2021.4.9

罰を与えるのは絶対にNG! 我慢ができない子どもに足りない「未来を想像する力」

長野真弓
罰を与えるのは絶対にNG! 我慢ができない子どもに足りない「未来を想像する力」

「我慢は美徳」という言葉があるように、「我慢できる子=いい子」というイメージはいまだに健在です。日本の子どもは、幼い頃から「我慢しなさい」と言われて育ちます。しかし国によっては、我慢よりも「自己主張」を大切にするところも多く、最近は日本でも、我慢と自己主張のバランスを見直す流れがあるようです。

また一方では、「我慢=自制力」ということで、我慢は人生に大切な非認知能力のひとつとも考えられています。そこで今回は、「子どもにどんな我慢をさせるべきなのか」という点を中心に、我慢について深掘りしてみましょう。

「ママに怒られるから、我慢しよう」はかなり危険!

まず、想像してみてください。公園は遊びに来た家族で賑わっています。人気遊具の前には順番待ちの列ができていて、並んでいるふたりの子どもに、それぞれの親が声をかけているところです。

【Aさん】「もう、何度やったら気がすむの。いいかげん、帰るわよ!」
【Bさん】「4時に帰るって約束したから、あともう1回やったら帰ろうね」

どちらの子どもも、もっと遊びたい気持ちを我慢することになるわけですが、親の対応によって「我慢するときに感じる気持ち」に違いが生まれています。

Aさんのお子さんは、お行儀よく、聞き分けのいい子になるかもしれません。ですが、じつはこのAさんの対応、とても危険なのです。特に親が厳しくしつけているケースでは、子どもは「親に怒られるから我慢する」だけであって、「なぜ我慢するのか」をまったく理解していないことが多いからです。Aさんはわが子に「親の言うことを聞かせている」だけで、「なぜ我慢するのか」を伝えることを怠っています。ですからこの場合、子どもにとって我慢するメリットは「親に叱られないこと・罰を与えられないこと」だけ。これは、抑圧的な「悪い我慢」のさせ方です。

Bさんのお子さんも、本当はもっと遊びたいのに我慢をしています。しかしこの場合の我慢は、本人も納得しているので、子どもが自らを自制できている「よい我慢」と言えるでしょう。子どもに我慢をさせるときは、我慢する理由が「親の抑圧」なのか「子どもの自制心」なのかを考えたいですね。

正しい我慢3

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我慢できる子の未来は「成績優秀で社会的にも成功」

子どもの自制心についての有名な実験が、当時スタンフォード大学教授(現コロンビア大学名誉教授)の心理学者ウォルター・ミシェル氏が考案した「マシュマロ・テスト」です。

「満足を先延ばしできる能力」を調べるため、マシュマロを子どもたちの前に用意し、いま食べるなら1個、15分我慢したら2個あげることを伝えます。結果は、すぐ食べた子、我慢した子、ほぼ半々だったそうです。そして、その後の彼らの人生の追跡調査で判明したのは、「我慢した子のほうが、成績優秀で社会的成功を収めていた」という事実でした。

我慢することは、大人でも難しいものです。それが子どもならなおさらですよね。前述したような、理由も説明もなくただ「我慢しなさい」と頭ごなしに言うことは、子どもにとって苦痛以外の何物でもなく、圧力に押さえつけられた感情はかなりの精神的ダメージとなってしまうでしょう。

一方、マシュマロ・テストのように、「マシュマロを多くもらえるから、我慢する」というのは、報酬を得るという目的があっての我慢です。我慢したらよいことがあるとわかっているから、自制心が働きますし、最終的には達成感を得られるので、精神的にもプラスです。つまり、我慢には目的が必要ということ。京都大学大学院発達心理学准教授の森口佑介氏は、目的を達成するための自発的な我慢を「真の我慢」と呼んでいます。

正しい我慢2

お子さまは、自分の感情をコントロールできていますか?

教育学博士のアグネス・チャン氏によると、「真の我慢」をするためには、ふたつの能力が必要なのだそう。

まずは「想像力」我慢することで得られる未来を想像する必要があります。「我慢したらおいしいケーキが食べられる」「我慢したら公園で遊べる」など、未来を想像する力が行動のモチベーションになります。これは人生で試練にぶつかり、困難を乗り越えるときに、希望を見いだすための大きな力となります。

もうひとつは、「自分を慰める力」。つらいとき、気持ちをぐっとこらえて、気を紛らわせてなんとか乗りきること、ありますよね。我慢に待つ時間はつきもの。「いま食べたいのに」「いまやりたいのに」というとき――。駄々をこねず、歌を歌ったり、本を読んだり、体を動かしたり……子どもは、目的達成のために気持ちを切り替える術を学ぶことで、自分の感情をコントロールする力、つまり自制心を身につけます。「ママに怒られるから」ではなくて、「なぜいま我慢しないといけないのか」を理解することが重要なのです。

