あたまを使う/非認知能力 2025.9.19

「頭がやわらかい子」「アイディア豊富な子」がやっている4つの習慣

木野未来
「頭がやわらかい子」「アイディア豊富な子」がやっている4つの習慣

授業で案を次々と出したり、遊びのルールを工夫して面白くしたり。まわりをあっと驚かせるような発想を見せる「頭のやわらかい子」「アイデア豊富な子」が、クラスにひとりはいるのではないでしょうか。

国際的な教育研究機関であるカリキュラム・リデザイン・センターでは、21世紀に必要な力として『創造性』を最も重要なスキルのひとつに位置づけています。

「柔軟に考えられる子になってほしいけれど、うちの子はいつも同じやり方にこだわって……。どうすればもっと頭をやわらかくできるのだろう」

そんなふうに悩む親御さんのために、今回は頭のやわらかい子がしている日常習慣を4つお伝えします。考えがカチカチに固い子の習慣とは何が違うのか、ぜひ確認してみてください。

1. 「自分は間違っているかもしれない」と考える

頭が固まりやすい子は、自分の考えに固執しがちです。先生に注意されても「そんなの間違ってる!」と反発したり、友だちの意見を聞かずに「ぼくの考えが正しい!」と言い張ったり。

  • 先生に注意されても「そんなの間違ってる!」と反発する。
  • 友だちの意見に耳を貸さず、「ぼくの考えが正しい!」と言い張る。

一方で、頭がやわらかい子は「自分が間違っているかもしれない」と一度立ち止まることができます。

  • 「そういう考え方もあるんだね」と受け止められる。
  • 「自分のやり方だけじゃないかも」と修正できる。

京都大学大学院教育学研究科の楠見孝教授の研究では、こうした「自分の考えを客観視する」ことをメタ認知と呼び、創造的思考を働かせる上で欠かせないものだとしています。「絶対にこうでなければならない」と固執せず、「他にも方法があるかもしれない」と考えられる子は、より多くの可能性を探ることができるからです。

親がこの力を育てるには、まず子どもが頑固になったときの声かけが重要です。「それは違う!」と否定するのではなく、「なるほど、○○ちゃんはそう思うんだね。私はこう思うんだけど、どうかな?」と受け止めてから別の視点を示す。さらに効果的なのは、親自身が「あ、ママが間違ってた」と素直に認める姿を見せることです。

考える子ども

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2. さまざまな視点から物事を見る

頭が固まりやすい子は、自分の立場だけで物事を考えます。「私は遊びたいのに、なんで片付けなきゃいけないの?」と文句を言ったり、「自分が正しいんだから、みんなも同じように考えるべき」と決めつけたり。

  • 「私は遊びたいのに、なんで片付けなきゃいけないの?」と不満を言う
  • 「自分が正しいんだから、みんなも同じように考えるべき」と思い込む

一方で、頭がやわらかい子は、友だちや先生の視点に立つことができます。

  • 「片付けないと、次に遊ぶ人が困るかも」
  • 「先生が言っているのは、みんなが安全に過ごすためなんだ」

発達心理学では、こうした他者の立場に立てる力心の理論(Theory of Mind)と呼びます。4〜5歳ごろから育ち始め、他者の気持ちを理解できる子ほど協調性や問題解決力が高いことがわかっています。東京都教育研究所の創造性研究でも、「相手の考えや気持ち、立場などを『想像』し、新たな関係や社会を『創造』していく力」として、この能力の重要性が指摘されています。

この「視点を切り替える力」が育つと、アイデアの幅も広がります。「自分だったらこう考えるけど、○○ちゃんだったらどう考えるかな?」と想像できる子は、一つの問題に対してもたくさんの解決策を思いつけるからです。

親が「相手の気持ちを想像する」声かけを意識することで、この力を育てられます。友だちとケンカしたら「○○ちゃんはどんな気持ちだった?」、片付けを嫌がったら「次に使う人はどう思うかな?」と問いかける。絵本のあとに登場人物の気持ちを聞いたり、ロールプレイで相手の立場を体験させたりするのも効果的です。

