年長さんの秋になると、「ひらがなはもう書けるから大丈夫」「就学時健診の案内が届いたけれど、入学までに何を準備すれば?」といった声がよく聞かれます。
入学まで、あと半年ほど。1年生の4月は、文字より先に、まず学校生活に慣れていく時期です。トイレに行きたいと伝える、体操服に着替える、名前を呼ばれて返事をする、自分の持ち物を管理する。入学直後の毎日は、こうした「自分でできる」の積み重ねで回っていきます。
そこで、入学までの半年で身につけたい生活の力15項目と、親ができる3つのことを紹介します。
目次
ひらがなは学校が教えてくれる。入学後に差が出るのは「生活の力」
文部科学省の資料によれば、年長児で文字を読める子の割合は、男の子92.1%、女の子97.7%にのぼります。*1
「書く」は入学後に学校で順を追って教わります。教科書会社が示す1年生の書写の年間指導計画では、4月は姿勢と鉛筆の持ち方から始まり、5〜6月にひらがなの「とめ」「はらい」や筆順を学び、7月には言葉を書く練習へと進みます。*2
4月にまず必要になるのは、座っていられること、話を聞けること、身のまわりのことを自分で済ませられることといった生活の力でしょう。

入学までの半年で身につけたい「自分でできる」15項目を、時期の目安つきで一覧にする
15項目を3つに分け、目安を「いま〜年内」と「年明け〜入学」の2段階で示しました。早い遅いを測るものではないので、できているところから眺めてみてください。
身のまわりの5つは、「自分でできる」の土台になる
この5つでつまずくとき、原因はやる気より道具にあることも。こどもまなびラボの「子供が片付けをしない……」そんな悩みを解決できる超シンプルな4つのコツの記事では、子どもの手先は「大人の手に軍手を2枚はめたくらい不器用」で、フタが固い仕組みは子どもの「自分でできる」可能性を妨げてしまうと紹介されています。(キッズオーガナイザー、中村佳子氏)*3
時間と持ち物の5つは、学校の1日を回す力になる
「何回言ってもできない」のは「性格的にだらしがないのではなく」、新しいことや興味のあることに気を取られて忘れてしまう、子どもの特性だと述べています。(行動科学の専門家、石田淳氏)*4
言い聞かせる回数を増やすのではなく、時計と持ち物リストを「目に入る場所」に置いてみてください。
10番の「座って続ける」は、長さを追わなくて大丈夫。学校の授業は45分単位で、低学年のうちに30分くらい続けて机に向かえるのが望ましいとされています。*5 入学までに目指すのは、その手前の「毎日同じ時刻に座る」です。
人と学校の5つは、親がいない場所で自分を守る力になる
親が子どもより先に動いてばかりいると、子どもが「自己表現の方法」を知らないままになってしまう、という指摘もあります。(小児科専門医、小枝達也氏)*6
入学前に「学校、こわい」と不安を口にする子もいますが、準備不足のサインとは限りません。未来の場面を具体的に思い描けるようになってきた、発達の一面として捉えることができます。*7

15項目を育てるために、親ができる3つのこと
一覧の「家でのやり方」に並ぶのは、「置く」「決めておく」「待つ」。「やってあげる」は、ひとつもありません。15項目は、親が少しずつ手を引いた分だけ、子どもの力になっていきます。
1. 持ち物や服は、子どもに任せる
翌日の持ち物を親がかばんに入れる。明日の服を親が出しておく。それが続くと、8番と9番はなかなか子どもの仕事になりません。子どもより先に手や口を出すのは、じつは親にとって楽な面があり、「わたしは育児をしている」という気分になれるから、という見方もあります。(『嫌われる勇気』共著者・哲学者、岸見一郎氏)*8
任せる手順は、「入れておいたよ」を「入れた?」に、「入れた?」を「見てみて」に替えていくこと。
2. 「〇〇でしょ?」の前に、子どもの言葉を待つ
もじもじしている子に「トイレでしょ?」。震えている子に「寒いでしょ? 着なさい」。親が子どもより先に欲求を満たし、感情まで言葉にしてしまうと、子どもは自分の感情や好み、身体感覚が希薄になっていくとのこと。(心理学者、根本橘夫氏)*9
「トイレに行きたい」「やめて」を自分で口にする力は、「〇〇でしょ?」を飲み込んで待つ時間のなかで育っていきます。
3. 「早く!」の前に、10秒待つ
「早く!」と言いたくなる場面は、15項目すべてにあるでしょう。2歳の子でも10秒あれば片足の靴が履けるのに、その10秒を待てずに5秒ほどで「早く」と言ってしまっていないか、と問いかけています。(保育士、原坂一郎氏)*10 あと10秒待つだけで、「ひとりでできた」と感じられる場面はずいぶん増えるそうです。
「早く」と言わずに済ませるには、着替えに何分かかるかを把握して、その分だけ前倒しで動き始めること。待てる朝は、前の晩からつくれます。
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入学までの半年は、文字より先に、自分の体と時間と言葉を自分で扱えるようになっていく時間です。
「ひらがなを書けるようにしなきゃ」と焦っていた親御さんが、「今日は靴下を自分で履いた」を数えられるようになれば、準備はもう進んでいます。15項目を明日から全部始める必要はありません。今夜、明日の持ち物をひとつだけ、子どもの手でかばんに入れてもらう。それで、8番の最初の晩は完了です。
よくある質問(FAQ)
A. 入学まではまだ半年ほどあります。目安は入学後の生活を思い描くためのもので、早い遅いを測るものではありません。できていない項目は、「いま〜年内」の欄からひとつずつ始めてみてください。できない理由が、箱のフタが固い、ハンカチの置き場が高いといった道具や環境にあることも。そこから見直してみましょう。
A. 誰かの予定に合わせて動くのはとても高度なことで、子どもは自分のことで精一杯なので、親が対策するべきだとしています。(中学受験のプロ、小川大介氏) 服選びと持ち物の準備は前の晩に回し、朝に残すのは「靴を履く10秒を待つ」だけにする。待てる余裕は、夜のうちにつくれます。
(参考)
*1 文部科学省|幼児教育、幼小接続に関する現状について(教育課程企画特別部会 第6回 配付資料)
*2 光村図書|内容解説資料「年間指導計画 1年」(書写)
*3 こどもまなびラボ|「子供が片付けをしない……」そんな悩みを解決できる超シンプルな4つのコツ
*4 こどもまなびラボ|毎朝イライラさようなら! 年齢別・子どもの時間管理力アップ大作戦
*5 こどもまなびラボ|その後の学習理解度を大きく左右する。低学年の勉強がものすごく大切な理由
*6 こどもまなびラボ|【幼児期編】「過保護」から一歩抜け出す——。子どもの自主性を伸ばす「見守り方」
*7 こどもまなびラボ|「入学・進級が不安な子」は準備不足?いいえ、その心配は「想像力が育った証拠」です。
*8 こどもまなびラボ|「カーリング育児」は過干渉。育児中の “あるある” が、子どもの自信も意欲も主体性も奪っていた!
*9 根本橘夫(2016)『「自分には価値がない」の心理学』朝日新聞出版(朝日新書)
*10 こどもまなびラボ|「早くしなさい!」は誰のため? 自己肯定感が高い子どもの親の習慣









