暮らしを楽しむ/親自身のこと 2026.10.28

江戸時代の子育てに学ぶ、親の肩の力を抜く3つのヒント

江戸時代の子育てに学ぶ、親の肩の力を抜く3つのヒント

「いい親でいなきゃ」「ほかの家はもっといろいろやっている気がする」
情報があふれる現代の子育ては、がんばるほど息切れしてしまうことがあります。

そんなときは、少し視点を変えて、江戸時代の子育てに関する記録や書物をのぞいてみませんか。

幕末に日本を訪れた英国外交官オールコックは、滞在記『大君の都』に日本の子どもたちが年齢にふさわしい遊びを楽しむ様子を書き残しています。また、当時の子育てや親子関係を考える手がかりとなる風習や書物も伝えられています。

もちろん、暮らしも価値観も現代とは異なり、当時の子どもや家庭のあり方も一様ではありません。それでも、残された記録や書物を手がかりにして、現代の子育てを別の角度から見つめ直すことはできます。

この記事では、江戸時代の記録や風習から考えられることをもとに、現代の家庭で試せる3つのアイデアをご紹介します。

江戸時代の子育て① 子ども時代を「急かさない」

幕末に来日した英国外交官オールコックは、滞在記『大君の都』に日本の子どもたちの姿を書き残しています。*1 彼は、日本の子どもたちが年齢にふさわしい遊びを楽しみ、大人ぶることがないと評しました。それを、イギリスの子どもたちが失いつつある美点として捉えていたのです。*2

もちろん、これはオールコック自身が当時の日本を観察して記した評価です。江戸時代の子どもたち全員の暮らしを代表するものではありません。それでも、彼の記述からは、子どもが子どもらしく過ごす姿に価値を見いだしていたことがうかがえます。

いまの子どもたちは、習い事や宿題などで忙しい毎日を送っていることもあります。親も「あれもさせなきゃ」「これも間に合わせなきゃ」と、知らず知らずのうちに急いでしまいがちです。

そこで取り入れたいのが、「何もしない時間」をあらかじめ予定に入れておくという発想です。たとえば週末のどこか2時間を「予定を入れない時間」と決めておき、何をして過ごすかは子どもに任せます。

ブロックを並べるだけで終わっても、ソファでごろごろして過ごしても、それでかまいません。親は「次は何をする?」と聞きたくなる気持ちを少しこらえて、子どもが自分で過ごし方を見つける過程を見守ってみましょう。

ポイント「空いている時間」ではなく、「空けておく時間」。予定として確保しておけば、親も「何かさせなきゃ」という気持ちから少し解放されます。

江戸時代の子育て② 親だけで「育てようとしない」

江戸時代をはじめ、かつての日本には、生まれた子どもに「取り上げ親」や「名づけ親」などの「仮親(かりおや)」を立てる風習がありました。実の親以外の人と、儀礼を通じて親子に似た関係を結ぶ慣習です。*3

この風習を、そのまま現代の子育てに当てはめることはできません。それでも、子どもの成長を親だけで支えるのではなく、周囲の人とのつながりのなかで考える視点は、いまの家庭にも取り入れられます。

子どもは、園や学校の先生、習い事のコーチ、友だち、祖父母など、さまざまな人と関わりながら成長していきます。夢中で読んでいる絵本や図鑑から、新しい知識や考え方を得ることもあるでしょう。

子どもが「先生がこう言ってた」「〇〇ちゃんに教えてもらった」と話してくれたら、「そうなんだ、いいことを教わったね」と耳を傾けてみる。親以外の人から学ぶ経験も、子どもの世界を広げてくれます。

親がすべてを教えたり、あらゆる経験を用意したりする必要はありません。子どもがいろいろな人や物に出会い、自分なりに学んでいくことも大切にしたいものです。

ポイント子どもの成長を支えるのは、親だけではありません。周囲の人や物との出会いも、学びの機会になります。

江戸の暮らし

江戸時代の子育て③ 子どもへの「教え方」を考える

江戸時代中期、仙台で暮らした林子平が著した『父兄訓』という書物が残されています。*4 子弟を教える方法を説いた書物で、子は親のまねをするものだという考え方も記されています。*5 ただし、書物に記された考え方と、実際の家庭で行われていた子育てが必ずしも同じとは限りません。

