親の関わり 2026.10.2

「早く!」「ダメ!」の言い換え30選。朝・帰宅後・寝る前の場面別NG→OK

「早く!」「ダメ!」の言い換え30選。朝・帰宅後・寝る前の場面別NG→OK

「早くしなさい!」「ダメって言ったでしょ」「何回言えばわかるの」

朝の玄関、帰宅後のリビング、寝る前の洗面所。この3つのどれも言わずに終わる日は、めったにないと思います。言った直後に「また言ってしまった」と思い、翌朝また同じ言葉が口から出る。

じつは、この3つの言葉には共通の欠点があります。どれも、子どもに「次に何をすればいいか」を伝えていないのです。「早く」は速さしか言っていません。「ダメ」はやってはいけないことしか言っていません。「何回言えばわかるの」は、答えようのない質問です。子どもが動かないのは聞き分けの問題ではなく、言葉のなかに「してほしい行動」が入っていないから。

その言い換えを、実際に言葉が出る朝・帰宅後・寝る前の時間帯ごとに、10組ずつ並べました。

「早く」「ダメ」「何回言えば」は、子どもの「次の行動」を消してしまう

「早く!」という言葉がけは、子どもの自己肯定感を下げてやる気を奪うだけです。(白百合女子大学・発達心理学者の秦野悦子氏)「自分でやりたい!」という気持ちが高まる幼児期に、具体的なアドバイスなしで急かし続けると、自主性や自己肯定感が育ちにくいともいわれています。

「早くしなさい!」は、「脳をたくさん使わず、ちょこっとだけ使って、いまやっていることをパパッと終わらせなさい」という指示と同じなのだそうです。(発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家、加藤俊徳氏)「早く」は、子どもの手を速めるどころか、頭を止めてしまう言葉なのです。

📖 調査でも、こう示されています

個別指導塾に通う中高生100人に聞いた調査では、51%が、親の言葉で「やる気スイッチ」がオフになった経験があると答えています。最も多かった言葉は「勉強しなさい・早くやりなさい」で、そのほとんどは、本人が「やろうと思っている」状況で言われていました。(やる気スイッチグループの調査より)*1

「ダメ!」はどうでしょうか。子どもは否定語を理解するのが苦手で、「ここで騒いだらダメ」と言われれば言われるほど、子どもの頭のなかは「騒ぐ」に囚われるといいます。(幼児教育研究家・はせがわわか氏)「シロクマのことだけは考えないで」と言われた人ほど考えてしまう、「シロクマ実験」と同じ仕組みです。(心理学者・ダニエル・ウェグナー氏ら)*2

また、「ダメ!」で失敗や危険から回避させ続けると、ちょっとしたことで挫折しやすくなるという指摘もあります。(教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介氏)

そして「何回言えばわかるの」。「なんで〇〇するの!?」という問いは不毛です。問い詰められた子どもは怖くて黙るか、原因をあれこれ並べるかで、反省の弁は出てこないからです。(作家・カウンセラーの五百田達成氏)「何回言えばわかるの」も同じ型です。「足し算もできないの?」のような能力否定の言葉は、「自分は算数ができない」という思い込みを何十年も残しうるといいます。(教育評論家・親野智可等氏)

では、効く言葉は何が違うのでしょうか。ポイントは、「ネガティブな表現を使わずに、相手にしてほしい行動を具体的に伝える」ことです。(日本ペップトーク普及協会専務理事・浦上大輔氏)「騒がないで」ではなく「ここでは静かにしようね」と言えば、「静かにする」がすんなり入っていきます。以下の30組はすべてこの原則の応用です。元になった「早く!」の代わりに使いたい “魔法の言葉”、「ダメ!」と言われ続けると「挫折しやすい子」に育つ、我が子に決して言ってはいけない「7つのNGワード」も、あわせて読めます。

