StudyHackerこどもまなび☆ラボで大好評を博した文章力養成コーチ・松嶋有香先生の連載『ゆか先生の 親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン』。この夏、サイトを飛び出してリアルな講座となって開催されました。
実際にどうやって読書感想文の書き方を教えてくれるの? 会場の雰囲気はどんなかんじ? 親子で参加することで得られるメリットは? そんな疑問にお答えしつつ、当日の講座の様子をたっぷりとお伝えします!
「たこ」紹介がもたらす親と子どもの新発見
夏休みが始まって1週間が経過した2018年8月5日。東京の最高気温が34.7度を記録した猛暑のなか、午前の部・午後の部あわせて12組の親子が会場に集まってくれました。
「こんにちは!」「よろしくお願いします!」元気よく会場に入ってきた子どもたちを笑顔で迎えてくれる松嶋先生。一息ついたところで、いよいよ講座が始まります。
まずは軽くご挨拶から。先生の自己紹介やこの講座の目的、全体の流れなどを説明し、参加者の方にも自己紹介をしてもらいます。
……「自己紹介ではありません。“たこ”紹介です」「!?」
先生の一言に会場がザワザワし始めました。「たこ(他己)紹介」とは自分ではなく相手のことを周りの人たちに紹介すること。
ここでは親が子どもを、子どもが親を、他の参加者の皆さんに紹介します。親子が改めてお互いを客観的に見つめることで、「子どもからはこんな風に見られていたんだ」と、照れ臭さとともに新鮮な驚きが会場を包みました。
はじめての「たこしょうかい」。最初は緊張していた子どもたちも、次第にリラックスしていきます
講座の前半は、松嶋先生流・読書感想文の書き方を学びます。
スクリーンに映し出されたさまざまな画像を観て、「すごい」以外の言葉を使って感想を述べるようにするなど、独自の方法で子どもたちだけではなく親御さんにも理解を深めてもらいます。
ここでもまた、子どもたちの柔軟な発想に驚かされました。大人が思いつかないような大胆な発想で、画一的ではない表現の幅を感じさせられるとともに、子どもらしいユーモア溢れる表現力を発揮していました。例えば自宅でも、親子で一緒に一枚の写真を見ていろいろな表現を用いて感想を語り合うこともできますね。日常の中でもたくさんの表現方法を学んでいくことは可能なのです。
子どもたちからは思いもよらない意外な発言も飛び出しました
子どもの可能性を信じて伸ばすとっておきの方法
今回の講座では事前課題が出されていました。それは、連載『ゆか先生の 親子で取り組む読書感想文 書き方レッスン』の第1回から第4回までを参考にして、読んだ本の気になる箇所に付箋をつける→それを元に親子で話し合ってメモをする、という作業です。
開催日は夏休みに入ってほぼ1週間が経ったころでしたが、参加者全員がしっかりと課題をこなしてから受講していました! そのため、実際に読書感想文を書くまでの流れがとてもスムーズでした。
それぞれが自分なりのやり方で貼った付箋紙、添えられているメモ、そこから溢れ出る想い……子どもたちの頭の中を言語化した特別な世界が、一瞬にして机の上に広がりました。
たくさんの付箋紙に書かれたメモ。これらが読書感想文のモトになります
たくさんのメモの中から、本当に書きたいこと、子どもが自分で「この部分が一番大事だな」と判断したところ、お友だちに伝えたいこの本の魅力などを考えながら、ポイントとなる箇所を3つほどピックアップします。そしてそれらを深く深く掘り下げて、文章化することで下書きが完成していくのです。
やはりこの作業が一番頭を悩ませているようでした。親も子どもも手探りの中、しかし “一緒に” 読書感想文を書き上げている、というワクワクした充実感を覚えながら、しっかりと親子の会話を深めている様子がうかがえました。
ここまでの過程において、つい子どもに口出ししそうになったり、アドバイスのつもりで思い通りに子どもを誘導しそうになったりした親御さんも多かったようです。しかし、松嶋先生が連載第1回で私たちに伝えてくれた一番大切なこと『子どものすることを否定しない』という言葉を胸に、「ぐっとこらえてすべてを受け止めました」とたくさんの親御さんが答えてくれました。
子どもたちの個性が光る読書感想文が完成!
読書感想文に限らず、文章を書くうえで役立つテクニックも教えてくれました。「きらきら」「ふわふわ」「パチパチ」「トコトコ」このような擬態語や擬音語を使ったら素敵な作文になること、「なぜなら~からです」といった “カラカラ作文” はあまり良くないということ。これらをほんの少し意識するだけで、子どもの文章力は格段にアップします。真剣な表情で先生の説明を聞き、すぐにそのアドバイスを実践しながら原稿用紙を埋めていく子どもたちの姿に、親御さんたちも驚きを隠せない様子でした。
普段「こんなに難しいこと、小さい子どもにわかるかしら?」と不安を感じながら勉強を教えている親御さんも多いでしょう。でも大丈夫。大人が思っている以上に、子どもたちには思考力や理解力が備わっています。
一人ひとりの席を回り、子どもの隣に座って直接指導をしてくれた松嶋先生。ときに子どもの発想に驚き、秘められた想いに寄り添い、そして親御さんの悩み相談に乗っている姿も見られました。「読書感想文の先生」という枠を超えて、子育ての先輩としてのアドバイスをしてもらったことで、ご参加いただいたお子さんと親御さんにとってもかけがえのない夏休みの思い出になったことでしょう。
それぞれの子どもの個性を認めて伸ばしてあげるには? 間近でそのテクニックを学ぶことができました
親子でじっくり会話をすることでたくさんの発見がありました
今回の講座にご参加くださった親御さんの声をご紹介します。
- 子どもの考えていること、書いているものを止めたりせず、自由に、肯定してもらえたところがよかったです。親はつい口出しして誘導しがちなので、親の力の抜き方としても参考になりました。
- 親の苦手意識も克服しつつ、子どもとの更に深い会話と、その表現方法を学べ、かつ想像力豊かな思いやりある子に育てるポイントをわかりやすく教えてもらい感動しました。
- その子が書きたい内容でOKと言ってもらえて、親子で楽しく作業することができました。
- ストーリーや人物の気持ちなどを読み取ってほしい、と誘導しそうになりましたが、あえてそこを我慢して、本人が気になった箇所について聞くと、案外長い文章で口をついて考えてることが出てきて驚きました。
- 気持ちを引き出してあげることで、更に感じていることを深くやりとりできてよかったです。
一番多かったのは「子どもの意外な一面を知ることができた」という感想です。親は子どものことならなんでも知っている、と思い込んでいるものですが、読書を通して、また読書感想文を書くために気持ちを言語化することによって、思っていた以上に奥深い我が子の内面を知ることができたようです。
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“読書感想文” って面倒なものですか? できればやりたくないですか? 後には何も残らないと思いますか?
多くの小学校低学年の子どもたちとその保護者にとって、読書感想文が楽しい夏休みにおける憂鬱のもとになっていることは事実です。でもそれはきっと、親御さんご自身も子どものころ読書感想文に悩まされてきたからではないでしょうか。そうであるならば、いっそ “親子で一緒に” 苦手を克服しませんか?
苦手だった読書感想文から解放された大人たちこそ、子どもと一緒に再び読書感想文に向き合うことで、我が子の意外な一面やこれまでの子育ての成果のようなものを感じ取ることができるはずです。
<編集部より>
7月29日に開催を予定していた大阪会場での講座は、台風12号の影響により急遽中止いたしました。楽しみにしてくださったお子さまと親御さまには、多大なるご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。