教育を考える/学校・園生活 2026.10.12

「先生に相談」「相手の親に連絡」「しばらく見守る」。仲間はずれを聞いた日の、3つの選択肢の比べ方

「先生に相談」「相手の親に連絡」「しばらく見守る」。仲間はずれを聞いた日の、3つの選択肢の比べ方

夕飯の片づけをしていると、子どもがぽつりとつぶやきます。「今日、〇〇ちゃんたちが入れてくれなかった」。

手が止まって、胸の奥がぎゅっとなる。そして頭のなかでは、いくつもの選択肢がぐるぐると回り始めます。担任の先生に伝える? 相手の親に連絡する? それとも、もう少し様子を見る?

春にできたグループが落ち着いてくる秋は、友だち関係の小さなすれ違いが表に出てくることもある時期。この記事では、「担任に相談」「相手の親に連絡」「しばらく見守る」の3つを、同じものさしで比べてみます。その夜に何をして、翌朝どう動くか。迷ったときの地図として使ってみてください。

その夜は、まず「話してくれた」ことを受け止める

子どもが大人に打ち明けるのは、大人が思う以上に大きな一歩です。

アメリカの大学生のうち、子どものころのいじめを先生に一度も話さなかった108人に、その理由を振り返ってもらった研究では、「大したことではないと思った」「恥ずかしかった」「仕返しや、状況が悪くなるのが心配だった」「先生が助けてくれると思えなかった」といった理由があがりました。相手が友だちだったときにも、打ち明けにくくなっていたと報告されています。(サウスカロライナ大学、研究者のモリー・ドーズ氏ら)*1

仲間はずれの相手は、ふだん仲よくしている子であることも少なくありません。言えば友だちを悪者にしてしまう。そんな迷いを越えて話してくれたのなら、その夜は解決策を急がず、聞くことに集中して大丈夫です。

「話してくれてありがとう」「そのとき、どんな気持ちだった?」。そして最後に、「ママにどうしてほしい?」と聞いてみてください。「どうしてほしい?」への答えは、翌日からの動き方を決める一番の手がかりになります。

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「担任に相談」「相手の親に連絡」「しばらく見守る」を比べてみる

3つの選択肢を、「動き出す速さ」「子どもの気持ちへの影響」「あとから修正できるか」「向いている場面」の4つのものさしで並べてみました。

🏫 担任に相談 📞 相手の親に連絡 👀 しばらく見守る
⏱ 動き出す速さ 翌日には動ける その日のうちに動ける すぐには動かない
💗 子どもの気持ちへの影響 本人の希望を添えれば守りやすい 話が友だちに伝わり、気まずくなることも 本人のペースを大切にできる
🔄 あとから修正できるか しやすい(「様子見で」と伝えられる) しにくい(こじれると取り消しにくい) しやすい(いつでも相談に切り替えられる)
📍 向いている場面 園や学校のなかの出来事。続いている、元気がないとき 学校の外での出来事で、ふだんから気軽に話せる間柄のとき 一度きりで、本人が「大丈夫」と言い、ふだんどおり過ごせているとき

1. 担任に相談する

学校には、保護者からの相談を受けて動く仕組みがあります。いじめ防止対策推進法では、保護者が子どもからいじめの相談を受け、いじめの事実があると思われるときは、学校への通報などの措置をとるものとされています。そして通報を受けた学校は、速やかに事実を確認することになっています。*2

学校がいじめに気づくきっかけのなかでも、保護者の声は小さくありません。令和6年度の調査では、いじめ発見のきっかけのうち13.9%が「本人の保護者からの訴え」でした(小・中・高・特別支援学校の合計)。*3 親からの連絡は、先生の目が届かない場面を知らせる大切な情報源なのです。

イングランドの19校の10〜14歳の子ども2,308人を対象にした調査では、いじめを受けた子の30%が誰にも話していませんでした。一方、誰かに話した子にとって、その結果はたいてい前向きなものだったといいます。ただし、先生に伝えた場合を中心に、状況が悪くなるケースもわずかにあったと報告されています。(ロンドン大学ゴールドスミス校、心理学教授のピーター・K・スミス氏ら)*4

相談は多くの場合、子どもの助けになる。それでも、伝え方しだいで裏目に出ることもある。だからこそ担任に話すときは、出来事に加えて「本人はどうしてほしいと言っているか」を添えておきたいところです。「大ごとにはしたくないようなので、さりげなく見ていただけたら」。このひとことがあるだけで、先生も動き方を選びやすくなります。

2. 相手の親に連絡する

相手が顔見知りのママなら、直接話せば早く片づくように思えますよね。

ただ、子どもの話はどうしても片側から見た出来事です。相手の家では、まったく違う話として伝わっていることもあります。親同士の会話は気持ちがぶつかりやすく、一度こじれると取り消しにくいのが難しいところ。子ども同士は翌日には仲直りしていたのに、親同士だけ気まずさが残る、ということも起こりえます。

この選択肢が生きるのは、放課後や習い事など学校の外での出来事で、ふだんから気軽に話せる間柄のとき。伝えるときは「責める」のではなく、「様子を一緒に見ていきたい」という共有のかたちにすると、受け取ってもらいやすくなります。

