2023.4.25

「生きる力」は幼少期に伸ばす! 大学入学者の半数以上が “〇〇選抜” の時代が来た

長野真弓
「生きる力」は幼少期に伸ばす! 大学入学者の半数以上が “〇〇選抜” の時代が来た

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社会変化や少子化などにより、大学を取り巻く環境はいま、過渡期にあります。そのなかで受験のあり方も変化しており、入試に必要な能力は、学力だけではなくなってきたようです。今回は、現代の大学入試に求められる新たな能力3つについて考えてみました。どうやら、この “3つの力” は幼少期に育てておいたほうがよさそうです。

入学者の半数以上が「旧AO入試・旧推薦入試」で合格!

現代の大学入試では、学力で判断する「一般選抜」よりも、面接・小論文・ディスカッションなどで能力や適性を評価する「総合型選抜(旧AO入試)」と、高校からの推薦を受けて出願する「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」が増えているのをご存じでしょうか。文部科学省による令和3年度国公立私立大学入学者選抜実施状況調査によると、「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」による合格者が入学者の半数以上となっているのです。

総合型選抜の対策を得意とする早稲田塾の執行役員・中川敏和氏は、今後はもっと総合型選抜を取り入れる大学が増えていくとし、その理由を以下のように分析しています。

「大学側は、将来社会に影響を与えてくれるような人材を育成したいと考えています。そのため受験合格をゴールとするのではなく、大学入学をスタートと捉え、志や夢を追求できる学生を欲しているのです。学力試験に重きを置いた一般選抜のペーパーテストでは、そのような学生を見極めることが難しいため、総合型選抜が取り入れられるようになりました」

(引用元:東洋経済オンライン|一般選抜入試枠が減っていく!?大学が旧AO入試「総合型選抜」を選ぶ背景

とはいえ、親御さんのなかには「総合型選抜は勉強が苦手な人が受けるもの」というイメージをもっている人もいるでしょう。しかし中川氏によると、「総合型選抜=学力不足の生徒向け」ではないとのこと。

総合型選抜は「ほぼ面接で決まるのでは?」とも思われがちですが、近年では面接だけでなく、小論文や教授とのディスカッションなどが増えているため、総合型選抜で合格する学生には幅広い能力が求められているよう。たとえば、小論文は「考えを文章に落とし込むスキル」が不可欠ですし、ディスカッションについても「特定の分野への深い理解と考察力」が必要になるからです。

では、これからの大学受験を考えた場合、子どもにはどんな力をつけておけばよいのでしょう? 次項で詳しく説明します。

生きる力の伸ばし方1

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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これから必要になる「本当の頭のよさ」とは――

21世紀型教育機構理事の石川一郎氏は著書『いま知らないと後悔する2024年の大学入試改革』のなかで、2024年以降の大学入試で必要になる「本当の頭のよさ」とは、思考力・判断力・表現力であり、「人間にしかできない能力」だと断言しています。

思考力・判断力・表現力は、2020年に改訂された新学習指導要領にも「生きる力」として明記されていることから、やはり今後の大学入試にはこの3つの力が必要となってくるのでしょう。石川氏は、それぞれの能力を以下のように説明しています。

思考力
  • あれこれ考える力
  • 課題を解決する力
判断力
  • こうだと決める力
  • 正しい情報を的確に見極める力
表現力
  • さまざまなものをアウトプットする力
  • 自分の考えを相手に的確に伝える力

 

2020年以前の「あらかじめ『正解』があり、暗記したり、演習したりを繰り返すことでテストの点数を伸ばすこと」ができた学びのスタイルとは、だいぶ変わってきたようです。石川氏はこの変化の背景にあるのは、インターネットの存在だと見ています。インターネットがあれば情報はいくらでも入手できる時代なので、「知識習得よりも、学びを解決策に生かす力」つまり、思考力・判断力・表現力が必要になってきているのだそう。

では、思考力・判断力・表現力はいつ伸ばしていけばいいのでしょう? 文部科学省の資料では、幼児教育にて「思考力、判断力、表現力等の基礎」を育み、小学校以上で「思考力、判断力、表現力等」を育成すると書かれています。どうやら、幼少期のうちが勝負のようです。

次項では子どもの思考力・判断力・表現力を伸ばすために、家庭でできることをまとめました。専門家がすすめる方法をさっそく見ていきましょう。

生きる力の伸ばし方2

1.「思考力」をつける方法

津田塾大学総合政策学部長で哲学者の萱野稔人氏は、日本の教育現場に子どもたちの「考える力」を伸ばす方法論が欠けていることを指摘しています。そこですすめるのが、哲学の基本的思考を応用した「思考の3点セット」。以下の3つの問いを繰り返せば、子どもの考える力をぐんと伸ばすことができるとのこと。

問1:「なぜ?」

「りんごはなぜ赤いの?」「冬はなぜ寒いの?」などを子どもに聞いてみてください。ポイントは、最初の「なぜ?」に対してひとつの答えで終わらせないこと。子どもが「~~だから」と答えたら「ではなぜ~~なの?」と、「なぜ?」を繰り返して疑問を掘り下げてみましょう。萱野氏は、この習慣が “考えるためのよいトレーニング” になると話していますよ。

