からだを動かす/教育を考える/体験 2019.1.14

子どもの工作が “失敗作” でも、親はアドバイスしてはいけない

子どもの工作が “失敗作” でも、親はアドバイスしてはいけない

「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、子どもが子どもらしく遊び、心身ともに健全に成長できるようにと、遊びを大事にする大人を増やそうと奮闘しています。そんな嶋村さんは、遊びが子どもにもたらしてくれるもっとも重要なものは、「自主性と安心感」だと語りますが、それを得る機会を奪われている子どもも少なくないのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)
冒頭写真提供:嶋村仁志

遊びで子どもが得るのは「自主性」と「安心感」

遊びのなかで子どもが得られるものとしては、まず「体力」が挙げられるでしょう。最近は、体力は「行動体力」「防衛体力」にわけて考えられています。行動体力とは、行動を「起こす」筋力などの能力、行動を「持続する」持久力や柔軟性などの能力、行動を「調整する」素早さや器用さ、バランス感覚などの能力のことです。

一方、防衛体力は、寒さや暑さ、振動、化学物質など「物理化学的ストレス」に対する抵抗力、細菌など「生物的ストレス」に対する抵抗力、空腹や口の渇き、疲労といった「生理的ストレス」に対する抵抗力、不快、苦痛、恐怖など「精神的ストレス」に対する抵抗力が挙げられます。

これらが強くなれば、当然、子どもは健康に育つと期待できます。とはいえ、わたし自身は、遊びが子どもにもたらすものとして、なにより「自主性」と「安心感」が重要だと思っています。

遊びとは、自分がやりたいと思うことを主体的にやること。やりたくないことは絶対にやらなくてもいい。遊びとは、そういう「自主性」の塊なのです。でも、いまの子どもは自主的に遊ぶ権利を奪われつつあると見ています。幼い子どもでも、毎日がスケジュール漬けになっていることも少なくないですよね。

何時に起きて保育園に行き、午前はなにをしてお昼ご飯を食べて、お昼寝をして迎えに来てもらってあれこれ習い事をして、家に帰ったらご飯を食べてお風呂に入って歯を磨いて……。やることもやる時間も決まっています。そういう生活のなかで、子ども自身が「いま」を決めている時間ってどれくらいあるのでしょうか? 本来、それは遊びの時間として残されていた部分です。

そういう時間を積み重ねて大人になれば、たとえお金持ちにはならなかったとしても、本人が面白そうだと思ったことは積極的にやるし、ひとりでやるのは難しいことなら遊びのなかで培った力によって他人を頼って協力することもできる。それこそ、自ら考えて行動できる「21世紀型」といえる人間になれるのではないでしょうか。

「面白そうだからやってみる」というマインドが人生を豊かにする

他人と比較されない、他人に評価されない、自分で決めて、失敗も含めて「自分で自分の人生を手づくりできる時間」が生活のなかで確保されている。その「安心感」が、チャレンジ精神にあふれ、適応力や柔軟性や発想力を備えた人間に子どもを育ててくれます。遊びというものは、じつはここでいう「安心感」を得るためにあるものだと思っています。

ところが、いまの子どもの多くは自分自身でやることを決められず、大人の誰かが決めた基準で比較、評価され続けられています。すると、子どもはその基準に自分が見合っているか、他人に劣っていないかと気になり成果ベースでものごとを考えるようになる。

そうなると、本当なら持っているはずの力を十分に発揮できません。できることはやるけれど、できないかもしれないことはやらないという選択肢をチョイスするようになるからです。

それでは、将来社会に出て仕事をするにも、ちょっと問題がありますよね。できないかもしれないけれど、やっていくなかでなんとかする。そういうことも仕事には必要な力です。仕事に限らず、やってみたことはないけれど面白そうだからやってみようというマインドを持っているほうが、きっと豊かで楽しい人生を送れるはずです。

失敗する経験を奪われつつある子どもたち

大人って、つい子どもに口を出してしまうものですよね。でも、それではよくない。子どもの自主性を尊重し、大人が口をつぐむ。まずはそこからはじめてはどうでしょうか。

わたしがあるプレーパークで見た子どもたちは、ベンチを一生懸命につくっていました。使っていたのは薄っぺらの廃材だし、足は細くて長さもバラバラで心もとない。それでも、子どもは「完成した!」と、平気で座るわけです。どうなるかはわかりますよね? 当然、グラグラと揺れるし、すぐに壊れてしまいそうになる

でも、それでいいんですよ。子どもたちにとってのドラマと学びはそこにあるわけですから。ところが、大人によっては「ここに筋交いを入れよう」なんてアドバイスをする、さらには「貸してみろ」なんて道具を取り上げてしまうような人もいます。

また、プレーパークとちがって、すでに立派な工作キットが用意されている「ベンチをつくろう」というような体験プログラムの場合は、ただ説明書のとおりにつくらされるだけ。絶対に失敗しない代わりに、子どもには面白くもないし、なにももたらしてはくれません。いまは、一度の失敗もなく最短の時間で「体験」できるパッケージ化された商品があふれています。子どもが思ったとおりにやって、失敗する経験を手に入れる機会が本当に少ないのです。

この時代に生きる大人の役割は、そのような機会を子どもに保障してあげることなのではないでしょうか。失敗も含めた「偶発的な学び」を得る機会を大切にしてあげてください

子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践
嶋村仁志 他 著/学文社(2017)

■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧
第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由
第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?
第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない
第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」

【プロフィール】
嶋村仁志(しまむら・ひとし)
1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。