3. しばらく見守る

一度きりの出来事で、子ども自身が「もう大丈夫」と言い、ふだんどおり登園・登校できている。そんなときは、見守るのもひとつの立派な選択です。低学年の友だち関係は入れ替わりが早く、翌週には別の子と笑っていることも珍しくありません。

ただし、見守ることは何もしないことではありません。たとえば「1週間」と期限を決めて、毎日の様子に目を配る。「また何かあったら教えてね」と伝えておく。朝になるとお腹が痛くなる、口数が減る、園や学校に行きたがらない。そんな変化が見えたら、担任への相談に切り替えるタイミングです。

迷ったら、「担任にひとこと」から始めてみる

並べてみると、担任への相談は、動き出しが早く、あとから修正もしやすい選択肢です。「しばらく様子を見ていただけますか」という伝え方なら、大ごとにせずに、教室での子どもの様子を見てもらうことができます。担任への相談は「訴え」ではなく、子どもを一緒に見守るための「情報の共有」。そう考えると、ぐっと連絡しやすくなるはずです。

いじめに向き合った親の経験を扱った13の研究をまとめたレビューでは、親たちが「どう対応すればいいか」についての具体的な情報や指針を求めていたことがわかりました。そして、効果的に対応するためには、家庭と学校が責任を分かち合い、協力することが大切だと指摘されています。(ヴィクトリア大学ウェリントン、研究者のスーザン・ハーコート氏ら)*5

家庭だけで答えを出そうとしなくていい。学校と一緒に考える、という選び方もあります。

なお、いじめ防止対策推進法が対象にしているのは小学校以上で、幼稚園や保育園は含まれていません。それでも、園での子どもの様子を一番よく知っているのは担任の先生。園児の場合も、まずは先生に共有するところから始めて大丈夫です。

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連絡帳・電話で使える、ひとことの文例

いざ連絡しようとすると、最初のひとことで手が止まってしまうもの。そのまま使える文例をまとめました。連絡帳は子どもが目にすることもあるので、相手の子の名前は書かず、詳しい話は電話や面談で伝えると安心です。

連絡帳で

  • 「昨日、休み時間に仲間に入れてもらえなかったと話していました。少し元気がないので、学校での様子を気にかけていただけるとうれしいです」
  • 「本人は大ごとにしたくないようなので、さりげなく見ていただけると助かります」

電話・面談で

  • 「お忙しいところすみません。子どもから気になる話を聞いたので、共有させてください」
  • 「まだ事実ははっきりしないのですが、本人はこう話していました」
  • 「学校での様子で、何か気づかれたことはありますか?」

相手の親に話すとき

  • 「うちの子がこんなふうに話していて。〇〇ちゃんからは何か聞いてる?」
  • 「どっちが悪いということじゃなくて、子どもたちの様子を一緒に見ていけたらと思って」

文例に共通しているのは、「事実」と「お願い」を短く分けて伝えること。評価や推測を混ぜずに伝えると、受け取る側も落ち着いて動けます。

***

仲間はずれの話を聞いた夜は、親の心も大きく揺れます。でも、3つの選択肢のどれかが絶対の正解というわけではありません。子どもの声を聞き、学校と情報を分け合い、様子を見ながら次の一手を選んでいく。その積み重ねが、子どもにとっての「話してよかった」につながっていきます。今夜はまず、「話してくれてありがとう」のひとことから。

FAQ(よくある質問)

Q. 担任に相談することを、子どもに伝えるべきですか?

A. できれば相談する前に、「先生にも知っておいてもらおうと思うけど、いい?」と聞いてみてください。知らないうちに話が進むと、次から打ち明けにくくなることがあります。本人が嫌がっても、元気がない、登校をしぶるといった様子があるときは、「本人は大ごとにしたくないようです」と気持ちを添えたうえで、先生に共有しておくと安心です。

Q. 幼稚園や保育園でも、同じように考えていいですか?

A. いじめ防止対策推進法の対象は小学校以上で、幼稚園や保育園は含まれていません。それでも、園での様子を一番よく知っているのは担任の先生です。「気になる話を聞いたので」と気軽に共有するところから始めてみてください。

Q. 担任に相談しても状況が変わらないときは、どうすればいいですか?

A. 学年主任や教頭・校長先生に相談する方法があります。学校の外にも、自治体の教育相談窓口などがあります。ひとつの窓口で行き詰まっても、相談先はほかにもあります。

(参考)
*1 Dawes, M., Lohrbach, E., & Ho-Olinger, A. (2026)|Why students do not tell teachers about bullying: Retrospective reports from emerging adults. International Journal of Bullying Prevention.
*2 e-Gov法令検索|いじめ防止対策推進法
*3 文部科学省|令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
*4 Smith, P. K., & Shu, S. (2000)|What good schools can do about bullying: Findings from a survey in English schools after a decade of research and action. Childhood, 7(2), 193-212.
*5 Harcourt, S., Jasperse, M., & Green, V. A. (2014)|“We were sad and we were angry”: A systematic review of parents’ perspectives on bullying. Child & Youth Care Forum, 43(3), 373-391.