教育を考える 2020.3.28
更新日 2025.5.22

子どもに「死」を説明するにはどうしたらいい? 気をつけるべきこととは

子どもに「死」を説明するにはどうしたらいい? 気をつけるべきこととは

身内やペットが亡くなった際、「子供にどう説明すればいいのだろうか……」「子供への死の伝え方がわからない」と悩んだことはありませんか?

子どもは年齢によって「死」に対する理解が変わるため、それに合わせた説明をする必要があります。今回は、子どもに「死」を伝える際に気をつけたいことを紹介します。

「死」を目の前にした子どもはどんな反応をする?

「ガン情報サイト」や専門機関の研究によると、子どもの死に対する理解は年齢によって大きく異なります。また、最近のイギリスの研究では、従来考えられていたよりも早い時期から、子どもたちは死の本質的な意味を理解し始めることが分かっています。

重要なことは、子どもの悲嘆は大人とは異なる表現をするということです。子どもは悲しみを絶え間なく感じているわけではなく、周期的・断続的に表れます。そのため、一見普通に見えても、内心では深い喪失感を抱えている場合があります

乳幼児

乳幼児の場合は、死を理解することはできません。しかし、母親などの養育者が亡くなった場合、不眠や体重減少、活動量の減少、無反応といった変化が現れることがあります。この時期は面倒をみる人を2〜3人以内に限定し、安定した日常のリズムを保つことが大切です。

2~3歳

2~3歳の場合は、死を眠りのようなものとしてとらえることが多いよう。「お父さんはどこにいるの?」と同じ質問を何度も繰り返します。ただ、誰かが亡くなったことに対して不安を感じることもあり、親などが亡くなった場合は食事や睡眠、排せつなどの習慣が変化することがあります。「眠っている」「遠くに行った」という表現ではなく、「死んでしまった」という現実的な言葉を使って穏やかに答えることが重要です。

3~6歳

3~6歳の場合も、死を眠りのようなものとしてとらえることが多いようです。また、生と死の違いをはっきり理解できておらず、故人がどこかで生きている、どこかに行っているだけでそのうち戻ってくると考えることもあります。

さらに、死の原因が自分にあると考える場合もみられます。たとえば「お母さんの言うことをきかなかったからどこかに行ってしまった」「僕が『嫌い』って言ったからいなくなってしまった」などです。身内の死をきっかけに、食事や睡眠、排せつに支障をきたすケースもあります。「死」について繰り返し説明し、「あなたのせいではない」ことを明確に伝える必要があります

6歳~9歳

6~9歳の場合は、死に対しての一種の好奇心を持つようになり、死に関するさまざま質問をすることもあります。たとえば「死んだ人はどこにいくの?」「どうやったら死んだってわかるの?」などです。また、死に対する恐怖心が芽生えたり、死をおばけや幽霊と重ねたりすることもあります。

身内が亡くなったことから、学校で問題行動を起こすようになったり、不登校や引きこもりになったりする場合もありますが、逆に周囲の人々に対してまとわりつくような行為がみられることもあります。安心して故人を思い出せる習慣的行為(思い出箱や記念の植物など)を用意してあげましょう

9歳~

9歳を過ぎると死に対しての理解が進み、死は誰にでも訪れることや自分もいつかは死ぬことを徐々に理解していきます。前思春期(11〜12歳)になると周囲の人の気持ちを察し、死に関わる質問を控える傾向があるため、こちらから積極的に話しかけることが大切です。

思春期の子どもは両親からの分離が発達課題ですが、身近な人の死によってこれが複雑になります。残された親に気持ちを打ち明けたがらない傾向があるため、感情や恐れ、怒りについて率直に話し合い、信頼できる大人との安心できる会話の機会を作ることが重要です。

子供に死を説明する02

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子どもに「死」を伝えるときに気をつけたいこと

1. 発達段階にあった言葉選び

「NPO法人ホープツリー」によると、発達段階に合ったわかりやすい言葉で伝えることが重要です。子どもに死を伝える際には「おばあちゃんは病気と戦っていたけど、病気のほうがすごく強かったから、死んでしまったの。死んでしまった人はもう動けないし、しゃべれないし、ご飯も食べないんだよ」など、発達段階に合ったわかりやすい言葉で伝えることが重要だそうです。

