2019.7.17

動物園は学びの場! 上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」

動物園は学びの場! 上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」

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たくさんのことに興味関心が高まる時期の子どもを連れて行きたい場所として、いつの時代も人気なのが動物園です。ゾウやキリンなど大型の動物や、愛くるしいモルモットなど、子どもは動物が大好きですよね。では、動物園でより楽しく学び多い時間を過ごすためには、どんな準備が必要でしょうか。上野動物園の教育普及係を務める井内岳志さんにお聞きしました。

井内さんは、30年にわたって動物園で教育活動を担当している大ベテラン。さまざまな広報活動のほか、学会での発表など研究活動、学芸員として博物館との連携活動など、動物園に関わる幅広い活動を続けていらっしゃいます。

構成・編集/木原昌子(ハイキックス) 取材・文/田中祥子 写真/児玉大輔

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動物園に行く前に、動物図鑑などを見てみよう

動物園は親子で休日に訪れる場所として人気がありますよね。どういう目的で動物園に行くかというアンケートでは「家族と一緒のレジャー」という答えが最も多いものでした。そんなレジャーイメージが強い動物園への訪問には、実は少しの工夫で、楽しむだけでなく学びの要素をプラスすることができます。お父さんお母さんが事前にできる準備を伝授しましょう。

まずは、家であらかじめ親子で本や図鑑を読んでおくと、動物や動物園について興味が深まると思います。『(楽しい調べ学習シリーズ)動物園のひみつ』(PHP研究所)という本には、展示の工夫や飼育員の仕事を子どもでも読めるようにやさしく書いてありますよ。

実際に園内を回るときには小さな図鑑を持って歩くと面白いですね。ポケット図鑑シリーズ『絶滅危機動物』(学研プラス)は小さなお子さんにはちょっと難しいかもしれませんが、小学生の調べ学習などで役に立ちます。どうしてその動物が絶滅しそうになっているのかを、動物園で実際に動物を見ながら考えられます。

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動物園で専用のガイドブックを作っている場合もありますから確認してみると良いでしょう。売店で購入できるので、入園したら最初に立ち寄って探してみてください。無料のフリーマガジンやパンフレットも参考になりますよ。

上野動物園の園内で配布している『ZOO TODAY』は毎月発行しているニュース紙です。園内で生まれた赤ちゃんや、冬毛から夏毛に変わる動物などその季節ならではのタイムリーな観察ポイントを紹介しています。『みんなの上野動物園』は年に5冊出している無料の情報誌です。“鳥のくちばしを観察してみよう”“日本に暮らす動物を観察しよう”など号ごとにテーマがあり、こんな視点で見ると面白いというヒントを提案しています。

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双眼鏡やスケッチブックがあると、動物観察をより楽しめます

動物の足や角などの細かいところを観察するには双眼鏡が役に立ちます。大型のものでなくても2~3倍のオペラグラス程度のもので充分ですよ。

気がついたことをメモしたり、動物をスケッチしたりするノートと筆記用具も忘れないようにしましょう。カメラで撮るのも便利ですが、写真撮影が目的になってしまって観察そのものがおろそかになってしまう場合もありますから、一緒に行く大人が写してあげると良いと思います。

そのほか、動物園は野外施設ですので、暑い季節は熱中症対策にも気をつかってください。帽子や飲み物のほか、保冷剤を持っていくと首筋に当てて体を冷やしてあげることができるので便利です。

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動物たちとのマナーも大事。相手を思いやる気持ちを育みます

お子さんには自分がされて嫌なことは動物にもしないでねと教えてあげましょう。たとえば、動物をおどかさないこと。寝ているからといって、ガラスを叩いたり、大声で呼んだりして起こそうとしないでください。エサをあげるのも絶対いけません。人間が食べるものでも動物にとっては毒になるものもありますし、栄養の偏りも出てしまいます。時々「動物が喜んでいるからいいのでは」という声を聞きますが、もしも自分の子どもが誰かに晩御飯を食べられないくらいお菓子をもらっていたら困りますよね。大人も自分に置き換えて考えてみることが大切です。

混雑している場合、最前列である程度見たら、後ろの人に譲ってあげることも大切です。動物園は大人が公共のマナーを教える場でもあるんですよ。動物とお子さんを一緒に写真を撮る際にも周囲への配慮をお願いします。また、写真を撮るときはフラッシュをオフにしてください。動物はフラッシュの光が苦手です。特に薄暗い場所にいる鳥の場合、フラッシュに驚いて急に飛んでしまい、ガラスにぶつかって怪我をすることがあるからです。

それから、動物を見るときに大人が「気持ち悪い」「汚い」「臭い」などのマイナスの言葉を言わないようにしましょう。子どもに伝わってしまうと、その言葉通りにしか見られなくなってしまいます。子どもが自分の感性で動物を知る姿を大人は見守ってあげてください。

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入園したときに写真を撮っておくと迷子対策に

園内は広いので子どもは走り回ってしまいがちですが、しっかりと見ていてあげてください。親が動物の撮影に夢中になっていると、後ろにいた子どもに目が届かなくなりがちです。

特に迷子がたくさん出るのは土日祝日です。もしも子どもが迷子になってしまったときは、スタッフが無線でやりとりをしてその子を探します。その際に便利なのが「子どもの写真」。親御さんにはお子さんの迷子対策として、動物園に入園したらまず入り口で子どもの写真を撮っておくことをおすすめします。その写真を見せていただければ、スタッフ間で子どもの特徴や洋服の色などを共有しやすくなるからです。

また、上野動物園では混雑時に、案内ボランティアがかわいいパンダのイラストの迷子札を配布しています。名前や連絡先などを書いておくと早期解決の手助けになるので、ぜひご活用ください。

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動物園に行く前に少し工夫して準備すると、動物園をより一層楽しむことができそうです。それでは、たくさん動物のいる広い園内では、どんな視点で動物を観察すれば良いのでしょうか? 次回は動物園を楽しみながら学びを深める秘訣を井内さんにお聞きします。

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■ 上野動物園教育普及係・井内岳志さん インタビュー一覧
第1回:動物園は学びの場! 上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」
第2回:解説のメモなんてしなくていい。「目の前の動物」から最大限学びとるコツ
第3回:「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント
第4回:動物園は子どもの「心」を育てる場所。“楽しみながら動物を知る”ことの大きな価値

【プロフィール】
井内岳志(いうち・たけし)
恩賜上野動物園 教育普及係主任(学芸員)。大学ではサルの生態を研究。恩 賜上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園などの動物園・水族館で30 年以上、 動物園教育に関わる。大哺乳類展などの国立科学博物館との企画展 や、上野動物園で毎年恒例の夜間開園「真夏の夜の動物園」の企画など、さまざまなイベント・企画で動物たちの生態を紹介している。