あたまを使う/サイエンス 2018.10.4

「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法

編集部
「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法

子どもに科学への興味を持たせたい。自分が苦手だった理系科目を、我が子にはぜひ好きになってもらいたい――。ではどうすれば、子どもは理科・科学を好きになってくれるのでしょう?

実は、子どもが科学に対し興味・関心を持つことのメリットは、単に「理系科目が好きになれる」ことだけにはとどまりません。科学好きになった子どもは、広い分野における学びに繋がる大きな力を手に入れることができます。

科学好きな子どもに備わる力と、子どもの科学への興味をかきたてるために親が家庭でできるアプローチ法をご紹介します。

「科学が好き」な子どもに育てることのメリット

まずは、子どもが理科・科学を好きになることのメリットについて解説しましょう。

1. 好奇心が高まる

サイエンスプロデューサーの米村でんじろう先生は、子どもが理科・科学に親しむことは、子どもの好奇心を育むのに効果的だと言います。

次々に生まれ続ける新たな科学技術を、抵抗感なく便利に使っていくためには、科学的なことに対する好奇心が大切です。米村先生によると、その好奇心は理科実験によって養うことができるもの。子どもは、実験を楽しみながら理科に親しむことで、好奇心に加え、新たなことにチャレンジしていける力をも養うことができるのだそうです。

そして、このようにして子どもが好奇心を持つことは、勉強の意欲アップにもつながります。これについて脳医学者の瀧靖之氏は、「好奇心がある子どもは、知ることに対し純粋な喜びを感じるので、楽しみながら新しい知識を学ぶことができる」と解説します。

知的好奇心のある子どもには、「なぜ?」「どうして?」と自発的に考え、自ら調べる癖がつきます。大人から勉強するよう指示されなくても、すすんで学びに向かうことができるのです。事実、「東大生の8割以上が、親に「勉強しなさい」と言われずに勉強し東大に合格した」というデータがあります(東大家庭教師友の会調べ)。これは、知的好奇心勉強意欲につながったうえ、学業成績にも結びついた結果だと言えるでしょう。

理科・科学に親しむことで生まれる好奇心は、科学の枠を超えて子どもの学びへの意欲をかきたてていく力があると言えそうです。

2. 合理的な考え方ができるようになる

米村先生は、子どもが理科・科学に親しみ興味をもって学ぶことは、子どもの「合理的な見方・考え方」を養うことになる、とも言います。

私たちの日常生活は、多くの科学技術に支えられています。例えば、天気予報はそのひとつ。気象衛星ひまわりによって宇宙から送られてきたデータを分析することで天気は正確に予測されていて、それが私たちの実生活に大いに役立っています。正確な天気予報は、非科学的な迷信や非合理的な情報によって成り立っているのではありません。

幼いころから理科・科学に親しんでいると、「私たちの生活は、合理的・科学的な思考によって根底から支えられている」ということを早くから実感することができます。こうして合理的に考えることの大切さを理解していれば、子どもであっても非合理的なことや怪しいことを疑う癖がつくでしょう。非科学的な情報を鵜呑みにすることなく自分で考えることができるようになるのです。

3. 実用的な知識が身につく

また、科学に親しむことは、実用的な知識の習得にも直結します。

私たちの身の回りには、日常的に使う知識として科学的な情報があふれています。先ほど例に挙げた天気予報だけでなく、食品パッケージに書かれた栄養表示、機械などの取り扱い方法などもそうですね。こうした情報をもとに私たちは、「この食品を食べるか食べないか」や「壊れたものをどうやって修理するか」について考えているのです。

また、理系の専門職に就くわけでなくても、理科や科学にまつわる情報に囲まれながら働く職種はたくさんあります。調理師なら、調理過程における食品の状態の変化や、最新の調理器具に関すること。保育士なら、子どもの成長や健康、心に関すること。事務職や営業職で働くとしても、その企業が扱っている商品のテクノロジーについて知識を深めるのは、当然ながら必要なことです。