こどもを見守る母親

朝の10組は、「早く」を「時間」と「楽しみ」に置き換える

朝は「早く」がいちばん出やすい時間帯。起こす、着替えさせる、食べさせる、玄関から出す。すべてに締め切りがあります。

つい言ってしまう言葉(NG) こう言い換える(OK)
1. 「早く起きなさい!」 「起きたら、好きな動画を1本見られるよ」
2. 「早く着替えて!」 「お着替え、丁寧にできるんだね。今日はいつもより早く着替えられたね」
3. 「早く食べて!」 スーパーの店員さん役で「試食、どうですか〜?」
4. 「あと5分で出るよ。わかってる?」 「長い針がここに来るまでに、靴下まで履こうね」
5. 「時間がないから早く準備しなさい!」 「8時に出ないと電車に間に合わないから、7時50分までに準備しようね」
6. 「ちょっと待って」 「洗い物が終わるまで待ってね」
7. 「何回言えばわかるの!」 「これからはどうすればいいと思う?」
8. 「そんなこともできないの?」 「次はきっとできるよ」
9. 「ダメ! 走らないで!」 「玄関までは歩こうね」
10. 「いいから早くしなさい!」 (10秒待ってから)「自分で履けたね!」

1は、夜ふかしの原因になっている「夢中になるもの」を朝に持ってきて、起きる楽しみをつくる言い換えです。(睡眠の専門家でもある小児科医・成田奈緒子氏)2は、まずよさを伝えてからほめる言い換え。子どもは何をするにも大人の2〜3倍の時間がかかるためです。(東京家政大学教授・岩立京子氏)3は、スーパーの「試食ごっこ」です。(保育士で育児アドバイザーのてぃ先生)

4と5は時間を見える形にする言い換えです。子どもは「5分」の意味はわかっても、それがどれくらい短いのかはわかっていないので、画用紙に描いた「模擬時計」を本物の横に置きます。(教育評論家・親野智可等氏)

6〜8は、「ちょっと」「何回」「そんなことも」を、具体的な言葉や励ましに置き換えています。(作家・カウンセラーの五百田達成氏、教育評論家・親野智可等氏)9は肯定語への置き換え。10は「10秒」待つ言い換えです。2歳の子でも10秒あれば片足は履けるのに、5秒で「早く」と言っていないか。あと10秒待つだけで「ひとりでできた」の場面はずいぶん増えるといいます。(スーパー保育士・原坂一郎氏)

母親が娘に道具の使い方を教える様子

帰宅後の10組は、「質問」を「次の一手」に変える

帰宅後に出やすいのは「早く」よりも、「やったの?」という質問を次の行動へとかえる言葉です。

つい言ってしまう言葉(NG) こう言い換える(OK)
1. 「宿題やったの?」 「ドリル、終わってないんだね。さあ、やっちゃおう」
2. 「いつまで遊んでるの! 早くやりなさい!」 「いま何時かな。何時から宿題する?」
3. 「早く宿題しなさい!」 「あとどれくらいで始めるの?」
4. 「ボーッとしてないで真面目にやりなさい!」 「まずは3問だけやっちゃおうか」
5. 「この問題、間違ってるから直して!」 「こっちは全部合ってるね。じゃあ、この問題はやり直してみようか」
6. 「まだこれしか進んでないの?」 「量が多くて大変だけど、進んでるね」
7. 「片づけないならおもちゃ捨てちゃうからね!」 「50数える間に片づけられるかな? それとも30かな?」
8. 「早く選んで! もうこれでいいよね」 「ゆっくり選んでいいよ。決まったら教えてね」
9. 「〇〇ちゃんはできるのに、なんでできないの」 「〇〇ちゃんは絵が上手だね。△△(わが子の名前)は工作がとても上手。ふたりとも上手だね」
10. 「あとでね」「また今度ね」 「ごはんを食べたら、一緒にやろうね」

1の「宿題やったの?」は、やっていないと気づきながらあえて聞く「意地悪な質問」で、子どもに「やったよ」と嘘をつかせてしまいます。(教育評論家・親野智可等氏)2は、「何時から」を確認してから誘う言い換え。低学年は、いまが勉強時間だと認識していないことがあるからです。(子育て心理学協会代表理事・東ちひろ氏)3と4は、始める時刻と量を小さくする言い換えです。子どもは最初の一歩が一番腰が重くなります。(教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介氏)

