暮らしを楽しむ/親自身のこと 2026.7.22

ザッカーバーグが娘のために顔にラメを入れた理由。子どもの「好き」への応援の話

ザッカーバーグが娘のために顔にラメを入れた理由。子どもの「好き」への応援の話

2023年の夏、アメリカ・カリフォルニアのスタジアム。テイラー・スウィフトのコンサート会場に、目のまわりをハート形のラメで飾り、腕にビーズのブレスレットを重ねづけした男性がいました。Meta(旧Facebook)のCEO、マーク・ザッカーバーグ。娘たちの「推し」のライブに、本気の装備で参戦した姿です。

一方で、私たちはどうでしょう。子どもが夢中になっているアニメ、アイドル、恐竜、電車。「正直、何がそんなにいいのかわからない」。そんな本音を抱えたことはありませんか。大丈夫です、その感覚はごく自然なもの。そして発達研究の世界では、親が同じ熱量になれなくても、子どもの「好き」を育てる方法があるとわかってきています。

今回は、世界有数の富豪の「ラメ」から始まる、楽しい子どもの応援の話です。

世界有数の富豪、目のまわりをキラキラにする

2023年7月、ザッカーバーグは妻のプリシラ・チャンさんと娘たちを連れて、カリフォルニア州サンタクララで開かれたテイラー・スウィフトの「エラス・ツアー」に出かけました。当時、長女のマックスちゃんは7歳、次女のオーガストちゃんは5歳。生まれて4か月の三女アウレリアちゃんもいる、にぎやかな一家です。

注目したいのは、その行動です。目のまわりにはハート形のキラキラしたフェイスジュエル。腕には、ファン同士が手づくりして交換し合う「フレンドシップブレスレット」を何連も重ねづけ。ビーズには、アルバムのタイトルがつづられていました。つまり彼はこの日、「保護者」だけではなく、本気のファンとして会場にいたのです

インスタグラムに投稿された写真には、「Life of a girl dad(女の子のパパの人生)」という言葉が添えられていました。会場へ向かう道中の投稿は、「13通のメールをチェック中」。13は、ファンにはおなじみのテイラー・スウィフトのラッキーナンバーです

ほほ笑ましい話ですが、じつはそれだけではありません。「親が、子どもの好きな世界に入っていく」ことには、発達の面から見ても確かな意味があるのです。

濃い茶色の木目調のテーブルの上に置かれた、鮮やかな黄色の皿。その皿の中央には、立体的な白い数字の13が真上から配置されている。

子どもが何かに興味を持つのは、発達の仕様

そもそも子どもは、なぜあんなに何かにハマるのでしょうか。電車の名前を覚えつくす、恐竜図鑑を毎晩ながめる、同じ曲を無限にリピートする。心当たりのあるご家庭は多いはずです。

この興味、じつは発達心理学では研究テーマになっています。

幼い子どもの「並外れて強い興味」を調べた研究があります。保護者177名への調査と面接の結果、幼い子どものおよそ3人にひとりが、乗り物や恐竜といった特定の対象に並外れて強い興味をもっていました。始まりは平均で1歳半ごろ。子どもたちは身のまわりから「好きなもの」を自分で探し出し、見つけては家族に嬉しそうに見せていたと報告されています。(アメリカ バージニア大学、ジュディ・デロアチェ教授ら)*1

つまり、わが子の「またそれ?」は、困ったことでも珍しいことでもなく、多くの子どもに備わった発達の仕様。しかも子どもは、大好きな対象を入り口に、言葉を増やし、物を分類し、比べ、覚える練習を積み重ねています。

電車の型番も、恐竜の長いカタカナの名前も、推しの曲名も、頭のなかでは立派な研究活動の材料。「ママ、見て見て!」と聞き手に選ばれているのは、じつは光栄なことなのです。

家族で考えている

親は「同担」にならなくていい

とはいえ、です。「わが子の推しに、親も本気でハマりましょう」と言われたら、それはそれで荷が重い。そもそも時間もない毎日のなかで、私たちにできることは何でしょうか。

安心してください。研究が示す親の役割は、「同担」(同じ推しをもつファン仲間)になることではありませんでした。

4歳の子どもをもつ家庭を対象に、子どもの興味がその後どう続いていくかを2年間にわたり追いかけた研究があります。興味が長く続いた子どもの親は、好奇心が学びに果たす役割を大切に考え、興味に関連する本やおもちゃなどを家庭に多く用意していました。(アメリカ インディアナ大学、メアリー・ライブハム博士ら)*2