このように、日常生活や将来に役立つ知識を身につけるために、子どものうちから理科・科学に親しみ科学的なリテラシーを備えることは、とても大切なことだと言えます。

4. 我慢強さが身につく

理科・科学が好きな子どもには、我慢強さが備わるのだそう。受験教育に詳しいことで知られ、著書『わが子を理科系に育てる本』を持つ精神科医の和田秀樹氏は、次のように言います。

「算数や理科が得意な子は、きちんと答えを求めようとするので我慢強い子になるのは間違いない」

(引用元:AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法

好きなことは、もっと知りたくなるもの。好奇心がベースにあれば、「なぜ?」「どうして?」という疑問を解消することをいとわないはずですよね。そんな、子どもの学びに対する飽くなき姿勢が、我慢強さとしてあらわれるということなのでしょう。

2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授は、「自分で知りたいという好奇心と、簡単に信じないということを心がけているのだそう。科学誌にのった論文もすぐには信じず、自分の目で見て納得できるまであきらめないことが大切なのだと言います。本庶教授の研究姿勢からも、好奇心と探求心、我慢強さの大切さを学ぶことができますね。

「科学好き」にするなら、小さいうちの取り組みが肝心

親が我が子の「科学好き」の芽を伸ばしてあげるために、おさえておくべき大事なポイントがあります。それは、幼いうちに科学に興味をむけさせること。

瀧氏は、脳の仕組みから考える「子どもに知的好奇心を持たせるべき時期」について、次のように述べています。

多くの子どもは、3歳、4歳くらいになると「好き・嫌い」を自分で判断するようになります。
その前から身近にあったものは、自然と「好き」という判断をします。

そのため、できれば5歳までに知的好奇心を引き出してあげることが、子どもの将来のために非常に大事になってくると思います。

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?)太字・下線は編集部にて施した。

この時期を過ぎ、小学校に上がって少し経つと、子どもは明確な苦手意識を持つようになります。中学受験教育を専門に手がける小川大介氏によれば、8~10歳ぐらいになると「自分はこうだ」と強く思い込み始める傾向があるのだそう。ちょうどその時期は、勉強が難しくなっていく時期でもありますよね。ましてや親に「私に似てあなたも理科が苦手ね」などと言われてしまえばなおのこと。そして、一度理科・科学に対する苦手意識を持ってしまうと、その意識を変えることは難しくなります

事実として、子どもの頃の科学に対する関心度合いは、大人になっても引き継がれるようです。科学教育などが専門の、京都大学高等教育研究開発推進センター研究員・長沼祥太郎氏は、子どもの「理科離れ」に関する研究論文のなかで、次のことを指摘しています。

小・中学校の頃に理科が好きだった人の約7割が、大人になっても科学技術について関心を持っている。一方、同時期に理科が嫌いだった人の約6割は、大人になってからは科学技術に対し関心がない、またはあまり関心がない。(2008年内閣府の調査より紹介)
・したがって、初等・中等教育段階で、子どもに理科に対し関心を抱かせ、理科を学ぶことの重要性を認識させることが重要である。

子どもに、理科・科学に対し興味を持たせ、この分野を好きになってもらうには、できるだけ幼いうちに子どもに働きかけてあげることが大切なようです。

「科学好き」な子どもを育てるために、親ができること

幼い子どもの科学に対する関心を高めるために、親ができることをいくつか紹介します。

■ 図鑑に親しませる

「科学好き」な子どもを育てるために、図鑑を大いに活用しましょう。図鑑は基本的に、自然科学がテーマ。理科・科学に関する「これは何?」「どうしてこうなるの?」という疑問を解決し、さらなる興味関心につなげていくのに、図鑑は最適です。

