あたまを使う/国語 2018.8.6

【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第8回:ようこそ内省の世界へ

松嶋 有香
【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第8回:ようこそ内省の世界へ

こんにちは。文章力養成コーチの松嶋有香です。

いよいよ最終回です。昔は夏休みと言えば、8月いっぱいまであったものですが、最近は、20日頃が始業式だという学校も多いですね。最終週に慌てないよう、今週中には連載の第1回から読んでみてくださいね。まだ間に合います!

読書感想文を書き終えて

毎年開催している読書感想文講座のアンケートでは、保護者の方が、次のような気づきを感想として書いています。

  • 読書感想文の書き方のようなマニュアルはたくさんあり、サクッと書くには参考になるのかもしれませんが、宿題だからただやるだけというのは、意味がないと思っていました。仕方ないのかもしれませんが、小学校では文章を書くという授業をきちんとやることもなく、原稿用紙の使い方さえ詳しく指導することもない状態で、募集要項だけ渡して宿題とし、感想文を提出することに違和感を覚えていました。今回、文章を書くということと真剣に向き合って、納得できる感想文をかけた経験は、これから文章を書く時に生きてくると思います。
  • 読書感想文という宿題は昔から私自身も好きではありませんでしたが、こんなにも深く一つの本やテーマを深く考える機会であるならば、素晴らしい夏の体験になり得るのだなと感じました。
  • 一番大きな発見は、子どもの現在の国語力やその他の勉強でつまずいている部分がよく理解できたということでした。これまで、学童で宿題をやって来て、家はくつろぐ場所、子どもの勉強はほとんどみてきませんでしたので。これからは、もっと子どもに寄り添う時間をしっかり確保していくことが重要だということに気づかせてもらいました。
  • 夏休みの宿題の中で、一番ストレスを感じる読書感想文が無事に終わってほっとしています。
  • もともと読書は好きな子ですが、読書感想文は苦手意識がとてもあるようでした。夏休みの大物、読書感想文!今年はこれを親子で悩み続けるストレスから解放され大変助かりました。
  • 私が子どものころに先生に出会いたかった。以前の私と同じように読書感想文は面倒くさいと思っている人にぜひおすすめしたいと思いました。
  • 読書感想文は、親の私自身は一度も系統立てて指導された記憶がありません。あらすじも盛り込め、いや、あらすじは一切いれるな、登場人物のことを説明しなさい、いや自分になぞらえて書け、など、その時の担任次第で注文を出され、枚数だけはたくさん書けというぶつ切りの指導しか受けたことがなかったので、こういった、「自分の気持ちが動いた箇所」に注目して、読み終えてからその「気持ち」を集めて振り返るといった組み立てかたを学ぶことができてとてもわかりやすく、ためになりました。

 
お子さんにも感想を聞いています。

  • とっても大変だったけど、達成感があった。これだけのたくさんの文を書けただけで嬉しい。
  • 今までは読書感想文はすべて型に当てはめて書いているだけだったけど、世界に一つだけの読書感想文を書くことができました。
  • 読書感想文は必須の宿題ではありません。みんながやらなかったことを自分はできている自信が持てました。
  • 楽しかったです! これからもどんどん勉強したいと思います。
  • はじめは面倒だと思ったけれど、やっていくうちに、自分がどんなことにどう思ったかを、質問を通してわかるようになり、最後には文章に完成することができて、よかった。
  • 苦労して書いたので「もういい」と発言していましたが、仕上げを作成して、自分で読み上げた時の誇らしそうな顔は忘れられません。(保護者)

 
読書感想文を書くことは簡単なことではありません。本当に大変なことです。でも、何でもそうですが、大変なことのあとには、必ず子どもは成長しています。スポーツの練習、おけいこごとのレッスン、キャンプ、合宿、そして受験勉強。どれもこれも大変です。今回のこのコラムは無料で読めますが、たいていの苦労には出費も伴います。どうしてお金をかけてまで子どもに苦労をさせるのでしょう。それは、人間として成長してもらいたいからですよね。

夏休みのラスボスとも言われ、嫌われ者の読書感想文。でも、真剣に取り組めば、こんなにも子どもを成長させてくれる課題はありません。そして、自分の心ととことん向き合う経験は、将来にわたりずっと力になります