小さな我慢を積み重ねていくうちに、筋トレのように着実に自制心が育まれ、「真の我慢」ができるようになるのです。親が知っておきたいのは、子どもの成長に合わせた「我慢の育み方」です。幼少期に特に気をつけたいポイントをおさえておきましょう。

正しい我慢4

我慢ができなかったからと「罰」を与えるのはNG

前出の森口氏によると、「我慢適齢期」は4歳。それまでに親にあまりかまってもらえないなど、愛情不足から寂しさや不安を抱えると、逆に我慢できない子になってしまうので、注意が必要です。4歳頃までは、我慢させるよりも、子どもが安心できる環境づくりが何よりも大切となります。

2歳頃は、意欲や欲求が一気に育ちます。気持ちを発散することで、感情のコントロールをしようとする時期で、いわゆる「イヤイヤ期」。我慢を覚える一歩手前です。親にとってはとても大変なときですが、子どもはめきめきと成長しているので、この時期は我慢ではなく「意欲」を優先すべきだと、玉川大学乳幼児発達学科教授の大豆生田啓友氏は言っています。

そして3歳から4歳にかけては、自己主張と我慢の狭間で揺れ始める時期。「やりたいことができない!」など、自分へのイライラからぐずることも増えるかもしれません。しかし、抑圧的な言葉がけは厳禁です。「この時間なら、消防車の前を通って帰れるね」など、子どもの気持ちが切り替えられるような工夫してみましょう。すんなりとはいかなくても、その関わり合いのなかで、子どもは親の愛をしっかり感じとっています。そして、「我慢適齢期」の4歳からは、「真の我慢」ができるように、「なぜいま我慢をするのか」を説明してあげましょう。

そこで意識したいのは、やはり子どもの気持ちです。無理に我慢をさせすぎてしまうと、親の言うことを守るだけが我慢の目的になってしまい、子どもの自主性が育ちませんし、自己肯定感も低くなりがちに。特に、「我慢できなかったからと罰を与えることは、『問題は力で解決できる』という悪い例を示すだけでよい効果はない」と、『最高の子育てベスト55』著者でジャーナリストのトレーシー・カチロー氏は述べています。

正しい我慢5

「もう子どもを頭ごなしに叱らない!」2つの対処法

子どもに我慢を教える親も人間です。子どもが何かよくないことをしたとき、イライラして、つい頭ごなしに叱ってしまうこと、ありますよね。カチロー氏は『最高の子育てベスト55』のなかで、そんなときの親への対処法を紹介しています。

対処法1:子どもへの注目をいったんやめる

子どもが悪いことをしたときに、とりあえず謝らせていませんか。カチロー氏は、これは親の過干渉だと言っています。まずは、いったん子どもへの注目をやめてみましょう。カッカする気持ちを抑えて、「〇〇君と話がしたいんだけど、お話しする前にちょっとお皿を洗ってくるね」などと、一度「タイム」を入れることで、親子ともに冷静に問題と向き合うことができます。

対処法2:イライラしたときの気分転換を決めておく

気持ちが高ぶっているときは、「感情的に叱ったり(親)」「駄々をこねたり(子ども)」しがちです。そこで、イライラしたときの気分転換方法を、親子で一緒に考えておくのもひとつの手です。「ジャンプする」「枕をパンチする」「深呼吸する」など、なんでもかまいません。何か起きたときに、この行動を一緒にすることで、お互いに落ち着きを取り戻せるでしょう。対処法1は親だけの「タイム」ですが、こちらは親子ふたりの「タイム」ですね。

これらふたつは、前述した「真の我慢」のための、「自分を慰める力」、つまり「自己コントロール力」につながります。我慢を育むためには、親子ともにいったん「タイム」を入れましょう。覚えておくと、役に立ちそうですね。

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「我慢できてえらいね!」と、大人はつい言ってしまいがちですが、「我慢」自体をほめるのはNGです。なぜならば、我慢は目的ではなく、目的を達成するための “術” だからです。「真の我慢」は、人生に大きな可能性をもたらしますよ。親の正しいサポートで、「真の我慢」を丁寧に育んであげたいですね。

(参考)
ウォルター・ミシェル 著, 柴田裕之 訳(2015),『マシュマロ・テスト:成功する子・しない子』, 早川書房.
トレーシー・カチロー 著, 鹿田昌美 訳(2016), 『最高の子育て ベスト55』, ダイヤモンド社.
NHK すくすく子育て情報|「がまん」って大事なの?
SHINGA FARM|2歳、3歳、4歳…年齢に応じた正しい我慢のさせ方知ってますか?
ダイヤモンドオンライン|親が〇〇だと、子供の「自制心」が育たない
The Asahi Shimbun GLOBE+|賢く我慢を学んだ子は将来伸びる「マシュマロ・テスト」を知っていますか
PHPファミリー|子どもにさせていいガマン、わるいガマン