「心配で、つい先に動いてしまう」
「厳しくしないと伸びないと思ってた」
「可愛くて、何でもしてあげたくなる」
忘れ物を学校まで届けに行ったり、90点の答案に「あと10点」と声をかけたり、嫌がる習い事をすぐにやめさせたりする親がいます。どれも少し「やりすぎ」なのに、やっていることは正反対に見えるため、自分には当てはまらない気がしてしまいがちです。
じつは、親の「やりすぎ」には向かう方向があります。心配から手を出してしまう「ヘリコプターペアレント」、期待から管理してしまう「タイガーペアレント」、愛情から守りすぎてしまう「エレファントペアレント」の3つです。方向が違えば、子どもに起きることも、抜け出すための一歩も変わってきます。
9問のチェックで、いまの自分の方向を確かめてみませんか。
目次
「やりすぎ」の方向は3つ。どれも愛情から始まっている
子どもに干渉しすぎる子育ては「ハイパーペアレンティング」とも呼ばれます。こどもまなびラボの記事「「ハイパーペアレンティング」な親が急増中! 子どもを疲弊させる親がしていること4つ」では、先の見えない時代を生き抜く力をつけさせようと、早期教育に力を注ぐ親が増えていると指摘しています。(東京未来大学こども心理学部准教授、小谷博子氏)*1
不安から「何かしてあげなければ」と動くとき、その向かう先によって、やりすぎは3つのタイプに分かれていきます。
ヘリコプターペアレントは、心配から先に手を出してしまう親
少しでも困りごとがあると、すぐに手を出して解決してしまう親のことです。なりやすい特徴として完璧主義、気が利きすぎる、せっかちの3つが挙げられるといいます。(『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』著者、立石美津子氏)*2
タイガーペアレントは、期待から子どもを管理してしまう親
学業成績や習い事の成果を何より重視し、親が決めた道筋で子どもに結果を出させようとする親を指します。アメリカ・イェール大学ロースクールのエイミー・チュア教授が、2011年の著書『タイガー・マザー』で紹介し、世界中で議論を呼びました。*3
エレファントペアレントは、愛情から子どもを守りすぎてしまう親
大きな愛情で包み込み、子どもの気持ちを最優先にする親のことです。ジャーナリストのプリヤンカ・シャルマ=シンダー氏が『The Atlantic』のエッセイで、タイガーペアレントと対照的な子育てとして名づけました。行きすぎると、困難に向き合う力が育ちにくくなるおそれもあるそうです。*4
なお、こどもまなびラボの記事「バウムリンドの4つの子育てタイプ診断|あなたはどのタイプ?【チェックリスト付き】」で紹介している「服従型・寛容型・民主型・無関心型」は、ルールの求め方と気持ちの受け止め方の2軸による分類で、関わりすぎの向かう先で分ける3タイプとは軸が異なります。*5

9問で、わが子への「やりすぎ」の方向を見える化する
3タイプに3問ずつ、ふだんの自分を思い浮かべて当てはまるものに印をつけてみてください。「ときどき」ではなく「たいてい」そうだと言えるものだけを数えるのがポイントです。
1. ヘリコプター(心配から手を出す)を見る3問
【ヘリコプター】
- □ 子どもの忘れ物に気づいたら、学校や園まで届けに行く
- □ 子どもが何も言わないうちに「のど乾いたんじゃない?」「宿題終わった?」と声をかける
- □ 子どもが考えている途中で、「こうすればいいんだよ」と答えを教えてしまう
2. タイガー(期待から管理する)を見る3問
【タイガー】
- □ 90点の答案を見ると、まず「あと10点」が頭に浮かぶ
- □ 友達との遊びやゲームの時間を「もったいない」と感じる
- □ 「疲れた」「嫌だ」と言われると、「甘え」という言葉が浮かぶ
3. エレファント(愛情から守りすぎる)を見る3問
【エレファント】
- □ 友達とけんかしたと聞くと、「お母さんが先生に相談しようか」と親から動く
- □ ピアノや習い事を嫌がれば、「無理しなくていいよ」とすぐにやめさせる
- □ 「ダメ」とはっきり言うのが苦手で、「それはちょっと……」と濁してしまう

いちばん多く印がついたタイプが、いまの「やりすぎ」の方向
タイプごとに、印がついた数を数えてみましょう。
| 印のつき方 | 読み方 |
|---|---|
