子ども用のおすすめ地球儀をお探しですか? 学習用の地球儀といっても、サイズ(球径)やタイプ(行政図・地勢図)などさまざまな種類があるので、迷ってしまいますよね。
そこで今回は、おすすめの地球儀を3つだけ、厳選してご紹介します。子どもに地球儀をおすすめする理由、インテリア地球儀との違いも合わせてご説明しましょう。
家庭用地球儀をおすすめする理由
地球儀を家庭に置くことをおすすめする理由は、子どもの学習にとって助けとなるからです。
小学校の学習指導要領において、社会科で地球儀を利用するのは5・6年生。授業内で取り上げた外国の名前・位置を地図や地球儀で確認するのが重要だとされています。特に6年生では、世界の大陸・大洋の名前と場所、さらに日本との位置関係を理解することが求められるため、教室に地球儀を常備して活用することが効果的だとも指摘されているのです。
しかし、都市・人口地理学を研究する谷謙二教授(埼玉大学教育学部)によると、以下のような理由で、地球儀はあまり活用されていないそう。
- 地球儀の用意数が少ないため、児童が手に取って使えない。
- 地軸で固定されているため、特に南極側から見られない。
- 教員が地球儀の活用方法を理解していない。
たしかに、地図帳と異なり、地球儀は学校で1人1つがあてがわれるわけではないので、調べ学習には使いづらいですよね。学校では地球儀を自由に使えないからこそ、子どもが好きなだけ触れるよう、地球儀を一家に1台用意するのがおすすめなのです。
地球儀の学習効果
家庭に地球儀を置くことをおすすめするからには、地球儀が生む学習効果を説明しなければなりません。
海外を意識しやすくなる
地球儀の学習効果として最もわかりやすいのは、海外の諸外国の存在を普段から意識しやすくなることです。
直径数十センチの立体物である地球儀は、家に置いておくと、どうしても目につきます。普通に暮らしていれば、自分の狭い生活圏から出ることはなかなかありませんが、日に何度も地球儀を目にすることで、「この広い世界にはたくさんの国があり、自分がいるのはその一部なんだ」と自然に感じられるでしょう。
子どもだけではなく、大人も地球儀を目にできるよう、買った地球儀はリビングに置くのがおすすめ。そうすれば、両親や祖父母が地球儀を見たときに、「そういえば、あのとき仕事(留学・旅行)で行ったあの国は……」と、自然に外国の話をしたくなります。
海外の珍しい話は子どもにとって興味深いでしょうから、喜んで聞いてくれるのではないでしょうか。大人たちの海外経験を聞いているうち、自然と外国に興味を持ち、グローバルな視点を養うことができます。受験指導を手がけ、『自分から勉強する子の育て方 塾まかせが子どもをつぶす』(大和書房、2019年)など多数の書籍を執筆した和田秀樹氏も、親が子どもに地球儀を見せながら海外ニュースや海外での経験を話してあげることをおすすめしていますよ。
外国の位置関係を正しく把握できる
学習指導要領に記されているとおり、地球儀を見れば、地球上にはどんな海や大陸があるのか、どのような国があるのか、視覚で把握することができます。地球の表面のほとんどは海であることや、ヨーロッパとアフリカは非常に近いことなど、地球儀を回して眺めると、多くの発見があることでしょう。
ある国について、海に面しているのか内陸国なのか、どのような国と国境を接しているのかを把握していないと、その国の産業や政治、歴史を理解するのに支障をきたしてしまいます。海外ニュースを聞いても、状況をイメージしづらいでしょう。
公益社団法人・日本地理学会が、全国の高校生・大学生を対象に実施した2013年度の調査だと、地理を履修していない高校生のうち、外国の位置を問う問題に正答した割合は以下のとおりでした。
フランス:69.7%
朝鮮民主主義人民共和国:52.9%
トルコ:51.3%
スイス:25.4%
なんと、地理を履修していない高校生の15%は、米国がどこにあるかわからず、かなりわかりやすい位置だと思われるトルコの場所を知らない人が半分もいたのです。