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読書感想文で得られた3つのこと

【1】親子の絆

夏休みの読書感想文という課題について、のらりくらりと逃げずに、きちんと向き合うことで、読む力・書く力以外に、あなたは親子の時間を手に入れられました。

忙しい保護者の方たちにとって、半ば強制的ではありましたが、親子の時間があったことで新しい気づきがあったと思います。

第3回の「こういう子だったんだ! 新しい発見!」のところでも、述べていますが、普段いかに自分の子どものことを見ていないか気づいた人も多いのではないでしょうか。

【2】何かを通して話し合うことのできる環境

この経験は、その後の親子関係に良い影響を与えます。そして、その対象は本以外にも拡がります。学校であったこと、友達とのトラブル、世の中のできごと。そういうことも親子でしっかりと話し合えるようになるでしょう。

本を選ぶ時、読書感想文の感想を引き出す時に、保護者の方と私は約束を交わしました。それは「絶対に子どもを否定しない」というきまりです。

「えー、そんな本読むの?」
「ちゃんと最後まで読めるの?」
「もう少しちゃんとした本選びなさいよ」

これらの言葉を言わないようにすることは、相当な試練のようで、感想として、よく伺います。でも皆さんはもうその絶大な効果に気づいたと思います。頭ごなしに否定しなければ、子どもが安心して本音を話せるようになるのです。

そして子どもはなんと優しいことに「本当はずっとそう思っていたのに、お母さんが怖くて言い出せなかった」「本当はイヤだったのに、イヤって言えなかった」そんなことを根に持ってぐちぐち言わないもの。丸ごと私たち大人を許してくれます。まずは私たち大人が変わるべきなのかもしれませんね。

【3】論理的思考力

また、このように、身の回りで起きていることに対し、関心を持つこと、意見を持つことは、子どもの論理的思考力を伸ばします。親が子どもの意見に対し聞く耳を持つようにすれば、今回の読書の感想と同様、子どもは自分の考えを言うようになります。

その時親が、子どもの意見だと馬鹿にせず、対等な立場でディスカッションができたら、子どもは正しい知識を大人から得て、さらに自分の頭で考えるようになるでしょう。

読書感想文は親子の気づきの宝庫ですね

【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第8回:ようこそ内省の世界へ2

本が好きな子どもに頭の悪い子はいない

私の主人も教育関係者なのですが、共通の見解があります。それは次のようなもの。

「頭の良い子の中には、たまに本をまったく読まないという天才がいるけれど、本が好きな子に頭の悪い子はいない」

私たち夫婦はこの業界が長いのですが、本が好きな子で、頭の悪い子に会ったことがありません。読書が条件のすべてではないにしても、不可欠な条件であることは確かだという実感があります。子どもを本好きにさせる方法については、私もブログなどでお話ししています。長くなりますので、興味のある方は見てみてください。

ここで言う、頭が良いというのは、勉強ができるという意味とイコールではありません。複雑きわまりないこの社会の中で、しっかりと自分の意見を持ち、主体的に問題に立ち向かえる智恵があることです。

夏休みの読書感想文を通じ、お子さんは、自分の思いを言語化する方法を知ったはずです。さすがに、本を読むたび毎回毎回読書感想文を書くことはないと思いますが、感動したポイントについて、一人静かに考察するメリットを知ったことで、本との付き合い方が変わっていくでしょう。宿題でいやいや取り組んでいた読書感想文が、自分の内面を強くしてくれました。

映画でもドラマでも、主人公は強敵と戦うことで、力と智恵を授かります。夏休みの宿題でその経験ができたことを、ラスボスに感謝しなくてはいけないのかもしれませんね。

オマケ「〇〇を読んで」なんてタイトルはもう付けられない

最後に、特別サービスで、タイトルについてアドバイスをします。
学校などに提出する際、完成した読書感想文にタイトルを付けますが、これだけ苦労した読書感想文には、それ相応のタイトルを付けてあげましょう。

例えば、「〇〇」というタイトルの本を100人の子どもが読んだとします。そうすると、だいたい80人くらいは「〇〇を読んで」という題名を書いてきます。

みんなと同じが良いか悪いかではなく、自分の胸に手を当てて考えた時に、自分の内省の旅、心の旅をつづった文章のタイトルが、本当にそれでいいのか? ということです。

自分にしか書けない感想を書いたはずです。この世の誰一人として全く同じではない感想文になったはずです。付箋紙で拾ったキーワードを使ってもいいでしょう。本屋の棚にずらーっと「〇〇を読んで」というタイトルの本が80冊並んでいます。でも残り20冊は平積みになっているはず。さて、何というタイトルを付けますか?

おしまい