からだを動かす/ダンス 2018.6.24

【習い事としてのタップダンス】タップダンサー・HIDEBOHさん~リズム感、バランス感覚、器用な動作をつくる神経系を養う~

【習い事としてのタップダンス】タップダンサー・HIDEBOHさん~リズム感、バランス感覚、器用な動作をつくる神経系を養う~

北野武監督作品・映画『座頭市』や水谷豊初監督作品・映画『TAP-THE LAST SHOW』タップダンスシーンの振付・指導を担当したHIDEBOHさんは、お父さんがつくったタップダンスのスタジオを『Higuchi Dance Studio』という名称にあらため、タップを含めたダンスの指導をしています。対象は、子どもから大人まで。なかには、3歳から習いに来ているお子さんもいるそうです。習い事としてのタップダンスの効果や魅力とは、どんなところにあるのでしょう

構成/岩川悟 取材・文/洗川俊一 写真/玉井美世子

バランス感覚と器用さが養われる

――習い事としてのタップダンスの効果や魅力についてお聞きしたいのですが、実際に小さなお子さんたちを教えていて、どういうことを感じていらっしゃいますか?

HIDEBOHさん:
タップダンスからすぐに連想できるものとしては、やはりリズム感でしょうか。子どもの場合は、目で見て覚えるよりも音と体感で入っていくので、リズムを感覚でつかんでいきます。ところが大人の場合は、「右足をこっちに出したら、次は左足をあっちに出す」といったように、理屈が先にきてしまいがち。その理屈はたしかに大切なことですが、リズムは理屈じゃない部分もあるんですよね。小さな子どもには理屈で教えても理解できませんし、とりあえずやってみるしかないんです。でも、そこがすごく大切なポイントで、失敗したとしても「やってみた」ということは確実に残ります。その繰り返しで、リズムの感覚を養うことができるのだと思います。

――タップは当然ながら足先をよく使うダンスですよね。

HIDEBOHさん:
タップは足先だけを使っているように見えますが、じつはそうではありません。背筋や腹筋など、体のいろいろなところを使う全身運動です。しかも大切なのは、体重移動しながら、常に体のバランスを保たなければならない。このバランス感覚を身につけると、あらゆるスポーツをするときに役立ちます。どんなスポーツでも、バランスが悪いと正しいフォームを身につけるのに時間がかかるし、瞬発力だって発揮しづらくなりますから。

――最近は体操を教える運動教室など、子どもの体の動かし方を教えるところが増えてきていますが、そうした運動教室と比べたときに、タップをオススメしたいポイントはどこにありますか?

HIDEBOHさん:
リズムに合わせて器用な動作ができるようになるところかもしれません。タップは足だけの動作だと思われますが、手拍子もよく使います。たとえば、足でトントンと床を叩く動作に合わせて手拍子したり、足でトントン2回床を叩いたら、2回手拍子したりするといった単純動作は誰でもすぐにできます。ところが、足でトンと1回床を叩いて1回手拍子、また足でトン、手拍子パン。その動作をやってみるとわかりますが、これがとても難しい。大人だと、できない人ができるようになるまでにしばらくかかります。しかし、子どもたちにやらせると簡単にできてしまうから不思議。小学校の低学年までにやると、とくに吸収が早くてどんどん上達していきます。そうした、リズムに合わせて器用な動作ができるようになる能力は、タップの独特な部分かもしれません。

――吸収が早いのは、運動神経系がもっとも発達すると言われるゴールデンエイジ(プレゴールデンエイジは3歳~8歳、ゴールデンエイジは8歳~11歳とされる)と関連がありそうですね。

HIDEBOHさん:
専門家ではないのでわからないところはありますが、運動神経の回路がつくられていく時期に、通常の運動にはない動きがインプットされるのはいいことだと思います。そのインプットができた状態で、楽器のドラムをやったとしましょうか。手足を使う楽器ですから、ドラムはとても難しいのですが、足でペダルを踏んでバスドラムを叩きながら、手に持ったスティックでタムタムやシンバルを叩くといったような器用な動作も比較的早くできるはずです。手足をバラバラに動かすという動作は、できない人はいつまでもできないですからね。

3歳からでもタップを踏める!

――運営されている『Higuchi Dance Studio』ですが、小さいお子さんは何歳から習いに来ているのでしょうか。

HIDEBOHさん:
うちのスタジオは、3歳からいますね。うちの娘も3歳からはじめましたよ。キッズクラスのなかには3~6歳くらいの小さなお子さんを対象とするクラスもあります。そのレッスンでどういうことをしているのかというと、はじめに体操みたいなことをして体を動かします。それから、みんが知っているような曲をかけて、音楽に合わせて体を動かしながらタップを踏んでいきます。

――3歳のお子さんでもタップが踏めるのですか?

