2018.7.15

「旅育」が流行中! 成功させる6つのメソッドと、季節別おすすめプラン

編集部
「旅育」が流行中! 成功させる6つのメソッドと、季節別おすすめプラン

「旅育(たびいく)」という言葉をご存知ですか? 近年、机上の勉強だけでなく、子どもにさまざまな体験をさせることが重要だと叫ばれるようになっています。「旅行」もそのひとつ。「旅育」とは読んで字のごとく、「旅を通じて育つ」という意味なのです。

けれど、とにかく子どもと旅行に行けばよい、というわけではありません。また、「家族旅行=旅育」というものでもありません。今回は、「旅育」とは何か、そして「旅育」を実践するにはどうすればよいのかをご紹介しますね。

「旅育」とは?

観光マーケティングを専門とする森下晶美教授(東洋大学)は、「旅育」を「旅は人間性の成長を促すとする考え方で、旅によって得られる知識や興味・価値観の広がり、共感力を人の成長に役立てようとするもの」だと定義しています。そして、「旅育」には以下の3要素があり、効果的な「旅育」を行うには、これらの要素を全て満たす必要があるとのことです。

1. 旅の体験(異文化・非日常体験、旅先での交流など)、
2. 人との時間共有(家族・友人との共通体験、想い出づくり、日常と比較した共有時間の長さなど)、
3. 旅を素材とした教育(職業教育、郷土教育、地理・歴史教育、国際化教育など)

(引用元:日本国際観光学会|“旅育”の現状と定義を考える

普段とは違う場所に遠出して、さまざまな発見をした、という体験は多くの人に覚えがあるはずです。学校で実施されている社会科見学や修学旅行にも、上記のような教育意図が含まれているといえるでしょう。このような学習を家族単位で行うのが「旅育」なのです。

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「旅育」のメリット

「旅を通じて育つ」とはいっても、「旅育」には具体的にどのようなメリットがあるのでしょう? 森下教授が2010年、18~25歳の1,700名を対象に実施したアンケートでは、子ども時代に家族旅行の経験が多かった人ほど、自主性やコミュニケーション力が高く、精神が安定していることがわかりました。たとえば「人と協調して行動するのが得意」「家族と普段あった出来事をよく話す」のようにコミュニケーション力を測定する項目について、肯定的な回答をした人の割合は全体で43.2%でしたが、「家族旅行が特に多い」と答えた人では52.0%、さらに「海外家族旅行経験を持つ」人では53.6%でした。一方、「家族旅行経験がない」人では33.2%に留まりました。つまり、家族で海外に旅行したことがある層と、家族旅行をしたことがない層では、20.4%もの差があったのです。家族旅行の有無と性格・能力のあいだには複雑な因果関係があるため、単純に「家族旅行をしたから子どもの能力が育った」と言い切ることはできませんが、ある程度の関連性はあることがうかがえます。

また、「旅育」という考えを提唱し、「旅育」を広める活動に取り組んでいる旅行ジャーナリストの村田和子氏は、子どもと旅をして「一番よかった」と思うのは「幼いときから多様な価値観に触れ、世の中の広さを知ることができた」ことだと話します。

昔は、近所が顔見知りだったり祖父母が同居していたりしました。(中略)特別なことをせずとも年齢や考え方の違う人と接する機会がたくさんありました。(中略)
昨今は少子化、核家族化の影響や生活スタイルの変化で、子どもを取り巻く環境が、昔と大きく異なります。親や先生などごく限られた世界が、世の中すべてだと思い、ささいなつまずきが解決できないことも少なくありません。だからこそ、知らない人と出会い、言葉を交わして、共通点や違う点を見つけ認めることができる「旅」は貴重な機会なのです。

(引用元:日経DUAL|「旅育」は受験にもプラス 旅の失敗は学びの宝庫

村田氏によれば、ほかにも「両親と一緒に過ごせて楽しかった」という体験が子どもの心を安定させて親子関係によい影響を与えたり、親が旅行によって気分転換でき、育児や仕事のモチベーション向上につながったりといったメリットもあるそう。

なお、特に「旅育」が効果的なのは「言葉を理解し始める3歳~脳の基礎ができあがる9歳ごろまで」だと村田氏は話しています。子どもが大きくなってからの家族旅行に意味があるのはもちろんですが、「旅を通じて成長させたい」と思うのなら、小学4年生までが最適のようです。

村田和子氏の「旅育メソッド」

今すぐにでも始めたい「旅育」。では、「旅育」と普通の家族旅行はどう違うのでしょう? 村田氏によると、「旅育」を実践するにあたって最も大切なことは「親の子どもへの関わり方」。「どこに行くか」よりも「何をするか」が重要なのだそう。ただなんとなく出かけるのではなく「テーマ設定」をするべきとのことです。それらの「旅育を成功させるために必要なこと」を村田氏がまとめたのが「旅育メソッド」。以下の6つです。