| ひとつのタイプだけ2〜3つ | そのタイプが、いまのやりすぎの方向。次の表はその行だけ読めばOK |
| 2つのタイプが同じ数 | 場面によって方向が変わっている |
| 3タイプとも2つ以上 | 方向ではなく「量」の問題。ハイパーペアレンティングに近い状態 |
| どのタイプも0〜1つ | 方向は定まっていない。印がついた場面だけ「抜け方の一歩」を試してみる |
印の数が表しているのは「点数」ではなく「方向」です。方向がわかれば、戻し方も見えてきます。
タイプ別に、子どもに起きることと「抜け方の一歩」を1枚の表にする
ヘリコプターでは「自分で決める」経験、タイガーでは「気持ちを聞いてもらう」経験、エレファントでは「自分で乗り越える」経験が少なくなりがちです。
| タイプ | 子どもに起きやすいこと | 抜け方の一歩 |
|---|---|---|
| ヘリコプター (心配から手を出す) |
自分で決める機会が減り、指示や許可を待つようになりやすい。失敗を経験する機会も少なくなる | 手や口を出す前に「どう思う?」「どうしたいの?」と1度聞く。忘れ物は届けずに見守る |
| タイガー (期待から管理する) |
学業へのプレッシャーや抑うつ症状が強く、親子の心の距離も大きい傾向がある | アドバイスの前に「そうなんだね」とひとこと受け止める。週に半日、予定を入れない時間を残す |
| エレファント (愛情から守りすぎる) |
自分で考えて解決する経験が不足し、困難にぶつかるとあきらめやすくなることもある | 「つらかったね」のあとに「どうしたらいいと思う?」と聞く。「これだけは守ろうね」というルールをひとつだけはっきり伝える |
ヘリコプター型の子どもは、「決める」経験が足りなくなりやすい
アメリカの大学生297人を対象にした研究では、母親の過剰な干渉を強く感じている学生ほど、うつ傾向が高く、生活への満足度が低いことが示されました。(アメリカ メアリー・ワシントン大学、ホリー・シフリン教授ら)*6
ある幼児教室では、ハンカチを忘れた子が「ママが入れてくれなかったんだもん!」と親のせいにした場面があったそうです。(『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』著者、立石美津子氏) 困った経験があってこそ、次は忘れないようにしようという意識が育っていきます。忘れ物を届けずに見守ることは、自分で準備する責任を子どもに返す一歩になります。
タイガー型の子どもは、心の負担や親子の距離が大きくなりやすい
📖 研究でも、こう言われています
中国系アメリカ人444家族を、子どもの思春期から成人期の初めまで約8年間追跡した研究があります。タイガーペアレント型の家庭で育った子どもは、温かく支援的な家庭で育った子どもに比べて、学業成績が振るわず、学業へのプレッシャーや抑うつ症状が強く、親との心理的な距離も大きい傾向が見られました。(アメリカ テキサス大学オースティン校、スヨン・キム教授ら)*7
ただし、同じ研究でもっとも良好だったのは、温かさを土台にした「支援的」な家庭の子どもたちでした。熱心さを手放す必要はなく、温かさを足していけばよいのです。
足すもののひとつめは、「甘えないの」と返す前の「疲れたんだね」のひとことです。ふたつめは予定表の余白でしょう。6〜7歳の子ども70人を調べた研究では、習い事や宿題など大人が枠組みを決めた活動が多い子どもほど、自分で目標を立てて動く力が低い傾向が見られました。(研究当時アメリカ コロラド大学ボルダー校、ジェーン・バーカー氏、ユウコ・ムナカタ教授ら)*8 因果関係までは示されていませんが、週に半日、予定を入れない時間をつくってみる価値はありそうです。
エレファント型の子どもは、「自分で乗り越える」経験が減りやすい
エレファントペアレントには親子の絆が深まるといったよい面がある一方、行きすぎると困難への耐性や問題解決力が育ちにくく、親に頼りがちになることも挙げられています。だからといって、共感をやめる必要はありません。「つらかったね」と受け止めたあと、「どうしたらいいと思う?」と解決だけを子どもに返してみてください。濁しがちな場面では、「これだけは守ろうね」とひとつだけはっきり伝えましょう。

3つの方向に共通する分かれ目は、そこに子どもの意思があるかどうか
