教育を考える 2018.2.28

【Education Now 第1回】こんなに違う!? 海外の学習事情

吉本智子
【Education Now 第1回】こんなに違う!? 海外の学習事情

現在、海外に住む日本人は、年々増加しています。国際化の進展に伴って多くの日本人が子どもを海外に同伴し、海外に在留している義務教育段階の子供の数は79,251人(※平成28年4月現在)となっています。

外務省の「管内在留邦人子女数調査」によると、全体の25%は日本人学校に通っていますが、後の75%は現地校や補習校、インターナショナルスクールなど、就学形態は地域によっても異なってきます。

連載第1回目では、まず海外の学校に通う子の学習実態に触れ、海外と日本の学習事情を比較し、今後の子どもの教育に活かせる方法について書いていきたいと思います。

個々重視の海外の教育VS平等を重んじる日本の教育

日本の義務教育は、文部科学省が定めた学習指導要領に基づいて行われています。ところが、インターの学校では、独自のカリキュラムのもと学習が進められています。ある学校では英語に加え、フレンチ、中国語、アラビック……と必要でなくとも多言語を学ばせたり、算数では成績上位の子をレベルの高いクラスに参加させたり、学校間でも違いはさまざまです。

日本は平等を重んずる文化があり、教育においても「平均」を意識し、落ちこぼれをつくらないようにしていると思います。実際、日本の義務教育を受けた子で、文字が書けない子や九九を言えない子は、ほとんどいません。

その反面、個のスペシャリストを育てるような教育は残念ながら行っていません。例えば、クラスに算数の学力に長けている子がいて早く問題を解き終わったとしても、同じ問題を繰り返し解いたり、友人に教えたりするだけで、その子の脳をくすぐるようなレベルの高い問題を解かせるようなことは、実際ほとんどできていないのが現状です

こういったことも影響しているのか、日本の教育は、学年が上がるにつれ、世界との差が出てきています。現にイギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エドゥケーション」の「世界大学ランキング2016-2017版」では日本の大学は東京大学が39位、京都大学が91位と振るわず、上位は欧米の大学が占めている結果となっています。我が子の教育において、より高度な知識を習得させたい、もっと個を伸ばしたいときは、学校以外の場面に向かわせるアプローチも必要だと思われます。

海外の教育事情と日本の教育文化2

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進むタブレット学習 ~忘れてはならない情報リテラシー~

私の教え子たちが通うインターでは、どの学校もタブレットを用いる授業が既に始まっています。学校によっては小学校3年生ぐらいから使用する学校もあるようですが、「早く使いたい!」と子どもは待ち遠しい様子でした。タブレット学習は、日本でも最近着手してきて話題になっていますが、実際のタブレット学習について、見えてきたことを記します。

日本のタブレット学習との違い

まず、タブレット本体について、インターでは各々で用意するところが多いようです。みんな同じ物ではないところに、海外教育らしさを感じます。日本の公立学校では、費用の面や一斉指導の難しさもあり、既に導入している学校は、学校一括管理の方法をとっているようです。また、インターでは、学校からの通知が遅いこともあって、一斉ダウンロードに皆が集中してしまうため、回線がパンクしてしまって登校日までに間に合わなかった……という話も聞きました。

タブレット学習の魅力

タブレット学習について一番感じたのは、子どもたちのほとんどが「タブレット学習に魅力を感じている」ということです。内容はともかく、タブレットを使うこと自体が嬉しく、楽しいようです。子どもって最新の機器が好きで、のみ込みも早く、スマホやPCでも、すぐに使い方をマスターしてしまうようです。タブレット学習が楽しいという子どもたちに、「何が楽しいの?」と聞くと、タブレットの効用性よりも、機器の操作の面白さを挙げる子が多かったです

情報モラルの教育は家庭でも!

子どもはのみ込みが早いからといって、100%使い方を理解しているわけではありません。これは実際にあった話ですが、機器の操作が得意で友人の動画を作った子が、面白半分で動画サイトにアップして友人を傷つけてしまった、ということがありました。文部科学省がとりまとめた「情報活用能力調査」の結果でも、小学生は、自分に関する個人情報の保護については、理解しているものの、他人の情報の取り扱いについての理解に課題がある、との報告がされています。

今後、子どもたちは情報社会の中で、効率よく作業を進めたり、情報の発信に責任を持ったりと、益々情報を活用していきます。そのために情報モラルの基本を子どもの頃から学んで行く必要があります。こういったことは、ただ機器にロックをかけて子どもに渡すだけでなく、どんなリスクが生じるのか、なぜ乱用してはダメなのか、子どもの発達段階に合った説明で日頃からしっかり関わり、意識付けしておくことが大切です。

また、タブレット学習に魅力を感じている子たちなので、情報を活用するだけでなく、苦手教科への意欲付けや、興味のある分野の更なる開拓などにつなげていければ、タブレットの使用は大いに意味をなすのではないでしょうか

海外での習い事、現地の子どもたちには武道が人気!?

私のいる国では、水泳、ピアノ、テニス、サッカー、体操、バレエ、バイオリン、リトミック、公文までなど、習い事は多岐にわたっています。また、日本人学校もあるため、日本人が行う放課後アクティビティとして、卓球、バスケ、サッカー、剣道などもあります。想像以上に種類が多いことに驚きました。

また、意外にびっくりしたのが、空手や柔道など、武道が外国の子どもにも人気のようで、学校から帰った子どもが道着を身につけて歩いている姿を異国の地で目にする光景が嬉しくもあります。

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次回は、私が5年間の海外生活で得た、インターナショナルスクールに通う子どもたち(純日本人、ハーフ)の日本の学習のあり方についてお話しようと思います。

(参考)
外務省|海外在留邦人子女数統計(長期滞在者)
文部科学省|情報活用能力調査の結果について
リセマム|THE世界大学ランキング2016…東大39位、京大は91位へ