そこで、歴史的な教えをそのまま現代に当てはめるのではなく、子どもに何かを伝えるときの関わり方について考えてみましょう。

たとえば、あいさつや食事のマナーを身につけてほしいとき。「あいさつしなさい」「食べたあとは片づけて」と言葉で伝えるだけでなく、親自身もあいさつをし、食事のあとは食器を片づける。そんな日々の積み重ねも、子どもにとって身近な学びの機会になります。

もちろん、親がいつもお手本どおりにふるまう必要はありません。言葉で伝えることも、うまくできない姿を見せることも、親子の暮らしの一部です。子どもに何かを教えようと思ったら、親も一緒に実践してみる。そんな関わり方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

ポイント子どもに伝えたいことがあるときは、言葉で教えるだけでなく、親自身も一緒に実践してみましょう。

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急かさない、ひとりで抱えない、言葉だけで教えようとしない。

江戸時代の記録や書物は、当時の子どもや親のあり方を考える手がかりになります。それらを現代の子育てにそのまま当てはめるのではなく、いまの暮らしを見直すきっかけとして活用してみるのもよさそうです。

完璧な親でなくても大丈夫。まずは今週末のカレンダーに、2時間の「何もしない時間」を書きこむところから始めてみませんか。

FAQ(よくある質問)

Q. 江戸時代の子育てには、どんな特徴がありましたか?

A. 江戸時代の子育ては、身分や地域、家庭環境などによってさまざまでした。幕末に日本を訪れたオールコックは、滞在記に日本の子どもたちが年齢にふさわしい遊びを楽しむ様子を書き残しています。また、名づけ親や取り上げ親などの「仮親」の風習や、林子平の『父兄訓』といった書物も、当時の子育てや家族の役割を考える手がかりになります。ただし、これらの記録や風習だけで、江戸時代の子育て全体を説明することはできません。

Q. 仕事が忙しく、子どもと過ごす時間そのものが少ないのですが……。

A. 朝のあいさつや、食事のあとの「ごちそうさま」など、毎日くり返す場面はどの家庭にもあります。特別な時間をつくらなくても、そうした場面で親の姿を見せることから始めてみてください。短い時間でも、子どもの話に耳を傾けたり、一緒に笑ったりすることはできます。

Q. 近くに頼れる家族や知り合いがいません。

A. 自治体の子育て支援センターや一時預かり、ファミリー・サポート・センターなど、子育てを支えるしくみがあります。利用できるサービスや条件は自治体によって異なります。余裕のあるときに一度調べたり、窓口に相談したりしておくと、必要になったときに頼りやすくなります。

Q. 「甘やかし」と「愛情」の境目が分かりません。

A. ひとつの考え方は、子どもの気持ちは受け止めながら、必要なルールは伝えることです。「欲しいんだね」と共感したうえで、「でも今日は買わないよ」と伝える。気持ちを否定せず、理由やルールを落ち着いて説明することも、愛情のある関わり方のひとつです。

(参考)
*1 オールコック, R.(山口光朔 訳)(1962)|大君の都:幕末日本滞在記(上・中・下). 岩波文庫.
*2 東海学院大学・東海学院大学短期大学部 (2025)|公開講座2025 第4回報告「まさしくここは子供の楽園〜外国人から見た日本人の子ども文化〜」(講師:アンドリュー・デュアー).
*3 和樂web|江戸時代の最先端子育ては全員参加型・体罰厳禁!イクメンが普通だった時代から現地レポ.(2020年6月19日)
*4 国立公文書館デジタルアーカイブ|父兄訓(著者:林子平).
*5 和樂web|今も昔も悩みはおなじ。子育てに悩むすべての親に捧げる江戸流子育て選書.(2025年3月28日)