問2:「それってそもそもどういうこと?」

萱野氏は、物事を「なるべく短い言葉で答えられるように徹底的に考える」スキルも重要視しています。お子さんに「それってそもそもどういうこと?」「ひとことで言うと?」と聞いてみてください。萱野氏が「じつはかなり高度な知的作業」と言うように、物事を短い言葉でまとめることは大人でもなかなか難しいのではないでしょうか? この習慣が定着すれば、「物事の本質や要点を理解する力がどんどん伸びていく」そうですから、ぜひ試してみましょう。

問3:「どうやったらいいの?」

「どうやったらいいの?」という問いかけも、子どもの考える力を伸ばします。たとえば、サッカーの試合で負けてしまったとき、「どうしたら勝てたと思う?」と思案を促すのです。問題点を洗い出し、具体的な対策に自力でたどり着けたら言うことなしですが、萱野氏は「子どものアウトプットに過剰な期待をしないこと」と指摘します。「アウトプットしようとする習慣をつけさせることが重要」なのです。

生きる力の伸ばし方3

2.「判断力」をつける方法

教育研究家の西村則康氏は、判断力のない子どもについて「自分で決める」という機会が不足していると指摘します。親の先回りはもちろんのこと、「親が決めたことを子どもが実行するだけ」という行動も判断力が育たない原因なのだそう。そこで、以下のような「決める実体験」をすすめています。

方法1:おもちゃの貸し借り

友だちに「貸して」と言われたときに、「言われたとおりに貸す」「貸さずにそのまま遊び続ける」。お子さんはどちらのタイプでしょう? 「素直に貸してあげる」ことが正解ではありません。西村氏によると、どちらの選択も子どもにとっては「決める実体験」。口を出したくなる気持ちをぐっと抑えて、子どもが判断するのを待ちましょう。

方法2:買い物

「1個ずつ買うと安いけど、たくさん買うとどうかな。どれを買ったらいい?」と子どもに決断の機会を与えてみましょう。計算ができない場合は、「どちらがおいしそうか」といった判断でもOKです。選んだ理由も聞いてみてくださいね。

ほかにも、「赤と青、どちらがいい?」「どうしたい? 歩きたい?」と、日常生活の些細なことでも子どもに決めてもらう習慣をつけましょう。西村氏は「幼児期に判断する練習」をさせると判断力が鍛えられると話していますよ。

生きる力の伸ばし方4

3. 「表現力」をつける方法

ライフコーチのボーク重子氏は、グローバル社会では「自信をもって自分の考えを表現し、他人との意見交換から学ぶ」ための自己表現力がとても重要だと語ります。自己表現力はコミュニケーションにも欠かせない能力です。ボーク氏が子育てをするなかで実践した「親子の会話で表現力を伸ばす方法」をふたつご紹介します。

方法1:夕食でのプレゼンタイム

ボーク氏の家庭では、夕食時に家族全員が1~2分ずつ話す時間を設けていたそう。内容はどんなことでもOK。ただし必ず「5W1H(いつ、誰が、どこで、なにを、なぜ、どのように)」を盛り込み、プレゼンという意識をもたせることに留意したと言います。もし、どれかが抜けていたら、「誰と?」「いつ?」など質問をしていたそう。「必要な要素を網羅しつつ1~2分に話をまとめるというのは、想像以上に頭を使うもの」とボーク氏。表現力アップのために、ぜひ夕食時のプレゼンタイムを取り入れてみてくださいね。

方法2:月1回の3分間スピーチ

“夕食プレゼン” の次のステップとしてボーク氏がすすめるのが「3分間スピーチ」です。欲しいものを買ってもらうための交渉の場にしてもよし、自分の興味のあるテーマについて熱弁を振るうのもよし、スピーチのテーマは自由。“夕食プレゼン” との違いは、聞く人を惹きつけるための工夫を凝らして話をすること。また聞く側も同調するだけでなく、ときには「そうは思わないな」など、別の視点からの意見を出すことも大事だと言います。そうすることで、より深い思考力や客観性が育まれるとのこと。3分間スピーチに、親子で挑戦してみてはいかがでしょう?

***
前出の石川氏は、新しい大学入試に向けた親の心構えとして、以下のようなアドバイスをしています。

小学校、中学校、高校の教育が変わり、大学入試の中身が変わり、日本の教育はいよいよ本気で変わろうとしています。でも、本当に変わるには、親世代の偏差値重視の価値観を取り除かなければなりません。わが子に幸せな人生を望むのであれば、まずは親御さん自身が新しい教育の中身を知り、理解することです

(引用元:日経xwoman|小学生のうちは「勉強嫌いにさせない」が最も大事に

「大学がゴールではない」と最近よく耳にしますが、思考力・判断力・表現力は大学受験だけでなく、社会に出てからも必要な力です。3つの力を幼少期からしっかり育んであげたいですね。

(参考)
AERA dot.|高校必修になった「探究学習」とは? 大学入試への活用や、学習塾の専用講義も登場
東洋経済オンライン|一般選抜入試枠が減っていく!?大学が旧AO入試「総合型選抜」を選ぶ背景
文部科学省|「思考力・判断力・表現力等」についての整理のイメージ
文部科学省|令和4年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要
文部科学省|学校・家庭・地域が力をあわせ、社会全体で、子どもたちの「生きる力」をはぐくむために〜新学習指導要領スタート〜
ダイヤモンドオンライン|2024年の大学入試改革で必要とされる「頭のよさ」とは
日経xwoman|小学生のうちは「勉強嫌いにさせない」が最も大事に
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