あたまを使う/サイエンス 2020.10.30

暗算能力が伸びすぎる!? 計算を頭のなかで画像処理する「そろタッチ」に子どもがハマる理由。

今木智隆
暗算能力が伸びすぎる!? 計算を頭のなかで画像処理する「そろタッチ」に子どもがハマる理由。

特許技術を活用し、そろばんの仕組みをiPadに応用した電子そろばん教材「そろタッチ」。「そろばん式暗算」が効率的に習得できるこの教材が現在注目を集めています。

今回は、教育とテクノロジーが融合した教材「そろタッチ」を提供している株式会社Digika社長、橋本恭伸氏(以下、橋本)とRISUの今木(以下、今木)が、Edtech(教育×テクノロジー)が開く教育の新しい姿をめぐって繰り広げた対談の模様をお送りします。

そろばんが手元になくても暗算ができる能力を!

今木こんにちは。今日は、こどもまなび☆ラボでの連載「学びノベーション」の特別対談企画として、株式会社Digikaの社長、橋本恭伸さんをお呼びしました。橋本さんは、この連載でたびたび触れてきた「エビデンス・ベースド」の考え方を、そろばん教室に応用なさっています。橋本さん、そろタッチを開発した経緯についてお聞かせ願えますか。

橋本:私たちはそろタッチのサービスを始める前にそろばん教室を運営していましたが、そのときの経験がそろタッチの開発に関わっています。そこからお話ししましょう。私たちは、そろばん教室の目的が「そろばん式暗算能力」を身につけることにあると考えています。かつてそろばんは、計算に必要なツールでした。しかし、Excelのような表計算ソフトが普及したいま、もはやツールとしてのそろばんは社会に求められていない。そんな時代にそろばん教室に価値づけをするとしたら、やはり「そろばん式暗算能力」の育成だと思ったわけです。

今木:「そろばん式暗算能力」は具体的にはどのような能力なのでしょうか?

橋本:そろばんが手元になくても、頭のなかでそろばんの珠をイメージすることで、暗算ができる能力です。しかし、ひとつ課題がありました。当時、私たちのそろばん教室を辞めた子どもの9割は、いざそろばんが手元からなくなると、難しい暗算ができなかったのです。つまり、そろばん教室では、そろばんというツールの使い方は身についても、肝心の「そろばん式暗算能力」を身につけることにはとても苦労していました。では、「そろばん式暗算能力」を伸ばすにはどんな方法が効果的なのか。試行錯誤の末にたどり着いたのが「そろタッチ」です。

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計算を頭のなかで画像処理する「そろばん式暗算能力」

橋本:先ほど、そろばん式暗算とは頭のなかでイメージしたそろばんの珠をはじくことだとお話ししました。そろタッチには、「珠のイメージ力」をサポートする特許技術が入っています。加えて、生徒からリアルタイムで送られる学習履歴データを分析し、カリキュラムに活かすことによって、効率的な能力開発を可能にしています。

今木:生徒の学習データを分析するのは、RISUでも同様です。この連載のテーマのひとつに「エビデンス・ベースドの教育」があるのですが、まさに「そろタッチ」もエビデンス・ベースドな教材なわけですね。そろばん教室からそろタッチ教室へ転向したことで、どれくらいの効果が生まれたのですか?

橋本:そろばん教室では、4年間で全体の10%の子どもがそろばん式暗算を習得していたところを、そろタッチ教室では、62%の子どもが平均20ヶ月で習得しています。

今木:すごいですね……半分の時間で6倍の効果が出るとは。でも、そろばんもそろタッチも、「指を使う」という点は同じですよね。なぜそろタッチのほうが効果が上がったのでしょう?

橋本:たとえば、そろばんで桁数の少ない計算をするときを考えてみてください。すると、盤上には計算に使わない珠がたくさんあります。これが、そろばん全体のイメージをするときに邪魔になってしまうのです。一方、そろタッチは、iPadの技術を活かして、計算に使う珠だけが真っ暗な背景に色つきで表示されるようになっているんです。

今木:必要なものが必要なときに出てくる。

橋本:そうです。両手で操作する「両手式」もひとつのポイントです。片手で操作するより計算スピードも速くなりますし、脳の数字を処理する部分とイメージを処理する部分を同時にバランスよく刺激できるので、脳が活性化して、イメージ力のアップにつながります。きわめつけは、珠をタッチしても色がつかないモードです。このモードでは、頭のなかで珠をイメージしながら計算しなくてはならないので、イメージ力をより効果的に鍛えることができます。

