2019.11.1

ストレスに強い人と弱い人。幼少期の「非認知能力」の育み方に違いあり

[PR] 編集部
ストレスに強い人と弱い人。幼少期の「非認知能力」の育み方に違いあり

社会において逃れられないもの――それは「ストレス」です。さまざまな人間関係があり、シビアな成果を求められることが、往々にしてあるからです。

でも、子どものうちにしっかりと「非認知能力」が育まれていれば大丈夫。ストレスに強い人になれるはずですよ。非認知能力とストレスの関係や、子どもの非認知能力を高めるために、わたしたちができることなどを説明します。

ストレスの脳への影響

脳トレーニングジムのプロデューサー髙山雅行氏と、脳科学者の杉浦理砂氏が共著した『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』によると、ストレスを抱え込んでいる状態とは、不快や怒りなどの「感情」を、「理性」でむりやり押さえつけている状態です。

このように不自然な状態が長く続くと、脳のはたらきが悪くなり、やがて制御不能に陥ってしまうのだとか。さらにストレスが続くと、ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されるため、その影響で脳の海馬が委縮し、記憶力が低下してしまうそうです。

産業医として、通算1万人以上と面談したという武神健之さんは、学生時代にとても優秀だった人が、社会人になってストレスに押しつぶされ、心身ともに疲弊してしまうケースを目にするといいます。

ストレスに強い人と弱い人の、幼少期の「非認知能力」の育み方2

ストレスに強い人、弱い人の違い

厚生労働省の「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、仕事で強いストレスを感じている労働者の割合は、2018年(平成30年)時点で58.0%。半数以上の人が、何らかのストレスを抱えているとわかります。

しかし、誰もが多少なりともストレスを感じていることを前提に、違う見方をしてみると、“4割の人はストレス耐性がある”と考えられるわけです。

50社を超える企業を担当してきた精神科産業医の吉野聡さんは、年々ストレスに強い人と、弱い人の二極化が進んでいると強く感じるそう。同氏いわく、ストレスに強い・弱いの違いは、「物事の捉えかたの違い」なのだとか。

たとえば上司に怒られた際、次の1と2のように、“どう感じるか”の違いです。

  1. 【ポジティブで建設的】=「気にかけてくれる」「嫌だったけど、ためにはなった」
  2. 【ネガティブで破壊的】=「どうせ自分なんてダメだ」「上司のほうが悪い」

もちろん、ストレスに強いのは1番目のほう。こうした違いは、性格や育った環境によるものが大きいそうです。

では、どうやって子どもを育てていけば、物事を前向きに捉えられる、ストレスに強い大人になってくれるでしょう。 そのヒントは、「非認知能力」を育むことにありました。

ストレスに強い人と弱い人の、幼少期の「非認知能力」の育み方3

非認知能力とはなにか?

IQとは、読み・書き・計算など「人間が知能をつかって物事を処理する能力をあらわす数値」のこと。そのIQで測ることのできる能力を「認知的能力」と呼びます。

一方で「非認知能力」は、IQで測ることができない次のような能力を指します。

  • 目標に向かってがんばる力
  • ほかの人とうまくかかわる力
  • 感情をコントロールする力

 
産業医の武神さんの言葉を借りると、非認知能力はいわば「総合的人間力」

勤勉性自主性積極性外向性社交性協調性共感性柔軟性利他性精神的安定性や、自己肯定感責任感に、やり抜く力忍耐力コミュニケーション力好奇心想像力など、数字では測れない、あらゆる能力が含まれているそうです。

非認知能力とストレスの関係

比較的ストレスに強い社会人は、子ども時代に認知能力だけでなく、非認知能力がしっかりと育まれてきた共通点がある、武神さんは説明します。

たとえば社会人として、取引先や職場で人とかかわり仕事をするとき、共感力コミュニケーション力は欠かせません。気が合わない人とも協力し合わなければならないので、協調性忍耐力も必要です。成果を求められるため、行動力や、やり抜く力責任感なども不可欠です。

これらのいずれも、非認知能力にほかなりません。

つまり、非認知能力があれば、どんな環境でも多様な人々と協調でき、転んでも立ち上がり、やり抜くことができます。想像力で人の気持ちを推しはかり、協力的に行動できるので、困ったときには周囲のサポートもあるでしょう。また、たとえば自己肯定感や柔軟性は、気持ちの回復や前向きになる力をあたえます。

そうしたすべてが、ストレスへの防御壁となるわけです。認知能力も必要ですが、ストレスに強くなるためには、認知能力を上まわる非認知能力が必要だと、武神さんは述べています。

ストレスに強い人と弱い人の、幼少期の「非認知能力」の育み方4

非認知能力を高めるためにできること

じつは、わたしたちが子どもの非認知能力を高めるためにできることは、次のとおりとてもシンプルです。

1.「たくさん経験する」機会をあたえる

武神氏は、未就学児であれば、好きなお遊びに好きなだけ、集中して取り組ませてあげるようアドバイスしています。料理やお片付けなどを一緒に行うのも効果的とのこと。

そのなかで大切なのは――

  • 「何かに没頭する」を経験する
  • 「たくさん褒められる」を経験する
  • 「うまくいく」を経験する
  • 「うまくいかない」も経験する

 
――といった具合に、たくさん経験することです。「うまくいかなかった経験」は、ストレスを柔軟に受け止めたり、かわしたりする助けになるでしょう。

2.「自分で考える・選ぶ」機会をあたえる

子ども教育のプロフェッショナル育成に携わる、白梅学園大学子ども学部子ども学科の増田修治教授は、「子どもの話をきちんと聞く」ことが非認知能力を伸ばすために大切だと説明します。

「子どものためになるから」と親の考えを押しつけるのではなく、かといって放任するわけでもなく、「どうする?」「あなたはどうしたい?」子どもに聞いて一緒に考え、お互いに折り合いをつけていくといいのだそう。

「〇時になったら勉強しなさい」ではなく、「何時になったら勉強できそう?」と、子どもに選択権をわたすことも大切とのことです。

自分で “考える・選ぶ” 機会を持つことは、非認知能力に含まれる自主性や責任感、好奇心や想像力などを育み、ストレスの対処力や問題解決力を高めてくれるはずです。

3.「仲間との体験活動」を応援する

武神さんによると、就学後の非認知能力は、クラブ活動などで仲間たちとコミュニケーションをとりながら、一緒に没頭したり、挑戦したり、成功したり失敗したりする体験を、重ねていくことで伸ばせるそうです。

挑戦や試行錯誤のあとに、達成感や悔しさがあること、理解や発見があることを体感できるでしょう。また、ひとりではムリでも、仲間となら乗り越えられることがあると知り、協力や思いやりの重要性を、身にしみこませていくはずです。

自分には仲間がいる――それがストレスに打ち勝つ力になることは、いうまでもありません。

***
2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマン氏らが、40年にわたる長期追跡調査を行い、分析したところ、「非認知能力はその後の認知能力を発達させるが、認知能力がその後の非認知能力を発達させることはない」と結論づけたそうです。

子どものときに非認知能力を伸ばすことは、とても重要なのですね。

(参考)
幻冬舎plus|心理的ストレスが脳に与える悪影響とは?
東洋経済オンライン|産業医が見た「ストレスに弱い人」の決定的要因
厚生労働省|平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況
NIKKEI STYLE|医師が明かす ストレスに強い人、弱い人の決定的違い
東京大学 発達保育実践政策学センター|東大Cedep×凸版印刷 共同研究|「非認知能力を育む幼児教育プログラム開発」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?
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