教育を考える 2022.9.13

「強み」を知るだけで幸せが9.5倍に。3つの質問で子どもの「強み」を見つけよう!

編集部
「強み」を知るだけで幸せが9.5倍に。3つの質問で子どもの「強み」を見つけよう!

「子どもには幸せな人生を送ってほしい」そう思わない親はいないでしょう。では、どうしたら幸せになれるのか――。どうやら、自分の強みを知ることで幸せに生きられるそうなのです。

今回は、幸せな人は自分の『強み』を知っていることについて、詳しく解説していきます。自分の強みを知ることで人生がどのように変化するのか、また「子どもの強みを見つける方法」「子どもの強みの伸ばし方」についても考えていきます。

幸せな人生を送る人は自分の「強み」を知っている!

ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルベニア大学教授のマーティン・セリグマン氏は、幸せな人生を送る人は、自分の強みを知っていて、それを使っている」「成功するから幸せになるのではなく、幸せだから成功する」と述べており、「自分の強みを知っていること」「いま幸せであること」が将来に好影響を与えるとしています。

1998年に提唱されたポジティブ心理学は、「幸せになるにはどうすればいいのか」を科学的に探究した学問で、ビジネスや教育機関だけでなく、子育てに応用する研究も進められています。

ニューヨークライフバランス研究所代表で心理学の専門家である松村亜里氏によると、楽しみながら何かをしているときこそ、人は本来の強みを発揮することができるのだそう。「ポジティブな感情でいるときは視野が広がり、挑戦欲が出て、スキルが高まり、心を開いて、人とのつながりができ、さまざまなリソースを形成していく。子どもは苦しまないと学ばないと考えている人もいるが、人はポジティブな感情のときに学び、成長する」と松村氏は指摘しています。

このように、自分の強みを知ることは確実に人生を豊かにするのです。であれば、子どもにも強みを知ってほしいですよね。

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子どもの強みに注目する親、子どもの強みを否定する親

では、どうしたら子どもの強みが見つかるのでしょう? まず、親として子どもの強みに対してどう向き合うべきか考えていきます。

松村氏は、「親が子どもの強みを知って、それを子どもに使うように励まし、子どもがその強みを生かせるようになれば、人生満足度が高くストレスが低い、幸せな人生を送ることができる」と断言しています。

国際ポジティブ心理学協会(IPPA)会長でメルボルン大学教授のリー・ウォーターズ氏が行なった調査では、「強みに注目するタイプの親」をもつ10代の子どもには、以下のような特徴が見られたそうです。

・「自分の強み」をよく理解している
・強みを生かして、宿題を「締め切り」に間に合わせる
・強みを生かして、友だちとの「問題を解決」する
・積極的な方法で「ストレスを解消」する
・日常的なストレスを「あまり感じない」

(引用元:リー・ウォーターズ 著, 江口泰子 翻訳(2018)『ストレングス・スイッチ 子どもの「強み」を伸ばすポジティブ心理学』, 光文社.) ※太字は編集部が施した

いかがですか? 「親が子どもの強みに注目することで、子どもの自己肯定感が高まる」と松村氏が言うのも納得ですね。このような特徴をもつ子どもは、きっとストレスなく満足度の高い人生を送れることでしょう。

一方で、欠点ばかりが目につく親もいます。松村氏によると、それを心理学では「ネガティビティバイアス」と呼ぶのだそう。人間の脳は、悪いところに目を向けて危機的状況を回避する働きをもっており、特に親はわが子への愛情ゆえに、弱点を積極的に見つけ、それを直してあげたいと思う傾向があります。

また、せっかくわが子の強みに気づいても、否定したり、「たいしたことない」と過小評価したりすることも同様です。「調子に乗らないの」「そんなことできてもしょうがない」「○○ちゃんの方が上手」などと強みを否定すると、子どもは自信を失ってしまうと松村氏は述べています。それだけでなく、「自分は何をやってもダメだ」と自己効力感が急激に低下してしまうとのこと。

子どもは自己効力感が失われると、ネガティブな思考にはまってしまい、チャレンジすることや頑張ることを諦めるように……。子どもが将来幸せになるには、親が子どもの強みを理解してくれること、またサポートや応援をしてくれることが重要なのかもしれません。

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子どもの「強み」を見つける3つの質問

そうはいっても、「わが子の『強み』が何かわからない」「優れているように見えるところはあるが、それは親バカだからかもしれない」「ただの趣味のように見えるけど、それが『強み』として通用するの?」など、子どもの強みそのものがわからない人や、強みだと判断しかねている人もいるのではないでしょうか。

そこで、前出のウォーターズ氏が提唱する「強みベース子育てプログラム」より、子どもの強みの見つけ方をご紹介します。次の3つの質問に答えてみてください。お子さまの「強み」を見つけましょう!

