親自身のこと 2026.11.5

親が「〇〇した」と言える家の子は挑戦する。親の“弱さの見せ方”3つ

親が「〇〇した」と言える家の子は挑戦する。親の“弱さの見せ方”3つ

「親が弱音を吐いたらダメだと思ってた」
「子どもの前では完璧でいなきゃ」
「仕事で失敗した話、しても大丈夫?」

挑戦する子に育ってほしいから、親はお手本でいようとして、できている姿だけを見せがちです。焦がした夕飯はさっと片づけ、仕事のミスは家に持ち込まない。

じつは、子どもが親から読み取っているのは「できているかどうか」ではなく、「失敗したときにどうするか」だということが、研究から見えてきています。タイトルの伏せ字に入るのは「失敗した」のひとことです。親が「失敗した」と口に出せる家の子は、失敗を怖がらずに挑戦しやすくなります。

子どもが見ているのは親の「言葉」ではなく、「失敗したときの態度」

スタンフォード大学のHaimovitz氏とDweck教授は、小学4〜5年生の子どもとその親73組を調べました。子どものマインドセット(能力は伸ばせると信じるか、生まれつき決まっていると信じるか)と関連していたのは、親が「知能は伸ばせる」と信じているかどうかではなく、失敗を「学びを後押しするもの」と捉えるか「害になるもの」と捉えるかという、親の「失敗観」だったと報告されています。*1

📖 研究でも、こう言われています

同じ研究の続く調査では、子どもは親の知能観をほとんど言い当てられなかった一方で、親の失敗観は正確に感じ取れていたことが示されました。研究チームは、失敗観はつまずいたときの親の反応に表れるため、子どもの目に見えやすいのだろうと考察しています。

親の姿を見て育つ子どもは、しぐさや口癖まで親に似てくるものです。だから自分の行動を子どもとシェアするときは、「失敗こそシェアする」と心がけてほしいと述べています。(ライフコーチ、ボーク重子氏)*2

子どもの目には、親はなんでもできるスーパーマンのように映っています。その親も失敗したことがあると知れば、子どもは、失敗しても挑戦を続ければ「いつかお父さんやお母さんのような人間になれる」と、失敗を恐れない力を得ていくといいます。(東京都市大学人間科学部特任教授、井戸ゆかり氏)*3

「私が失敗を怖がっているから、この子も怖がるの?」と苦しくなった方もいるかもしれません。でも、子どもに伝わっていたのは親の性格ではなく、失敗したときの反応でした。反応なら、今日の夕飯から変えていけます。

「子育ては修羅場! いつも笑顔で穏やかでいることは無理」と言いきっています。(発達心理学者、大日向雅美氏)*4 完璧でないところを見せることが、子どもの挑戦する力を支えてくれます。

親子三人で笑顔で小メインを見ている様子

親の“弱さの見せ方”3つは、「口に出す」「立て直す」「助けを求める」の順

順番にも意味があります。1だけなら「親も失敗する」で止まりますが、2まで見せると「失敗のあとには次がある」に、3まで見せると「困ったら人に頼っていい」まで伝わります。

見せ方1. 「失敗した」を、評価ではなく事実として口に出す

子どもが積み木を崩したとき、「あ、積み木が倒れたね」と起きたことをそのまま言葉にすると、子どもは失敗を「ただの出来事」として受け止めやすくなります。*5 この声かけを親自身の失敗に向けるのが、見せ方1です。

コツは、「私ってほんとダメだな」という評価を混ぜないことです。親が自分の失敗を「ダメなこと」として扱えば、それがそのまま子どもの失敗観のお手本になってしまいます。

✓例文1「あ、お母さん失敗した。煮物、焦がしちゃった」

✓例文2「今日、仕事でミスしたんだ。確認を1回飛ばしたら、数字が間違ってた」

見せ方2. 立て直す過程を、声に出して見せる

失敗か成功かという結果ではなく、「なにがどうしてどうなったか」というプロセスを見せることで、子どもは失敗は通過点でやり直しができること、ひとつの方法がダメでもほかを試せばいいことを学んでいくと語っています。(ライフコーチ、ボーク重子氏)

やることは、見せ方1のあとに「でも、こうすればなんとかなるかな」とひとこと続けるだけです。子どもが忘れ物をしたときは、強く叱るのではなく「次からどうすればいいかな?」と聞いてみるよう勧めています。(教育ジャーナリスト、中曽根陽子氏)*6 その問いを、親が自分自身に向けて声に出してみましょう。

