2022.1.28

子どもが〇〇になる、3つの「超危険なほめ方」。 脳科学者がすすめる「正しいほめ方」とは?

編集部
子どもが〇〇になる、3つの「超危険なほめ方」。 脳科学者がすすめる「正しいほめ方」とは?

「ほめる子育て」が一般に浸透してからずいぶん経ち、自身の育児にうまく取り入れる人たちがいる一方で、「うちの子はほめすぎると調子に乗って自信過剰になるかもしれない……」と心配して、ほめ言葉を飲み込んでしまう親御さんも少なくないようです。

では実際に、「親にほめられ続けた子ども」「叱られずに育った子ども」は、成長過程においてどのような問題を抱えるようになるのでしょうか。また、どのような大人へと成長するのでしょうか。

今回は、「ほめる子育て」をテーマに、その危険性と子どもを伸ばすほめ方についてとことん考えていきます。

アドラー心理学では「ほめる子育て」はNG!

株式会社子育て支援代表取締役であり日本アドラー心理学会/日本個人心理学正会員でもある熊野英一氏は、ほめすぎることは、子どもの人格形成に悪影響を与えることがあると指摘します。具体的には、ほめられないと何もしなくなる」「指示待ち人間になる」「チャレンジしなくなるなど、将来自立した人生を歩むために必要な力が身につかなくなってしまうのだそう。

なぜ自発性が乏しい若者になってしまうのか――それは、子ども時代に「失敗して叱られる経験をしていない」「叱られて傷つくことを避けるために無理をしない」といったことが原因です。『ほめると子どもはダメになる』著者で心理学博士の榎本博明氏は、そんな子どもたちが成長し、「挑戦しない・頑張れない若者」になっていると指摘しています。

榎本氏によると、頑張れない若者が増えている背景には、「叱るよりほめる」ことに重点を置いた教育法が少なからず影響しているとのこと。その結果、社会に出たときに、上司から仕事上のアドバイスや些細な注意を受けただけで、自分を全否定されたかのように反応してしまうのです。この打たれ弱さや傷つきやすさは、まわりの人たちを困らせるだけでなく、何より本人の生きづらさに直結します。

だからといって、「これからわが子をいっさいほめずに育てる!」なんて無理ですよね。ほめることは決して悪いことではありません。むしろ、ほめ方次第では子どもの能力をうまく伸ばすことができます。注意すべきは、次に詳しく説明する「危険なほめ方」です。

危険なほめ方02

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わが子をダメにする「危険なほめ方」3つ

「親のほめ方」が子どもに及ぼす影響はかなり大きいようです。なかでも次のようなほめ方をしていたら要注意。

他者と比較してほめる

「お友だちの〇〇ちゃんに比べて点数がよかったなんてえらいね!」
「お兄ちゃんはかけっこで1位になったことないのに、あなたはすごいね!」

『一人で育つ子になる テキトー母さんのすすめ』(日本実業出版社)の著者である立石美津子氏は、「親がわが子をほめるとき、心のなかで『まわりと比べてうちの子はできる』と思うのは自然な感情なのでかまわない。けれども、それを口に出して子どもに伝えてはならない」と述べています。

他者と比べて上か下かばかりを気にするようになると、「もろく崩れやすい見せかけの自己肯定感」だけが育ってしまい、思うような結果が出ないときに「自分は価値がないダメ人間だ」と落ち込むようになります。加えて、幼い頃からまわりと比較する言葉をかけ続けられることで、常に周囲の人の目を気にしたり、まわりの人すべてがライバルに見えたりと、対人関係に支障をきたすことにもなりかねません。

結果だけをほめる

「100点とったのね、えらい!」
「優秀賞に選ばれるなんてすごい」

物事の結果だけに注目し、結果がよければほめる。ということは、逆に「結果が悪ければ評価しない」ということ。臨床心理士の田中茂樹氏は、「『それはいいね』は『それじゃないのはよくないよ』というのとある意味同じ」と指摘し、「100点とってえらいね」は「100点とれなければえらくないよ」と言っているのと同じことだと苦言を呈しています。

親は子どもの「できる・できない」に目を向けがちですが、繊細で大人の顔色をうかがう傾向のある子ほど、ほめられることが目的化して、自分が本当にやりたいことを見失ってしまうのだそう。さらに、結果に対する評価が自分の価値だと信じてしまうと、努力することを怠ったり過剰によい結果だけを求めたりと、ズルをしてでもほめられたい「ほめられ依存症」にもつながるので気をつけましょう。

「できて当たり前のこと」をほめる

「宿題やったの? えらいね!」
「遅刻しないなんてすごい!」

たいしたことでなくても、子どもは「すごいでしょ!」とアピールしてきます。そのたびに「すごいすごい!」と大げさにほめていませんか? 子育てサロンを運営する若松亜紀氏は、このようになんでもかんでもただほめちぎる大ざっぱなほめ方を「どんぶりほめと呼び、注意を促しています。

