小学校で勉強する「ひらがな」。とはいえ、実際には入学前からスラスラ読めている子が大半ですよね。親としては「いつから読み書きを始めたらいいの?」と気になるところです。
また、周りのお友だちが読み書きできていたり、世の中には「3歳でマスター」「2歳で読めた」あるいは「1歳前にわかった」という子がいたり……という状況を見て、「うちの子も早く始めないと」と焦りを感じている方もいるかもしれません。
ひらがなの「はじめの一歩」を親子でスムーズに踏み出すために、小学校入学前のひらがなの読み書きはどのくらい必要なのか、いつごろから始めたらいいのかをご紹介します。
自分の名前は年長までに、すべてのひらがなは5~6歳までに
幼稚園や保育園などでは、靴箱やロッカー、お道具箱などに、名前の代わりに動物や植物、食べ物などのワンポイントマークを貼って区別できるようにしています。これは、まだひらがなが読めない子のために自分とお友だちの持ち物を区別できるようにするためです。しかし、園によっては年長に進級すると小学校入学の準備を見越して、ワンポイントマークを使わず名前だけの表記になるところも。そのため、年長に進級するまでに自分の名前をひらがなで読み書きできるとベストでしょう。
本来、ひらがなは小学校1年生の国語で最初に学習するので、読み書きができていなくても問題はありません。しかし、実際には、小学校の入学説明会で「入学までに自分の名前が読み書きできるといい」という話をされるところもあるようです。また、ひらがながわかっていると多少の読解力もつきますので、入学してすぐに4月から始まる授業でスムーズなスタートを切りやすくなります。したがって、ひらがなの読み書きは「小学校入学までに」、つまり5~6歳がひとつの目安となるでしょう。
発達心理学が専門の白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子教授いわく、9割の子が小学校入学前にひらがなを読むことができ、読める力は読むスピードや読解力に大きく関係するそう。また、その一方で次のようにも述べています。
ところが3年生の終わりくらいになると、幼児期からひらがなを読めていた子も、小学生になってからひらがなを読めるようになった子も、読むスピードや読解力に差が見られなくなり、個人差が収束してきます。幼児期に読めたか読めなかったかで大きな差はつかないということがわかっています。
(引用元:たまひよ|つい比べちゃう…ひらがなは何歳までに全部読めているといい?)
早めにひらがなを習得している子は、入学直後のアドバンテージが大きいことは確かですが、その後の学習理解にまで影響が続くわけではないようです。はじめはなかなか覚えられなくても、学校生活の中で「先生が読んでくれた本をひとりで読みたい」「新しくできたお友だちと手紙を交換したい」といった興味がきっかけで、一気にぐんと伸びることもあります。入学までにすべてのひらがなを覚えられなかったら……と不安になる必要はないのです。
ひらがなに興味をもつための「はじめの一歩」
親が早くひらがなの読み書きを覚えさせたいと思っても、子ども自身にやる気がなければなかなか身につかないものです。ひらがなに興味をもってもらう「はじめの一歩」をいくつかご紹介します。
大好きな絵本の文字を追う
ひらがなで書かれた絵本で、お子さんが何度も読みきかせをリクエストしてきた作品があれば、一緒に文字を追いながら読んでみましょう。大好きな本ならストーリーは頭の中に入っているので、文字と音が一致していることに気づくきっかけになります。東京成徳短期大学教授の和田信行氏いわく、子どもは読めるようになったら自然と書きたくなるものだそう。絵本を一緒に読むことで、ひらがなの読み書きへのやる気を引き出すことができるのです。
お手紙のやり取りをする
おやつのメニューやお手伝いへの感謝など、子どもが読んで喜ぶ内容を手紙にしてみましょう。1文の短いもので十分です。パパやママから手紙をもらううれしさと文字を読む楽しさが意欲を高めます。また、子どもも手紙を書きたがったら、まずは子どもの話した言葉を文字にして書き取ってあげましょう。チャイルド・ラボ所長の沢井佳子氏によると、子どもの言葉をそのまま文章として定着させ、子ども自身にその内容を読み聞かせて確認すると、子どもにとって楽しく、文字言語への深い興味を抱かせることができるそう。
外で見かけた文字を読む
出先で見かけた街のなかの看板、スーパーに貼られたPOP、駅の表示や標識などの文字を一緒に読むのもオススメです。教育コンサルタントの上野緑子氏は、まだ文字に興味を持っていない子どもに対しても、街中で目についた文字を読んであげるなどして、生活の中で文字に触れる機会を増やすことが大切だと言います。
どの方法も、ひらがなは文字と音が一致することが分かる(音韻意識)のがポイントです。そして「ひらがなを読めるようになると、いろんなことを知ることができてうれしい」と思えるようにサポートします。
いざ、ひらがなを書いてみよう! 親が気をつけることは?
