせる学習法に変えたほうがいいでしょう。
次のような問題は、子どもが「新出漢字を覚えたかどうか」「覚えるという目的を達成できたのか」が、はっきりと分かります。
まず新出漢字をしっかり覚えてから、前の月にならった漢字や前学年の漢字をテストしてみましょう。子どもにとっても、「できた!」「書ける!」「覚えた!」という自信がつきますので、そのあとの学習にも積極的になるはずですよ。
あっという間に「都道府県」が頭に入る!
都道府県を覚えるときも同じです。最初に漢字だけを書かせるようにします。次に、場所だけを覚えさせます。そのあとに特産物などを覚えさせるというようにひとつずつ教えます。一時に一事で教えたほうが、子どもは学習内容を習得しやすいでしょう。
ここでは、漢字だけを教え終わったとして、次の教え方の例をひとつだけ挙げてみます。略図を書いて覚えるという方法です。日本地図をそっくりそのまま丁寧に書かせるのではなく、簡単な図にして書かせます。例えば中国地方だけに絞って書いてみましょう。
そのあと、声に出させて「山口県」「広島県」……と全部言わせます。次に「県」の文字だけを消して、同じように県の名前を言います。子どもは「山口」「広島」……という文字だけを見て、「山口県」「広島県」……と言っていきます。
そのあと、後ろの文字から消して言わせていきます。「山」「広」だけを見て「山口県」「広島県」……と言わせます。最後は、文字のない略図になります。文字がない状態で「山口県」「広島県」……と言っていくことになります。そして、全部言えるようになったときには、なんと! 中国地方の県名を覚えてしまったことになるのです。
上の図のように、後ろの文字から1文字ずつ消してから、子どもに言わせます。最後は、形だけを残して言わせましょう。小さい持ち運びができるホワイトボードに書いてもいいですね。文字を消すのも楽にできるでしょう。
それでも、やはり関連づけて教えることも大切ではないかと考える方もいるかもしれません。そんなときは、中国地方のあとに東北地方だけを扱うことで自然に関連づきます。中国地方の略図を縦にして書かせてみましょう。一番右下にひとつ図を加えると東北地方になるからです。このように、学習内容によっては、ひとつずつ教えているうちに関連づいてしまうこともあるのです。
中国地方でどの位置に何県があるのか覚えた子は、東北地方は中国地方を縦にしてひとつ図をたせば略図ができるという知識を手に入れることができるのです。東北地方の覚え方も中国地方のときと同じです。
もちろん、これ以外にもまだまだほかの教え方もあるでしょう。歌にして覚えるなどもよくやられています。ここでは、一例として、略図を書いて覚える方法を紹介しました。ぜひ、お子さんの「地図学習」の際に取り入れてみてくださいね。
***
いくら関連づけて教えることが大切だと言っても、ひとつのことが覚えられなければ話になりません。どの教科の学習でも同じでしょう。上の例のように、ひとつずつ覚えていけば自然に関連づけられていくこともあります。
一時に一事、学習内容、情報量を減らして教えることが大切なのです。関連づけて教えるのは、そのあとからでもできます。
以上、今回は「情報量を減らして教える」「ひとつの学習内容に絞って教える」「関連づけるのはあとからでいい」ということについて紹介しました。自宅学習のときの参考に、少しでもなれば幸いです。