教育を考える 2018.10.9

「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと

[PR] 編集部
「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと

勉強しろ」と親に言われて子どもがウンザリするのは、今も昔も変わらないこと。けれど、「StudyHacker こどもまなび☆ラボ」読者の皆さんのなかにも、つい口を出してしまう人がいるのではないでしょうか。「勉強したら?」「勉強しないの?」も同様です。

とはいえ、「勉強しろ」と指示することで、子どもが勉強に対し意欲的に取り組むようになるわけではないことは、なんとなく分かっているはず。できれば、子どもには勉強を楽しみ、自分から机に向かう習慣をつけてほしいですよね。そこで今回は、「勉強しろ」の代わりに親ができることを紹介します。

「勉強しろ」は逆効果なの?

実際、親が子どもに「勉強しろ」と指示することは効果があるのでしょうか? 2011年、首都圏の保護者を対象にベネッセ教育研究開発センターが実施した「第4回子育て生活基本調査」では、あまり効果的とはいえないことが判明しました。

まず、小学生の子どもに「勉強しなさい」と声をかけている母親は、平均で8割以上。小学1~5年生では80%を超えていて、6年生でも76.2%です。そして、声かけされた小学生の平日における一日あたりの平均勉強時間は、ベネッセの算出をもとにすると57.6分。されなかった場合は53.3分。なんと、たった4分の違いなのです。

しかも小学5年生の場合、「勉強しなさい」と言われた子どもの平均勉強時間は、言われなかった子どもよりも3.6分少なかったことがわかりました。このデータを見ると、「勉強しろ」と言うことは、子どもの勉強時間を増やすのにあまり効果的ではなく、むしろ逆効果な場合もあるといえるでしょう。

統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと2

「勉強しろ」が逆効果な理由

なぜ「勉強しろ」と促しても、親が望んだ結果にならないのでしょう? それは、心理学でいう「心理的リアクタンス」が機能するからです。

社会心理学を専門とする深田博己教授(広島文教女子大学)によると、心理的リアクタンスとは「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した動機的状態」。つまり、人間は「○○しなさい」「○○してはいけません」のような命令・指示を受け、自由に行動できる権利を制限されたと感じると、自分には自由があるのだと確認するために反対の行動をとる傾向があるのです。

子どもが「勉強しなさい」と言われると、「今やろうと思ってたのに」と反発心を覚え、意欲を失ってしまうのには、心理的リアクタンスが影響していると考えられます。読者の皆さんにも「必ず〇〇するように」「絶対に〇〇しないで」と言われて、反対のことをしたくなった経験はありませんか? 子どものなかでも同じことが起こっているのです。このように、「勉強しろ」という声かけの効果は心理学的に薄いといえます。

統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと3

「勉強しろ」と言わない親の行動1:将来の話をする

「勉強しろ」と言うのがダメなら、子どもにどう接すればよいのでしょう? ヒントは統計のなかにあります。

「第4回子育て生活基本調査」によって、親子が将来について話すことと、子どもの勉強時間には、関連性があることがわかりました。母親が「子どもと将来や進路について話をする」と答えた小学生の平均勉強時間は、約61.8分。話をしない小学生の場合は約44.9分。なんと、17分もの差がつきました。「勉強しなさい」という声かけの有無と比べ、違いは明らかですね。

特に小学6年生では、将来について親と話す子どもの平均勉強時間は、そうでない子と比べて34.2分も長いという結果でした。あまり子どもと将来の話をしてこなかった、という人は、ときどき話題にすることを意識してみると、子どもが「将来はこういうことをしたい」という具体的なイメージを心に抱き、その目標のために勉強を頑張るようになるかもしれませんね。

「将来の話といっても、どうすれば?」という人もいるかもしれません。「大人になったら何になりたいの?」と尋ねて具体的な職業を返答されても、うまくアドバイスができないかもしれません。子どものほうでも、「〇〇になりたいんだったら、もっと勉強しなくちゃ」とお説教されてウンザリしたり、将来についてまだ具体的に考えられなかったりする可能性がありますね。そこで、押しつけがましくならないように将来の話をするには、親の「思い出話」を聞かせることをおすすめします。

皆さんは、現在(過去)の職業に就くまで、どんな努力をしましたか? 仕事や日常生活のなかで、学校での勉強はどう役立っていますか? どんな高校や大学へ行きましたか? なぜそこを選んだのですか?
自分の話を通して、子どもに考えさせてください。すぐに効果が表れなくても、自分の将来についてイメージしはじめるでしょう。

(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子供が勉強しないときの対策。イライラはNG、親子で勉強計画を立てよう!

