親自身のこと 2026.10.11

どこにも連れて行かなかった日曜日。予定のない休日に、親子が手に入れているもの

どこにも連れて行かなかった日曜日。予定のない休日に、親子が手に入れているもの

「今日どこ行く?」
「……どこも行かない」

日曜日の朝10時。子どもはパジャマのまま、ソファの肘かけに足をのせて、録画したアニメを3本目まで見ています。口を半分あけて、画面に向かって笑っている、あの顔。床には昨日のまま散らかった折り紙。あなたは洗濯機を回したあと、コーヒーを片手にスマホを開いて、動物園のキリンの前で笑っている友だちの子どもの写真を、親指で止めて、しばらく見ている。

「みんな動物園とか行ってる」「うちは今日、何もしてない」「午後からでも、どこか行こうか」。ソファで寝転ぶわが子の横顔とスマホの画面を見比べて、そんなふうに迷ったことのある親は、けっして少なくないはずです。

けれど、どこにも連れて行かなかった日曜日にも、あなたと子どもは、たしかに何かを手に入れています。

予定のない日曜日に、親子が手に入れているもの

その日、何が起きていたかを、少しだけ思い出してみてください。

子どもはアニメを見ながら、3回「ねえ見て」と言いました。あなたは3回とも「見てるよ」と返した。昼ごはんは冷凍うどんで、子どもは卵を割る係をやりたがって、殻が少し入った。午後、あなたがソファでうとうとしていたら、子どもが隣に来て、足の上に寝転んだ。重くて目が覚めたけれど、そのまま動かなかった。夕方、ベランダで一緒に洗濯物を取り込んでいたら、「空、オレンジだね」と子どもが言った。

どこにも行っていません。それでも、朝から晩まで、同じ部屋の、同じ空気のなかにいた。

予定のない休日に親子が手に入れているのは、たとえば、こんな時間。「体験」の形をしていないので、予定表には書けないし、SNSにも載せにくい。けれど、「ねえ見て」に「見てるよ」と返した回数も、足の上に寝転んできた重さも、ベランダの夕方の色も、その日たしかにあったものです。

黒背景にSUNDAYの文字。Nが黄色、そのほかの文字が赤い色

「どこかに連れて行かなきゃ」は、愛情から生まれた焦りです

それでも、日曜の夕方に「今日、何もしなかった」とつぶやいてしまう。その気持ちは、どこから来るのでしょうか。

「休日は子どもと思いきり遊んであげるべき」「いろいろな体験をさせるべき」「自然に触れさせるべき」。育児の情報は、休日の親に、やるべきことをたくさん手渡してきます。SNSを開けば、水族館、キャンプ、芋掘り、科学館。自分の家のソファと見比べて、何かが足りない気がしてくるのも無理はありません。SNSに並ぶのは、その家の日曜日のうち、写真に撮った場面だけ。こどもまなびラボの記事「「ちゃんとした子育て」で疲れてない? そんなあなたに知ってほしい3つの話」でも、SNSの家庭と比べて落ち込んでしまう気持ちをとり上げています。*1

📖 研究でも、こう言われています

「子育てで失敗してはならない」という思いが強い親ほど、日々の疲労感や、子どもとの距離を感じる気持ちも強い傾向が見られました。日本の働く親1,200人を対象にしたウェブ調査の結果です。(当時中部大学人文学部講師だった川本大史氏らが、2018年に『Frontiers in Psychology』誌で発表した論文より)*2

この研究からわかるのは、失敗を気にする気持ちが強い親ほど、疲れを感じやすい傾向があるということ。日曜日の夕方の罪悪感は、だらしなさの証拠ではありません。「この子に、いい休日を過ごさせたい」と思っているからこそ、何もしなかった日が失点に見えてしまう。焦りの根っこにあるのは、子どもへの愛情でしょう。

指先の上に、ひらめきを表す電球のイラストが描かれている

子どもと過ごす時間は、「量」だけでは測れない

では、どこかに出かけた日曜日と家にいた日曜日とで、子どもにとって何かが違うのでしょうか。

アメリカの全国規模の調査データを使った研究では、3〜11歳の子どもについて、母親と一緒に過ごした時間の長さと、子どもの行動面・感情面・学習面の様子とのあいだに、はっきりした関係は見られませんでした。むしろ、母親が抱えるストレスなど別の要因が、子どもの様子と関係していたと報告されています。(トロント大学の社会学者 メリッサ・ミルキー氏らが2015年に『Journal of Marriage and Family』誌で発表した論文より)*3

ただし、この研究は一緒に過ごした時間の中身までは測っておらず、研究者のあいだにも異論があります。家族で出かけることに意味がない、という話ではありません。それでも、「出かけた回数」で親子の時間の値打ちが決まるわけではなさそうです。

