2020.4.1

砂糖まみれのおやつを与えていませんか? 太ってないのにメタボ化する子どもたち

編集部
砂糖まみれのおやつを与えていませんか? 太ってないのにメタボ化する子どもたち

私たちが子どものころに比べて、現代の食環境は豊かで便利になったと実感します。外食ではバリエーション豊富なメニューが並び、スーパーやコンビニエンスストアに行けば、食べたいものがほとんどそろっているため、食事に関して不自由を感じることはあまりありません。

それにともない、現代の子どもたちの食生活はどのように変化してきたのでしょうか。安く、手軽に食べたいものを食べられる環境は、ときに子どもたちの健やかな成長を阻害する要因にもなります。今回は、子どもの食生活にまつわる問題点に着目し、将来のためにも改善すべき点について考えていきましょう。

「エネルギーづくり」ができる体は食事でつくられる

良質な食事(栄養)は、優秀な子どもに育てるための「最大の投資」といっても過言ではありません。体の成長はもちろん、脳や心の成長にも日々の食事は大きな影響を及ぼします。みなさんもお子さんの食事に関して、栄養バランスを考えたり食べる量や時間を決めたりと、日頃から頭を悩ませているのではないでしょうか。

■エネルギーの役割

ここでは、最も重視すべきこととして「エネルギーをつくり出せる体」づくりを提案します。子どもたちの体力や運動能力が年々下降傾向にあるのは、「体内でエネルギーをうまく作り出せなくなっていること」が原因のひとつだと考えられるため、エネルギー生産を低下させない食事を摂る必要があるのです。

私たちは、食べたものを体内で燃焼させてエネルギーに変え、そのエネルギーを使って体を動かします。それは手足の筋肉を動かすだけではなく、体のあらゆる機能を動かすことを意味します。たとえばサッカーをする場合、エネルギーが不足していると次のような一連の動きが難しくなるでしょう。

<サッカーの動作とエネルギーの関係性>

  • 目や耳から入ってくる情報(敵や味方の位置、敵の動作や目線など)を脳に伝え、脳はその情報をすばやく解析。
  • 先を読んで予測を立てて、全身に指令を出す。
  • 手足の筋肉にはどう動かすのかを指示し、動かすために必要な酸素や栄養素をくまなくめぐらせるために、心拍数や呼吸数を調整。
  • 立毛筋の収縮や発汗によって体温を適温に保つ。

このように、手足を動かすだけではなく、脳や心臓、肺などを正常に機能させてパフォーマンスを上げる重要な役割を果たすのが “エネルギー” です。エネルギーを十分につくり出せたら、体力と運動能力を向上させることができるでしょう。

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■人間の体は「糖」を中心に回っている

エネルギーを生産するために一番必要とされる栄養が「糖」です。糖の最大の消化器官は脳であるため、糖が不足してしまうと体だけでなく頭も働かなくなります。エネルギーの生産回路がうまく回らなくなることで、フラフラになったり集中力がなくなったりした結果、勉強にも支障をきたすでしょう。

じつは今、子どもたちの体から糖がなくなるスピードがとても早くなっています。その原因は、エネルギー代謝に必要な物質「グリコーゲン」によるもの。現代の子どもたちは、添加物や農薬を使用した食品に囲まれており、それらが体内に取り込まれると、肝臓でのグリコーゲン貯蔵能が低下します。また、運動する機会が減少していることで、筋肉に蓄えているグリコーゲンの量も少なくなります。ですから、今の子どもたちは、これまで以上に糖の摂取を意識する必要があるのです。

■睡眠中も糖は不可欠

基本的には、朝食と夕食にしっかりと糖を摂るようにしましょう。特に朝は、12時間近く絶食状態にあるため糖が不足しています。毎朝きちんと食べる習慣をつけることが大事です。一方、夕食に関しては、「夜は眠るだけだから、エネルギー源となる糖はあまり必要ないのでは?」と思いますよね。しかし、夕食時こそ糖をしっかりと摂る必要があります。

理由は、睡眠中も記憶を定着させるために脳が活発に働くから。また、低血糖になればアドレナリンやコルチゾールといった血糖値を上げるホルモンが出てしまい、夜中に覚醒して睡眠の質が落ちることも。夜もしっかりと糖を補給して、エネルギー代謝を上げることを心がけましょう。

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おやつは「補食」と考えて

成長期の子どもにとって、三度の食事のほかに「おやつ」は欠かせません。みなさんは普段、何を基準にしておやつを選んでいますか?

