教育を考える/体験 2018.7.2

子どもと田植え体験に行こう! 自然のなかで学ぶ魅力とは?

編集部
子どもと田植え体験に行こう! 自然のなかで学ぶ魅力とは?

田植え体験、したことはありますか? そもそも、農業に興味はおありでしょうか。地域によっては住宅街に畑が点在していたり、ビルの屋上のレンタル農園が流行していたりすることもあり、都市部でも畑を目にすることは珍しくなくなっています。

一方で、最後に田んぼを目にしたのはいつでしょう。日本人にとっての重要な主食「米」が育つ田んぼは、空いた土地に少しだけ作るというわけにはいかないため、たいていは郊外や農村部にまとまって広がっています。長いあいだ田んぼを見ていない人も多いのではないでしょうか。

田んぼでの農作業を経験したことはありますか? 気持ちのよい初夏、冷たい泥に足を入れて苗を植える。秋には一面に実った稲を刈り取る。季節の変化を全身で感じられる、貴重な機会です。

そのような機会を子どもに与えることは、大いに意義があります。豊かな感性が養われ、食物に対する理解が深まるだけでなく、大人になっても忘れられない思い出が得られることでしょう。

田んぼに入ったことがある人もない人も、子どもといっしょに田植えをしてみませんか? 親戚に米農家がいなくても、田植えを体験できますよ。

子どもが田植え体験する学習効果

田植えの体験は、子どもにとってどのような学習効果をもたらすのでしょう? 農林水産省の出先機関である関東農政局は2012年、小学校の農林漁業体験活動に関する報告書を作成しました。それによると、田植えを含む一連の米作りを通して子どもたちに以下のような変化が現れたそうです。

  • 米作りに対する興味・関心が高まった。
  • 農家の人や他学年の生徒との交流を持つことにより、様々な立場の人との適切なコミュニーションが身につきはじめた。
  • 生産や収穫の喜び、食料の大切さを実感し、米一粒を大切に扱うようになった。
  • 農業に関する現代的な課題に関心を抱き、自分なりの考えを持つようになった。

 

田植えや稲刈りは子どもたちにとって、教科書とは異なる学びとなるのですね。
しかし上記のことは、田んぼにかぎらず、畑での農作業からでも学べそうです。では、田植え体験ならではの学びとは何なのでしょうか。

そのひとつは、さまざまな水生生物の観察です。田んぼには、オタマジャクシやドジョウ、アメンボなど、現代の子どもがなかなか出会えない生き物が生息しています。都市生活において、これらの生物を見かけることはほとんどないといってもよいでしょう。子どもは田植えの体験を通し、米作りの方法だけでなく、田んぼが育む生態系も学ぶことができるのです。

「泥に触れる」ということも、田植えならではの体験です。皆さんは、素手で泥に触ったり、素足で泥を踏んだりしたことはありますか? 保育園や学校での農業体験が最後だった、という人が多いのではないでしょうか。一度も経験がない人もいるかもしれませんね。

栃木県にある中学校の生徒たちが体験した田植えの感想には、以下のように、泥の感触に言及したものが多く見られました。子どもにとって、泥に触れるという経験は貴重で、特に印象に残るようです。田植え体験は感覚を刺激してくれるので、豊かな感性が育ちそうですね。

最初は、ぬちょぬちょして気持ち悪かったけれど、慣れてくると気持ち良い感触でした。

素足で泥に入ったときは、ヌルヌルしていて身動きがとれずパニックでした。でも土の温かくやわらかいぬくもりを感じました。

『汚くなるんだろうな』と、嫌々入ってみると、思っていた数倍も気持ちが良かったです。

田植えはとても楽しかったです。理由は、土に入れたからです。土は、ヌメヌメしていて温かくてやわらかくてとても気持ちが良かったです。

(引用元:作新学院 Official Web Site|稲作体験学習「田植え」

親子で田植え体験をしよう

田植えの学習効果を確認したところで、実際に田植えを体験してみましょう! 田植え体験は学校単位でやるものだというイメージをお持ちかもしれませんが、個人で申し込めるプログラムも多数あります。ぜひ、親子で参加してみてください。もちろん、親は遠くから写真を撮るだけではありません。子供といっしょに田んぼに入って、苗を植えましょう。子供に一方的に体験させるのではなく、「親も共に学ぶ」という姿勢を見せることが大事です。

