あたまを使う/英語 2018.9.14

英単語の“ネットワーキング”で語彙力を高めよ! 「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」

田中茂範
英単語の“ネットワーキング”で語彙力を高めよ! 「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」

前回は「基本語力」、そして基本語彙を使いこなすための「コアイメージ」についてお話ししました。基本語力は単語力の基盤です。しかし、英語をマスターするにはそれだけでは十分ではありません。基本的な語彙に加えて、いろいろな話題や場面について語る単語を知らなければ、表現力は限定されたものになってしまいます。

例えば、これらの単語のリストを見て、何を連想しますか?

court of justice – trial – proceedings – lawsuit – judge

そう、「裁判」ですね。

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」2

言い換えれば、以下のような単語を知らなければ、裁判について語るのは困難です。

court of justice(裁判所)・court(法廷)・trial(刑事裁判)・proceedings(裁判沙汰)・lawsuit(訴訟)・accusation(告訴)・justice(正義)・judge(裁判官)・judgment(判決)・penalty(刑)・lawyer(弁護士)・(eye)witness(証人)

「裁判」は、拡張語彙の中の1つの話題領域です。ほかにも「株」「軍事」「野球」「病院」「学校」「電車」など、規模はそれぞれですが、さまざまな話題領域、あるいは場面領域というものがあります。

「語彙領域マップ」は拡張語彙力を育成するのに効果的

拡張語彙力の指導のために準備したいのは「領域マップ」というものです。生徒の関心や教育的配慮から、場面・話題領域を選定します。領域の選定には、学年や教科目標なども考慮に入れます。

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」3

領域マップはいわば、ハイパーテキスト(文章や画像、音声など、複数のデータをリンクさせた文書の表現形式)のような形で整理するものです。

外枠では、「学校」「通学」「映画」「社会問題」「気候変動」「国際協力」など、場面と領域の両方を考えて取り扱う内容を示します。その上で、場面領域をさらに細かく分類します。

例えば、場面領域として「学校」に注目した場合、「授業」「教科」「部活」「登下校」など、さらに分類が可能です。

最後に、学習レベルを考慮して、関連する英単語を3つのレベルに分け、語彙量を調整します。例として「部活」を取り上げましょう。

ここで「部活」に関連するいくつの表現を学習対象にするかを決める必要があります。そのために、レベル1語・レベル2語・レベル3語のように、同心円状に語彙データを整理するのです。

注意したいのは、「部活名」だけでなく、部活に関する「形容詞」や「動詞」、あるいは「連語」なども整理して、表現リストに加えるということ。これら全てが「拡張語彙」にあたります。

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おすすめの拡張語彙力養成エクササイズ “EIJ”

「どの領域にどれぐらいの語彙サイズがあるか」が拡張語彙力の定義です。ですので、それぞれの領域内の語彙をどう関連づけるかが、語彙力養成の鍵となります。

言い換えれば、ある領域に関する単語のリストだけでは、語彙の関連づけとはならないということです。領域内の語彙を関連づけることを「ネットワーキング(networking)」と呼びます。

ネットワーキングの仕方はいろいろ考えられますが、我々が推奨したいネットワーキングは “EIJ” と呼ぶものです。

“EIJ” は “English in Japanese” の略語で、日本語を地の文としてストーリーを作り、その中に「英語の表現」を埋め込むというやり方です。ここでいう「英語表現」は、英単語だけに限定されません。

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」5

例えば、以下は「家」の場面で「テレビを見る」状況の日本語の文のサンプルです。

私はテレビを見るのが好きだ。家に帰るとすぐにリモコンを手に取り、テレビをつける。お気に入りは10チャンネル。毎週お昼の連続ドラマを録画しているので、帰宅後に再生して見ることが多い。

朝はテレビをつけっぱなしにして天気予報や報道番組を見ることが多いが、気になるニュースが取り上げられるとつい音量を上げてしまい、母に音量を下げるよう怒られる。

まずはこのようなイメージで、ふだん自分がどうテレビを使っているかを考えながら、日本語で自由にストーリーを作ります。そして、そのストーリーの中に、英語表現を埋め込んでいくのです。