日本地理学会は、地図上の位置を把握していないことは無関心の現れだと示唆したうえで、「広く現代世界と日本の諸事象に関心を持つことは、これからの社会に生きる子どもたちにとって不可欠な素養」だと警鐘を鳴らしています。そのため、幼児のうちから地球儀に触れ、諸外国の位置関係を自然と認識できるようにするのがおすすめなのです。
社会科教育学を専門とする寺本潔教授(玉川大学)も、人間は「自分勝手な認知地図を頭の中に形成しているものである」と指摘しています。自分がよく知らない外国については、位置をぼんやりとしか知らなかったり、別の国と間違えて覚えていたりするそう。たしかに、私たち大人のなかでも、イランとイラクの位置を逆に覚えている人は少なくなさそうです。
あいまいな「認知地図」を確かなものにするには、地球儀を身近に置いて、何度も目に入れることです。子どもに学ばせるだけでなく、親が諸外国に関する正しい知識を身につけるためにも、地球儀を家に置くことをおすすめしたく思います。
地理を正しい縮尺で認識できる
上に挙げた2つの学習メリットは、リビングに地図を貼ることでも生まれそうですよね。しかし、あえて地球儀をおすすめするのは、地図にはないメリットがあるからなのです。
立体物としての地球儀が持つメリットは、各国の面積を正しい縮尺で認識できること。私たちが目にする世界地図は、多くの場合「メルカトル図法」です。メルカトル図法では、地球という立体物を平面に落とし込むとき、緯線(横の線)が赤道と同じ長さになるよう調整します。そのため、北極や南極に近い場所が、実態より引き伸ばされて表されます。シベリアや南極大陸が、非常に横長であるように見えてしまうのです。
上記のようなデメリットを持つ平面地図しか目にしないと、地理を誤解したままになってしまいます。平面地図と地球儀、両方の違いを理解したうえで、それぞれを使いこなし、世界を正しく認識するためには、家庭で地球儀を用意するのがおすすめなのです。
子ども用地球儀の選び方
おすすめの地球儀を具体的に紹介する前に、地球儀を選ぶ際のポイントを簡単にお伝えします。
大きさ
子ども向けの学習用地球儀を購入する際、チェックしておきたいのが「大きさ」です。
インテリア用のおしゃれな地球儀なら、気に入るデザインでありさえすれば構いません。しかし、勉強のために地球儀を買うのであれば、国境線や国名がはっきり見える程度に大きくなければいけないのです。
地球儀を販売するオルビイス株式会社によると、地球儀の標準的な大きさ(球径)は【25cm】と【30cm】。それより大きいのは「大型地球儀」に分類されるようです。
子どもが店頭で見て決めるほうが望ましいですが、親が代わりに買ったり、通販で注文したりする場合は、大きい方の【30cm】にしてはいかがでしょう。せっかく買ったのに、「小さくてよく見えない」ということになってしまっては、本末転倒ですからね。
行政図/地勢図
学習用地球儀は、表面に何が書かれているかによって、2種類のタイプに分かれます。【行政図】と【地勢図】です。
【行政図】タイプの地球儀は、赤や緑、オレンジに青など、国土が国ごとに異なる色で塗られています。国境がわかりやすいため、外国の位置や、国境線が引かれている箇所を知るのに適しています。「海外諸国に親しむ」ことが目的なら、【行政図】タイプの地球儀がおすすめです。
【地勢図】タイプの地球儀は、国境ではなく地形や気候で色が分かれています。たとえば、標高によって色の濃淡を変えているタイプだと、国境をまたがってそびえる山脈の存在が明らかです。また、砂漠は茶色、平原は緑で塗っているタイプだと、気候の違いがわかりやすいでしょう。色分けによって、その国や地域がどんな場所なのかイメージしやすいため、「国の位置なら大体わかっている」という子には【地勢図】タイプの地球儀がおすすめです。
子どもにおすすめの地球儀1:アーテックの「手作り地球儀」
地球儀に関する基本知識を確認したところで、具体的なおすすめ地球儀を紹介していきます。まずは、学校教材・教育玩具を製造する株式会社アーテックの「手作り地球儀」です。
「手作り地球儀」最大の特徴は、付属のシールをのっぺらぼうの球体全面に貼って完成させること。球体に合わせてシールを貼るのは少しコツが要るものの、苦労したぶん、完成した地球儀に愛着がわくはず。
球径21.4cmと小さめですが、国名・国境がわかりやすい【行政図】型なので、お子さんにとって初めての地球儀としておすすめです。