子どもたちが好むスナック菓子などのお菓子類は、カロリーは高くても成長に必要な栄養は空っぽ(エンプティ・カロリー)といわれています。糖分や塩分、トランス脂肪酸などを過剰に含んだものが多く、好きなときに好きなだけ食べていると軽度肥満に発展することも。近ごろは、見た目は太っていなくても中身がメタボ化している小学生も少なくないといわれています。

栄養士・幼児食インストラクターの笠井奈津子先生は、お菓子に含まれる糖分の摂りすぎが引き起こす数々の問題を指摘します。まず、甘いお菓子やジュースで血糖値を上げることを繰り返すと、インスリンやアドレナリンなどのホルモンが出すぎて、血糖値が不安定に。それと同時に、精神的にも不安定な状態になってしまうとのこと。砂糖まみれのおやつばかり食べていると、自律神経の乱れからイライラしやすく怒りっぽくなり、集中力の欠如にともない「じっと座っていられない」「騒ぐ」といった問題行動にまで発展することも。

子どもの心身の健康を考えるなら、間食は「おやつ」ではなく「補食」として栄養補給を目的にしたものを選ぶようにしましょう。笠井先生によると、「糖質だけに偏ったおやつだと、ビタミンB1が不足して、エネルギー代謝がうまくいかなくなる」とのこと。補食として最適なのは、具沢山の炊きこみごはんをおにぎりにしたものや、やきいも、ヨーグルト、フルーツなどです。特に、ビタミンやミネラルなど、成長期の体に必要な栄養素を含むものがいいですね。

ただし、どんなに体にいいとされているものでも、食べすぎは害になります。親がきちんと「適量」をコントロールしてあげることを忘れずに。

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子どもの健康を守るのは大人の役目

子どもたちがよく飲んでいる「清涼飲料水」にも注意が必要です。外出先でのどが渇いたら、コンビニや自動販売機で気軽にジュースを買って飲むこともありますよね。しかし、ジュース類には多量の砂糖が含まれています。笠井先生は「ジュースを飲んでお菓子も食べるというのは、明らかに糖分の摂りすぎ」と指摘したうえで、子どもにはジュースを飲むなら、今日のおやつはそれで終わりね。お菓子を食べるなら、飲みものは水かお茶にしようねと言い聞かせることをすすめています。

近年よく目にする「エナジードリンク」もまた、「清涼飲料水」に分類されるので気をつけましょう。エナジードリンクに含まれる大量の砂糖とカフェインは、子どもたちを行動過多の状態にし、自己コントロールを困難にします。イギリスでは「エナジードリンクはドラッグ並みに有害であり、未成年の学生たちの飲用を禁止すべきだ」との警告まで出ていることから、その危険性について深刻に考えなければならない段階まできています。

飲食費にかける支出は、ひと昔前に比べるとずいぶん少なくなっています。しかし、安くて便利ということは、そのぶん人間の体に負担をかけるものも含まれているのです。安い加工食品ばかりを食べ続けた結果、エネルギーが肝臓での解毒に使われ、脳や体を動かすエネルギーが足りなくなっていることから、身体機能や知能の低下、さらには意欲の低下も引き起こしていると考えられます。

私たちの体は私たちが食べたものでできています。大人は自分で食べるものを選べますが、子どもは大人が用意したものを食べる機会が圧倒的に多く、食に対する意識や判断力も未熟です。だからこそ、私たち大人が食や栄養に関する正しい知識を身につけ、子どもたちに伝える必要があるのではないでしょうか。

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「エネルギーとはなにか」ということを基本から学び、エネルギー循環のメカニズムが理解できれば、お子さまのスポーツや勉強のパフォーマンスを上げる手助けができます。

監修:井手啓貴(医師)

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スポーツ栄養学と生化学を融合し、医師と薬剤師、そして理学療法士の経験と知見から、現代の子どもたちの身体能力の低下について分析し、個々に異なるその原因をわかりやすく解説しています。そして、そうしたことを改善していくためには、これからどのような食や環境のあり方が望まれるかなど、具体的なカラダのメカニズムに基づく考え方や方法について学ぶ講座になっています。ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております。
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(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも? 甘いお菓子が脳に良くない理由とは