5と6は、「たくさんほめてから直す」順番です。(教育評論家・親野智可等氏)7は脅しを選択肢に変えます。「捨てちゃうからね」と言って捨てないことが続くと、子どもは親を信用しなくなり、弟や妹に同じ脅しを使うようになります。(子育て本著者・立石美津子氏)代わりに使いたいのが、どちらを選んでも親に支障がない2択です。(臨床心理士・高山恵子氏)

8は、子どもの頭が一番働いているのは「悩んで考えているとき」という考え方にもとづく言い換えです。(白梅学園大学子ども学部教授・増田修治氏)9は、友だちの名前を挙げてほめるなら、必ずわが子のよいところも一緒に。(心理カウンセラー・佐藤栄子氏)10の「あとでね」は、嘘をつくのと同じ。はっきり約束して守ることが、親への信頼になります。(日本メンタルアップ支援機構代表理事・大野萌子氏)

机に向かって鉛筆で紙に書き物をしている女の子

寝る前の10組は、「罰」と「評価」を「約束」と「気持ち」に変える

寝る前に出やすいのは「〜しないと〜させないよ」という罰と、「いい子だね」という評価の言葉です。

つい言ってしまう言葉(NG) こう言い換える(OK)
1. 「早くお風呂に入らないと、テレビ見せないよ」 「〇〇(番組名)がもうすぐ始まるね。それまでにお風呂に入ろうね」
2. 「テレビ、いつまで見てるの!」 (見始める前に)「この番組が終わったらおしまいね」
3. 「うるさい! 静かにしなさい!」 「あと5分、静かにできるかな? それとも10分かな?」
4. 「ひとりじゃできないでしょ。貸して」 「よし、じゃあ頑張ってみよう」
5. 「だから言ったでしょう」 「走ると、ぶつかって転ぶことがあるってわかったよね。今度から気をつけよう」
6. 「いい子だね」 「お片づけできたね。お母さん、うれしいな」
7. 「そんな子はうちの子じゃありません!」 「生まれてきてくれてありがとう」
8. 「明日は発表会なんだから、しっかりやりなさい」 「緊張するよね。練習のときと同じようにやればうまくいくよ」
9. 「なんでケンカなんかしたの!」 「〇〇くんとケンカしちゃったんだね。悲しいし、くやしいよね」
10. 「早く寝なさい! ゲームやめなさい!」 「続きは、明日の朝起きてからにしようか」

1は、罰を約束に変える言い換えです。罰は、何が悪いのかが伝わらず、「嫌なことを避けたいから従おう」と思わせるだけで、しかも内容がエスカレートしていきます。(育児相談室「ポジカフェ」主宰・佐藤めぐみ氏)2は、あらかじめ区切りをつけておく言い換え。こうしておけば子どもは混乱しません。(子育て本著者・立石美津子氏)3は、子ども自身に選ばせる2択です。(東京大学名誉教授・汐見稔幸氏)4は、背中を押す言葉への言い換えです。「もう勝手にしなさい」と突き放す言葉は、子どもが全人格を否定されたと感じてしまいます。(教育コンサルタント・上野緑子氏)

5の「だから言ったでしょう」は、子どもには何が「だから」なのかわからないので、一文で説明します。(心理カウンセラー・佐藤栄子氏)6の「いい子だね」は、上の人間が下の人間を判定する評価の言葉。代わりに「うれしいよ」と自分の気持ちを伝えます。(保育歴60年以上の保育士・大川繁子氏)7は、存在否定の言葉が「自分はいてはいけないのでは」という自己否定感を残すため、日頃から無条件に肯定する言葉を。(教育評論家・親野智可等氏)