図鑑の活用を勧める瀧氏は、子どもが図鑑で得た「バーチャルな知識」を、親が「リアルな体験」に結び付けてあげることが肝心だ、と言います。

動物、昆虫、花、岩石、宇宙……。子どもと一緒に野外に出たり博物館や科学館に行ってみたりして、これらのものに触れさせてみてください。子どもが興味を持った世界を五感でリアルに体験させると、理科・科学への好奇心はいっそう引き出されていくでしょう。

■ 実験・体験教室に積極的に参加する

理系の実験や体験ができる教室に、子どもを積極的に参加させてみましょう。

科学実験教室と名のつくイベントやワークショップなどでなら、家庭では少し難しい実験や、学校では小学校高学年・中学生にならないとやらないような高度な実験にも、小さいうちからチャレンジできます。

また今では、2020年に小学校の授業にプログラミング教育が導入されるのを前に、子ども向けにプログラミングを教える教室も多く登場しています。小・中学校時代のプログラミングやロボットに関する実習経験が、成長後の文理・学科選択に大きな影響を与えるという調査結果もあります(経済産業省、2016年調べ)。もし我が子に、将来に通ずるようなプログラミングへの関心を持たせたいと考えるなら、「プログラミング教室に通う」というアプローチは有効かもしれません。

■ 積極的に自然体験を

自然の中に身を置けば、理科的な要素をたくさん体験することができます。今よりも自然が豊かだった頃や、今ほど便利な技術ばかりではなかった頃には、生活のなかに自然体験があふれていたもの。例えば、火はどうすれば起こしやすいか、太陽の位置と時間との関係などを、子どもは身をもって知ることができていたのです。

しかし今では、日常生活の中で自然体験ができる家庭は、特に都心の場合にはかなり限られているでしょう。そこで、日頃の親子での関わりの中に自然の要素を取り入れて、ぜひ子どもに自然体験をさせてあげてください。例えば、毎日同じ時間に散歩に出かければ、太陽の位置が季節によって変わることや、日没の時刻が日に日に変わることを教えることができますよね。

また、火を起こす、魚を釣る、満点の星空を見る、といったことは日常生活の中では難しいでしょうから、アウトドア体験を通して経験させましょう。そして、子どもに体験させるだけでなく、親もとことん体験を楽しむことが大切。親が心から楽しんでいれば、子どもはそんな親を真似します。子どももきっと、自然での理科的な体験を楽しみ、興味を持つようになるはずですよ。

***
子どもが理科・科学好きになることには、多くのメリットがあります。ただし、子どもは「科学だけ」を好きになればいい、ということではありません。

子どもの将来のことを考えてみましょう。理系の仕事に就くとしても、読解力やコミュニケーション能力は必要ですし、文系の仕事に就くとしても理系の知識が求められる場面は多くありますよね。理系・科学という枠にとらわれ過ぎずに、いろいろな知識をバランスよく吸収することが大切です。そのことは忘れないでくださいね。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【米村でんじろう先生インタビュー 第1回】理科・科学にある「まっとう力」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【米村でんじろう先生インタビュー 第2回】子どもの自主性がどんどん高まる! 理科実験で身につくチャレンジ精神
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【米村でんじろう先生インタビュー 第4回】人生の可能性を広げ賢く生き抜く武器となる「理科・科学の真髄」
瀧靖之(2016),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生の親の4つの特徴。「勉強できる子」の脳を育てるために、親がするべき心がけ
長沼祥太郎(2015),「理科離れの動向に関する一考察―実態および原因に焦点を当てて―」, 科学教育研究, 2015 年39巻2号, pp. 114-123.
AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法
ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?
ベネッセ教育情報サイト|脳医学者も実践!子どもの「知的好奇心」を伸ばす“たった1つの秘訣”
マイナビニュース|子どもの理系脳、文系脳って本当にあるの? その分かれ道はいつ??
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|世界のトレンドは『STEM教育』にあり! そのために親ができること。
経済産業省|理工系人材育成に係る現状分析データの整理(学生の文・理、学科選択に影響を及ぼす要因の分析)
神戸新聞NEXT|<一問一答>ノーベル賞の本庶氏会見