長期休暇が明けたとたん、朝になると突然泣き出したり幼稚園の前で立ち止まったり……。子どもが保育園や幼稚園に「行きたくない」と言い出すのは、保育現場で毎年のように聞く悩みのひとつです。
家では「たのしみ!」「早く行きたい」と言っているにもかかわらず、園に着いた瞬間涙があふれるケースが多く、戸惑いや不安を感じるママ・パパは少なくありません。
今回は、そのような登園しぶりに悩む方からのご相談が届いています。
【相談内容】
長期休みを過ごしたあとの久しぶりの登園。家から園までは「たのしみ!」とルンルンで向かうのに、園に着いた瞬間、車を降りる前から泣き出してしまいます。私の手を強く引っ張って「お家帰るー! ママと一緒がいい!」とギャン泣きになり、最後は暴れる娘を抱きかかえて門まで連れて行くほどでした。(中略)
もうすぐ2歳になる弟がいるので、「どうして弟はママとお家にいるのに、私だけ幼稚園なの?」と思っているのかもしれません。(4歳女の子ママ)
保育士として現場で多くの子どもたちを見てきましたが、長期休暇明けの登園しぶりはとても自然な心の反応です。とはいえ、親としては胸が痛む場面ですよね。
すぐに仕事を休むわけにもいかないし、無理やり引きはがして登園させるのも心苦しい……。今回は、そうした長期休暇明けの登園しぶりに悩んだとき、親ができる関わり方のヒントをお届けします。
ライタープロフィール
保育士
児童学科で4年間学び、保育士資格や幼稚園教諭一種免許を取得。保育士として約10年勤務。現在、小学生2人を育てながら「働きながら子育てする大変さ」と対峙中。ワーキングマザーが安心して子どもを預けられるよう、さまざまな情報を発信します。
目次
なぜ”長期休暇明け”に登園しぶりが起こるの?
登園しぶりの原因は子どもによってさまざまで「ママやパパと一緒にいたい」「幼稚園で過ごす時間が楽しくない」などが考えられます。
特に長期休み明けの場合は、家族で過ごす時間が長かったことで家庭の安心感が強まり、外に出ることに対して不安を感じやすくなってしまいます。ほかにも、久しぶりの幼稚園で無意識のうちに緊張を感じている可能性もありますね。
そして今回のご相談にあるとおり、下の子がいると上の子は登園しぶりをしやすくなる傾向があります。
💭 子どもが感じる不公平感
・弟は家にいられるのになぜ自分だけ幼稚園に行くのか
・弟はママに甘えられるのになぜ自分だけ離れるのか
・弟は家で遊べるのになぜ自分だけその時間がないのか
まだ小さな子どもでも、雰囲気を感じ取ってしまいます。長期休暇中にママを独占できていたと感じていればなおさら、気持ちの揺れが起きやすいといえるでしょう。

長期休暇明け、こんな “変化” が見られることも
今回のご相談にあるお子さんは、幼稚園に着くと泣いて暴れ「家に帰りたい」と訴えています。そのほかにも、長期休み明けの子どもの登園しぶりには次のようなサインが見られることがあります。
1. 感情の揺れが大きくなる
子どもの記憶力や想像力はまだ未熟なため「久しぶりに幼稚園に行く」と聞けば、楽しい記憶が思い浮かびワクワクします。しかし、いざ幼稚園に到着すれば「ママと離れて過ごす」ことを思い出し大慌て。
あまりに強い不安感に襲われることで、感情の揺れが大きくなります。些細なことで泣いたり怒ったりするのがそのサインです。休み明けの仕事がつらい大人と同じですよね。子どもも集団生活は無意識のうちにがんばりが必要となり、心と体が追いつかなくなるのです。
💡ポイント
些細なことで泣いたり怒ったりするのは、強い不安感による心と体のバランスの乱れ
2. 体調面で訴えがある
長期休み明け、あまりにも幼稚園に行きたくない気持ちが強く「お腹が痛い」「気持ち悪い」といった言葉が増える場合もあります。強い不安が本当に体調に影響するケースも少なくありません。
なかには、そう訴えることで「幼稚園に行かなくてもよくなる」と考える子どもも。しかしこれは単なる嘘ではなく、過去に「お腹が痛いときにママがずっと側にいてくれた」などの記憶から出てくる、安心感を確かめるためのサインかもしれません。
💡ポイント
体調不良の訴えは単なる嘘ではなく、不安から来る体調への影響や安心感を求めるサイン
3. いつも以上に甘えたがる
弟との環境差から “自分だけ外へ行く不公平感” をもつことで、自分も同じように甘えたいという気持ちから赤ちゃん返りのような行動が見られることもあります。抱っこを求めたり、弟の姿を真似したり……。
できていたことが一時的にできなくなるのは、甘えたい気持ちのサインといえます。「ちゃんと登園してよ」という、ママの焦りや忙しさを察知して悪化することもあります。
💡ポイント
できていたことができなくなるのは、ママへの甘えたい気持ちの表れ