8と9はペップトークの型「受容→承認→行動→激励」で、まず気持ちを受け入れてから、してほしい行動を伝えます。(日本ペップトーク普及協会専務理事・浦上大輔氏)10は、朝の1と同じ考え方を夜に応用した言い換えです。夢中になるものを取り上げず朝に回すと、寝る側にも起きる側にも楽しみが残ります。

格子窓の前に置かれた白いソファとクッション。サイドテーブルのアンティーク調のランプが温かい光を放つ、夜の落ち着いた室内

30組に共通するのは、「してほしい行動」をそのまま言うこと

言い換えの型は3つしかありません。

①否定語を肯定語にする。②「早く」「ちょっと」「なんで」を、具体的な時間・理由・選択肢に置き換える。③評価・脅し・罰を、気持ちと約束に置き換える。どれも、子どもの頭に「次にやること」が残る言葉です。

30組すべてを覚える必要はありません。子育てのルールが緩いオーストラリアでは、親はめったに「No」と言わず、そのぶん譲れないときの「No」がよく効くのだそうです。(小児科医・松永正訓氏)日頃の共感があれば、親の本気の「ダメ」は届きます。(東京家政大学ナースリールーム元主任保育士・井桁容子氏)言い換えを増やすことは、本当に必要なときの「ダメ」を効かせることでもあるのです。

そして、「親に待ってもらった子は、やがて自分が『待てる子』になる」といいます。(スーパー保育士・原坂一郎氏)明日の朝、玄関でひとつだけ。「早く」と言いかけたら、10秒だけ待ってみてください。
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「早く」「ダメ」「何回言えば」を言ってしまう日があっても、次のひとことで取り戻せます。
言い換えた言葉が、子どもの「できた」を少しずつ増やしてくれるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 言い換えても、子どもがすぐに動きません。待つべきですか?
A.
すぐに動かなくて普通です。子どもは何をするにも大人の2〜3倍の時間がかかります。(東京家政大学教授・岩立京子氏)「10秒待つ」を目安に、言い換えたあとは口を足さずに待ってみてください。(スーパー保育士・原坂一郎氏)ただし、「どうしたらいいかわからない状態」の30分は、子どもにとって苦痛でしかないともいわれます。(教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介氏)手が止まったまま困っているようなら、「どこまでわかった?」「一緒に考えようか」と手を貸すサインです。
Q. 危ないときも「ダメ!」と言ってはいけないのですか?
A.
言ってかまいません。オーストラリアの親のように、普段の「No」を減らしておくほど、譲れないときの「No」は効きます。(小児科医・松永正訓氏)日頃の共感があれば、親の本気の「ダメ」は子どもに届きます。(東京家政大学ナースリールーム元主任保育士・井桁容子氏)危険がないとわかっている場面から、肯定語に置き換えていけば充分です。
Q. つい「早く!」「何回言えばわかるの」と言ってしまったあとは、どうすればいいですか?
A.
言い直せば大丈夫です。「早く!」のあとに「7時50分までに靴を履こうね」と時刻を足す。「何回言えばわかるの」のあとに、「これからはどうすればいいと思う?」を足す。(作家・カウンセラーの五百田達成氏)最初の一言を消すことはできませんが、「次にやること」を足せば、子どもの頭に残るのはあとのほうの言葉です。
Q. 何歳ごろから、この言い換えは効きますか?
A.
言葉の意味がわかる年齢から使えます。1〜2歳の子どもは親の言葉や指示をだいぶ理解できるようになり、「イヤ」と言うことで「自分もひとりの人間なんだ」と主張しています。(スクールカウンセラーで医師の明橋大二氏)3〜5歳になると簡単なルールは守れるようになるので、「5分か10分か」のような2択や、「〇〇が始まるまでに」という区切りが効きやすくなります。

*1: やる気スイッチグループ|個別指導塾スクールIEに通う中高生100人に聞きました 親に言われてやる気スイッチがオフになる言葉 第1位「勉強しなさい!」(PR TIMES, 2017年12月27日)(参考: こどもまなびラボ|「いい子だね」は禁句? 我が子に決して言ってはいけない「7つのNGワード」)
*2: Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987)|Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.