田んぼがある自治体のなかには、田植え体験イベントを開催しているところがあります。参加費は無料だったり安価だったりする場合が多いようです。自治体のWebサイトや広報誌で参加を募集しているので、チェックしてみてください。

たとえば埼玉県の県庁所在地・さいたま市では毎年、約1,260ヘクタールもの面積を誇る「見沼田んぼ」での米作り体験が開催されています。5月の田植えから10月の収穫まで関わることができ、20歳未満の参加費は無料。2018年度の参加者は600人を超え、過去最多だったそうです。都心から近く、周囲には首都高速道路の出入り口もあるというアクセスのよさも見逃せません。

インターネットを通じ、田植え体験プログラムを提供している農園に直接申し込むという方法もあります。たとえば、さまざまな種類の体験を検索・予約できるWebサイト「TABICA」は2018年6月時点で、10以上の個人・団体が提供する田植え体験を掲載。農家の人との交流や、現地の農作物による食事を楽しめます。ほかのユーザーからの口コミを参考にしつつ、気になったプログラムに申し込んでみるとよいでしょう。

現地までの交通手段が確保された、田植え体験バスツアーという選択肢もあります。愛光ツーリストが提供する親子向けバスツアー「ままきっずバスツアー」では、幼児といっしょに参加できる田植えツアーも扱われています。友人親子を誘って、大勢で田植え体験を楽しめますね。

棚田の田植え体験

せっかく田植えを体験するのなら、特別なことにチャレンジしてみましょう! 「棚田」を実際に見たことはありますか? 教科書でしか知らない人は多いはず。NPO法人・棚田ネットワークによると、日本の田んぼの総面積のうち棚田が占めるのはわずか8%で、その40%以上が耕作放棄されているそうです。せっかく田植え体験をするのなら、この機会に本物の棚田を見てみたいと思いませんか? 斜面に広がる絶景に出会うことは、またとない経験になるでしょう。

2018年2月時点で全国に61カ所存在する「重要文化的景観」のひとつが、長野県の「姨捨(おばすて)の棚田」。地元自治体は「棚田貸します制度」を整備しており、会員になれば収穫されたお米をもらったり棚田での農作業をしたりできます。

会員には「体験コース」と「保全コース」の2種類があり、「体験コース」では田植え・草刈り・稲刈り・脱穀の作業に参加する義務がある一方、「保全コース」では希望する場合のみ田植え・稲刈りに加われます。米作りにどれくらい関わりたいか検討してからを問い合わせてみてください。田植え体験に本格的にはまってしまいそうですね。

酒米の田植え体験

せっかく田植え体験をするのなら、植えて収穫して、その先もやってみたくありませんか? 米は主食として食卓にのぼるだけではありません。今や海外でも大好評を得ている、日本酒の材料にもなるのです。そんな「酒米」の田植え体験プログラムを提供している酒造もあり、日本酒の試飲や酒蔵の見学ができるところも。

佐賀県の天山酒造は毎年、酒米の田植えから日本酒としての仕込み、ビン詰めまでを体験できる「人・米・酒プロジェクト」を実施しています。ビンには自作のラベルを貼って「世界にひとつだけの酒」を作れるそう。プロジェクトの最後には720mlの新酒が2本もらえ、苗から作った日本酒を味わうことができます。親子で田植え体験に参加する人も多いそうですよ。

子どもと田植えを体験した感想

このように、田植え体験には多くの学びや楽しみがあります。では、親子で田植えを体験した保護者はどのような感想を持ったのでしょう。「TABICA」では、以下のような口コミが見られました。

  • 親も楽しかった。
  • 田植え後のご飯が本当においしく感じた。
  • すごく思い出に残った。貴重な体験ができた。
  • 植え終わった田んぼを見渡して感動した。他の参加者たちとの一体感も生まれた。
  • 普段できない体験ができ、普段見られない景色が見られて、とても有意義な一日を過ごせた。

 

田植えを通して学び、楽しんだのは子どもだけではないようですね。自分自身の成長や気分転換のためにも、田植え体験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