HIDEBOHさん:
もちろん踏めますよ。子ども用のタップシューズを履いてもらって足踏みすれば、きちんとタップダンスの音が鳴りますからね。まずは音を聞いてもらうのが肝心。足踏みを繰り返したら、次はつま先だけで鳴らしたり、かかとだけで鳴らしたり。つま先で打ったときと、かかとで打ったときの音のちがいに気づくといったことも大切なことです。小さなお子さんに教えるときに気をつけているのは、子どもは集中力が続かないので、適度に休憩をはさむこと。基本は50分間のレッスンですが、15~20分やったら一度は休憩を入れるようにしています。子どもは一度嫌になるとやりたくなくなってしまうケースが多い。嫌になってしまうと、「やらされている感」が生まれてきてしまいます。そうならないように、タップを踏むときの音楽はみんなが知っているような馴染みのある曲を選んだり、少し休憩を挟んだりと、そうならない環境やレッスン内容を考えています。まずは楽しくやれることがなによりも重要ですから。興味を持ちはじめたときの子どもたちの成長スピードは、こちらの予想をはるかに超えるもの。見ていて、「えっ! もうできたの?」と驚かされることもしょっちゅうですよ。

――子どもたちの発表会のようなこともあるのですか?

HIDEBOHさん:
キッズクラスを対象とした発表会をやっています。小さなお子さんたちのクラスは、好きな音楽をかけて体を動かすのが基本。ですから、「作品」という感じではありませんが、小学生にもなると、それなりに本格的になりますよ。小学校2、3年くらいになると、それこそ『座頭市』をきちんと踊れるようになりますからね。正式版からは少し間引きして構成していますけど、細かい音も鳴らせるほどにレベルは高いです。

――タップダンスは、海外では日本より習い事として定着しているものなのですか?

HIDEBOHさん:
日本よりははるかにたくさん学べる場所がありますね。しかも、そこで学んでいる子のなかには、とんでもないレベルのダンスを披露する子も存在します。いわゆる、スーパーキッズという子どもたちです。そういうレベルを目指すのもありですが、まずは音楽に合わせて体を動かす、タップシューズで音を鳴らすという楽しさ優先でいいのではないでしょうか。

――『Higuchi Dance Studio』以外でも子どもがタップを学べる場所はありますか?

HIDEBOHさん:
もちろん全国にあります。なかには子ども専門のスタジオもありますからね。うちもそうですが、1日体験を実施しているスタジオが多いと思うので、一度試しに受講してみるのもいいと思いますよ。音楽に合わせて体を動かすことや、それに合わせてタップシューズの音が鳴るのは、子どもにとって楽しいものですから。

***
「タップダンス」と聞くと、とても高度でプロフェッショナルな技術を要するものと思いがちですが、じつは小さな子どもでも楽しめるものなのです。しかも、子どものころにタップダンスをすると、リズム感はもちろんのこと、バランス感覚、それから器用な動きができるようにもなる。そうしたスキルは、どんなスポーツや生活動作にも役立つことでしょう。


※HIDEBOHさんのステージには、タップダンスの醍醐味がすべて集約されています。芸術的なまでのそのライブは必見!

■ タップダンサー・HIDEBOHさん インタビュー一覧
第1回:【夢のつかみ方】(前編)~あきらめずにしつこくの精神~
第2回:【夢のつかみ方】(後編)~ニューヨークで学んだ「自分アピール」の重要性~
第3回:【父から教えてもらったこと】~客観的に子どもを見る視点を持つ~
第4回:【習い事としてのタップダンス】~リズム感、バランス感覚、器用な動作をつくる神経系を養う~

【プロフィール】
HIDEBOH(ひでぼう)
1967年10月7日生まれ、東京都出身。本名、火口秀幸。タップダンサーである父・火口親幸の元で6歳からタップダンスをはじめる。1984年からはタップの指導者としてインストラクターに。1987年からタップダンサーを目指して本格的な修行を開始し、ニューヨークと日本を行き来するようになる。ニューヨークでは、タップダンサーのスターであるグレゴリー・ハインズの師匠である、ブロードウェイの振付師ヘンリー・ルタンに師事。1998年には、オリジナルのタップパフォーマンス形態「Funk-a-Step」を提唱して「THE STRiPES」を結成。2003年、北野武監督の『座頭市』のタップダンスのシーンの振付・指導で一躍脚光を浴びる。2009年には「LiBLAZE」という新しいグループを結成。2015年、コレオグラファー(振付師)のダンスコンテスト『Legend Tokyo Chapter.5』にて、4部門において受賞。2017年には、タップダンスシーンの振付・指導、そして出演もした水谷豊監督作品『TAP THE LAST SHOW』が公開された。父がつくったダンススタジオを継承した、『Higuchi Dance Studio』では、子どもから大人までにタップを含めたダンス指導をしている。

【ライタープロフィール】
洗川俊一(あらいかわ・しゅんいち)
1963年生まれ。長崎県五島市出身。株式会社リクルート~株式会社パトス~株式会社ヴィスリー~有限会社ハグラー。2012年からフリーに。現在の仕事は、主に書籍の編集・ライティング。