ひらがなが読めるようになったら書く練習に入りますが、ここで知っておきたいのは、最初から文字が書ける子は少ないということです。やる気をぐんぐん伸ばすため、次の5つに気をつけるようにします。
3~4歳のころは筆圧が弱く、まっすぐな線や丸を書くことは簡単ではありません。弱い筆圧をカバーするため2B以上の濃い鉛筆を使うようにしましょう。
ちなみに近年、学校での主流も「2B」となってきています。20年ほど前には「HB」が全体の半数を占めてトップだったものの、現在ではシェアが逆転して「2B」がトップとなっているのです。子どもの筆圧が低下していることが原因として考えられるそう。HBの鉛筆しか自宅にないという方も、柔らかい芯の鉛筆を購入してあげたほうが、お子さんにとって負担になりませんね。
ひらがなを書く前に、お絵描きの延長で直線やジグザグ線を書いたり、ぐるぐると丸を書いたりして、鉛筆の使い方(運筆)を練習しましょう。
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員の小川大介氏いわく、線あそびに馴染んでいる子とそうでない子では、本格的に文字や数字を学び始めてからの定着に大きな差が出るそう。いきなり文字を書かせることなく、まずは線を引いて遊ぶことから始めましょう。線の止め方も「はらい」や「とめ」を意識して鉛筆を使うように教えると、字の練習にスムーズには入れますよ。
50音の最初は「あ」ですが、書くにはバランスをとりにくい難しい字です。初めは「く」「し」「つ」など画数の少ない字から練習し、2画の文字、3画の文字と少しずつ進めていきましょう。
学習塾として有名なKUMONのひらがな問題集も、最初の文字は「し」。そして「つ」「く」「へ」と一画の文字が続きます。
『お母さんといっしょ』の監修者である八木紘一郎先生は、「書くと気持ちが伝わるという嬉しさを体験させてあげることが大切」だと話しています。「書けた!」と見せてくれた字がヨロヨロしていても、まずは「すごいね! ○○ちゃん、字が書けたね!」と書けたことを認める声かけをします。
また、「さ」と「き」、「は」と「ほ」など似ている文字を書き間違えていたら、どこが違うのか見つけられるよう声かけをしてあげましょう。
左右や上下を反転させて書く「鏡文字」は、脳の発達が未熟なために起こる子どもならではの間違いです。
空間認識力が発達するにつれて正しい文字が書けるようになりますので、何度もしつこく指摘することはせず、長い目で見守ってあげましょう。
正しく美しい文字が書けるようにと、教えるほうはつい熱が入ってしまいますが、まずは「ひらがなの読み書きができると、楽しいことがいっぱいある」ことを伝えることが大切ですね。
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ひらがなの練習は、お子さんが興味を持ってから始めましょう。お子さんがなかなか興味を示してくれないときには、サッと手に取れる絵本をリビングに2~3冊置いたり、ひらがなの表を貼ったりして、家の中でひらがなが目につくような環境づくりから始めてみるのもいいでいすね。
(参考)
たまひよ|つい比べちゃう…ひらがなは何歳までに全部読めているといい?
エデュケアポイント(楽天スーパーポイントギャラリー)|ひらがなは何歳からどう教えるべき?ベストなタイミングと教え方はコレ!
ベネッセ教育情報サイト|小学校入学準備「文字と数の学習。本当に必要なこと」
ベネッセ教育情報サイト|ひらがなカタカナの読み書きや、言葉の理解のために、こんな工夫をしました
All About|ひらがなはいつ習う?入学前にひらがなの読み書きは必要?
教育zine|ひらがなを鏡文字で書いてしまう子
ポプリス|幼児の行動のふしぎ 〜園の教育研究〜
withnews|消えゆく「HB」鉛筆 学校の主流は「2B」に トップ交代の理由
日経DUAL|簡単オススメ!紙と鉛筆を使い、子を賢くする方法
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