長期休暇明けの登園しぶりに親ができること
一時的なものであるとわかっていても、何日も続くとママやパパはとても大変ですよね。そこでここからは、長期休暇明けの登園しぶりに対して、親ができることについて解説していきます。
今回のご相談者さまの例に合わせて具体的な対策をまとめますので、同じような悩みを抱えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
1. 朝に「小さな儀式」を取り入れる
子どもは、毎日変わらない安心感のある流れを好みます。「パジャマに着替えたら絵本」「手を洗ってからおやつ」などと同じように、朝になにか親子で決めた儀式を取り入れると、登園までの流れがスムーズになる可能性があります。
たとえば、ハイタッチをしたりギュッと抱きしめたり。詳しくは以下の記事でもまとめていますので、ぜひチェックしてみてください。
2. 「離れたくない」気持ちを代弁してあげる
悲しくなったり怒りたくなったり、気持ちが揺れている理由をうまく言葉にできないことも癇癪を起こす要因となります。そのため、子どもが離れたくないと思う気持ちを代弁してあげることが大切です。
「ママが好きで一緒にいたいんだよね」「ずっとお休みだったからお家にいたい気持ちもあるよね」などと言語化することで、気持ちを落ち着かせてあげましょう。
💬 代弁フレーズ例
・「ママが好きで一緒にいたいんだよね」
・「ずっとお休みだったからお家にいたい気持ちもあるよね」
・「幼稚園に行くのは少し緊張するよね」
3. 弟との比較には「役割の特別感」で答える
登園したくない気持ちにある「弟はずるい」という思いにも対応が必要です。とはいえ、状況を変えることはできないため、特別感を得られるように演出するのもひとつの作戦です。たとえば、 「幼稚園に行けるのは〇〇ちゃんがしっかりしているからだよ」「幼稚園に行けるのは特別だからな~」など。
ここで注意したいのは「お姉ちゃんだから」という言い方ではなく、存在そのものの価値を伝えることです。評価している、信頼しているという気持ちを言葉にして伝えましょう。
⭕ OK例
・「〇〇ちゃんがしっかりしているから幼稚園に行けるんだよ」
・「幼稚園に行けるのは特別なことだね」
❌ NG例
・「お姉ちゃんだから我慢しなさい」
・「お姉ちゃんなんだから泣かないで」
4. 夜に「5分だけのスペシャルタイム」を
現在は、たまに弟が早く寝たときだけ2人の時間が取れるとのことですが、子どもの心身を安定させるためには、この時間がとても重要です。 特別なことをする必要はありません。
時間の長さではなくママを「独占できる時間がある」ことが、登園しぶりに効いてきます。「内緒だよ」「〇〇ちゃんだけだよ」と言いながら、2人だけでコッソリお菓子を食べるのも効果的です。
💡ポイント
大切なのは時間の長さではなく、「ママを独占できる」という特別感
5. 園と「休み前は落ち着いていた」ことを共有する
登園しぶりが始まったら、保育者に「2学期は落ち着いて登園できていた」「長期休み中も元気に過ごしていたが始業式から不安感が強まっている」など状況を伝えましょう。これまでの基準を伝えて、一時的な後退であることを共有します。
そうすることで、個別の対応をお願いしやすくなります。登園しぶりは、家庭だけでなく保育者と情報を共有して一緒に対応することが望ましいため、問題を抱えず相談するようにしてくださいね。
💡ポイント
登園しぶりは家庭と園が情報共有して一緒に対応することが大切

がんばっているママへ:自分を責めないで
朝から晩までの育児で大変ななか、ようやく幼稚園が始まるというタイミングでの登園しぶり。弟のことで手一杯なのに、いままでできていたことを「できない」と言って泣かれると気が滅入ってしまいますよね。
そのような状況で怒ってしまうのも、人として自然な反応といえます。自分を責める必要はありません。
💡知っておいてほしいこと
長期休暇明けの心の揺れは一過性であることが多いです。次の長期休み明けにも、小学校に上がったあとにも、きっと同じような状況が起こります。時間が解決してくれることもあるため、気負わず対応していくことが大切です。
あまりにも子どもの心身の負担が大きいと感じたときは「〇〇ちゃん幼稚園がんばれパーティー」「〇〇ちゃん幼稚園がんばったねパーティー」と称して、楽しい時間をつくってもいいですね。
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長く楽しかったお休みが明けたあとの登園は、いやな気持ちになって当たり前です。安心できる家庭でのんびり過ごしていた時間がなくなると考えると、大人でもため息が出ますよね。
特に、上の子どもはがんばり屋さんだからこそ「またがんばらなくちゃ」というスイッチを入れるために大きなパワーが必要となるはずです。