✓例文3「焦げたところだけ取って、足りない分は卵焼きを足そう。次は火を弱めてタイマーをかけるね」

✓例文4「明日の朝一番に謝って、数字を直す。確認のリストもつくり直すことにした」

立て直しは、うまくいく前の「つくり直すことにした」の段階で見せてください。結果が出てから話すと、ただの成功談になってしまうからです。

見せ方3. 子どもに「どう思う?」と助けを求める

こどもまなびラボの「 子どもが親の失敗から学ぶもの。「やり抜く力」を育むなら“格好悪い親”であれ 」の記事によると、なにも分からないまま始めたビジネスでの失敗を娘に伝え、ときには娘からアドバイスをもらうこともあったそうです。(ライフコーチ、ボーク重子氏)

助けを求める姿は、それ自体が子どものお手本になります。大きな相談でなくてかまいません。「どっちがいいと思う?」のひとことで足ります。子どもが答えたら、その案を1度は採用してみてください。その経験が、「助けを求めると助けてもらえる」という実感につながります。

✓例文5「この資料の絵、AとBどっちが分かりやすいと思う? お母さん、迷ってて」

✓例文6「友だちに言いすぎちゃって、どう謝ればいいか悩んでる。○○ならどう言う?」

親子でベットで寝ている様子

「見せていい失敗」と「見せなくていいもの」の線引きは、3つの問いで決まる

「家計のことも夫婦ゲンカも、全部見せていいの?」と迷う方もいるでしょう。目安になるのは、「親自身のことで、立て直しに終わりが見えるか」「子どもに出番があるか」「誰かを下げていないか」という3つの問いです。

見せていい失敗 見せなくていいもの
仕事や家事の失敗
「確認を飛ばした」「煮物を焦がした」。親自身の失敗で、立て直しに終わりが見える
経済の不安
「お金がない」「来月どうしよう」。子どもに出番がなく、終わりも見えない
立て直しの過程
「明日謝りに行く」「つくり直す」。次の行動がある
夫婦の衝突
「どっちが悪いか」の言い合い。子どもはどちらかの味方になるしかない
子どもへの「どう思う?」
「AとBどっちがいい?」。子どもに出番がある
他人の悪口
「あの先生はダメ」「○○さんのお母さんって」。失敗ではなく評価で、誰かを下げている

右の列は、どれも「失敗」ではなく状況や対立、評価にあたり、子どもに出番も「次の行動」もありません。ただ、お金のことでも「今月は使いすぎたから、外食を1回減らすことにした」と伝えれば立て直しの形になり、見せ方1と2に戻ってきます。見せていいのは、子どもに「次の行動」が見えるものです。

「失敗した」と言える家は、子どもが安心して転べる家

親が完璧に見える家では、子どもは失敗を隠すようになりがちです。親が「失敗した」と口に出す家では、子どもも失敗を「ただの出来事」として扱えるようになっていきます。これまで子どもの前で完璧でいようとしてきた親御さんは、それだけ子どものことを考えてきたということです。その努力を捨てる必要はありません。

***

次に夕飯を焦がしたら、片づける前に「あ、失敗した」、そのあとに「でも、こうすればなんとかなるかな」と口に出してみてください。その数秒の積み重ねが、転んでもまた立ち上がれると子どもが信じられる、家の土台になっていきます。

FAQ(よくある質問)

Q. 失敗談ばかり話していると、親の威厳がなくなりませんか?

A. 娘に成功より失敗を重点的に見せてきたので、娘にとっては「格好悪いママ」だと話しています。(ライフコーチ、ボーク重子氏) その娘のスカイさんは、「全米最優秀女子高生」に選ばれています。威厳の代わりに手に入るのは、子どもにとって「手が届きそうな目標」としての親の姿です。

Q. 親の失敗を見せても、子どもがすぐには挑戦するようになりません。

A. 失敗を怖がらない力は、体験を重ねながら時間をかけて育つものです。子ども自身が失敗したときも、まず「積み木が倒れたね」と事実を言い、すぐに直さずに「どうしてみる?」と返してみてください。自分で立て直す「間」を残すことが、親の失敗を見せることと同じ方向に働きます。

(参考)
*1 Haimovitz, K., & Dweck, C. S. (2016)|Parents’ Views of Failure Predict Children’s Fixed and Growth Intelligence Mind-Sets. Psychological Science, 27(6), 859-869.
*2 こどもまなびラボ|子どもが親の失敗から学ぶもの。「やり抜く力」を育むなら“格好悪い親”であれ
*3 こどもまなびラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ
*4 こどもまなびラボ|子どもの教育で「しなくてもいいこと」はこんなにあった。いつも笑顔じゃなくていい!
*5 こどもまなびラボ|「失敗してもいいんだよ」では響かない。子どもの”失敗耐性”を本当に育てる親の関わり方
*6 こどもまなびラボ|任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