2. 「死」という言葉を使う

子どもを悲しませたくない、混乱させたくないと考えて、「遠くに行っちゃったんだよ」「眠っているんだよ」などと表現する場合がありますが、これはNG。これらの表現は子供に誤解を与え、より多くの不安や混乱を引き起こします。しっかりと「死」という言葉を使って、誤解させないようにすることが大切です。年齢に関係なく、現実的で正確な言葉を使うことが、長期的には子供の理解と受容を助けます。

3. 子どもの感情へを丁寧に受け止める

公認心理師の横山知己氏によると、身内が亡くなった際の子どもの表現はさまざまで、普段と変わらない・明るく振る舞う・泣き崩れる・攻撃的になるなどがあるそう。しかし、普段と変わらない・明るい振る舞いをしている場合でも、悲しくないわけではなく、子どもなりに死と向き合うために必要な表現をしているとのこと。それを理解し、受け止めてあげることが大切だと言います。

また、多くの子供が予想しない感情が「怒り」です。親の死に対して怒りを感じるのは自然な反応なので、「怒りを感じるのは自然なこと」と事前に説明しておくことが重要。また自責の念を感じている子どもには、亡くなったことその子の行ないには関係がないことを、きちんと伝えましょう。

子供に死を説明する03

子どもと一緒に読みたい「死」にまつわる絵本

子どもでも読みやすい「死」にまつわる絵本を紹介します。ぜひ親子で一緒に読み、「死」について考えるきっかけにしてください。

『おじいちゃんの ごくらくごくらく』(鈴木出版)

おじいちゃんのごくらくごくらく

おじいちゃんのごくらくごくらく

参考価格:1,650円

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作:西本鶏介
絵:長谷川義史

おじいちゃんと孫の絆を描いた物語です。大切な人の死はとても悲しいけれど、残された人々に何かを与えてくれるものでもあるとわかります。おじいちゃん子、おばあちゃん子の子どもにぜひおすすめしたい1冊。

『ミツ』(佼成出版社)

ミツ 中野真典

ミツ

参考価格:1,347円

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作:中野真典

作者が愛猫の死を向き合いながら描いた作品です。魂の震えるような絵と、シンプルな言葉の中にミツを思う気持ちが込み上げてくる描写には、痛いほど心打たれます。死だけでなく、“いのち”についても考えさせられる一冊。動物が好きな子ども、ペットと仲良しの子どもに読ませるのもおすすめです。

『いつでも会える』(学研)

いつでも会える 菊田まりこ

いつでも会える

参考価格:1,100円

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作:菊田まりこ

飼い主を突然亡くした犬のシロの視点で、愛する人の死を描きます。懸命に悲しみを乗り越えようとする、シロの姿には胸を打たれること間違いありません。可愛らしいイラストと優しい文章が魅力の一冊です。

『だいじょうぶだよ、ゾウさん』(文溪堂)

だいじょうぶだよ、ゾウさん

だいじょうぶだよ、ゾウさん

参考価格:1,650円

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作:ローレンス・ブルギニョン
絵:ヴァレリー・ダール
訳:柳田邦男

死期を悟ったゾウと、それを受け入れられないネズミの話。自分や大切な人の死を受け入れることの難しさや、大切さを教えてくれます。なんとなく他人事としてとらえがちな「自分も家族もいつかは必ず死ぬ」ことを改めて教えてくれる作品です。

***
子どもの死に対する理解は年齢によって変わっていき、死を受け入れる時の表現方法もさまざまです。いつか必ず向き合う死について、親子で考える機会を作ってみましょう。

(参考)
All About|子供が「死を理解する年齢」はいつ?年齢ごとに増していく死の理解
All About|親や祖父母など大切な人と死別した子供へのケア方法
NPO法人 ホープツリー|子どもの発達段階と悲嘆の表現
がん情報サイト|悲嘆、死別、喪失への対処(PDQ®)