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子育てに悩みは尽きないものですが、とくに性に関係することについては正解が見えにくいため、放置してしまうケースも多いようです。「生理について子どもから聞かれたが、どう答えていいかわからない」「息子のペニスの皮はむいたほうがいいのか」「子どもが性器をいじっている」といった、多くの親御さんが抱えがちな悩みについて、性教育を専門のひとつとする臨床心理士の高山恵子さんにアドバイスをもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
生理の知識は10歳までに教える
多くの親御さんが抱える悩みのひとつに、「生理について子どもに聞かれると、どう答えていいのか困ってしまう」というものがあります。初潮を迎えるのは一般的に10歳〜14歳頃ですから、女の子には10歳になるまでに生理について教えてあげてほしいと思います。
教え方については年齢や理解力にもよりますが、基本的には「1か月に1回、赤ちゃんを育てるためのベッドをお腹のなかでつくっていて、そのベッドが必要ないときに血と一緒に体の外に出るんだよ」と教えると理解しやすいでしょう。
加えて、「もう少ししたらあなたにもそういうことが起きるけど、急に血が出てもそれは自然なことだから不安にならなくて大丈夫だよ」と安心させてください。このことを伝えていないばかりに、初潮を迎えた際、びっくりして誰にも相談できない子も多いのです。
また、学校で初潮を迎えた場合は女性の担任の先生や保健室の先生、家であればお母さんかお姉ちゃんに報告するようにあらかじめ伝えておきましょう。当たり前のことですが、学校と家以外のシチュエーションで初潮を迎える可能性もありますから、そろそろ初潮を迎える年齢の女の子には、ナプキンや予備の下着を入れたポーチを普段からもたせておくと安心です。
また、男の子にも、やはり10歳くらいまでに生理についてきちんと教えておくことをおすすめします。男の子同士のなかで得た中途半端な知識により、生理中の女の子をはやし立てるようなこともあるからです。「赤ちゃんをつくるための大切な仕組みで、それをからかうのは失礼で恥ずかしいことだよ」という、きちんとした知識をもたせてあげてほしいと思います。
性器のケアも、幼いうちから習慣にすべきこと
また、男の子をもつ親御さんの場合、「おちんちんの皮はどのタイミングでむいたほうがいいのか」という悩みをもつ人もたくさんいます。
包茎の状態では包皮の内側に汚れがたまりやすく、感染症を招くリスクが高まります。ですから、たとえ幼い子どもでも、包皮をむいてきれいに洗う習慣を身につけることが大切です。
ただし、乳幼児の包皮は亀頭と癒着していることも多いため、最初はむけなくても問題ありません。2歳〜3歳くらいから、お風呂で少しずつ包皮をむき、お湯で優しく洗うように教えてあげてください。続けているうちに、だんだんと自然にむけるようになっていきます。
注意してほしいのは、ペニスを洗う前に手をきれいにしておくこと。汚れた手でペニスを触ることで、逆に感染症を引き起こす恐れがあるからです。また、包皮の穴がとても狭くて、排尿時に包皮の内側に尿がたまって風船のようにペニスの先が膨らんでしまう症状(「バルーニング現象」と言います)や、炎症でペニスの先が赤くなる症状が見られた場合は、泌尿器科を受診してください。
また、女の子にも、性器を清潔に保つことを教える必要があります。恥垢がたまったままだと雑菌が繁殖し、においやかゆみなどトラブルの原因になります。ただし、膣のなかまで洗ってしまうと本来常駐している乳酸菌が減少して逆に雑菌が増えてしまいますから、膣のなかは洗わないことも併せて教えてください。
子どもの性器いじりは、「いけないこと」ではない
最後にとり上げるのは、「子どもが性器をいじっているが、どう対処すればいいかわからない」という悩みです。
子どもの性器いじりに対して親が戸惑ってしまうのは、無意識のうちにも性的な意味合いを感じるからです。でも、子どもはそうではありません。性的な意味合いなどなく、単に「温かくて気持ちいい」「触っているとほっとする」といった理由で性器を触っているだけのことです。
ですから、「自然な行為」だと受け止めてください。親が勝手に「いけないこと」と決めつけ、「やめなさい」「汚いでしょ」などといって叱ると、子どもは性器を触る行為に対してネガティブな感情や罪悪感をもちかねません。すると、成長して思春期になっても自慰をしない、射精できないといった問題が生じることもあるのです。
ただし、TPOだけはきちんと教えておきましょう。「口・胸・性器・お尻」を意味する「プライベートゾーン」については、「自分ではない人が、勝手に見たり触ったりしないところ(自分で自分のものを触るのはOK)」「自分のものであっても、人がいる場所で見たり触ったりしないところ(人がいない場所ならOK)」だと教えておかなければなりません。そうでないと、人前で性器いじりをしてしまったために性被害に遭うような最悪のケースにつながることもあるからです。
『親子で話そう! 性のこと』
高山恵子・佐々木睦美 著/Gakken(2024)
■ 臨床心理士・高山恵子さん インタビュー一覧
第1回:「3歳から始める性教育、基本のキ。嫌なときは「No!」と言う練習をしよう
第2回:専門家に聞いた「性器いじりへの対応」と「性器のケアを習慣にする年齢」
第3回:親が困る質問の代表格。「赤ちゃんはどこからくるの?」「セックスってなに?」にはこう答える(近日公開)
【プロフィール】
高山恵子(たかやま・けいこ)
東京都出身。NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師。昭和大学薬学部卒業後、約10年間学習塾を経営。アメリカ・トリニティー大学大学院教育学修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)。同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。帰国後、児童養護施設、学校、保健所での発達相談や保育所・幼稚園での巡回指導で臨床に携わる。専門はADHD児・者の教育とカウンセリング。当事者であり専門家でもある経験を活かし、ハーティック研究所を設立。教育関係者、保育者などを対象としたセミナー講師としても活躍中。『しからずにすむ子育てのヒント 新装版』(Gakken)、『自分のよさを引き出す33のワーク』『発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド』『2E 得意なこと苦手なことが極端なきみへ』(いずれも合同出版)、『発達障害の子どもに自立力をつける本』(講談社)など著書多数。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。