ポイントは、興味が続いた子の親が「詳しい先生」でも「同じ熱量のファン」でもなかったこと。曲名を全部覚える必要も、キャラクターの名前テストで100点をとる必要もありません。

関連する本を1冊、手の届くところに置いておく話をきいて「へえ!」と受け取る。できそうなら、関係のある場所へ連れて行く。それだけで、子どもの「好き」は続きやすくなっていました。

宇宙の絵が描かれた黒板の前で、手づくりのロケットを掲げる子ども

子どもの「好き」を親を応援する

「でも、うちの子はすぐ飽きるし……」という心配にも、研究はヒントをくれます。

興味の発達を長年研究してきた心理学者たちは、人の「好き」は4つの段階を追って深まっていくと説明しています。外からのきっかけで「おっ」と心が動く段階。その気持ちがしばらく続く段階。自分から進んで関わり始める段階。そして、その分野が自分の一部になる段階です。(カナダ トロント大学、スザンヌ・ヒディ博士ら)*3

大切なのは、どんなに深い「好き」も、最初は小さなきっかけから始まるということ。テレビでたまたま見た1曲、友だちの持っていたシール、図鑑の1ページ。そして生まれたての興味は、まわりの人の反応というささやかな風で、燃え上がりもすれば、消えもします。

だから、親にできることはシンプルです。子どもが目を輝かせて推しの話を始めたら、内容がわからなくてもいいので、「へえ、どこが好きなの?」「ママにも教えて」と返してみる。車での移動中に、子どもの好きな曲を1曲だけ一緒に聴いてみる。描いた推しの絵を、冷蔵庫に貼ってみる。お迎えの帰り道に、「今日、推しの新しい発見あった?」と聞いてみるのもいいですね。

どれも、ラメを入れるよりずっと簡単です。でも子どもにとっては、「自分の好きな世界に、大好きな人が遊びに来てくれた」という喜びが、次の「きっかけ」を探しに行くエネルギーになります

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ザッカーバーグのラメは、たしかに満点の方法かもしれません。でも、満点でなくていいのです。「教えて」のひとこと、1曲だけの相乗り、冷蔵庫に貼った1枚の絵。にわが子が推しの話を始めたら、心のなかでそっと目にラメを入れて、話を聞いてみてください。

FAQ(よくある質問)

Q. 子どもの推しに、どうしても興味がもてません。冷たい親でしょうか?

A. いいえ、ごく自然な感覚です。研究が示す親の役割は、同じ熱量のファンになることではなく、関連する本やおもちゃを用意したり、話をきいたりする「支え役」でした。推しそのものに興味がもてなくても、「夢中になっているわが子」に関心を向けられていれば、それで充分です。

Q. アニメやアイドルなど、勉強に関係なさそうな「好き」でも意味はありますか?

A. あります。強い興味は、言葉を覚える、分類する、比べる、集中を続けるといった学びの土台を動かすエンジンです。ジャンルが「ためになりそう」かどうかより、夢中になれている事実そのものに価値があります。「好き」の対象は、成長とともに次の世界へ橋渡しされていきます。

Q. すぐに「推し変」します。飽きっぽい性格でしょうか?

A. 幼児期の興味は、生まれては入れ替わっていくものです。興味は段階を追って深まるもので、初期の「おっ」の多くが入れ替わるのは自然なこと。いろいろな「おっ」を試す経験そのものが、いつか長く続く「好き」に出会うための探索になっています。安心して見守ってあげてください。

(参考)
*1 DeLoache, J. S., Simcock, G., & Macari, S. (2007)|Planes, trains, automobiles–and tea sets: Extremely intense interests in very young children. Developmental Psychology, 43(6), 1579-1586.
*2 Leibham, M. E., Alexander, J. M., Johnson, K. E., Neitzel, C. L., & Reis-Henrie, F. P. (2005)|Parenting behaviors associated with the maintenance of preschoolers’ interests: A prospective longitudinal study. Journal of Applied Developmental Psychology, 26(4), 397-414.
*3 Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006)|The four-phase model of interest development. Educational Psychologist, 41(2), 111-127.