2021.3.30

2030年、79万人のIT人材が不足する!? 「論理的思考力」が必要なこれだけの理由

今木智隆
2030年、79万人のIT人材が不足する!? 「論理的思考力」が必要なこれだけの理由

思い込みや経験則を離れ、科学的なデータを重視する「エビデンス・ベースド」の考え方に立って、理数系教育を見つめ直してきた本連載。子どもたちの「ニガテ」の原因から、効果的な学習法、未来の学びの姿まで、算数にまつわるさまざまな知見をお伝えしてきました。

第14回目は視野を大きく広げ、「算数を学ぶことが、子どもたちの将来にどのように役立つのか」ということをお話ししたいと思います。

算数が「論理的思考力」の土壌を育む

「算数って、なんのために勉強するの?」

お子さまにこんな質問を投げかけられて、戸惑った経験のある方は多いのではないでしょうか。たしかに、算数で学ぶ単元のなかには、日常生活と直接結びつかないものも多いですから、お子さまが「こんな公式覚えても、テストでしか使わないじゃん!」「こんな複雑な計算、なんの意味があるの?」と言うのも、無理はありません。

算数は一見、ただ面倒な問題を解くだけの教科に思えますよね。でもじつは、算数を学ぶことによって身につけられる力は、今後どれだけ科学技術が進歩しても必要になってくる能力です。その能力とは「論理的思考力」。論理的思考とは、物事をひとつひとつ筋道立てて、わかりやすく説明できるような考え方のこと。これは、直感や感情とは対立する考え方です。

たとえば、志望校を決めるとき、「この学校が気に入った!」「なんとなく好き!」と直感で決める人もいれば、「偏差値や家からの距離、学費などを考えると、この学校がいい」「将来〇〇になりたいから、そこにつながる学校にしよう」と論理的に考えて決める人もいます。

もちろん、お子さまが自分の将来を考えるうえで、直感と論理的思考のどちらが正しいか、ということは一概には言えません。ただ、周囲を説得したいときには、論理的思考を経ているかどうかが大きな意味をもってきます。理由がしっかりしているほうが、多くの人を納得させられるからです。

たとえば、文章題を解くときのことを考えてみましょう。式を立てるには、問題文の要素をひとつひとつ分析し、検討して、適切に組み合わせることが必要です。「なんとなく」で立てた式では、正しい答えは導かれませんね。算数・数学では、「文章を式にして落とし込む」トレーニングが繰り返し行なわれます。これはまさに、論理的思考の訓練です。分析的に物事を考え、それを適切に使って式を立てることによって、のちの論理的思考の土台がつくられていくのです。

論理的思考を身につけると、算数に限らず、学校の成績はよくなっていきます。もしテストで不正解があったとしても、論理的思考ができれば「どうして間違えたのか」「自分に足りなかった知識は何か」「どんな勉強が必要か」というようにミスを振り返り、的確に対応することができるからです。

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2030年、79万人のIT人材が不足する!?

算数を学ぶことは、お子さまの将来にもダイレクトに関わってきます。そのことを裏づける事実のひとつが、日本が直面する大幅なIT人材不足です。経済産業省の予測によると、2015年時点で約17万人のIT人材不足が起きているといいます。現在の中学生の子どもたちが働き出す2030年には、甘く見積もって41万人、厳しく見積もると79万人のIT人材不足が見込まれているのです。つまり、裏を返せば、「ITの知識を身につけておけば、将来は職に困らない」とも言えるでしょう。

少子高齢化や人口減少など、日本の課題を支える技術としてのIT産業への期待は高まるばかりです。たとえば、成長産業のひとつである介護分野においても、今後のIT化に注目が集まっています。介護士の人材不足はよく知られていますが、関連する事務作業の多さも人材不足に拍車をかけています。被介護者の状態共有など、ITによって削減されるべき時間工数は多いと言われています。

あるいは、最近身近になりつつある無人レジ化がさらに進めば、将来的には無人コンビニも登場するでしょう。そうなると、無人店舗を守るための技術が求められることになります。また、決済も現金から電子マネーが主流になれば、それに関連する専門知識が今後の役に立つはずです。

このようなIT産業の裏には、設計・管理・整備を行なうエンジニアの存在が必要不可欠。IT人材へのニーズがさらに高まっていくことは間違いないでしょう。未来を生きていく子どもたちは、もしかするとITと関わらずに仕事をするほうが難しくなるかもしれません。

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幸福な未来のために「算数」は必要である

「そう言われても、うちの子は算数が本当に苦手で……。エンジニアにも理系職にも、とても就けそうにありません」というおうちの方も、もちろんいらっしゃるでしょう。しかし、なにもみんながエンジニアになる必要はありません

高度なプログラミングやデータ解析が自分でできなくても、「エンジニアにどんな仕事を依頼し、どんな成果を挙げるか」ということを管理するマネージャーとしての人材も同時に必要になります。消費者のニーズを分析して今後の課題を適切に洗い出し、解決するために必要な指示を考える。この問題解決のステップは、先に述べた、文章題を解くステップと重なります。マネージャー業務もまた、論理的思考あってのものです。文系・理系にかかわらず、算数で育まれる「論理的思考力」によって、エンジニアやサイエンティストと対等に会話ができる能力こそ、これからの人材に求められる力なのです。

また、数字に強いこと、論理的思考ができることは、仕事をするうえで大いに役立ちます。したがって、社内でプロジェクトを任されたり、望むポストに就くことができるなど、理数系の職場以外でも、自分の力を多く発揮する機会をもてるようになるでしょう。算数・数学を学ぶことで得られる基礎的な力は、お子さまのこれからの人生が、充実した幸福なものであるために、欠かすことのできない財産なのです。

以上をふまえて、冒頭の「算数ってなんのために勉強するの?」というお子さまの問いに答えるなら、こう教えてあげてください。

「算数を勉強すると、自分で考える力が身につくんだ。それは、一生役に立つ財産になるんだよ」
(※上の問題の答えは【3】)

次回はいよいよ最終回。これまでの連載を振り返りながら、未来の教育のあり方を見つめます。お楽しみに!

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■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧
第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方
第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない
第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題
第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法