これからテレビに関連する便利な英語表現をご紹介しますから、この日本語の文章にどのようにこれらの英語表現を埋め込むことができるか、お子さんと一緒に挑戦してみましょう。

状況1:テレビをみる

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」6

turn on the TV
(テレビをつける)

「テレビをつける」は、この表現が一番よく使われます。昔のテレビはスイッチを回してオンとオフにするということに由来する表現です。

use the remote control
(リモコンを使う)

change channels with the remote control
(リモコンでチャンネルを変える)

「リモコン」は “remote control” の和製英語です。

turn up the volume
(音量を上げる)

turn down the volume
(音量を下げる)

音量を変えるときはこの表現が便利です。

turn to Channel 1
(1チャンネルにする)

チャンネルを変えるときは、“turn” という動詞を今でも使います。昔のテレビではチャンネルを文字通り回していたことの名残です。

set the timer to record a baseball game
(野球の試合の録画を予約する)

「録画する」は “record” ですが、「録画を予約する」ときはこんな言い方をします。

watch one’s favorite news program
(お気に入りの報道番組を見る)

watch the weather forecast
(天気予報を見る)

watch the Sunday drama series
(日曜日の連続ドラマを見る)

watch (the) recorded programs
(録画しておいた番組を見る)

テレビを「見る」を表す動詞は “watch” です。

「テレビにかじりつく」という日本語表現に対して、英語ではおもしろい言い方があります。

be glued to the TV

“glue” は「糊でくっつける」という意味の動詞です。「くぎ付け(糊付け)になる」といった感じですね。

「テレビをみて時間をつぶす」と言うのにも、おもしろい表現があります。

kill time watching TV
(pass the time watching TV)

では「テレビをつけっぱなしにする」はどうでしょうか。日本語から英語にするのはむずかしそうですが、英語では簡単な言い方があります。

leave the TV on

「テレビをオンの状態にしたままにする」ということで納得ですね。

なお、電気製品としての「テレビ受信機」が話題になっている場合は “the TV” で、「テレビ番組」が話題になる場合は “TV” と言うのが自然です。

状況2:DVDをみる

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」7

今度は、DVDに関するストーリーを日本語で作ってみましょう。ふだんご家庭でどのようにDVDを使っているのかを描写するだけで構いません。

日本語の文章ができたら、以下を参考に、その中に英語表現を埋め込んでみてください。

rent a DVD
(DVDを借りる)

“borrow” は「無料で借りる」ということなので、「有料で借りる」DVDには “rent” を使います。この “rent” は状況によって「借りる」と「貸す」のいずれかの意味にもなります。

This DVD is due tomorrow.
(明日が返却日だ)

return the DVD on the due date
(期日に返す)

「返却日」について表現する時は、“due” を使います。

This DVD is three days overdue.
(返却日を3日過ぎている)

pay an overdue fee
(延滞料金を払う)

「返却日が過ぎている」ことを表すには “overdue” という言い方が便利です。

rewind the DVD
(巻き戻す)

fast-forward the DVD
(早送りする)

DVDを「巻き戻したり、早送りする」ことを示すには、こんな表現があります。“fast-forward” は「早く前に送る」ということで、感じがでていますね。

「語彙領域マップ」と「語彙力養成エクササイズ」8

「拡張語彙力養成エクササイズ」のメリットと活用法

このように、日常の場面を想起しながらストーリーを作成し、そこに覚えたい英語表現を埋め込むことで、語彙のネットワーキングを行うことができます。その主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 場面に現実味がある
  • そのまま日常を語る際に英語表現を使いやすい
  • 文脈が日本語で示されているので覚えやすい

 
学習法としては、ご紹介した「日本語でストーリーを作り、その中に英語表現を埋め込む」という方法以外にも、以下のように応用できます。

  • 英語表現とその意味を音読する
  • 英語表現とその意味を音読しながら、英語表現だけをノートに抜き出して書く
  • 抜き出した英語表現のいくつかを使って自分で英語のストーリーを作ってみる

 
ぜひご家庭でお子さんと実践してみてくださいね。