2022.6.10

“友だちが多い子=人間的に優れている子” ではない! 「みんな仲良く」って言わないで

編集部
“友だちが多い子=人間的に優れている子” ではない! 「みんな仲良く」って言わないで

(この記事はアフィリエイトを含みます)

「うちの子は友だちとうまくやっているのかな……」と、子どもの友だち関係を心配する親御さんは少なくないでしょう。だからといって、「友だちできた?」「クラスの子と仲良くしてる?」など、過剰な声かけをしてしまうのはNGなようです。

まずは、「友だちがいないこと」への偏見を捨ててみませんか。親自身が「無理して友だちをつくらなくてもいいんだ」と考えることで、子どもへの対応も変わってくるかもしれませんよ。今回は、「子どもの友だち付き合い」について考えてみましょう。

「新しい友だちができるかどうか」を心配する親は多い

入園・入学などで環境が変わる時期、子どもの新しい人間関係を心配している親御さんは多いようです。2016年にヤフー株式会社が実施した保護者1,804名を対象にしたアンケートによると、「お子さまが幼稚園・保育園の入園前に心配だったことはなんですか?」という項目で、「嫌がらずに登園できるか(996人)」に次いで多かった回答は「お友だちができるか(966人)」でした。

また、セキュリティサービス会社の綜合警備保障株式会社(ALSOK)が2020年に行なったアンケートでも、「お子さまの小学校入学時にどのようなことに不安を感じたか」という問いに対して、「安全に通学できるか(72.4%)」に続き、「友だちはできるか(66.9%)」が上位に挙がるなど、子どもの友だち関係について不安を抱える親は多いようです。

さらに、国内最大級の子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」が行なった、「入園・入学で不安に思うことに関するアンケート」(2022年)では、以下の回答がありました。

  • 「子どもが園や学校などで集団行動に馴染めるか」(入園時 47%・入学時 53%)
  • 「子どもに新しく仲のいい友だちができるか」(入園時 39%・入学時 54%)

 
この調査結果から、入園時に比べて小学校入学時のほうが、子どもの友だち関係を心配している保護者が多いことがわかります。もしみなさんが「うちの子、友だちができるかな……」「仲間はずれになったらどうしよう」と考えているのなら、次にご紹介するアドバイスを参考にしてください。

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【未就学児】発達段階ごとに「友だちとの遊び方」は変わる

未就学児の場合、親目線では「いつもひとりで遊んでいるように見える」かもしれません。しかし、子ども自身は、友だちと遊んでいるつもりだということもあるようです。詳しく見ていきましょう。

■幼児は年齢や発達段階ごとに遊び方が変わります

発達心理学の専門家である法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏は、幼児は年齢や発達段階ごとに遊び方が変わると話します。

  • 2~3歳頃・・・「並行遊び」が多い。近いところで遊んでいても、それぞれ黙々と自分のやりたいことをしていて、会話はあまりない。
  • 3歳頃から・・・ケンカをした経験などが生きてきて、「貸して」「どうぞ」といった簡単なルールを理解できるようになり、誰かと一緒に遊ぶ「連合遊び」に移行し始める。
  • 4歳頃から・・・相手が自分とは違う気持ちや考えをもっていると理解し始める。
  • 5歳頃から・・・相手を思いやりながら「ごっこ遊び」などができるようになる。

 
このように、年齢や発達段階によって、子ども自身の「遊ぶ」ことに対する認識は大きく変化していきます。たとえお子さんが友だちとうまく遊べていないように見えても、「いまは並行遊びを楽しんでいる段階なのね」「少しずつお友だちとコミュニケーションをとりながら遊び始めたみたい」と、わが子の成長をおおらかに見守ってあげましょう。

■「誰と遊ぶか」より「なにでどうやって遊ぶか」が大切な時期

折り紙や積み木、お絵描き、砂場遊びなど、ひとりで集中して遊んでいるわが子の様子を見て、「お友だちと “一緒に” 遊べばいいのに」「ひとりで遊んで寂しくないのかな」などと考えていませんか?

青山学院大学教育人間科学部教授の坂上裕子氏は、「夢中になっているものに対してじっくり楽しむことに一生懸命な時期は、まわりの人にあまり目が向きません。それも子どもにとってはとても大事な遊びの時間」と言っています。

また、さまざまなメディアで大人気のカリスマ保育士・てぃ先生によると、「乳児期から幼児期は、『誰と遊ぶか?』より、『なにを使ってどうやって遊ぶか?』のほうに興味をもつ時期とのこと。ひとりで集中して遊び込むことで、想像力や集中力、思考力などが身につくのです。

友だちと声をかけ合いながらしっかり遊べるのは5歳くらいから。それまでは焦らず、ひとり遊びをじっくり楽しめるようにしてあげましょう」と、てぃ先生がアドバイスするように、親が勝手に不安になって「ほら、お友だちと一緒に遊びなさい」と促すよりも、集中して遊べる環境をつくってあげることが大切です。

■好きなことに集中していれば、友だちは寄ってくる!

てぃ先生はまた、「好きなことに熱中していると、それが魅力的であったら友だちも自然に集まってくる」と言います。つまり、子どもが楽しく遊ぶ→興味のある子が寄ってくる→一緒に仲良く遊ぶ→友だちになるということ。

「友だちは遊んでいるうちにだんだんできるものです」と、保育施設の代表を務める柴田愛子氏も指摘するように、友だちとは「つくる」ものではなく「できる」もの。おもしろい遊びをしている子は、まわりの子どもからも魅力的に映ります。「ひとりでいても、楽しそうならそれでOK!」と考えてみてくださいね。

親は、必要以上に心配したり不安になったりせずに、「うちの子はいま、なにに興味があるのかな?」「なにをしているときに集中力を発揮しているのだろう」と注意深く見守ってあげましょう。

友だちいなくても大丈夫03

【小学生】ひとり遊びが好きな子もいる。「みんな仲良く」はNG

小学校に入学すると友だち関係の問題はより複雑化することから、心配になる親御さんも多いことでしょう。しかし、友だちは親が用意してあげるものでも、親が口出しすべきものでもありません。ではどのようなスタンスで、子どもの友だち問題に向き合っていけばよいのでしょうか?