相手の気持ち

3. 常識や習慣を「ときどきひっくり返す」

頭が固まりやすい子は、決まりや習慣を疑うことなく受け入れます。「決まりだから、みんながやっているから」と同じパターンを繰り返すだけで、新しい発想は生まれません。

  • 「いつもこのやり方だから」と決まった方法しか使わない
  • 「ルールは絶対に守るもの」と融通が利かない

一方で、頭がやわらかい子は、常識や習慣をときどき疑い、ひっくり返してみます。

  • 「鬼ごっこに”バリアタイム”を入れたらもっと面白いかも!」
  • 「宿題をリビングじゃなくベランダでやったら気分が変わるかも!」

アメリカの心理学者ギルフォードの研究では、創造的思考は「拡散的思考」と「収束的思考」に分けられるとされています。常識を疑って様々なアイデアを広げる力(拡散的思考)と、それを一つの解決策にまとめる力(収束的思考)の両方が、ユニークな発想を生み出すのです。

「当たり前のこと」「繰り返していること」「大前提となっていること」を見つけ出して、ひっくり返してみる——こうした思考習慣が創造力を高めるのですね。

親は子どもと一緒に「なんで?」「これはどうかな?」を楽しむことで、この習慣を育てられます。「なんで靴下は左右同じ色?」「なんで朝ごはんは朝食べるの?」といった疑問を一緒に考える。時には「今日はデザートから食べてみる?」「○○ちゃんが決める日にしてみようか」といった小さな実験を提案したり、子どもの「普通じゃないアイデア」を「面白いね!」と受け止めたりすることが大切です。

常識を覆す

4. 新しいことにチャレンジする

頭が固まりやすい子は、同じ毎日を安心と感じがちです。変化を避け、慣れ親しんだことばかりを選んでしまいます。

  • いつも同じ遊び、同じ本、同じ道を選ぶ
  • 新しいことを提案されると「やりたくない」と拒否する

一方で、頭がやわらかい子は、新しいことに挑戦するのを楽しみます。

  • 初めてのスポーツや習い事に挑戦する
  • 読んだことのないジャンルの本を手に取る
  • いつもと違う道を通って帰る
  • 新しい友だちに自分から声をかける

脳科学の研究でも、新しい経験は前頭前野や海馬を刺激し、思考の柔軟さを育てることが示されています。愛知教育大学の創造的思考力の研究では、新しい体験が子どもの脳に新たな「引き出し」を作り、既存の知識を組み合わせたり、新たな状況に知識を適用させたりする力を育てることが明らかになっています。

新しい体験は、子どもの脳に新たな「引き出し」を作ります。アイデアを考えるとき、この引き出しが多ければ多いほど、組み合わせのバリエーションも豊かになるのです。

親は、小さなチャレンジを後押ししてみましょう。「違う道で帰ってみない?」「今まで読んだことのない本を選んでみない?」といった提案をする。子どもが不安がったら「新しいことって最初はドキドキするよね」と気持ちを受け止め、親も一緒に新しいことに挑戦する姿を見せることで、「新しいことは楽しい」と感じさせられます。

***
頭がやわらかい子は、「自分も間違うかもしれない」と考え、さまざまな視点で物事を見て、常識を疑い、新しいことに挑戦します。

親としてできるのは、子どもの発想を否定せず、「まずは受け止める」「一緒に考える」「小さな挑戦を応援する」こと。特に重要なのは、親自身が柔軟な姿勢を見せることです。間違いを認め、新しいことに挑戦し、子どもと一緒に「なんで?」を楽しむ。こうした日々の関わり方の積み重ねで、子どもの柔軟な思考力はぐんぐん育っていきます。

(参考)
愛知教育大学 紀要|創造的思考力を育む授業の創造 ― メタ認知を促進させること
J-STAGE(日本認知科学会論文誌)|創造的問題解決におけるメタ認知的処理の影響
東京都教育研究所|創造性の育成に関する研究(第1年次)