こどもまなびラボの記事「「自然体験させなきゃ」の焦り、手放していい。レイチェル・カーソンが遺したシンプルな答え」で紹介した一冊『センス・オブ・ワンダー』は、子どもに必要なのは知識の豊富な大人ではなく、世界の不思議を一緒に見つけ、感動を分かち合ってくれる大人がそばにひとりいることだと伝えています。(アメリカの海洋生物学者 レイチェル・カーソン)*4

「空、オレンジだね」と言われて、ベランダで一緒に見上げた夕方の空。それも、遠くの森や海の代わりではなく、親子で見つけた景色のひとつです。

夕焼け空を背に、子ども2人が自転車に乗って並んで進むシルエットを写した、のびやかで穏やかな雰囲気の写真

「何もしなかった」と思ったときに、ひとつだけ

とはいえ、日曜日の夕方になると「結局、今日も何もしなかった」という気持ちは、どうしても顔を出します。

そんなときのために、ひとつだけ決めておきます。「もし夕方に『何もしなかった』と思ったら、今日子どもと一緒だった場面をひとつ思い出す」。「もし状況Xが起きたら、行動Yをする」と前もって決めておくと、その場面が来たときに行動へ移りやすくなることが、複数の研究で報告されています。(ニューヨーク大学の心理学者 ピーター・ゴルヴィッツァー氏が1999年に『American Psychologist』誌で発表した論文より)*5

「ねえ見て」と呼ばれたこと。殻が少し入った卵。足の上に寝転んできた重さ。思い出す場面は、小さなもので充分です。

何もしなかった日曜日は、何もなかった日ではありません

どこにも出かけなかった日曜日の夜も、子どもはいつもと同じように眠りにつくことが多いもの。「今日は何もしなかった」と感じているのは、案外、親だけなのかもしれません。

同じ部屋にいて、「見て」に返事をして、一緒に洗濯物を取り込む。動物園の代わりではなく、それもまた、親子で過ごしたひとつの日曜日です。夕方に罪悪感がやってきても、その日の値打ちが減るわけではありません。

***

出かける日曜日も、出かけない日曜日も、どちらも親子の日曜日。次の休みがどちらになっても、それでいいはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 毎週どこにも行かないのは、さすがにまずいですか?

A. 出かけたい日曜日は、もちろん出かけてかまいません。この記事でお伝えしたいのは、出かけなかった日曜日を失点に数えなくていい、ということ。子ども自身が「あそこに行きたい」と言う場所があるなら、それは「連れて行かなきゃ」ではなく「行きたい」なので、別の話です。出かける日と家で過ごす日の配分は、家庭ごとのペースで決めていけば充分です。

Q. 「つまらない」と言われて、結局テレビや動画を長時間見せてしまいます。

A. 動画に頼る日曜日があってもいいでしょう。それも「同じ部屋で過ごした日」です。気になるときは、夕方に少しだけベランダに出るか、家のまわりを一周してみてください。それだけで、その日に「画面のない時間」が1回できます。1日中画面を消そうとしなくても、まずはそこからで充分です。

Q. 大きくなってから「どこにも連れて行ってもらえなかった」と言われませんか?

A. 子どもが何を覚えているかは、親には選べません。ただ、どこにも行かない日曜日が、その子の子ども時代のすべてになるわけではないはずです。行った日も、行かなかった日も、一緒にいた日であることに変わりはありません。気になるときは、「次の休み、どこか行きたいところある?」と1度だけ聞いてみてください。「べつに」と返ってきたら、その日曜日は家でゆっくりしていい日です。

Q. 夫(妻)は「どこか連れて行ってやろう」と言います。意見が合わないときは?

A. 片方が出かけて、片方が家にいる日曜日があってもいいと思います。子どもと出かける人と、家で洗濯物を取り込む人に分かれる。どちらも、その日の子どもの時間に関わっています。「どこにも行かない」を家族の方針にする必要はなく、「行かない日曜日もある」と、ひとこと共有しておけば足ります。

(参考)
*1 こどもまなびラボ|「ちゃんとした子育て」で疲れてない? そんなあなたに知ってほしい3つの話
*2 Kawamoto, T., Furutani, K., & Alimardani, M. (2018)|Preliminary Validation of Japanese Version of the Parental Burnout Inventory and Its Relationship With Perfectionism. Frontiers in Psychology, 9, 970.
*3 Milkie, M. A., Nomaguchi, K. M., & Denny, K. E. (2015)|Does the Amount of Time Mothers Spend With Children or Adolescents Matter? Journal of Marriage and Family, 77(2), 355-372.
*4 こどもまなびラボ|「自然体験させなきゃ」の焦り、手放していい。レイチェル・カーソンが遺したシンプルな答え
*5 Gollwitzer, P. M. (1999)|Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493-503.