今木:前にタッチした珠を覚えたまま、次の珠をタッチする――手前まで戻って考えるというのは将棋みたいですね。

橋本:そうですね。囲碁も近いかもしれません。とにかく、タッチすると色がつく「見えるモード」と色がつかない「あんざんモード」、このふたつを反復して行なうことによってイメージ力を鍛え、計算を頭のなかで画像処理する「そろばん式暗算能力」を効率的に身につけることができるのです。

今木:機械の特性をうまく活かして、子どもの暗算能力を伸ばせる教材をつくられたわけですね。そしてそれは実際、データとしても成功している。

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最高のパフォーマンスを出すための「Growth Mindset」

今木:最近、スイミングスクールでもそろタッチ教室が導入されたと伺いました。スイミングなど運動系の習い事と塾をかけもちする子どもは多いですが、一方で、「習い事が忙しくて、勉強の時間がとれない」という声もよく聞きます。習い事と勉強の関係について、橋本さんはどのようにお考えですか?

橋本:はい。今年の6月から、東京都内のカルチャースクールを併設しているスイミングスクールでそろタッチが導入されました。スポーツに限らず、さまざまな習い事を受けられるこの施設で、われわれがなぜそろタッチ教室を開講したか。その理由からお話ししましょう。

じつは、僕らがそろタッチを使って達成したい目標は、いままでお話ししたような「計算力を上げる」というところに留まりません。計算力を上げることは、目標ではなく、手段に過ぎません。つまり、「計算力」というわかりやすい能力が開発される過程を経験することによって、数字に対する自信、ひいては「Growth Mindset(経験や努力によって将来をポジティブに変えられるという考え方)」を獲得すること、それが最終的な目標なんです。

スポーツにおいて、Growth Mindsetは非常に重要です。Growth Mindsetをもてず、「僕(私)なんていくらやってもダメだ……」と思っていたのでは、どんなに練習を積んでもよいパフォーマンスは出せない。これは勉強も同じことだと思います。

今木:スポーツと勉強は、土台の部分ではすごく近いわけですね。

橋本:すごく近い。そろタッチは、90%以上の学習は家で行なわれるよう “仕組み化” しています。だから、スイミングスクール内で提供されているそろタッチコースは、学習の場というよりむしろ、家での勉強の成果を披露する場なんです。そして、それを見守るファシリテーターと呼ばれる大人の役割は、スイミングスクールでコーチをしている人たちの役割にすごく近い。

今木:子どもに成功体験を与えることで、モチベーションアップを手助けしている。

橋本:そうですね。子どもの能力開発において、やはりGrowth Mindsetの考え方が共通項になっていると感じます。幼少期からこの考え方を身につけることは、子どもにとって大きな価値となります。子どものGrowth Mindsetの獲得にいかに寄り添えるか。それがスポーツ・勉強問わず、すべての教育サービスに重要なことだと思います。

今木:なるほど。RISUのタブレット教材でも、子どもひとりひとりに、大学生のチューターによるフォロー動画を送っています。子どもの能力を開発するうえで、周囲の見守りはとても重要なのだと改めて感じました。

私が行なっているすべての教育サービスの根幹にあるのは、「子どもの才能を育て、開花させる」という理念です。子どもはそれぞれ伸びしろをもっています。私は、RISUでの算数教育を通じて、子どもひとりひとりの伸びしろを育てるきっかけを提供することができれば、と考えています。

橋本さんのお話には、学習データに基づいたエビデンス・ベースドな教材づくりや、周囲の見守りが支える子どもの能力開発など、そうした私自身の教育理念に通ずる点も多かったように感じます。Edtechの明るい未来を予感させる、実りある対談でした。橋本さん、今日はありがとうございました。

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【プロフィール】
橋本恭伸(はしもと・やすのぶ)
マイクロソフトにグローバル新卒採用第一期生(MACH05)の一員として入社。The University of Sheffield MBAを経て楽天株式会社へ。PT. Rakuten Indonesia, PT. Rakuten Belanja OnlineのDirectorを歴任し、Rakuten Indonesia Country Headとして海外でのビジネスを現地の最前線で率いる。人々の可能性を最大限引き出す力になることを自身のテーマに掲げ、株式会社Digikaで世界最速の「暗算力」の短期効率的習得を通じて世界中の子供たちの夢の実現をサポート。
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■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧
第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方
第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない
第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題
第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法