田植え体験の服装

田植え体験に参加する際、どのような服装をするべきでしょう? 棚田保全活動に取り組むNPO法人「せんがまち棚田倶楽部」(静岡県)は田植え時の服装例として、半袖のトップスと半ズボンを挙げています。足元ははだしでもよいそうです。また、熱中症を防ぐため、帽子をお忘れなく。小雨のときはカッパが必要です。

小石などで足の裏をけがしないか心配なら、長ぐつや地下足袋(じかたび)がおすすめです。長ぐつは、丈が長く泥が入りにくいため、タウン用より田植え用のほうがベター。また、くつ下を2枚重ねてはくことを推奨する人もいます。これなら、特別な買い物をせず、田植えが終わったあとに洗濯せず使い捨てられますね。

手については、素手で田植えする人が少なくないようです。爪に入る泥などが気になる場合、田植え体験前にインターネット通販やホームセンターで軍手や田植え用手袋を買うのがよいでしょう。

田植え体験の持ち物

田植え体験の際、持っていったほうがよいものは以下のとおりです。

  • タオル
  • 日焼け止め
  • 着替え
  • ビニール袋
  • サンダル
  • 飲み物
  • レジャーシート

 

田植えは温かい時期に行われるため、作業をしていると汗をかきます。タオルは必需品です。日差しも強いので、特に半そでの服を着るなら日焼け止めを塗る必要があります。

田植えをしていると、どうしても服が汚れてしまいます。特に子どもの服は、泥遊びで真っ黒になってしまうかもしれません。必ず親子とも着替えが必要です。汚れた服を入れるビニール袋もお忘れなく。また、足を洗って乾かすまでのあいだにはくサンダルも用意しましょう。

田植え体験では汗をかくため、水分補給を忘れないようにしてください。500mlのペットボトルでは足りない可能性があるので、家族の分も含めて多めに持っていきましょう。田んぼの近くでお昼を食べるなら、座る場所があるとはかぎらないため、田植え体験にはレジャーシートを持参すると安心です。

関東の田植え体験スポット

田植え体験への興味がわいてきましたか? では、住んでいる場所の近くで田植え体験ができるのか調べてみましょう! ここでは関東の注目スポットを3つご紹介します。

都市農業公園(足立区)

荒川沿いに広がる、「農」をテーマにした体験型都市公園。子どもが参加できる自然体験プログラムが多数用意されており、シーズンには田植えもできます。新鮮なオーガニック野菜の料理を食べられるレストハウスや、古民家、温室、ハーブ園もあり、素朴な自然をたっぷり楽しめます。

寺坂棚田(埼玉県)

埼玉県西部の秩父地域に広がる、県内最大級の棚田。標高1,304mの武甲山をはじめとした絶景で知られ、雄大な自然のなかで田植えを体験することができます。都心からは西武秩父線でアクセスしやすいのも魅力的。秩父地域には温泉も多いので、ゆっくり宿泊旅行を楽しむのがおすすめです。

佐野観光農園アグリタウン(栃木県)

田植えを含めた多種多様な農業体験ができる施設です。もち米を育て、収穫し、もちつきまで可能。ご当地ラーメンとして知られる佐野ラーメンや、旬の素材で毎朝作るジェラートも味わえます。周辺には「佐野プレミアムアウトレット」やレジャー施設「佐野市こどもの国」もあるので、一日中佐野を楽しめますね。

***
初夏のさわやかな陽気を全身で感じられる田植え体験。
家族でチャレンジしてみてくださいね。

(参考)
関東農政局|小学校における農業体験活動の実施に向けて
作新学院 Official Web Site|稲作体験学習「田植え」
埼玉県|平成30年度見沼たんぼ体験農園
見沼ファーム21|加田屋田んぼ2018
TABICA|自然体験・農業体験, “田植え”の体験一覧
ままきっずバスツアー|ツアー一覧
NPO法人 棚田ネットワーク|棚田とは
文化庁|文化的景観
千曲市|平成30年度「棚田貸します制度」会員募集
天山酒造株式会社|人・米・酒プロジェクト
棚田いこうよ.net|服装・持ち物ガイド
自然教育研究センター|都市農業公園
歩楽~里よこぜ|寺坂棚田
佐野観光農園アグリタウン|平成30年度もち米づくり体験参加者募集のお知らせ