統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと4

「勉強しろ」と言わない親の行動2:いっしょに勉強の計画を立てる

さらに、「第4回子育て生活基本調査」によって、親子で勉強の計画をいっしょに立てたほうが子どもの勉強時間が長くなりやすいことも判明しました。子どもといっしょに勉強の計画を立てると答えた母親を持つ小学生の平均勉強時間は約66.2分。そうでない小学生の場合は約47.5分でした。およそ19分もの差があるのですね。

計画づくりを親が手伝ってあげると子どもが勉強しやすくなる理由は、ベネッセによる別の調査でうかがい知ることができます。2014年、小学4年生~中学2年生の子ども・その保護者を対象に行われた調査によると、「計画を立てて勉強する」と答えた小学生は48.1%に留まりました。ほかの51.9%は、計画を立てずに勉強していることになります。また、回答した小学生はのうち、39.9%が「上手な勉強のやり方がわからない」を、27.7%が「勉強が計画通りに進まない」を勉強上の悩みとして挙げました。

「勉強する」という動詞はあいまいです。子どもは「勉強する」際、「何を」「いつ」「どこで」「どのように」行うのか、具体的に決定しなければなりません。小学生の思考能力はまだ発達段階にありますから、どのような勉強方法に効果があるのか、自分はどのように勉強するべきかなど、客観的・論理的に考える力は未成熟です。

そこで、大人によるアドバイスが必要となるのです。「勉強しろ」と言うかわりに親子で話し合い、「この問題集を一日に1ページ解く。答え合わせは親がやり、全問正解するまで繰り返す」「教科書の〇ページ~△ページを音読する」など、具体的な勉強の方法を決定しましょう。

統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと5

「勉強しろ」と言わない親の行動3:夢中になれる体験をさせる

東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所による共同研究の一環として、「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」の結果が発表されました。それによると、小学5~6年生の11.1%は、2015年の調査で「勉強が嫌い」だと答えていたのに、2016年の調査では「好き」と回答したようです。

調査報告書によると、この「嫌い→好き」の子と「嫌いなまま」の子の違いはさまざまですが、そのうちのひとつが「夢中になって時間がたつのを忘れる」体験をしていること。1年間でそのような体験をしたと答えた小学生の割合は、「嫌いなまま」だと75.1%でしたが、「嫌い→好き」だと83.8%でした。

「夢中になって時間がたつのを忘れる」経験と勉強の好き嫌いの関係をはっきりと説明するのは困難ですが、子どもが大好きな趣味を見つけ、それと勉強を関連づけられたのかもしれません。あるいは、何かに没頭することの喜びに気がつき、集中して勉強することに楽しみを覚えたのかもしれません。脳の発達を研究し、『脳の専門家が選んだ「賢い子」を育てる100のものがたり』などの著書を持つ瀧靖之教授(東北大学脳科学センター)によると、東大生の多くも、子ども時代に「何かに熱中する体験」をしたそう。

自分の好奇心の赴くままに好きなことに熱中しているうちに、わからないことは誰に聞けばいいのか、どうやって調べればいいのかというストラテジー(戦略)が身に付きます。これがのちの勉強や仕事に大いに役立つのです。

(引用元:東洋経済オンライン|頭のいい子に共通する小学校時代の過ごし方

いずれにせよ、夢中になれるほどの楽しみを見出せたのは、子どもの人間的な成熟にとって素晴らしいこと。親としては、ぜひその手伝いをしたいものです。瀧教授によると、子どもが興味を持ったことを親もいっしょに楽しんだり、興味を追求できるような環境を整えてあげたりするのがよいのだそう。たとえば、以下のようなことをしてみてはどうでしょう。

  • 恐竜に興味を持った子どもを博物館に連れていき、いっしょに標本を見る
  • 音楽に興味を持った子どもを、コンサートやミュージカルに連れていく
  • 鉱石に興味を持った子どもに、写真つき図鑑を買い与える

 
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「勉強しろ」と思っても、そのまま言うのはぐっとガマン。もっと効果的で、互いに楽しい気分でいられる方法があるのです。ご紹介した3つの方法をひとつでも試してみてはいかがでしょうか?

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方
ベネッセ教育総合研究所|第4回子育て生活基本調査(小中版)[2011年]
ベネッセ教育総合研究所|小中学生の学びに関する実態調査 速報版[2014]
ベネッセ教育総合研究所|東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究 「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」
広島大学 学術情報リポジトリ|心理的リアクタンス理論(1)
StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子供が勉強しないときの対策。イライラはNG、親子で勉強計画を立てよう!
東洋経済オンライン|頭のいい子に共通する小学校時代の過ごし方