  • 質問1:【得意】同じ年齢の子どもよりうまくできることはありますか?
  • 質問2:【熱意】イキイキと熱中していることはありますか?
  • 質問3:【頻度】いつも進んでやりたがることはありますか?

 
これら3つの要素は、密接に絡み合っているとウォーターズ氏は指摘します。たとえば、ほかの子よりも上手にできることがあると、子どもは嬉しくなり、ますます熱中するようになるでしょう。すると空いている時間で練習するなどして、さらに上達し、夢中になる……。このような好循環が生まれ、強みが強化されます。

そのため、ただ「得意」なだけで、熱中している様子がなかったり、時間はあるのにやらなかったりするのは、本当の「強み」ではないそうです。

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子どもの強みを〇〇すれば、前向きでポジティブな性格に

わが子の「強み」がなんとなくわかってきた、本人もこれが「強み」だと自覚している、といった状況なら、もうひと押ししてあげましょう。そうすることで、前向きでポジティブな思考・行動ができるようになります。

■親の行動1:調子に乗らせる!

ウォーターズ氏は、子どもの強みに気づいたらまず「わかりやすく伝える」ことを推奨しています。「あなたの強みは〇〇ね」とストレートに伝えて意識させたり、「前よりも上手になったね!」と成長を認めたりするといいでしょう。

「ほめてばかりだと調子に乗るのでは?」と不安を感じるかもしれませんが、教育専門家の石田勝紀氏はもっと調子に乗らせていいとキッパリ。調子に乗らせたくないという気持ちの根底にあるのは、「いずれ足元をすくわれるかもしれないから、慎重にしてほしい」という親心でもありますが、石田氏が言うように、「仮に痛い目にあってもそれが学びになる」と割りきることが大事です。

自己肯定感を上げるためにも、まずは長所を伸ばすこと、つまり「強み」を強化することを優先しましょう。

■親の行動2: “さらに” やらせる!

「強みを知っているだけでも幸せになるが、使うと効果が飛躍する」とウォーターズ氏が述べるように、ニュージーランドの研究によると、強みを知らない人を「1」とすると、強みを知るだけで幸せは9.5倍、使えるようになると幸せが19倍にもなるそうです。

石田氏は、「日々の小さいことを習慣化させることで、集中癖、前向き癖、主体癖をつけるようにするといい」と述べています。自分の好きなこと(強み)を習慣的に行なうことで、前向きさを手に入れられるのだそう。親が子どもの強みを使う機会を一緒に考えたり、その状況を用意してあげたりすることで、強みはぐんぐん伸びていきます。

***
スポーツや芸術関係ならまだしも、うちの子が夢中になっているのはゲームや動画、おしゃれのことばかり……そう心配する親御さんもいるでしょう。しかし大事なのは、夢中になって集中できる力があるかどうか。もしかしたら好きが高じて、ゲームクリエイターやヘアメイクアーティストになり、抜群のセンスを発揮するかもしれません。違う道に進んだとしても、強みを知って生かせるようになる底力をつけるためにも、決して無駄なことではないのです。

(参考)
みらのび|ぐんぐん伸びる子の育て方 第5回:家庭で「前向きな力」を見につける3つのポイント
ライアン・ニーミック 著, ロバート・マクグラス 著, 松村亜里 監修(2021),『強みの育て方「24の性格」診断であなたの人生を取り戻す』, WAVE出版.
City Life News|これからの時代、世界に通用する子どもは、自分の強みを生かして人を幸せにする子
松村亜里(2019),『世界に通用する子どもの育て方』, WAVE出版.
松村亜里(2020),『子どもの自己効力感を育む本』, WAVE出版.
リー・ウォーターズ 著, 江口泰子 翻訳(2018),『ストレングス・スイッチ 子どもの「強み」を伸ばすポジティブ心理学』, 光文社.
一般社団法人 日本ポジティブ教育協会|強みベース子育てプログラム
加藤紀子(2020),『子育てベスト100ーー「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が一冊で全部丸わかり』, ダイヤモンド社.