「過保護」と「過干渉」の大きな違いは、親の行動に子どもの意思や希望が反映されているかどうかにある、と述べています。(児童精神科医、故・佐々木正美氏) 手を出すことも、管理することも、守ることも、子どもの意思を聞く前に親が動いたときに「やりすぎ」になりやすいのです。意思を聞いてから動くなら、心配も、期待も、愛情も、そのまま子どもの力に変えていけます。
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どんな親でも、ヘリコプターペアレントになる可能性はあるとのこと。(『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』著者、立石美津子氏) 9問すべてを同時に直す必要はありません。今日、手や口を出しそうになった場面で、1度だけ「どうしたい?」と聞いてみてください。
FAQ(よくある質問)
Q. 2つのタイプが同じ数になりました。どちらで読めばいいですか?
A. 両方の行を読んでみてください。同じ数になるときは、勉強ではタイガー、友達関係ではエレファントのように、場面によって方向が分かれていることが多いようです。場面ごとに「抜け方の一歩」を当てはめると、試す順番を決めやすくなります。
Q. 夫婦でタイプが違います。そろえたほうがいいですか?
A. 無理にそろえなくてかまいません。夫婦の価値観はそろえなくてよく、両親の考え方の違いの間で子どもは新しい個性を育てていくといいます。(教育ジャーナリスト、おおたとしまさ氏) そろえておきたいのは、どちらも子どもの意思を先に聞くという1点です。
Q. 「過保護」はすべてやめたほうがいいのでしょうか?
A. すべてをやめる必要はありません。子どもが望むことに応える過保護は、過干渉とは別のものだと述べています。(児童精神科医、故・佐々木正美氏) 見直したいのは、子どもの意思を聞く前に親が動いてしまうことです。
(参考)
*1 こどもまなびラボ|「ハイパーペアレンティング」な親が急増中! 子どもを疲弊させる親がしていること4つ
*2 こどもまなびラボ|過保護に育った子どもの恐ろしい将来。我が子の成長を奪う「ヘリコプターペアレント」
*3 こどもまなびラボ|厳しすぎる親が「優秀な子」を育てられない理由。あなたは大丈夫? “タイガーペアレント” 5つのチェック
*4 こどもまなびラボ|世界で注目の子育てスタイル、でも「重すぎる愛情」は落とし穴も。”エレファントペアレント” な親の特徴7つ
*5 こどもまなびラボ|バウムリンドの4つの子育てタイプ診断|あなたはどのタイプ?【チェックリスト付き】
*6 Schiffrin, H. H., Liss, M., Miles-McLean, H., Geary, K. A., Erchull, M. J., & Tashner, T. (2014)|Helping or hovering? The effects of helicopter parenting on college students’ well-being. Journal of Child and Family Studies, 23(3), 548-557.
*7 Kim, S. Y., Wang, Y., Orozco-Lapray, D., Shen, Y., & Murtuza, M. (2013)|Does “tiger parenting” exist? Parenting profiles of Chinese Americans and adolescent developmental outcomes. Asian American Journal of Psychology, 4(1), 7-18.
*8 Barker, J. E., Semenov, A. D., Michaelson, L., Provan, L. S., Snyder, H. R., & Munakata, Y. (2014)|Less-structured time in children’s daily lives predicts self-directed executive functioning. Frontiers in Psychology, 5, 593.