子どもにおすすめの地球儀2:ドウシシャの「しゃべる地球儀 パーフェクトグローブ」
次におすすめするのは、生活関連商品の企画や販売を手がける株式会社ドウシシャの「しゃべる地球儀 パーフェクトグローブ」シリーズ。地理教育を専門とする井田仁康教授(筑波大学)によって監修されています。
「しゃべる地球儀 パーフェクトグローブ」シリーズの大きな特徴は、付属のタッチペンを使い、地球儀の表面や台座のパネルに触れると、各国の情報やクイズが音声で提示されること。外国の人口や面積を日本と比較したり、「○○の首都はどこですか?」といった問題に答えたりすることを通して、地理の知識がどんどん身についていきます。子どもだけでなく、大人の知的好奇心にも充分応えてくれそうですね。
2019年11月現在、「しゃべる地球儀 パーフェクトグローブ」シリーズの現行モデルは4種類。搭載された情報量の多さや対象年齢が異なります。
なかでも注目したいのが、奥行き26cmで【行政図】型の「パーフェクトグローブ EXAR」。調べられる情報のテーマが41種類と最多です。しかも、地球儀を台座から外して半分に割ると、内側にはマントルや宇宙の絵が。地球の表面だけでなく、内側も、地球外部さえも知ることができるのですね。
「パーフェクトグローブ EXAR」は、ユーザーの年齢を【5~8歳】【9~14歳】【15歳以上】の3段階で設定できます。そのため、小さい子にとって情報が難しすぎるということもなく、大きい子や大人にとって簡単すぎるということもありません。家族で共有するのにぴったりだといえるでしょう。
「パーフェクトグローブ EXAR」には、ほかにも数々の面白さやメリットがありますが、そのひとつが「二軸回転」であること。つまり、縦にも横にも回せるため、地軸回転のみだと見づらい南極周辺も、じっくり観察できるというわけ。「タッチするとしゃべる」というわかりやすい楽しさだけでなく、「南極が見づらい」という一般的な地球儀のデメリットが解消されている点も、「パーフェクトグローブ EXAR」をおすすめする理由です。
子どもにおすすめの地球儀3:リプルーグルの「カーライル型 ブルーオーシャン地図」
最後におすすめしたい地球儀は、米国発祥の世界的地球儀メーカー・リプルーグルの「カーライル型 ブルーオーシャン地図」。
全体的な造りの美しさが目を引くリプルーグル製品ですが、なかでも「カーライル型 ブルーオーシャン地図」の特徴は、【行政図】型と【地勢図】型を兼ねていること。そのままだと、10種類の気候・風土で色分けされた【地勢図】型の地球儀ですが、内側のライトを点灯することで、【行政図】型に変化します。1台で2役をこなすため、【行政図】型も【地勢図】型も欲しいという人には最適でしょう。
リプルーグルの「カーライル型 ブルーオーシャン地図」には、【山岳隆起加工】が施されてもいます。地球儀の表面を指でなぞってみることで、地上にそびえる山脈の存在を感じられるというメリットがあるのです。
球径は30cmと大きめですが、見た目がシックなので、リビングのインテリアに調和すること請け合い。子どもが大きくなっても家庭で愛用できる地球儀として、特におすすめできる一品です。
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地球儀の魅力をおわかりいただけたでしょうか?
今回おすすめした3つの地球儀は、いずれも異なる点で魅力的です。ぜひ、お気に入りの一品を見つけてみてください。
(参考)
陰山英男・和田秀樹(2003), 『学力をつける100のメソッド』, PHP研究所.
文部科学省|【社会編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
KTGIS.net|小学校社会科における地球儀の活用―地球儀の作製を通して―
獨協大学|大学生・高校生の地理的認識の調査報告
コトバンク|メルカトル図法
帝国書院|どうなる? 新しい社会科――地図帳・地球儀を中心に――
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