■ひとりで遊ぶことが好きな子もいる

数々の革新的な教育改革で注目を集めた千代田区立麹町中学校校長を経て、2020年より横浜創英中学・高等学校の校長を務める工藤勇一氏は、「ひとりで遊ぶことが好きな子どももいる」とし、「親の『友だちがいない人はダメなんだ』という価値観が、子どもたちを不幸にしている」と厳しく指摘しています。工藤氏はさらに、「友だちがいるかいないかはたいした問題ではない。大人が必要以上に気にすると、『友だちがいない自分はダメだ』と、子どものほうも気にするようになってしまう」と注意を促します。

また教育学者で明治大学教授の齋藤孝氏は、「ひとりがつらい、寂しい、と思うのは『受動的なひとりぼっち』だから。自分の意思でひとりになる『能動的ひとりぼっち』になれば寂しくはない」と述べています。「好きな〇〇に熱中したい」などで、子ども自身がひとりの時間を選んでいるのなら、親が余計な心配をすべきではないのです。

■友だちの「多さ」には意味がない!

「最近は『友だち』という言葉が重みをもちすぎて、『友だちはよいもの』ということがもてはやされすぎている」と齋藤氏が苦言を呈するように、老若男女かかわらず、「友だちの多さ=人間的に優れている」と認識する傾向が強いようです。

齋藤氏は、その原因を「インターネットやSNSの影響で、友だちの数が可視化されやすくなったから」と見ています。ですが、友だちの多さよりも「ひとりひとりの相手とどれだけいい関係が築けているか」のほうが重要なのだそう。子どもの頃にひとり遊びが好きだったり、友だちが少なかったりするからといって、大人になってから苦労するということはないと工藤氏が述べるように、友だちの有無で将来を案じることは意味がありません。

■「みんなと仲良くしなさい」はNGワード

工藤氏はさらに、「『みんな仲良く』という言葉に、多くの子どもたちが苦しめられてきた」とも述べています。大人たちはつい、子どもに「みんなと仲良くしなさい」と言ってしまいますが、実際に自分たち大人だって誰とでも仲良くはできませんよね。

前出のてぃ先生も同様に、「『誰とでも仲良く遊ばなければならない』という考え方は、子どもにとってプレッシャーになる」と指摘し、「みんなと仲良くできない→(まわりの子が)お子さんのことを嫌っている→だから離れていく」と、親の思考がネガティブに陥っていないかと苦言を呈しています。わが子がみんなと仲良くすることを強制したり、仲良くできないと「うちの子は嫌われている」と不安になったりするのは、子どもにとって大きな負担になると同時に、親自身も余計なストレスを抱える原因になるそうです。

もしお子さんが「自分には嫌いな子がいる」と悩んでいるようなら、次の工藤氏のアドバイスを参考にしてください。「お父さんにもお母さんにも嫌いな人はいるよ。だからといってその人に意地悪はしないし、きちんと挨拶もするし、本人に嫌いだと言わないよ」と、心と行動を切り離すこともときには必要であることをきちんと教えたうえで、「人と仲良くすることは難しいものだけど、仲良くできたら素敵だね」というメッセージを伝えてあげましょう。きっとお子さんも、「無理してみんなと仲良くしなくてもいいんだ」ということがわかるはずです。

【齋藤孝氏のベストセラー『友だちってなんだろう?』】

齋藤氏による『友だちってなんだろう?』には、子どもの「人間関係の悩み」を解決するヒントがたくさん詰まっています。「みんな仲良く」という呪縛にとらわれて無理をしてしまう子、学校のなかにしか自分の居場所がないと思っている子、ひとりでいることが不安でたまらない子――人間関係に悩んでいるすべての子どもたちに読んでほしい一冊です。大人が読んでもためになりますよ!

 
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友だちづくりについて、プレッシャーに感じているお子さんや親御さんも多いかもしれません。ですが、「うちの子、ひとりで寂しい思いをしていないかな?」と心配するよりも、「ひとりで遊ぶのが好きなのね」「数は少なくても気が合う友だちがいてくれてよかった」と考えたほうが、ぐっと心が軽くなるはず。まずはお子さんが好きなことに打ち込める環境を整えてあげましょう。

(参考)
ベネッセ 教育情報サイト|保育園、幼稚園の入園前に心配したことは?
ALSOK|【ALSOKアンケート】いまどき小学生のお留守番事情~小学校入学時の子どもへの不安~
いこーよ|入園・入学で不安に思うことに関するアンケート~入園・入学前の不安トップ3は「登園・通学のグズり」「朝の支度」「担任の先生」~
PHPのびのび子育て 2020年9月号, PHP研究所.
NHK すくすく子育て情報|どうする?子どもの友だちづくり
FQ Kids|てぃ先生の 子育てお悩み相談室【第8回】お友達との関係が心配……
てぃ先生(2020),『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の 子育てで困ったら、これやってみ!』, ダイヤモンド社.
PHPオンライン衆知|友達は少なくてもいいのに…子どもを追い詰める「みんな仲良く」の呪縛
タウンワークマガジン|友達がいないあなたへ。ひとりであることは悪くない。齋藤孝さんに聞く“友達”という存在について