旅の計画・準備において子どもを積極的に参加させる

旅行の計画段階から子どもを関わらせるほうが、子どもが旅へ向ける関心が高くなるのだそう。村田氏は「旅の作戦会議」を開くことを推奨しています。このとき、「子どもが出した意見を尊重する」ことが大事なのだとか。せっかく子どもが提案してくれたのに、日程や予算の関係で却下してしまうことを避けるため、あらかじめ親が複数の案を用意しておき、子どもに選んでもらうのがよいそうです。

旅育を成功させる6つのメソッド2

子どもの役割や目標を決め、褒める

旅行のなかでの役割を子どもに与えることにより、責任感や積極性が生まれるそうです。たとえば、バスの運行予定時刻や施設の開館時間を調べさせるのはどうでしょう。また、「公共の場所では静かにする」「教科書に載っていた銅像を自分の目で見る」など目標を設定させ、達成したら褒めることは、子どもの成功体験につながるそう。このように、「役割」「目標」を決めることは、普通の家族旅行との大きな違いだといえるでしょう。

旅先で家族が別々に過ごす時間を設ける

ホテルやレジャー施設などでは、子どもだけで参加できるプログラムが用意されていることもあります。それに参加させることは、子どもにとっても大人にとってもメリットがあるそう。まず子どもは、初対面の指導員やほかの子どもたちと接することによって協調性を養い、そこでの体験をあとから親に話すことでで表現力を育みます。また、ふだん仕事や家事に忙しい親にとっては、貴重な自分だけの時間を持てるため、日頃のストレスを解消することができるのです。

子どもを「本物」に多く触れさせ、「関心の芽」を育む

旅先では、自然・芸術・歴史など、子どもがさまざまな「本物」に触れる機会を多く作るとよいのだとか。ハイキングしたり、美術館を訪れたり、歴史的な事件が起こった場所に行ってみたり……。「本物」は五感に働きかけ、創造力や感受性を刺激してくれるそうです。「この花の名前はなんというのだろう」「○○とはどのような人物なのだろう」など、旅先で得た発見や疑問については、旅行のあとに親子で調べてみるとよいそうですよ。

親が楽しみながら学び、子どもの手本となる

「旅育」は教育効果が高いもの。とはいえ、いかにも「勉強するために来た」という雰囲気を全面に押し出し、旅行を通じた学習を子どもに強制しては、親も子どもも楽しむことができません。まずは親から「旅育」を体現してみましょう。子どもと同じく、親も旅先での「役割」「目標」を設定し、それを積極的に達成していく姿勢を見せれば、子どもも模倣したくなるのではないでしょうか。また、子どものお手本になれるよう、旅先でのマナーにも気をつけるべきだそうですよ。

思い出を形にして残す

旅行のあとも思い出す機会を設けることで、旅育の効果が高まるそうです。「楽しかったね」で終わらせないことが「旅育」の重要なポイント。現地で撮った写真を整理したり、絵日記をつけたりするほか、旅先から自宅へハガキを送っておく、という方法があります。陶芸やガラス細工作りなど、思い出が形として残るような体験を旅先でするのもよいですね。

自分で「旅育」プランを組む

それでは、実際に「旅育」をやってみましょう! とはいえ、どこに行こうかと悩みすぎる必要はありません。高い交通費をかけて遠くへ行くこともないのです。前述したように、「旅育」で大切なのは「どこに行くか」よりも「何をするか」。「沖縄」「箱根」など目的地から考えるのではなく、「日本史を学ぶ」「地層を見る」など、先に「何をするか」を決めましょう。

やることが決まったら、村田氏は「自然体験 こども 東京」のようにインターネット上で検索してみることをおすすめしています。「やりたいこと+こども+地名」で検索すると、子ども向けの体験プログラムがヒットしますよ。「工作」や「田植え」などはいかがでしょうか。

春におすすめの旅育

毎年4月18日は「発明の日」。1885年、現在の特許法の前身にあたる「専売特許条例」が公布された日なのだそうです。そして4月18日を含む一週間は、「科学技術に関し、ひろく一般国民の関心と理解を深め」る目的で1960年に制定された「科学技術週間」。

この期間には、全国の科学館や博物館などで展覧会や研究施設の一般公開といったさまざまな企画が催されます。たとえば2018年には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の調布航空宇宙センターが公開され、飛行シミュレータの操縦や水の電気分解実験などの体験も実施されました。特に理系分野に興味を持つ子どもにとっては、貴重な機会となります。

夏におすすめの旅育

学校の夏休みには、大人も休みを取りやすいもの。せっかくの長い休み、家族で遠出してアウトドアを楽しんではいかがでしょうか。そこでおすすめしたい目的地が、信州――つまり長野県です。長野県では、「信州デスティネーションキャンペーン」という国内最大級の観光キャンペーンが開催中。自然が豊富な長野では、アスレチックやエコツアー、乗馬、カヌー、熱気球、パラグライダーなど、目移りしてしまいそうなほど多彩なアクティビティが待っています。

また、長野県には国宝・松本城や宿場町など、貴重な昔の風景が多数残されています。テレビでしか見られないような光景は、子どもだけでなく親にとっても新鮮なはず。日本史に興味を持つきっかけになるかもしれませんね。