どんぶりほめによって、子どもは必要以上に「自分はすごいんだ!」と勘違いをし、もっとほめてほめてと「ほめ」に対して過剰反応するようになります。その結果、「ほめてくれる人の前では頑張るけれど、ほめられないならやらない」という「評価を欲しがる子」になってしまうのです。

脳科学者の篠原菊紀氏も、「『勉強したら必ずほめてもらえる』が当たり前になると、ほめることの効果は薄れる」と指摘します。さらには、ほめられそうだと思ったのにほめられなかった場合に、怒りに転化することもあるそう。これは、大人ならば給料日に給料が入金されていなかったようなものだから当然なのです。

「ほめる」という行為はとても簡単で、たとえ心がこもっていなくても適当に言葉にすることができます。ですが、その代償は思った以上に深刻であり、子どもの心に根深い問題を植えつけてしまうかもしれないのです。

危険なほめ方03

いますぐ実践! わが子が伸びる「正しいほめ方」とは?

では反対に、子どもによい影響を及ぼす「正しいほめ方」とはどのようなものなのでしょうか。ポイントは3つです。

まわりと比べるのではなく「過去のわが子」と比べてほめる

児童精神科医の故・佐々木正美氏は、著書のなかで「人より頑張ったことを評価するのではなく、親が気づいた『よい変化』を伝える」ことをすすめています。子どもは「自分の変化」に気づいてもらえると喜びます。なぜなら、大好きなお母さん(お父さん)が、自分を見てくれて関心をもってくれることが何よりも嬉しいから。

ですから、変化を見つけてあげましょう。たとえば、縄跳びならば「昨日よりも3回も多く跳べたね」や、ピアノ練習なら「先週間違えたところが上手に弾けるようになったね」など、過去の姿や状態と比較して成長した部分をほめてあげるのです。

また、佐々木氏は「学習や運動など目に見えてわかりやすいものに対してほめるだけでなく、『友だちに頼りにされているね!』『小さい子のお世話が上手だね』など、その子の人柄や性格にも注目してあげて」ともアドバイス。それにより子どもの自己肯定感が上がり、人に流されない自分らしさを手に入れられるのです。

結果だけでなくプロセスを評価する

発達心理学、保育学、児童学を専門とする東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏は、「結果だけに目を向けるのではなく、たとえできなくてもそのプロセスを認める言葉がけをすれば、自己肯定感が高まる」と述べています。よい結果であっても悪い結果であっても、その過程や努力を親から認められることで、「次も頑張ろう」とチャレンジする力が身につきます。

また、先述の若松氏が提起した「どんぶりほめ」をしてしまったとしても、そのあとに「小分けでQ」という方法をプラスすることで、子どもによい影響をもたらすのだそう。たとえば、わぁ~すごいね(どんぶりほめ)、なんで全部できたのかな?と、 できた理由を子ども自身に考えさせるのです。

「ゆっくり考えたからかな?」「ちゃんと見直しをしたからかな?」など小分けで聞き出すうちに、子どもは自分の言葉で考えるクセがつきます。すると、ほめられることよりも「どうしたらできたか」「次はこんなふうにやってみよう」といったことに意識が向くようになり、自分の力で乗り越えたいという「自立心」が育まれるのです。

ほどほどに、さらっとほめる

過度に子どもをほめ続けることの弊害については先に説明したとおりです。佐々木氏もまた、「ほめすぎるということは、『僕がこうしたことであんなに親が喜んでいる。ということは、これができなかったら、悲しんでがっかりするのではないか』と裏腹な不安感情をもたせてしまう」と忠告しています。

だからこそ、ほどほどにほめることを意識しましょう。「できたからってそれほどたいしたことではない。仮にできなかったとしても、それはそれでどうってことないんだ」と子どもが思えるようにしてあげることが大切なのです。

前出の篠原氏も「『気が向いたときにほめる』くらいの適当さが、ほめることの効果を高め、結果的には子どものやる気を維持させることにもつながる」と述べています。大げさにほめなくても、子どもに「お母さん(お父さん)は、ちゃんとあなたのことを見ているよ」「ありのままのあなたのことを認めているよ」という気持ちが伝われば、失敗しても自分の足で立ち上がる力をつけることができるはずです。

***
「自己肯定感は自分ひとりで獲得することは難しい。周囲の人の子どもを認める肯定的な言葉がけや、励ましによって獲得できる」と井戸氏が述べるように、ほめ言葉は子どもの心の成長に深く関わります。人と比べたり結果だけをほめたりせず、子ども自身を認めることが大切です。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法
ダイヤモンドオンライン|「ほめる教育」が子どもをダメにする理由とは
ハピママ|褒め過ぎると天狗になる?将来イヤな人にならない「子どもの褒め方」
田中茂樹(2019),『子どもが幸せになることば』, ダイヤモンド社.
佐々木正美・若松亜紀(2013),『「ほめ方」「叱り方」「しつけ方」に悩んだら読む本』, PHP研究所.
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「間違った褒め方」していませんか? 子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド
PHPのびのび子育て 2021年3月特別増刊号, PHP研究所.