秋におすすめの旅育

少しずつ気温が下がり、過ごしやすくなる季節。夏よりアウトドアに適しているともいえます。そこで村田氏がおすすめしているスポットが、「秋川橋河川公園バーベキューランド」(東京都)。河川敷でのバーベキューを楽しめます。道具は持ち込めず、レンタルのみ。川でバーベキュー道具が洗われ、自然を汚すことがないよう、レンタル道具は洗わずに返却するルールです。食材のデリバリーサービスもあるので、ほとんど手ぶらに近い状態でバーベキューを楽しめます。

「苦労が少ないと、子どもが学べることも少ないのでは」と思いますか? しかし、食材を切ったり焼いたり、家族でコミュニケーションをとったりするのは普通のバーベキューと同じ。親にとっても手間が少ないので、貴重な休日に疲れすぎることなく、バーベキューを楽しむのに集中できますね。

旅育を成功させる6つのメソッド3

冬におすすめの旅育

冬といえばウィンタースポーツ。とはいえ、スキーやスケートが苦手という人も少なくないはず。そこで、家族で雪を楽しむのにおすすめしたいのが「スノーシュー」。西洋版「かんじき」ともいえる専用の靴をはき、雪原を歩き回るのです。ガイドから説明を受ける必要はありますが、特別な技術を必要としないので、子どもからお年寄りまで家族で楽しむことができます。

スピードや技術を競うことなく、自分のペースを保てるスノーシュー。雪の感触や雪景色をのんびり満喫するにはぴったりです。

旅行代理店の「旅育」プラン

面白そうだけれど、やはり旅行の計画をいちから自分で立てるのは面倒――そう感じる人もいるかもしれませんね。では、旅行代理店が提供している「旅育」プランを探してみましょう。移動手段や宿泊先の手配が含まれている商品があります。もちろん、「旅育」の肝心なポイントは押さえておきましょう。何をやりたいのか子どもに考えさせたり、旅で達成したい目標を決めさせたりすることは必要です。

JTBは、旅によって子どもを育てる「旅いく」を「新しいライフスタイル」として掲げ、特設サイトに多数の旅育プランを掲載しています。そのなかから3つご紹介しましょう。

上野ダムと神流川水力発電所で1日発電所員体験

子どもたちは発電所員になりきり、水力発電の仕組みを学んだり、施設の安全点検を行ったりします。普段は公開されていないポンプ水車を間近で見られる貴重な機会です。「1日発電所員レポート」をまとめて発表する機会もあるので、夏休みの自由研究に最適ですね。

夏休み!番組制作体験「めざましテレビを作ろう!!」

フジテレビのニュース番組『めざましテレビ』を制作する体験ができます。子どもだけでなく、親も参加できるそう。キャスターのようにカメラに映る仕事、裏で機材を操作する仕事……子どもにはどのような役割が向いているのでしょうか? 適性を発見する機会になるかもしれません。

体験モニターツアーin 高知県黒潮町~海とともに生きることを学ぶ旅~

海産物の豊かな高知県。海の雄大さと恵みを大いに学べる1泊2日のプログラムです。といっても、泳ぐわけではありません。砂浜に漂着した流木や貝を使ってアート作品を作ったり、カツオをさばいたり。なかなかできない体験に、大人のほうも夢中になりそうです。

海外での「旅育」

国内旅行だけではなく、もちろん海外旅行にも「旅育」効果があります。海外旅行を実施した家族に対して森下教授がアンケート調査を行ったところ、旅行のあと、子どもに以下のような変化が見られたそうです。

  • 飛行機や出入国審査に興味を持つようになった。
  • 世界の地理や文化、自然などに興味を持つようになった。
  • 英語やコミュニケーションに対し積極的になった。
  • 積極性や思いやりが増した。
  • 生活の規律を守るようになった。

 
海外を訪れると、治安などの面から、日本で過ごすよりも多くのことに注意を払わなければいけなくなります。また、言語や習慣が全く違う土地は「非日常性」が強いため、子どもはより強力な刺激を受けることでしょう。

なお、いわゆる「語学留学」には、外国語のレッスンのほか多数のアクティビティーが付随したものが多く、親子で参加できるものも珍しくありません。そのため、一見「旅育」の効果があるように思えます。

しかし、語学留学のメインとなるのは、あくまで外国語のレッスン。ホストファミリーと暮らすのであれば、あまり親子で過ごす時間を確保することもできません。語学留学は、あくまで外国語能力の向上や異文化体験を目的とするもの。「旅育」とは別に考えたほうがよいでしょう。

***
近年注目されている「旅育」。お金をかけて旅行すればよいというわけではないのです。
「どこに行くか」より「何をするか」を考えて、子どもとの学びを楽しんでくださいね。

(参考)
StudyHacker|旅育
日本国際観光学会|“旅育”の現状と定義を考える
日経DUAL|旅育」は受験にもプラス 旅の失敗は学びの宝庫
日経DUAL|【新連載】子どもができても旅名人 共働きこそ旅を
日本実業出版社|子どもの世界を広げる「旅育」のススメ
朝日新聞デジタル|この夏こそ、「旅育」のススメ 旅が生きる力になる!
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